(令和3年3月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、自動車整備業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、所得税等及び消費税等について確定申告をしていなかったところ、原処分庁が、原処分に係る調査時に帳簿書類等の提示要求をしたにもかかわらず、請求人は帳簿書類等の提示をしなかったため、推計の方法により事業所得の金額を計算し原処分を行ったことに対し、請求人が、原処分庁所属の調査担当職員が行った調査終了の際の手続には違法がある旨、また、上記推計の方法には合理性がない旨等を主張して、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等の要旨

  • イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項は、国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容を説明するものとする旨規定し、同条第3項は、同条第2項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができるが、この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない旨規定している。
  • ロ 平成24年9月12日付課総5−11ほか9課共同「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」(以下「本件事務運営指針」という。)は、要旨次のとおり定めている。
    • (イ) 本件事務運営指針の趣旨
       本件事務運営指針は、法令を遵守した適正な調査の遂行を図るため、調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等を定めたものである。
    • (ロ) 本件事務運営指針の別冊の第2章の4の(2)《調査結果の内容の説明等》
       調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、通則法第74条の11第2項に基づき、納税義務者に対し、当該非違の内容等(税目、課税期間、更正決定等をすべきと認める金額、その理由等)について原則として口頭により説明する旨、その際には、必要に応じ、非違の項目や金額を整理した資料など参考となる資料を示すなどして、納税義務者の理解が得られるよう十分な説明を行うとともに、納税義務者から質問等があった場合には分かりやすく回答するよう努める旨、また、併せて、納付すべき税額及び加算税のほか、納付すべき税額によっては延滞税が生じることを説明するとともに、当該調査結果の内容の説明等をもって原則として一連の調査手続が終了する旨を説明する旨定めている。
  • ハ 所得税法第156条《推計による更正又は決定》は、税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額を推計して、これをすることができる旨規定している。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、自動車整備業等(以下「本件事業」という。)を営む個人事業者であり、屋号を「Y3」とし、また、請求人名義(Y4名義を含む。)及び従業員である請求人の実弟のY5の名義を使用して取引を行っている。
  • ロ 本件事業に係る売上げの決済は、主に以下の各金融機関の預金口座(以下「本件売上入金口座」という。)への振込みの方法によっている。
    • (イ) Y6銀行○○支店Y3代表Y4名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (ロ) Y6銀行○○支店Y3代表Y5名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (ハ) Y6銀行○○支店Y5名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (ニ) Y6銀行○○支店Y5名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (ホ) Y7銀行○○支店Y1名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (ヘ) Y7銀行○○支店Y5名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (ト) Y8銀行Y1名義普通預金口座(口座番号○○○○)
    • (チ) Y8銀行Y1名義普通預金口座(口座番号○○○○)
  • ハ 請求人は、平成21年頃に事業を開始して以降、所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告書を提出していなかった。
     また、請求人は、本件事業を営む上で作成した見積書、請求書、納品書及び領収証等(以下「本件書類」という。)については、具体的時期は必ずしも明らかではないが、遅くとも原処分に係る税務調査(以下「本件調査」という。)開始時までにはその全てを廃棄していたものと認められ、また、帳簿(以下、本件書類と併せて「本件帳簿書類」という。)については、その作成、保存もしていなかった。
  • ニ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和元年9月3日、肩書地に臨場し本件調査を開始し、請求人に対して本件帳簿書類の提示を求めたところ、請求人は、上記ハのとおり、本件帳簿書類の作成、保存はしていないとして、本件調査担当職員にその提示をしなかったため、同職員は、その確認をすることはできなかった。
  • ホ 原処分庁は、本件調査担当職員の請求人に対する平成26年分、平成27年分、平成28年分、平成29年分及び平成30年分(以下「本件各年分」という。)の所得税等並びに平成26年1月1日から平成26年12月31日まで、平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで、平成29年1月1日から平成29年12月31日まで及び平成30年1月1日から平成30年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成26年課税期間」、「平成27年課税期間」、「平成28年課税期間」、「平成29年課税期間」、「平成30年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等に係る本件調査の結果に基づき、本件各年分の請求人の所得税等に係る事業所得の金額を推計の方法によって算定し、令和2年3月10日付で、別表1の「決定処分等」欄のとおり本件各年分の所得税等の各決定処分(以下「本件所得税等各決定処分」という。)並びに平成26年分、平成28年分、平成29年分及び平成30年分の無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」という。)をした。
     また、原処分庁は、同日付で、別表2の「決定処分等」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分(以下「本件消費税等各決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」という。)をした。
  • ヘ 請求人は、原処分を不服として、令和2年3月11日に審査請求をした。

