(令和3年6月23日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、内装工事業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に対し、調査において請求人が帳簿書類を提示しなかったとして青色申告の承認を取り消した上で、請求人の事業所得の金額を推計の方法により算定して所得税等に係る更正処分等をしたところ、請求人が、青色申告の承認の取消事由はなく、推計の方法による算定は必要性も合理性もないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 所得税法第148条《青色申告者の帳簿書類》第1項は、同法第143条《青色申告》の承認を受けている居住者は、財務省令で定めるところにより、事業所得等を生ずべき業務につき帳簿書類を備え付けてこれに事業所得等の金額に係る取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない旨規定している。
  • ロ 所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項柱書及び同項第1号は、同法第143条の承認を受けた居住者につき、その年における事業所得等を生ずべき業務に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が同法第148条第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていない事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、その年まで遡って、その承認を取り消すことができる旨規定している。
  • ハ 所得税法第156条《推計による更正又は決定》は、税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額を推計して、これをすることができる旨規定している。
  • ニ 消費税法第2条《定義》第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定し、同項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
  • ホ 消費税法第28条《課税標準》第1項は、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額等に相当する額を含まないものとする。)とする旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 請求人は、自宅(以下「本件自宅」という。)において、「L」の屋号で内装工事業を営む個人事業者(以下、請求人が営む事業を「本件事業」という。)である。
  • ロ 請求人は、平成28年3月9日に、原処分庁に対して、平成28年分以後の所得税の青色申告承認申請書を提出し、同年分以後の所得税について、青色申告の承認を受けた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成27年分、平成28年分及び平成29年分(以下、これらの各年分を併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、それぞれ別表1の「確定申告」欄の内容のとおり各確定申告書に記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
     なお、平成27年分の所得税等の確定申告書には、収支内訳書(一般用)が、平成28年分及び平成29年分の所得税等の各確定申告書には、青色申告決算書(一般用)(以下、収支内訳書(一般用)と併せて「本件各青色申告決算書等」という。)がそれぞれ添付されていた。
  • ロ 請求人は、平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで及び平成29年1月1日から平成29年12月31日までの各課税期間(以下、順に「平成27年課税期間」、「平成28年課税期間」及び「平成29年課税期間」といい、これらの各課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)における消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、それぞれ別表2の「確定申告」欄のとおり各確定申告書に記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ハ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「原処分調査担当職員」という。)は、平成30年8月28日に事前通知をした上で、同年10月5日に本件自宅に臨場し、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等に係る調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
  • ニ 原処分庁は、本件調査の結果に基づき、平成31年4月24日付で、以下の各処分を行った。
    • (イ) 平成28年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色承認取消処分」という。)
    • (ロ) 別表1の「更正処分等」欄の内容の、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件所得税等各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」という。)
    • (ハ) 別表2の「更正処分等」欄の内容の、本件各課税期間の消費税等の各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)及び平成27年課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」という。)
  • ホ 請求人は、令和元年7月22日に、原処分を不服として再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年10月18日付で、当該請求についていずれも棄却する旨の再調査決定をした。
  • ヘ 請求人は、令和元年11月18日に、再調査決定を経た後の原処分に不服があるとして、審査請求をした。

2 争点

(1) 青色申告の承認を取り消すべき事実があるか否か(争点1)。

(2) 推計の必要性があるか否か(争点2)。

(3) 推計の方法に合理性があるか否か(争点3)。

(4) 本件事業の遂行に際して支払った交通費等(以下「本件交通費等」という。)に相当する金額は、消費税の課税標準額に含まれるか否か(争点4)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(青色申告の承認を取り消すべき事実があるか否か。)について

