(令和3年6月25日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき相続税の修正申告をしたところ、原処分庁が、相続財産の一部を申告していなかったことに隠蔽の行為が認められるとして重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該隠蔽の行為はないとして、当該処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、F(以下「本件被相続人」という。)の長男である。
  • ロ 本件被相続人は、G農業協同組合(以下「本件農協」という。)との間で、本件被相続人を共済契約者等とする別表1に記載の各建物更生共済契約(以下、別表1に記載の各建物更生共済契約を併せて「本件各共済契約」といい、本件各共済契約に関する権利を「本件各権利」という。)を締結していた。
  • ハ 本件被相続人は、平成29年6月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。本件相続に係る相続人は、請求人、本件被相続人の長女であるH、同二男であるJ、同三男であるK及び同四男であるLの5名である。
     請求人が本件相続により取得した財産には、本件各権利及びd市e町○−○の山林(面積:396u。以下「本件山林」という。)が含まれていた。
  • ニ 請求人は、平成29年9月27日、本件農協から、本件各共済契約に係る「共済契約解約返戻金相当額等証明証」(本件相続開始日において本件各共済契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額などが記載されたもの。以下「本件証明書」という。)を取得した。
  • ホ 請求人は、平成29年11月28日、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告書の作成をM税理士法人に所属するN税理士(以下「本件税理士」という。)に依頼し、本件税理士は、当該依頼を受けて、請求人の自宅において、請求人に対し、本件被相続人の相続財産の確認のための聞き取りを行った。
     その際、本件税理士は、請求人に対し「損害保険はどうなっていますか。」と質問し、請求人は、当該質問に対して「共済は掛け捨てに移行している。」と回答した。
  • ヘ 請求人は、平成29年11月28日、本件税理士に対し、本件農協の○○支店(以下「本件農協支店」という。)の本件被相続人名義の貯金通帳21通を含む本件相続税の関係書類を預けた。当該関係書類には、本件証明書は含まれていなかった。
  • ト 請求人は、平成29年12月初旬、請求人が自宅で保管していた本件相続税の関係書類をM税理士法人の事務所に届けた。当該関係書類にも、本件証明書は含まれていなかった。
  • チ 請求人は、平成30年3月9日、本件農協に対し、別表1の順号1及び2、4ないし16の各共済契約について、共済契約者等の名義を本件被相続人から請求人に変更する手続を行った。
  • リ 請求人は、平成30年3月12日、本件農協に対し、別表1の順号1及び2の各共済契約に係る満期共済金の支払の請求をし、当該満期共済金は、同日、本件農協支店の請求人名義の普通貯金口座に振り込まれた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、法定申告期限内に、別表2の「期限内申告」欄のとおり記載した本件相続税の申告書を原処分庁に提出して期限内申告をした(以下、当該申告を「本件申告」といい、本件申告に係る申告書を「本件申告書」という。)。本件申告書には、本件各権利及び本件山林は記載されていなかった。
  • ロ 請求人は、令和2年6月4日、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、本件各権利及び本件山林を本件相続税の課税価格に算入して、別表2の「修正申告」欄のとおり記載した本件相続税の修正申告書を原処分庁に提出し、修正申告をした(以下、当該修正申告を「本件修正申告」という。)。
  • ハ 原処分庁は、令和2年6月29日付で、請求人は、本件各権利が本件被相続人の財産であることを知りながら、これを隠蔽し、相続財産として申告していなかったと認められるとして、請求人に対し、別表2の「賦課決定処分」欄のとおり本件相続税に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
  • ニ 請求人は、令和2年7月15日、本件賦課決定処分に不服があるとして、再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、令和2年10月12日付で、棄却の再調査決定をした。
  • ホ 請求人は、令和2年11月9日、再調査決定を経た後の本件賦課決定処分に不服があるとして、審査請求をした。