2 争点

(1) 本件調査の終了の際の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当があるか否か(争点1)。

(2) 事業所得の金額の計算上、推計の方法に合理性が認められるか否か(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件調査の終了の際の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件調査の終了の際の手続は、次のとおり、通則法第74条の11第2項、第3項の規定及び本件事務運営指針の別冊の第2章の4の(2)の定めに基づき行われており、原処分の取消事由となる違法又は不当はない。 本件調査の終了の際の手続は、次のとおり、通則法第74条の11第2項、第3項の規定及び本件事務運営指針の別冊の第2章の4の(2)の定めに反しているものであり、原処分の取消事由となる違法又は不当がある。
イ 調査結果の説明
 本件調査担当職員は、令和2年3月3日、法令に基づく調査結果の説明として、請求人及び請求人の税務代理人であるY9税理士(以下、請求人と併せて「請求人ら」という。)に対し、決定をすべきと認めた額及びその理由を含む調査結果の内容を説明した後、本件所得税等各決定処分に係る決定通知書の処分の理由の別表1と同様の「事業所得に係る総収入金額」と題する表、また、本件消費税等各決定処分に係る決定通知書の処分の理由の別表1と同様の「基準期間における課税売上高」と題する表及び別表2と同様の「課税期間分の課税標準額」と題する表(以下「本件各収入金額内訳説明メモ」という。)を交付し、その内訳の説明を行った。
 なお、本件調査担当職員は、本件調査中の令和元年9月25日、請求人らに対し、本件売上入金口座の年月日ごとの取引履歴をまとめた「売上(全体)」という表題の書面(以下「取引履歴表」という。)を示し、収入金額を把握した状況を説明するとともに、請求人らに確認をしてもらいながら質問検査を行っている。
 また、本件調査担当職員は、法令に基づく調査結果の説明より前の令和2年2月21日に、請求人らに対して「所得税の計算」と題する表、「消費税の計算(本則)」と題する表及び「納税額合計一覧表」と題する表(以下「本件各調査結果説明メモ」という。)を示し、調査結果についての説明を行っており、調査中からその終了に至るまでに調査内容についての説明を十分に尽くしている。
イ 調査結果の説明
 本件調査担当職員は、令和2年3月3日、請求人らに対し、法令に基づく調査結果の説明として、本件各調査結果説明メモ及び本件各収入金額内訳説明メモのみを説明した。
 請求人らは、原処分の総収入金額の合計額から税額算出までの計算方法の説明と取引先別の収入金額の合計額についての説明は受けたものの、取引先ごとの詳細な取引年月日、取引金額、決済方法、取引内容(以下「総収入金額の内訳」という。)及び消費税等の課税取引にならない金額については説明を受けていない。
 そのため、請求人らは、本件調査担当職員に対し、総収入金額の内訳を説明してほしいと要望したが、本件各収入金額内訳説明メモのほかは見せられないとして拒否された。
 以上のことからすれば、本件調査担当職員は、原処分理由を含む調査内容を明らかにしなかったものといえる。
 なお、原処分庁は、本件調査担当職員が令和元年9月25日に請求人らに対して「取引履歴表」を提示したと主張するが、かかる事実はない。
 また、請求人らは、法令に基づく調査結果の説明前の令和2年2月21日に行われた説明の際にも、本件調査担当職員に対し、総収入金額の内訳の説明をしてほしいとお願いしたが、本件調査担当職員は、説明義務は法定されていない旨述べるにとどまり、総収入金額の内訳を説明しなかった。
 以上によれば、本件調査は、本件事務運営指針の別冊の第2章の4の(2)に定められている「納税義務者の理解が得られるような十分な説明を行うとともに、納税者から質問等があった場合には、分かりやすく回答するよう努める」ことが行われていないものである。
ロ 期限後申告の勧奨
 通則法第74条の11第3項の規定及び本件事務運営指針の別冊の第2章の4の(3)の定めには、調査結果の説明から期限後申告書を提出するまでの期間に関する定めはないところ、本件調査担当職員は、本件調査の過程において、請求人らに対し、収入金額の検討及び真実の取引金額を明らかにするよう再三にわたり求めたが、請求人らは5か月もの間、何も回答しなかったことから、令和2年3月3日、法令に基づく調査結果の説明を行った上で、期限後申告の勧奨を行ったものである。
ロ 期限後申告の勧奨
 本件調査担当職員は、請求人の総収入金額の内訳を示さないまま、期限後申告書の提出期限を法令に基づく調査結果の説明が行われた日の3日後と定め、請求人らに提出するよう勧奨したが、提示された本件各収入金額内訳説明メモは、与えられた期間では見直すことができる内容ではなく、あまりにも性急な勧奨である。