原処分庁 請求人
原処分調査担当職員は、本件調査において、請求人が税理士資格を有しない者の立会いを希望したことから、税務職員は守秘義務が課せられているため、立会いのある状況では帳簿書類等を確認できないとして立会人を退席させ、本件調査に協力するよう求めた。また、原処分調査担当職員は、請求人に対し、再三にわたり本件各年分の事業所得に係る帳簿書類等を提示するよう求め、帳簿書類等の確認ができない場合には、青色申告の承認が取り消される旨教示した。
 しかしながら、請求人は、税理士資格のない立会人の同席を主張して本件調査に協力せず、正当な理由なく帳簿書類等を提示しなかったことから、原処分調査担当職員において、帳簿書類等の備付け、記録及び保存が正しく行われていることを確認することができなかった。
 このことは、所得税法第150条第1項第1号に規定する「業務に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が第148条第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていないこと」に該当するから、青色申告の承認の取消事由に該当する。
請求人は、本件事業に係る帳簿書類等を備え付け、記録及び保存を行っているところ、本件調査においても、帳簿書類等を用意するなどして調査に協力し、適時に帳簿書類等を提示することが可能なように態勢を整えていた。それにもかかわらず、原処分調査担当職員は、請求人の必要とした第三者の立会いを認めず、第三者の退去に固執して帳簿書類等の検査を行わなかった。
 したがって、本件調査において、所得税法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する事実はない。

(2) 争点2(推計の必要性があるか否か。)について

原処分庁 請求人
次のことから、本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性が認められる。 次のことから、本件各年分の事業所得の金額の計算上、推計の必要性は認められない。
イ 原処分調査担当職員が、再三にわたり、帳簿書類等を提示するよう求めたにもかかわらず、請求人は、正当な理由なく帳簿書類等の調査に応じなかったため、原処分調査担当職員は、本件各年分の請求人の事業所得の金額を実額計算の方法により算定することができなかった。 イ 請求人は、本件調査に十分協力する意思があり、その旨を伝えたにもかかわらず、原処分調査担当職員は、請求人自身の調査を尽くさずに請求人の取引先等に対する調査により把握した本件各年分の総収入金額を基礎にして推計の方法による課税を行った。
 しかしながら、本件各年分の請求人の事業所得の金額は、帳簿書類等により計算できるのであって、原処分調査担当職員が、第三者の退去に固執せず、請求人が保存していた帳簿書類等の調査を行っていれば本件各年分の事業所得の金額等を実額計算の方法により算定することができたはずである。
ロ 納税者が、実額反証によって推計課税の適法性を覆すためには、その主張する所得額が真実に合致することを主張立証する責任を負うものというべきである。そして、その主張する所得額が真実に合致すると認められるためには、その主張する収入及び経費の各金額が存在することなどについて合理的な疑いを容れない程度に証明される必要がある。
 請求人は、再調査審理庁に対し、本件各年分の事業所得の金額の算定の基礎となる帳簿書類等を提示しているところ、このうち総勘定元帳に記載されている収入、必要経費及び所得の金額は、確定申告書に添付された本件各青色申告決算書等に記載された金額と一致せず、また、必要経費の一部は領収書等がないなど、支払の事実が確認できなかった。加えて、請求人は、再調査においても、税理士資格を有しない立会人の同席を求めていたため、請求人の主張する経費がその収入金額に対応するものであるかどうかなど、帳簿書類等の内容を確認することができなかった。これらの事情の下において、帳簿書類等から、請求人が主張する所得金額が本件各年分の本件事業に係る事業所得の金額であると認めることはできないことから、請求人は、その収入及び経費の実額を全て主張・証明しているとはいえない。
ロ また、請求人は、再調査審理庁に対し、別表3の順号1ないし9記載の帳簿書類等を提示しているところ、それらの資料を確認すれば、本件各年分の事業所得の金額等を実額計算の方法により算定することができたはずである。

(3) 争点3(推計の方法に合理性があるか否か。)について

原処分庁 請求人
次のことから、原処分庁が採用した原処分に係る推計の方法には合理性が認められる。 次のことから、原処分庁が採用した原処分に係る推計の方法には合理性が認められない。
イ 原処分庁は、本件各年分の請求人の取引先等を調査して本件各年分の事業所得の総収入金額を確認し、これに対して、請求人と事業内容・規模等が類似すると認められるM税務署管内の青色申告者(平成27年分8件、平成28年分9件、平成29年分9件)(以下「本件類似同業者」という。)の平均的な必要経費率(総収入金額に対する必要経費の割合)を乗じて必要経費の金額を算出し、本件各年分の事業所得の金額を推計している。 イ 請求人は仲間2名と共に業務を行っており、当該2名には、外注費として売上先から受け取った人工賃をそのまま同額で支払っている。一方で、原処分庁が算定した本件各年分の事業所得の金額は、請求人の収入金額からその外注費の金額のみを差し引いた程度の金額になっており、それ以外の必要経費が加味されていないのであるから、原処分庁は、本件各年分の事業所得の金額を明らかに過大に認定している。
 なお、原処分庁は、本件各年分の事業所得の金額を算出するために用いた本件類似同業者に係る資料を明らかにしないため、本件類似同業者が、請求人と同一の事業を営んでおり、かつ、同規模として適切であるかについてそもそも不明である。
ロ 請求人は、本件交通費等の立替金について、工賃及び工賃に係る消費税と区分して売上先に請求している旨主張するが、本件交通費等は、本件事業に係る業務の遂行のために支払った費用であり、請求人の売上先の支払を立て替えたものではない。そうすると、本件交通費等は、所得税法第36条《収入金額》第1項に規定するその年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額に該当する。 ロ 原処分庁は、本件交通費等の立替金を収入金額と認定して推計をしているが、請求人は、当該立替金を工賃等と区分して請求書に記載し請求しているのであるから、当該立替金相当額は収入金額ではない。したがって、原処分庁の推計には誤りがある。