2 争点

請求人に、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
次のとおり、請求人には、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為があった。 次のとおり、請求人には、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為はない。
(1) 請求人が、解約返戻金相当額の記載のある本件証明書を取得したこと、本件各共済契約の一部について共済契約者等の名義を請求人に変更する手続を行ったこと、本件各共済契約のうち満期となった契約について満期共済金の支払請求手続を行ったことなどからすれば、請求人は、本件相続開始日時点における本件各権利の存在とその財産的価値を認識していたと認められ、本件各権利を本件相続税の課税財産として申告する必要があると認識していたと認められる。そして、請求人は、本件各権利を本件相続税の課税財産として申告する必要があると認識していたにもかかわらず、本件各権利を本件申告において申告していなかったのであるから、当初から相続財産を過少に申告することを意図していたものと認められる。 (1) 本件各権利が申告漏れとなったのは、請求人は本件証明書を含む全ての関係書類を保管箱ごと本件税理士に渡したと認識していたものの、本件証明書の紛失により本件証明書が本件税理士に渡らなかったこと、また、それに本件税理士の見落としが重なったことが原因であり、請求人に過少申告の意図があったものではない。
(2) 請求人は、上記(1)のとおり、本件各権利を本件相続税の課税財産として申告する必要があると認識しており、本件税理士から相続税額の計算案や説明を複数回受けていることからすると、請求人が本件税理士に本件各権利の話を一切行わないことは著しく不自然であり、本件税理士が集計した相続財産の資料を確認し、本件各権利が申告から漏れていることを認識できないはずがないのだから、請求人が本件税理士が集計した財産に本件各権利が含まれていないことに気付かなかったとは認められない。加えて、請求人は、本件税理士に対し、本件各共済契約は掛け捨て型のものであると故意に虚偽の説明をし、本件税理士に本件相続税の課税財産として申告すべき損害保険金はないとの誤解を生じさせ、本件税理士に本件証明書を提示ないしは本件各権利があることを説明すれば、上記誤解は解けるにもかかわらず、本件証明書を取得した以降、本件申告書を提出するまでの間、本件税理士から相続税額の計算案や説明を複数回受けている際に、本件各権利の存在を本件税理士に伝えていないのであるから、請求人には、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったといえる。 (2) 本件税理士からの本件相続税に関する説明や請求人が確認した内容は、各相続人の手取り分配額及び納税額の見込み、不動産の評価が主なもので、各財産細目の内容説明等は行われておらず、請求人は、本件各権利が本件税理士の集計した相続財産に含まれていないことに気付かなかった。
 そして、請求人が本件税理士に対して「共済は掛け捨てに移行している。」と回答したのは、本件税理士による「損害保険はどうなっていますか。」との質問を、損害保険の状況を問われたものと請求人が誤認したことによるものであって、現に掛け捨て型の共済契約に切り替えたものもあるのであるから、請求人が事実と異なる回答をしたものではない。
 また、請求人が本件各共済契約について本件税理士に説明しなかったのは、本件証明書を含めた全ての関係書類が本件税理士に提出されているものと認識していたこと、及び、本件税理士から具体的に本件各共済契約に関する資料を求められなかったことによるものであり、隠蔽を意図して故意に提示しなかったものではない。
 さらに、請求人は、本件税理士に、本件各共済契約の保険料の支払が多数記載された本件農協の通帳を引き渡していることから、請求人に本件各共済契約の存在を隠蔽する意図がなかったことは明らかである。
(3) 上記のとおり、請求人は、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められる。 (3) 上記のとおり、請求人に当初から相続財産を過少に申告する意図はなく、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものではない。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