(2) 争点2(事業所得の金額の計算上、推計の方法に合理性が認められるか否か。)について

原処分庁 請求人
以下のとおり、推計の方法には合理性が認められる。 以下のとおり、推計の方法には合理性が認められない。
イ 推計の基礎となる総収入金額 イ 推計の基礎となる総収入金額
(イ) 請求人らは、本件調査の過程において、本件売上入金口座に入金があるものは原則として本件事業に係る売上げである旨申述していることから、原処分庁は、入金額を基に総収入金額を把握した。
 また、本件帳簿書類の作成、保存がなく、請求人が主張するところの預り金として経理していた事実を確認することができなかったことから、請求人が受領した金額をもって総収入金額とした。
(イ) 原処分庁が算定した総収入金額には、総収入金額に当たらない自動車税等の預り金や本件事業に係る売上げではないものが含まれている。
 また、自動車の販売形態は、全て顧客からの依頼に基づく委託販売であるため、自動車販売に係る入金の全額が売上げとなるのではなく、うち委託販売手数料のみが売上げとなる。
(ロ) 請求人らは、総収入金額には請求人の売上げではないものが含まれている旨主張するが、本件調査担当職員は、本件売上入金口座への入金履歴を基に取引先を調査し、その取引先からの回答を基に請求人の売上げの金額を認定したものである。 (ロ) 平成26年分の所得税等の原処分に係る決定通知書の処分の理由の別表1に記載があるY10からの入金額3,283,553円は、自動車の販売代金ではないため、請求人の売上げではない。
 また、平成28年分の所得税等の原処分に係る決定通知書の処分の理由の別表1に記載があるY11からの入金額180,000円は、弟のY5個人が所有していたジェットスキーの台車の売却代金の入金であり、請求人の売上げではない。
ロ 推計に用いる同業者の類似性
 請求人は、自動車整備業のほか、自ら自動車を仕入れてインターネット等を通じて販売している事実が認められるから、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を類似同業者の抽出基準としたことには合理性がある。
ロ 推計に用いる同業者の類似性
 請求人の事業は自動車整備業のみで、自動車販売は附帯的に行っているだけであるから、原処分庁が、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を類似同業者の抽出基準としていることには合理性がない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件調査の終了の際の手続に原処分の取消事由となる違法又は不当があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 通則法は、第7章の2《国税の調査》において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解される。
       もっとも、通則法は、通則法第25条《決定》の規定による決定処分について、「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される。そして、これには、調査を全く欠く場合のみならず、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続(以下「証拠収集手続」という。)に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含むものと解され、他方で、証拠収集手続自体に影響を及ぼさない手続の違法は、上記の原則どおり、課税処分の取消事由となるものではないというべきである。
    • (ロ) 本件事務運営指針は、上記1の(2)のロの(イ)のとおり、その趣旨において、調査手続の実施に当たっての基本的な考えを示した上、その調査手続の趣旨及び目的に沿って、法令を遵守した適正な調査の遂行を図るために、その税務署長の裁量権の範囲を示したものであり、当審判所においても、相当であると認められる。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件調査担当職員は、令和2年3月3日、Y12税務署において、請求人らに対し、通則法第74条の11第2項の規定に基づく調査結果の内容の説明をすることを伝えた上で、本件各調査結果説明メモを提示し、本件帳簿書類の保存がされていなかったことから、請求人と業種、業態に類似性があり、事業規模が同規模程度等であると判断した同業者(以下「本件類似同業者」という。)の総収入金額に占める所得金額(ただし、青色申告者に対してのみ認められる青色事業専従者給与等の特典を控除する前の所得金額をいう。)の割合を算出してその平均値(以下「同業者平均所得率」という。)を用いて推計課税の方法により決定等をすべきと認めた所得金額を算出したことなどを説明した。