(4) 争点4(本件交通費等に相当する金額は、消費税の課税標準額に含まれるか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人は、本件交通費等について、売上先に請求し、その金額を収受しているのであるから、本件交通費等の金額は、請求人の課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるものである。
 したがって、本件交通費等に相当する金額は、消費税法第28条第1項に規定する消費税の課税標準額に含まれる。
本件交通費等は、請求人の売上先の支払を立て替えたものであって、請求人の課税資産の譲渡等の対価の額ではない。
 したがって、本件交通費等に相当する金額は、消費税法第28条第1項に規定する消費税の課税標準額に含まれない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(青色申告の承認を取り消すべき事実があるか否か。)について

  • イ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 原処分調査担当職員が、本件調査のため、事前に請求人と日程を調整した上で、平成30年10月5日に本件自宅を訪れたところ、本件自宅には請求人のほかに5名の男女が同席しており、請求人は、調査に際して、税理士資格を有しない当該5名の立会いを希望した。そこで、原処分調査担当職員は、請求人に対し、税務職員には守秘義務が課せられているため、第三者の立会いがある状況で調査をすることはできない旨説明し、税理士資格を有しない者を退席させて、本件調査に協力するよう求めた。しかしながら、請求人がこれに応じなかったため、原処分調査担当職員は、請求人に対して、次回の調査の日程調整を依頼し、本件自宅を退去した。
    • (ロ) 原処分調査担当職員は、事前に請求人と日程調整をし、さらに本件調査に際し、税理士資格を有しない者の立会いは認められない旨を説明した上で、平成30年11月6日に、本件自宅を訪れた。その際、本件自宅には請求人のほかに3名の男女が同席しており、請求人は税理士資格を有しない当該3名の立会いを希望したことから、原処分調査担当職員は、請求人に対し、上記(イ)と同様の説明をした上で本件調査に協力するよう求めた。しかしながら、請求人は、応対している部屋とふすまを隔てて隣接する部屋に当該3名の者を同席させるが、部屋のふすまを開けたままにしてほしいなどとしてこれに応じなかった。
       そこで原処分調査担当職員は、請求人に対し、税理士資格を有しない者の立会いのない状況で帳簿書類等の確認ができない場合に被る可能性のある不利益として、青色申告の承認が取り消されることや、推計課税にて所得計算がされることなどを説明し、改めて連絡することを伝えて本件自宅を退去した。
    • (ハ) 原処分調査担当職員は、その後も複数回請求人に電話連絡をして協議したものの、調査における第三者の立会いについて意見が折り合わなかったことから、調査ができない場合の不利益について上記(ロ)と同様の説明をするとともに、請求人が帳簿書類等を持参した上で税務署へ来署することも提案した。しかしながら、請求人は、来署の提案を断り、第三者立会いの下での調査を希望したため、原処分調査担当職員は、再度本件自宅を訪問することになった。
    • (ニ) 原処分調査担当職員は、平成30年12月21日に、本件調査のため再度本件自宅を訪れたところ、本件自宅には請求人のほかに女性1名が同席しており、請求人は、当該女性の立会いを希望した。原処分調査担当職員は、請求人に対して、税理士資格を有しない第三者を退席させて、本件調査に協力するよう求めたところ、請求人はこれに応じなかったことから、調査ができない場合の不利益について上記(ロ)と同様の説明をした上で、本件自宅を退去した。
  • ロ 法令解釈