通則法第68条第1項に規定する重加算税の制度は、納税者が、過少申告をするについて隠蔽、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠蔽、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである(最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決・民集49巻4号1193頁参照)。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件税理士は、上記1の(3)のホのとおり請求人による回答を受けて、本件被相続人の相続財産中に申告すべき損害保険契約に関する権利はないものと判断し、それ以後、請求人に対して申告すべき損害保険契約に関する権利の有無について尋ねることはなかった。
  • ロ 本件被相続人は、賃貸不動産ごとに本件農協支店に各普通貯金口座を開設し、当該各普通貯金口座において当該各賃貸不動産に関する借入金の元利金や電気料金の支払をそれぞれ行っており、建物更生共済契約に係る共済掛金や損害保険契約に係る保険料の支払も、それらと同様に、当該各普通貯金口座において行っていた。
  • ハ 本件農協支店に開設された本件被相続人名義の普通貯金口座(口座番号○○○○)の平成24年4月23日から同年8月24日までの取引においては、同年7月19日に建物更生共済契約に係る共済掛金の支払が2回にわたり合計835,381円ある一方、平成25年4月1日から同年8月30日までの取引においては、建物更生共済契約に係る共済掛金の支払はなく、同年6月14日にP社の個人用火災総合保険契約に係る保険料149,160円及び○○○○の建物共済(火災共済)契約に係る共済掛金16,920円の各支払がある。
     そして、上記の個人用火災総合保険契約及び建物共済契約には、満期返戻金の支払や満期共済金の支払はなく、当該個人用火災総合保険契約に係る本件被相続人名義の申込書には、加入済みの他の保険契約として、○○○○の建物共済契約のみが記載されている。
  • ニ 本件農協支店に開設された本件被相続人名義の普通貯金口座(口座番号○○○○)の平成24年12月27日から平成25年6月17日までの取引においては、同年1月23日に建物更生共済契約に係る共済掛金201,000円の支払が、同年6月14日にP社に対する保険料96,500円及び○○○○の建物共済契約に係る共済掛金42,400円の各支払がある。
  • ホ 請求人が上記1の(3)のヘにより本件税理士に預けた本件農協支店の本件被相続人名義の各貯金通帳の中には、摘要欄に「建更」と表示された出金が記録され、本件各共済契約に係る共済掛金の支払が確認できるものもあった。

(3) 検討

  • イ はじめに
    • (イ) 本件各権利が本件申告において申告漏れとなった原因としては、上記1の(3)のホ及び上記(2)のイのとおり、請求人が本件税理士からの「損害保険はどうなっていますか。」との質問に対して「共済は掛け捨てに移行している。」との回答をし、本件税理士が、当該回答を受けて、本件被相続人の相続財産中に申告すべき損害保険契約に関する権利はないものと誤解したこと、その後も、上記1の(3)のヘ及びトのとおり、請求人は本件税理士に本件証明書を提示することも、本件各権利があることを説明することもしなかったため、本件税理士が上記の誤解をしたまま、本件申告書を作成したことによるものと考えられる。
    • (ロ) 上記の点について、請求人は、上記3の「請求人」欄の(2)のとおり、請求人が、本件税理士による上記(イ)の質問を、損害保険の状況を問われたものと誤認したため、上記(イ)のとおり回答をしたもので、その後も本件各共済契約について説明しなかったのは、本件証明書を含めた全ての関係書類が本件税理士に提出されているものと認識していたことによるものである旨主張し、これに対して、原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)及び(3)のとおり、請求人は本件各権利を本件相続税の課税財産として申告する必要があると認識しているにもかかわらず、請求人が本件税理士に対して上記(イ)の回答をしたのは、故意による虚偽の説明をしたものであり、その後も本件各権利の存在を本件税理士に伝えていないのは、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たり、上記(1)のとおり、重加算税の賦課要件が満たされる旨主張する。
    • (ハ) そうすると、請求人による上記(イ)の回答が、請求人が本件税理士に対して故意に虚偽の説明をしたものと認められるか否かは、請求人に通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったか否かを判断するに当たって重要な事実になると考えられることから、以下、この点について検討する。
  • ロ 請求人による回答が故意に虚偽の説明をしたものと認められるか否かについて
    • (イ) 本件税理士による上記イの(イ)の質問は、上記1の(3)のホのとおり、本件税理士が本件被相続人の相続財産の確認をするための聞き取りでなされた質問であり、本件税理士としては、本件被相続人の相続財産の中に申告すべき損害保険契約に関する権利があるかどうか、すなわち本件被相続人が本件相続開始日において満期返戻金や満期共済金の支払のある損害保険契約を締結していたかどうかを尋ねる趣旨で行ったものであると認められる。
       もっとも、本件税理士による上記の質問の文言のみからは、被質問者である請求人に上記趣旨であることが明示されているとは認められず、そのような趣旨を被質問者に明示せずに損害保険についてどうなっているかと質問した場合には、被質問者において、損害保険の状況一般についての質問であると誤解する可能性も否定できないことから、請求人が主張するように、請求人において、本件税理士による上記の質問の趣旨を取り違えて、損害保険の状況一般についての質問であると誤解していた可能性がある。
    • (ロ) そして、上記(2)のロのとおり、共済掛金や保険料の支払は賃貸不動産ごとに開設された本件農協支店の本件被相続人名義の各普通貯金口座から行われていたところ、同ハのとおり、建物更生共済契約に係る共済掛金が支払われていた普通貯金口座においては、翌年の同一期間において建物更生共済契約に係る共済掛金の支払がなく、建物更生共済契約以外の保険料や共済掛金が支払われていること、同ハの個人用火災総合保険契約に係る本件被相続人名義の申込書において、加入済みの他の保険契約として○○○○の建物共済契約のみが記載されていることからすれば、当該口座に係る賃貸不動産の損害保険は、建物更生共済契約から掛け捨ての損害保険へと移行されたものといえる。
       また、上記(2)のニのとおり、平成25年1月23日に建物更生共済契約に係る共済掛金が支払われていた普通貯金口座において、同年6月14日には建物更生共済契約以外の保険料や共済掛金が支払われていることからすると、当該口座に係る賃貸不動産についても、建物更生共済契約から掛け捨ての損害保険へと移行された可能性がある。
       上記のことからすれば、「共済は掛け捨てに移行している。」との請求人による回答は、必ずしも虚偽であるとまではいえない。
    • (ハ) さらに、上記(2)のホのとおり、請求人が本件申告書の作成のために本件税理士に預けた本件農協支店の本件被相続人名義の各普通貯金通帳の中には、摘要欄に「建更」と表示された出金が記録され、本件各共済契約に係る共済掛金の支払が確認できるものもあったことに照らすと、本件税理士が上記各普通貯金通帳を子細に確認すれば、本件各権利の存在に気付き、請求人にその事実照会等を行うことも考えられたことに鑑みると、請求人が本件税理士に対して、本件各共済契約、ひいては、本件各権利を秘匿しようという意図があったとまで認めることはできない。
    • (ニ) そうすると、請求人が、本件税理士からの「損害保険はどうなっていますか。」との質問を受けて、損害保険の状況一般についての質問であると誤解し、上記(ロ)の各賃貸物件の損害保険の状況を念頭において、「共済は掛け捨てに移行している。」との回答をした可能性を否定できず、請求人が本件税理士に対して故意に虚偽の説明をしたものと認めることはできない。
  • ハ 小括
     以上のとおり、請求人による上記1の(3)のホの回答については、請求人が本件税理士に対して故意に虚偽の説明をしたものと認めることはできない。
     そうすると、請求人が本件税理士に当該回答をした事実をもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできず、他にこれに該当すべき事情も見当たらない。
     したがって、請求人が本件申告において本件各権利を申告しなかったことについて、請求人に、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったということはできない。