       なお、この際、請求人らは、上記説明のあった収入金額、所得率、所得金額及び税額等を、持参した表に書き写した。
    • (ロ) 本件調査担当職員は、調査結果の内容の説明後、通則法第74条の11第3項の規定に基づく期限後申告の勧奨を行い、期限後申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した「修正申告等について」と題する書面を請求人に交付し、請求人は、その控えに署名押印した。
       また、本件調査担当職員は、請求人らの求めに応じ、本件各収入金額内訳説明メモを提示して、その内容を説明した。
    • (ハ) 請求人らは、令和2年3月5日、本件各収入金額内訳説明メモに記載されている各取引先の取引ごとの総収入金額の内訳が示されなければ期限後申告の勧奨に応じない旨申し述べた。
  • ハ 検討
    • (イ) 上記ロの認定事実によれば、本件調査担当職員は、令和2年3月3日の時点において把握していた資料に基づき、本件各調査結果説明メモ及び本件各収入金額内訳説明メモを作成した上で、請求人らに対し、これらを示しながら、当該説明メモの各欄に記載した金額の基となった調査内容の説明及びその計算方法などを説明していると認められるところ、本件調査担当職員は、通則法第74条の11第2項に規定する「調査結果の内容」の説明を、本件事務運営指針の趣旨及び目的に沿って行っていると認められる。
       この点、請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のイのとおり、令和元年9月25日に本件調査担当職員が示したとする「取引履歴表」は提示されておらず、本件調査担当職員から、総収入金額の内訳が説明されることはなかったところ、このことは、通則法第74条の11第2項の規定に反し、また、本件事務運営指針の別冊の第2章の4の(2)に定められている「納税義務者の理解が得られるような十分な説明」や「納税義務者からの質問には分かりやすく回答するよう努める」ことも行われていないものであり、原処分を取り消すべき違法、不当に当たる旨主張する。
       しかしながら、通則法第74条の11第2項に規定する「調査結果の内容」の説明が、本件事務運営指針の趣旨及び目的に沿って行われたことは、上記のとおりである。
       また、上記イの(イ)のとおり、証拠収集手続に重大な違法があった場合には、課税処分の取消事由になるものと解されるところ、仮に調査結果の内容の説明に不十分な点が認められたとしても、そのことは、調査終了の際の手続であって、既に行われた証拠収集手続ではないから、原処分を取り消すべき事由には当たらない。
    • (ロ) 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のロのとおり、原処分庁が総収入金額の内訳を示さないまま期限後申告書の提出期限を、法令に基づく調査結果の説明が行われた日の3日後と定め、請求人らに提出するよう勧奨したことについて、当該説明の際に提示された本件各収入金額内訳説明メモの内容は、与えられた期間では見直すことができるようなものではないから、上記勧奨は、あまりにも性急で、かつ、通則法第74条の11第3項の規定及び本件事務運営指針の定めに反したもので、違法又は不当である旨主張する。
       しかしながら、通則法第74条の11は、請求人の主張するような期限に関する事項について規定していない上、期限後申告の勧奨は、本件事務運営指針の趣旨及び目的に沿って、上記ロの(ロ)のとおり適法かつ正当に行われている。
    • (ハ) 以上のとおり、本件調査の終了の際の手続は、原処分の取消事由となる違法又は不当があるものとは認められないから、請求人の主張にはいずれも理由がない。