     所得税法第148条第1項は、青色申告の承認を受けている納税者は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類の備付け等をしなければならない旨規定し、同法第150条第1項第1号は、青色申告の承認を受けた納税者につき、その帳簿書類の備付け等が同法第148条第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていない事実がある場合には、税務署長は青色申告の承認を取り消すことができる旨規定している。そうすると、この帳簿書類の備付け等が財務省令で定めるところに従って行われていることを確認するためには、帳簿書類を閲覧、検査することが不可欠であり、これは納税者による帳簿書類の提示があって初めて可能になるものであるから、青色申告の承認を受けている納税者の帳簿書類の備付け等の義務には、税務職員の質問検査に応じてその帳簿書類を提示する義務をも当然に含むものと解される。
     したがって、所得税法第148条第1項に規定する帳簿書類の備付け等があるというためには、単に帳簿書類が物理的に存在するということでは足りず、権限ある税務職員の求めに応じて帳簿書類を提示することを要するものであり、また、帳簿書類を提示するとは、帳簿書類を税務職員が十分に閲覧、検査できる状態に置くことをいうものと解するのが相当である。
  • ハ 当てはめ
     上記イのとおり、原処分調査担当職員は、調査における第三者の立会いを希望する請求人に対し、複数回にわたり、守秘義務の観点から調査において第三者の立会いを認めることはできないこと、第三者の退席を拒んで帳簿書類を確認することができなければ帳簿書類の提示がないとして青色申告の承認が取り消される可能性があることなどを説明しているところ、原処分調査担当職員の当該判断及び説明は、後記ニのとおり合理的なものである。そして、請求人は、それにもかかわらず、調査において税理士資格を有しない第三者の立会いを希望し、その退席に応じなかったことが認められる。
     そうすると、請求人が第三者の退席に応じなかったことにより、原処分調査担当職員による帳簿書類の確認を含む調査ができなかったものであり、請求人は、帳簿書類について、権限ある税務職員が十分に閲覧・検査できる状態にしていなかったといえることから、本件事業に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存について、所得税法第148条第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行っていたものとはいえず、同法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認を取り消すべき事実がある。
  • ニ 請求人の主張について
     請求人は、前記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件調査において、帳簿書類等を提示可能なように態勢を整えていたにもかかわらず、原処分調査担当職員は、第三者の退去に固執して帳簿書類等を検査しなかったのであるから、青色申告の取消事由に該当する事実はない旨主張する。
     しかしながら、質問検査権に基づく税務調査において、税理士資格を有しない第三者を立ち会わせるか否かは、調査権限を有する税務職員の合理的な判断に委ねられているところ、当該調査において、その内容が被調査者のみならず、その取引の相手方である第三者の営業上の秘密に及ぶことが少なくない。そうすると、本件調査においても、法律上の守秘義務を負わない税理士資格を有しない第三者の立会いを認めず、帳簿書類等の確認をしなかった原処分調査担当職員の判断は合理的なものと認められる。したがって、請求人が、第三者の立会いの下、適時に帳簿書類を提示することが可能なように物理的な態勢を整えていたとしても、原処分調査担当職員が税理士資格を有しない第三者の立会いを認めないと判断した以上、当該第三者の立会いを前提としたままでは帳簿書類の備付け等が所得税法第148条第1項の規定するところに従って行われていたと認めることはできないことは、上記ハのとおりである。
     したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(推計の必要性があるか否か。)について