(4) 原処分庁の主張について

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、請求人は、本件各権利について財産的価値を認識していたと認められ、本件各権利を本件相続税の課税財産として申告する必要があると認識していたと認められるところ、本件申告に当たり、請求人は本件税理士から相続税額等の説明を複数回受けていることからすると、本件税理士が集計した財産に本件各権利が含まれていないことに気付かなかったとは認められず、請求人は、本件税理士に対し、本件各共済契約は掛け捨て型のものであると説明し、本件税理士に本件相続税の課税財産として申告すべき損害保険金はないとの誤解を生じさせた上、本件税理士に本件各権利の存在を一切告げなかったことは著しく不自然であることなどが、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たる旨主張する。
 しかしながら、上記(3)のハのとおり、請求人が本件税理士に上記1の(3)のホの回答をした事実をもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない。また、上記(1)のとおり、重加算税は、納税者に、隠蔽、仮装と評価すべき行為があることを賦課要件としていることに鑑みると、上記(2)のイのとおり、請求人による上記の回答以後、本件税理士が請求人に対して申告すべき損害保険契約に関する権利の有無について尋ねることはなかったと認められる本件において、請求人が本件税理士に本件各権利の存在を告げなかったことをもって、請求人の過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たると評価することはできない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(5) 本件賦課決定処分の適法性について

以上のとおり、請求人が本件申告において本件各権利を申告しなかったことについて、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為があったとは認められないから同項の重加算税の賦課要件を満たさない。他方、本件修正申告に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、本件修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、当審判所において、請求人が納付すべき過少申告加算税の額を計算すると〇〇〇〇円(別紙「取消額等計算書」の3参照)となる。
 したがって、本件賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法があるから、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すのが相当である。

(6) 結論

よって、審査請求は理由があるから、原処分の一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すこととする。

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