(2) 争点2(事業所得の金額の計算上、推計の方法に合理性が認められるか否か。)について

  • イ 推計の必要性について
     請求人は、事業所得の金額を推計の方法により算定することについて争わない。
     そして、当審判所の調査の結果、請求人は、上記1の(3)のハ及びニのとおり、本件調査の際、本件調査担当職員の帳簿書類の提示要求に対し、帳簿書類の作成、保存はしていない旨申述し、本件調査担当職員にその提示をしなかったと認められる。そのため、本件調査担当職員は、本件各年分の請求人の事業所得の金額を資料により直接確認することができなかったことから、原処分時の推計の必要性はあったと認められる。
     また、請求人は、本審査請求において、当審判所に対しても、本件各年分の事業所得の金額を取引実績額に基づく損益計算(実額計算)の方法により算定するに足る帳簿書類等の資料を提出しないことから、当審判所においても推計の方法により本件各年分の事業所得の金額を算定せざるを得ない。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 原処分庁は、別表3の各年分の「原処分庁主張額」欄のとおり、請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額を算定した。
    • (ロ) 原処分庁は、上記(イ)のとおり算定した総収入金額から、本件類似同業者を抽出して同業者平均所得率を求め、これを上記(イ)の総収入金額に乗じて本件各年分の事業所得の金額を算定した。
    • (ハ) 原処分庁は、本件類似同業者について、本件各年分において、1自動車小売、自動車卸売、自動車整備及びその他の車両修理業を営む個人で兼業しておらず、青色事業専従者を有していないこと、2原処分庁の管轄区域内に納税地を有すること、3青色申告書により所得税の確定申告書を提出していること、4年間を通じて事業を営む者であり、かつ、災害等により経営状態が異常であると認められないこと、5本件各年分の事業所得に係る総収入金額が、請求人の当該金額の0.5倍以上2倍以下の範囲にあること(以下、この基準を「倍半基準」という。)、6複数の事業所を有していないこと、7不服申立て又は訴訟が係属中でないことの各基準の全てを満たす者を機械的に抽出した。
  • ハ 検討
    • (イ) 推計の方法の合理性について
       原処分庁は、上記ロの(ロ)のとおり、本件各年分の総収入金額に本件類似同業者の同業者平均所得率を乗じて、請求人の本件各年分の事業所得の金額を計算している。
       業種、業態及び事業規模に類似性のある同業者にあっては、特段の事情がない限り、同程度の総収入金額に対し同程度の所得を得るのが通例であり、また、同業者間に通常存する程度の営業条件の差異は、同業者の比率から平均値を算出する過程において捨象されることからすれば、上記ロの(ハ)の基準により抽出された本件類似同業者の同業者平均所得率をもって所得金額を推計する方法は、本件類似同業者に類似性が認められ、かつ、その基礎数値等が正確なものである限り、合理性を有すると認められる。
    • (ロ) 本件各年分の総収入金額の正確性について
       原処分庁は、上記ロの(イ)のとおり、請求人の取引先等に対する調査により本件各年分の総収入金額を算定しているところ、請求人の上記3の(2)の「請求人」欄のイの主張について、当審判所が調査した結果は以下のとおりである。
      • A 自動車税等の預り金について
         請求人は、原処分庁が算定した総収入金額には、含まれるべきでない自動車税等の預り金が含まれている旨主張する。
         この点、当審判所の調査によると、原処分庁が算定した各年分の総収入金額には、別表6ないし別表10の「原処分庁主張額」欄の「左記の内課税取引とならないもの」欄の「合計」欄の金額に相当する金額(平成26年分1,063,540円、平成27年分149,860円、平成28年分287,750円、平成29年分394,790円及び平成30年分248,750円)が預り金として含まれていることが認められた。
         したがって、当該預り金の金額は、各年分の総収入金額から差し引くべきと認められる。
      • B 委託販売手数料について
         請求人は、同人の自動車の販売形態について、顧客からの依頼を受けて自動車を売買する委託販売であるから、委託販売手数料のみが請求人の売上げになる旨主張する。
         しかしながら、当審判所の調査によっても、請求人が、自動車を販売、購入した都度、販売先や購入先から委託販売手数料を受け取る契約をしていた事実は認められず、また、販売先や購入先が委託販売手数料を支払っていた事実も、請求人がそれを受け取っていた事実も認められず、ほかに請求人の販売形態が委託販売であった事実を認めるに足りる証拠もない。
         また、請求人は、当審判所に対し、請求人と取引があったと認められる者が作成した「請求人に自動車の販売を依頼し、請求人から代行手数料を差し引いた代金を受け取った」旨の申述書を提出したところ、当該申述書の記載内容はほかにそのことを裏付ける証拠もないことから、その記載内容のみをもって、請求人が委託販売の販売形態で自動車の販売を行っていたとまで認めることはできない。