  • イ 法令解釈等
    • (イ) 所得税法第156条は、税務署長が、所得税につき更正又は決定をする場合において、所得金額を推計して課税することができる旨規定しているが、飽くまで課税処分における課税標準の認定は直接資料に基づく実額計算の方法によるのが原則であることからすれば、推計による課税が認められるのは、やむを得ず推計によらざるを得ない場合、すなわち、1納税者が収入及び支出を明らかにし得る帳簿書類等を備え付けていないこと、2帳簿書類等の備付けがあってもその記載内容が不正確であること、又は3納税者が資料の提供を拒否するなど税務調査に非協力であることなどにより、実額計算の方法による課税を行うことが不可能又は著しく困難な場合に限られると解される。
    • (ロ) 原処分の段階で推計の必要性が認められ、その後の審査請求の段階で、請求人が所得金額について実額計算の方法によることを主張して、原処分庁の行った推計の方法による課税の合理性を否定するためには、請求人において、継続的に記帳された会計帳簿等に基づき、収入金額及び必要経費の双方について漏れのない全ての実額を主張、立証して、正確な漏れのない所得の実額を証明する必要がある。すなわち、1その主張する収入金額が全ての取引先からの全ての取引についての捕捉漏れのない総収入金額であり、かつ、2その収入と対応する必要経費が実際に支出され、3当該事業と関連性を有することを合理的な疑いを容れない程度にまで、主張、立証しなければならないと解される。
  • ロ 請求人の提出した各書類について
     当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 請求人は、当審判所に対し、別表3の順号1ないし14の各書類を提出した。
    • (ロ) 請求人は、当審判所に対して、前記1の(4)のハの事前通知後に、請求人の代理人が作成した本件各年分の各総勘定元帳を提出した。
       なお、当該各総勘定元帳には、売掛金以外の資産負債等に係る勘定科目はなかった。
    • (ハ) 請求人は、その後、上記(ロ)で提出した本件各年分の各総勘定元帳のうち、外注先に対して支払った高速代及び駐車場代等を外注費から旅費交通費に振り替えたもの及びクレジットカード払いの明細書を見直したとして、一部の勘定科目について金額を訂正した勘定科目の元帳(以下、上記(ロ)で提出した本件各年分の各総勘定元帳のうち、訂正のない勘定科目の元帳と併せて「本件各総勘定元帳」という。)を当審判所に対し提出した。
    • (ニ) 別表3の順号5のノート(以下「本件ノート」という。)には、日付順に現場名と作業従事者(請求人・外注先)及び従事人数などが記載されているところ、次の事実が認められる。
      • A 誰がどの現場に従事したか記載されていない。
      • B 別表3の順号6及び7の請求書(控)に記載があるにもかかわらず、本件ノートに記載のない現場名がある。
      • C 本件ノートと別表3の順号8の外注金額の明細を記載した書類(以下「本件外注支払明細」という。)における外注作業や現場ごとの従事人数が合致しないものがある。
      • D 本件ノートと別表3の順号6及び7の請求書(控)における従事人数が合致しない月がある。
      • E 食事代、文房具代及び工具代等の金額が、支払日が特定されることなく一月分まとめて記載されている。
    • (ホ) 別表3の順号7の請求書(控)には破棄された痕跡が認められる。
    • (ヘ) 請求人は、当審判所に対し、本件各総勘定元帳の旅費交通費、接待交際費及び消耗品費の各勘定科目に記載された一部の金額は、概算の金額であって、これを裏付ける書類はない旨答述した。
    • (ト) 請求人は、当審判所に対し、現金出納帳は、現金の増減が分かる程度のものであり、実際の現金残高と一致するものではない旨答述し、現金出納帳を提出しなかった。
  • ハ 推計の必要性と実額主張
    • (イ) 原処分段階における推計の必要性について