         したがって、請求人の主張を採用することはできない。
      • C Y10からの入金額3,283,553円について(平成26年分)
         請求人は、Y10からの入金額3,283,553円は、自動車の販売代金ではないから、請求人の売上げには当たらない旨主張する。
         この点、当審判所の調査によると、クレジット会社であるY13社とY10との間には、平成26年3月15日付で、請求人からの自動車購入に係るオートクレジット契約(契約金額3,000,000円)が結ばれ、1同年3月20日に、Y13社から上記1の(3)のロの(ロ)の預金口座に、当該契約金額3,000,000円に販促費21,600円を加算した3,021,600円から振込手数料525円を差し引いた3,021,075円が振り込まれている事実が認められる。
         一方、当該契約は、その後、Y10の都合による解約の申出がされ、2同年6月23日、上記1の(3)のロの(ロ)の預金口座にY10から3,283,553円(1の3,021,600円に解約手数料60,000円及び誤返金額201,953円を加えた金額)が振り込まれ、3同日付で請求人がY13社に返金している事実が認められる。
         以上によれば、上記2の3,283,553円は、オートクレジット契約の解約に係る入金であると認められることから、原処分庁が上記1の(3)のロの(ロ)の預金口座への入金を基に請求人の売上げと認定したY10からの入金額3,283,553円は、請求人の売上げとは認められない。
         なお、原処分庁は、上記1のY13社からの入金額3,021,600円についても請求人の売上げと認定していたが、これもオートクレジット契約の申込みに係る入金であるため、請求人の売上げとは認められない。
         その結果、Y10からの入金額3,283,553円及びY13社からの入金額3,021,600円の合計額6,305,153円は、請求人の売上げとは認められないこととなる。
      • D Y11からの入金額180,000円について(平成28年分)
         請求人は、Y11からの入金額180,000円は、請求人の実弟であるY5個人が所有していたジェットスキーの台車を売却した代金であるから、請求人の売上げには当たらない旨主張する。
         この点、当審判所の調査によると、当該ジェットスキーの台車の売却先であるY11において作成された伝票類にはY5個人の名義が記載され、また、Y11の店長であるY14は、請求人と面識はなく、当該ジェットスキーの台車の取引の相手方はY5個人である旨答述しており、この点、請求人の主張内容と符合している。
         併せて、Y14は、事業者との取引の際はおよそ売主側から請求書を提出してもらうのが通例であるところ、上記取引は、顔見知りのY5との個人取引であったため、Y14が店舗備付けの一般顧客用の白紙の請求書に代筆して作成し、押印は省略した旨答述しており、それを裏付ける証拠も認められる。
         以上の事実に、上記取引のほかは、請求人や請求人の屋号であるY3及びY5との取引は認められないことを照らし合わせると、Y11からの入金額180,000円は、Y11が顔見知りの間柄であるY5個人と行った単発取引であったと推認され、当審判所の調査の結果によっても、ほかに請求人の主張と異なる事実を認めるに足りる証拠はない。
         以上によれば、Y11からの入金額180,000円は、Y5所有のジェットスキーの台車の売却に係るものと認められる。
         したがって、原処分庁が上記1の(3)のロの(ハ)の預金口座への入金を基に請求人の売上げと認定したY11からの入金額180,000円は、請求人の売上げとは認められない。
      • E 上記AないしDのとおり、本件各年分の総収入金額に預り金(平成26年分1,063,540円、平成27年分149,860円、平成28年分287,750円、平成29年分394,790円及び平成30年分248,750円)及び請求人の売上げとは認められない金額(平成26年分6,305,153円及び平成28年分180,000円)が含まれていたことが認められたため、以上に基づき本件各年分の総収入金額を算定すると、別表3の各年分の「審判所の認定額」欄の「合計」欄のとおりとなる。
    • (ハ) 選択した推計方法の合理性について
       原処分庁が採用した選定基準は、上記ロの(ロ)及び(ハ)のとおり、業種及び業態の同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性等からして、請求人との類似性を判別する要件として合理性を有するものであり、また、その選定過程も適切なものである。そして、同業者平均所得率の算定に使用した資料は、いずれも帳簿書類等が整っている青色申告者の決算書であって、その内容も税務署長との間で争いのないものであるから、その信頼性ないし正確性は高いものであり、さらに、本件類似同業者の件数も、各同業者の個別性を平均化するに足るものということができるため、本件類似同業者と請求人との間には類似性があり、原処分庁の本件類似同業者の抽出基準及び抽出方法は、一応の合理性を有するものであると認められる。