       上記(1)のイのとおり、原処分調査担当職員は、調査における第三者の立会いを希望する請求人に対し、複数回にわたり、守秘義務の観点から調査において第三者の立会いを認めることはできないこと、第三者の退席を拒んで帳簿書類を確認することができなければ帳簿書類の提示がないとして青色申告の承認が取り消される可能性があることなどを説明しているところ、請求人は、原処分調査担当職員の当該説明を受けてもなお、調査において税理士資格を有しない第三者の立会いを希望し、その退席に応じなかったことが認められる。
       そうすると、原処分調査担当職員は、本件事業に係る帳簿書類等の確認をすることができず、帳簿書類等の直接資料に基づき、請求人の本件各年分の事業所得の金額を実額計算の方法により算定し課税することが不可能又は著しく困難であったといえる。
       したがって、請求人の本件各年分の事業所得の金額について、推計課税の必要性があったものと認められる。  
    • (ロ) 請求人の実額主張が認められるか否かについて
       請求人は、本件各年分の事業所得の金額の算定に係る証拠として、別表3の順号1ないし14の各証拠書類を提出し、実額計算の方法により算定すべきである旨主張するので、以下検討する。
      • A 収入金額について
         日々継続的に記帳された会計帳簿は、収入の計上漏れの生ずるおそれが少なく、恣意的な操作をすることも困難であることから、一般には網羅性を認めることができ、かつ、会計帳簿間での関連性や領収書等の原始資料と照らし合わせることによって、その正確性を検証することができると解されるところ、1上記ロの(ホ)のとおり、請求書(控)には破棄された痕跡があること、2請求書(控)の提出がないものがあることに加え、3上記ロの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件各総勘定元帳は、本件調査の事前通知後に作成したものを更に金額を修正し提出されたものであり、日々継続的に記帳した総勘定元帳とは認められないこと及び4上記ロの(ト)のとおり、現金出納帳の提出がないことからすれば、把握できなかった現金収入の存在を否定できず、請求人の提出した証拠書類から本件各年分の総収入金額を実額で計算することはできない。
      • B 必要経費について
        • (A) 外注費について
           請求人が実額であると主張する外注費については、預金通帳の取引履歴から外注先への振込みが確認でき、本件外注支払明細と本件各総勘定元帳の外注費の金額は一致するものの、上記ロの(ニ)のとおり、1本件ノートはいわゆる出面帳として本件事業に関する事項が記載されているが、業務日誌的なものにすぎず、継続的に記帳された会計帳簿等に当たるとまではいえないことに加え、2本件ノートには誰がどの現場に従事したか記載されていないことから、本件外注支払明細は何を根拠に作成されたか不明であること、3請求書(控)に記載があるが本件ノートに記載されていない現場名があること、4本件ノートと本件外注支払明細における外注作業や現場ごとの従事人数が合致しないものがあること及び5本件ノートと請求書(控)における従事人数が合致しない月があることからすれば、外注費として正しい金額かどうかを判断することができず、外注費を実額で計算することはできない。
        • (B) 外注費以外の経費について
           請求人は、上記ロの(ヘ)のとおり、本件各総勘定元帳の旅費交通費、接待交際費及び消耗品費の各勘定科目に記載された一部の金額は、概算の金額であって、これを裏付ける書類はない旨答述し、実際、本件各総勘定元帳の当該各勘定科目には、千円単位又は万円単位の金額の計上が認められるところ、請求人が提出したその他の証拠書類によってもこれらを支出した事実が確認できず、外注費以外の経費について、実額で計算することはできない。
      • C 小括
         以上より、請求人の本件各年分の事業所得の金額を実額により算定することはできないから、当審判所においても推計の方法により算定せざるを得ない。
         よって、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(推計の方法に合理性があるか否か。)について