    • (ニ) 本件類似同業者の抽出及び同業者平均所得率の算定について
       当審判所の調査において上記ロの(ハ)の1ないし7の抽出基準により選定されるべき類似同業者及び同業者平均所得率を検討した結果は、以下のとおりである。
      • A 平成26年分については、上記(ロ)のEのとおり、同年分の総収入金額は7,368,693円(預り金1,063,540円と売上げと認められない金額6,305,153円の合計額)減額となるため、当該総収入金額に基づく倍半基準により類似同業者の抽出を行うと、別表4−1の「類似同業者」欄のGからQが請求人の類似同業者に当たると認められる。
      • B 平成27年分については、上記(ロ)のEのとおり、同年分の総収入金額は149,860円減額となるものの、当該総収入金額に基づく倍半基準によっても、抽出していた別表4−2の類似同業者に異動は認められなかった。
      • C 平成28年分については、上記(ロ)のEのとおり、同年分の総収入金額は467,750円(預り金287,750円と売上げと認められない金額180,000円の合計額)減額となるものの、当該総収入金額に基づく倍半基準によっても、抽出していた別表4−3の類似同業者に異動は認められなかった。なお、「類似同業者」欄のG、H、J、N、Q及びfについては、同表「原処分庁主張額」欄の「3特前所得率」欄の計算に誤りがあると認められた。
      • D 平成29年分については、上記(ロ)のEのとおり、同年分の総収入金額は394,790円減額となるため、当該総収入金額に基づく倍半基準により類似同業者の抽出を行うと、別表4−4の「類似同業者」欄のGからrが請求人の類似同業者に当たると認められる。なお、同欄のeは、青色事業専従者を有する者であると認められ、また、G、K、L及びhについては、同表「原処分庁主張額」欄の「3特前所得率」欄の計算に誤りがあると認められた。
      • E 平成30年分については、上記(ロ)のEのとおり、同年分の総収入金額は248,750円減額となるものの、当該総収入金額に基づく倍半基準によっても、抽出していた別表4−5の類似同業者に異動は認められなかった。なお、同表「類似同業者」欄のK及びZの「原処分庁主張額」欄の「3特前所得率」欄の計算に誤りがあると認められた。
      • F 上記AないしEによれば、本件類似同業者(平成26年分が6件、平成27年分が17件、平成28年分が20件、平成29年分が23件、平成30年分が17件)以外に同業者として抽出することが適当と認められる者が、平成26年分に3件及び平成29年分に1件認められ、また、本件類似同業者のうち同業者として抽出することが不適当と認められる者が、平成29年分に1件認められた。さらに、平成28年分ないし平成30年分にそれぞれ「原処分庁主張額」欄の「3特前所得率」欄の計算に誤りがあると認められたことから、これを基に算定した別表4の各年分の「審判所の認定額」欄の「同業者平均所得率」欄の数値をもって、本件各年分の同業者平均所得率とするのが相当である。
         なお、当審判所において上記算定をし直した後の件数は、別表4のとおり、平成26年分が9件、平成27年分が17件、平成28年分が20件、平成29年分が23件及び平成30年分が17件であり、同業者の個別性を平均化するに不足はない。
    • (ホ) 事業所得の金額の算定について
       以上を基に請求人の本件各年分の事業所得の金額を算定した結果は、次のとおりである。
      • A 本件各年分の同業者平均所得率
         当審判所が選定した類似同業者について本件各年分の同業者平均所得率を算定すると、それぞれ別表4の本件各年分の「同業者平均所得率」欄のとおり、平成26年分が4.75%、平成27年分が7.96%、平成28年分が6.26%、平成29年分が6.66%及び平成30年分が6.32%となる。
      • B 本件各年分の事業所得の金額
         請求人の本件各年分の事業所得の金額は、上記(ロ)のEの本件各年分の総収入金額に上記Aの同業者平均所得率を乗じ計算すると、別表5の各年分の「審判所認定額」欄の「事業所得の金額」欄のとおり、平成26年分が〇〇〇〇円、平成27年分が〇〇〇〇円、平成28年分が〇〇〇〇円、平成29年分が〇〇〇〇円及び平成30年分が〇〇〇〇円となる。
  • ニ 請求人の主張について
     請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のロのとおり、請求人の事業は自動車整備業のみで、自動車販売は附帯的に行っているだけであるから、原処分庁が、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を類似同業者の抽出基準としていることには合理性がない旨主張する。
     しかしながら、上記ハの(ロ)のBのとおり、請求人は、自動車整備業だけでなく自動車の販売も行っていると認められる以上、原処分庁が、上記ロの(ハ)の抽出基準において、自動車整備業及び自動車販売業を営む者を請求人の類似同業者としたことは相当である。
     また、本件類似同業者の抽出基準及び抽出方法に一応の合理性があることは、上記ハの(ハ)のとおりである。
     したがって、請求人の主張は理由がない。

(3) 本件所得税等各決定処分の適法性について

当審判所で認定した請求人の本件各年分の事業所得の金額は、別表5の各年分の「審判所認定額」欄の「事業所得の金額」欄のとおりとなり、総所得金額もこれと同額になる。そして、当該総所得金額に基づき請求人の本件各年分の請求人の納付すべき税額を算出すると、同表の各年分の「審判所認定額」欄の「納付すべき税額」欄のとおり、平成26年分〇〇〇〇円、平成27年分〇〇〇〇円、平成28年分〇〇〇〇円、平成29年分〇〇〇〇円及び平成30年分〇〇〇〇円となり、いずれも原処分額(平成26年分〇〇〇〇円、平成27年分〇〇〇〇円、平成28年分〇〇〇〇円、平成29年分〇〇〇〇円及び平成30年分〇〇〇〇円)を下回るから、平成26年分ないし平成30年分の各決定処分はいずれもその一部を別紙1ないし別紙5の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 なお、本件各年分の各決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は見当たらない。

(4) 本件所得税等各賦課決定処分の適法性について

上記(3)のとおり、本件各年分の各決定処分の一部が取り消されることに伴い無申告加算税の基礎となる税額は、それぞれ、平成26年分〇〇〇〇円、平成28年分〇〇〇〇円、平成29年分〇〇〇〇円及び平成30年分〇〇〇〇円となるところ、当該決定処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該決定処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、これに基づき各年分の所得税等に係る無申告加算税の額を計算すると平成26年分〇〇〇〇円、平成28年分〇〇〇〇円、平成29年分〇〇〇〇円及び平成30年分〇〇〇〇円となり、平成26年分、平成28年分及び平成29年分については、いずれも原処分額と同額になる。
 したがって、同条第1項の規定に基づきされた平成26年分、平成28年分及び平成29年分の無申告加算税の各賦課決定処分は適法であり、また、平成30年分については、原処分額(〇〇〇〇円)を下回るから、当該年分の無申告加算税の賦課決定処分はその一部を別紙5の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5) 本件消費税等各決定処分の適法性について

当審判所で認定した請求人の本件各課税期間に係る基準期間における課税売上高は、いずれも1,000万円を超えており、請求人は、本件各課税期間において、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項の規定の適用を受けない。
 また、請求人は、上記1の(3)のハのとおり、本件各課税期間において、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の保存がないことから、同条第1項の規定の適用はない。

  • イ 平成26年課税期間及び平成28年課税期間の各決定処分について
     請求人の平成26年課税期間及び平成28年課税期間の課税売上高は、別表6及び別表8の「審判所認定額」欄の「課税取引金額」欄の「合計」欄のとおりとなり、また、課税標準額は、別表11の各課税期間の「審判所認定額」欄の「課税標準額」欄のとおりとなるところ、これらに基づき計算した平成26年課税期間及び平成28年課税期間の消費税等の額は、同表の各年分の「審判所認定額」欄の「納付すべき消費税等の合計額」欄のとおり、〇〇〇〇円及び〇〇〇〇円となり、いずれも原処分額(平成26年課税期間〇〇〇〇円及び平成28年課税期間〇〇〇〇円)を下回るから、平成26年課税期間及び平成28年課税期間の各決定処分はいずれもその一部を別紙6及び別紙7の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
     なお、平成26年課税期間及び平成28年課税期間の各決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は見当たらない。
  • ロ 平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の各決定処分について
     請求人の平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の課税売上高は、別表7、別表9及び別表10の「審判所認定額」欄の「課税取引金額」欄の「合計」欄のとおりとなり、また、課税標準額は、別表11の各課税期間の「審判所認定額」欄の「課税標準額」欄のとおりとなるところ、これらに基づき計算した平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の消費税等の額は、いずれも原処分額と同額となる。
     そして、平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の各決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の各決定処分はいずれも適法である。

(6) 本件消費税等各賦課決定処分の適法性について

  • イ 平成26年課税期間及び平成28年課税期間の各賦課決定処分について
     上記(5)のイのとおり、平成26年課税期間及び平成28年課税期間の各決定処分の一部が取り消されることに伴い、平成26年課税期間及び平成28年課税期間の無申告加算税の基礎となる税額は、それぞれ〇〇〇〇円及び〇〇〇〇円となるところ、当該決定処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該決定処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づき平成26年課税期間及び平成28年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の額を計算すると〇〇〇〇円及び〇〇〇〇円となり、いずれも原処分額(平成26年課税期間〇〇〇〇円及び平成28年課税期間〇〇〇〇円)を下回るから、平成26年課税期間及び平成28年課税期間の無申告加算税の賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙6及び別紙7の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ロ 平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の各賦課決定処分について
     上記(5)のロのとおり、平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の各決定処分はいずれも適法であり、当該各課税期間に係る期限内申告書の提出がなかったことについて、いずれも通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4及び第9条の9第1項の規定に基づいて無申告加算税の額を計算すると、いずれも原処分額と同額となることから、平成27年課税期間、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の無申告加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

(7) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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