  • イ 認定事実
     原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、原処分庁が本件所得税等各更正処分に当たり行った推計の方法は以下のとおりである。
    • (イ) 原処分庁は、請求人の売上先である別表4の「売上先等」欄記載の相手方を調査し、その結果に基づいて、別表4のとおり、請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額を算定した。
    • (ロ) 原処分庁は、本件各年分について、青色申告の承認を受けた個人事業者である内装工事業者であり、その事業所得に係る総収入金額が、請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額の0.5倍以上、2倍以内の事業者を抽出した。
    • (ハ) 原処分庁は、上記(ロ)により抽出した個人事業者のうち、本件事業と業種、業態、事業内容、規模及び事業所所在地等において類似していると認められる者として、以下の抽出基準を設定した。
      • A 請求人と業種、業態が類似する者で、仕入原価を持たない者であること。
      • B M税務署の管轄区域に事業所を有する者であること。
      • C 青色事業専従者給与の支払がないこと。
      • D 不服申立て又は係争中でないこと。
      • E 年の途中において、開廃業、休業及び法人成り等の事情がないこと。
      • F 災害等により、経営状態が異常であるとは認められないこと。
    • (ニ) 原処分庁は、上記(ハ)の条件の全てに該当する本件類似同業者として、平成27年分8件、平成28年分9件、平成29年分9件の個人事業者をそれぞれ選定した。
    • (ホ) 原処分庁は、上記(ニ)で選定した本件類似同業者の本件各年分における総収入金額に対する必要経費(青色申告の者に対してのみ認められている特典による控除を除く。)の割合の平均値(以下「同業者平均必要経費率」という。)を別表5−1ないし別表5−3の各「原処分庁主張額等」欄の各「同業者平均必要経費率」欄に記載のとおり算定した上で、別表6の「事業所得の金額(A-C)」欄の各「原処分庁主張額」欄のとおり、上記(イ)で算定した請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額から、当該総収入金額に同業者平均必要経費率を乗じて算出した必要経費の額を控除して、請求人の本件各年分の事業所得の金額を算出した。
  • ロ 検討
    • (イ) 推計の方法の合理性について
       原処分庁は、上記イの(イ)及び(ホ)のとおり、請求人の売上先に対する調査の結果に基づいて算定した本件各年分の事業所得に係る総収入金額から、当該金額に同業者平均必要経費率を乗じて算出した必要経費の額を控除する方法により請求人の本件各年分の事業所得の金額を算出しているところ、一般に、業種、業態及び規模等が類似する同業者にあっては、特段の事情がない限り、経験則上、同程度の総収入金額に対し同程度の所得が得られるものと推認される。このことは本件事業についても同様であり、かつ、請求人において、上記経験則を否定するような特段の事情があるとは認められない。
       また、類似同業者間に通常存する程度の営業条件等の差異については、同業者の比率からその平均値を算出する過程において捨象されるものである。そうすると、原処分庁が採用した上記イの推計の方法は、抽出された同業者に類似性が認められ、かつ、その基礎数値等が正確なものである限り、合理性を有するものと認めるのが相当である。
    • (ロ) 本件類似同業者の抽出方法等の合理性について
       原処分庁は、上記イの(ロ)ないし(ニ)のとおり、本件類似同業者を選定するに当たり、業種及び業態の類似性、個人又は法人の別、事業所の所在地の近接性、資料の正確性並びに事業規模の類似性等に係る基準を設けているところ、これらの基準は、請求人と同業者との一定の類似性を担保するものである。また、原処分庁は、これらの条件に全て該当する者を機械的に抽出し、選定していることからすれば、その選定過程に恣意が介在することはない。
       したがって、原処分庁が採用した抽出基準及びその方法には合理性があると認められる。
    • (ハ) 本件各年分の事業所得に係る総収入金額の正確性について
       原処分庁は、上記イの(イ)のとおり、請求人の売上先等の調査により請求人の本件各年分の本件事業に係る総収入金額を算定しているところ、当審判所の調査及び審理の結果によっても、別表4のとおり、原処分庁が算定した額といずれも同額になる。
       したがって、原処分庁が算定した当該総収入金額は適正に計算されていると認められる。
    • (ニ) 当審判所による補正
       上記(イ)ないし(ハ)のとおり、原処分庁による推計計算に係る推計の方法及び本件類似同業者の抽出方法等それ自体には合理性があると認められる。もっとも、当該推計計算に係る同業者平均必要経費率を算定するに際し、本件類似同業者の一部の者の減価償却費や必要経費の算定について、一部誤りが認められたことから、それぞれ正当額に補正した。
    • (ホ) 事業所得の金額の算定について
       上記(ニ)の補正を前提に請求人の本件各年分の事業所得の金額を算定した結果は、次のとおりとなる。
      • A 本件各年分の同業者平均必要経費率
         当審判所において、本件各年分の同業者平均必要経費率を計算すると、別表5−1ないし別表5−3の各「審判所認定額等」欄の各「同業者平均必要経費率」欄のとおりとなる。
      • B 本件各年分の必要経費の額
         上記(ハ)で認定した請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額に、上記Aで認定した同業者平均必要経費率を乗じて、本件各年分の事業所得に係る必要経費の額を算出すると、別表6の「C 必要経費の額(A×B)」欄の各「審判所認定額」欄のとおりとなる。
      • C 本件各年分の事業所得の金額
         請求人の本件各年分の事業所得の金額は、上記(ハ)で認定した請求人の本件各年分の事業所得に係る総収入金額から、上記Bで認定した必要経費の額を控除した金額であり、別表6の「事業所得の金額(A-C)」欄の各「審判所認定額」欄のとおりとなる。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、前記3の(3)の「請求人」欄のイのとおり、原処分庁が本件類似同業者に係る資料を明らかにしないため、本件類似同業者の抽出が適切であるか不明である旨主張する。
     しかしながら、本件類似同業者に係る資料を明らかにすることは、本件類似同業者の利益を害するおそれがある上、原処分庁には守秘義務が課せられていることを考慮すると、原処分庁が本件類似同業者の資料等を明らかにしないことは相当であり、これをもって推計の方法自体が不合理であるということはできない。
     また、請求人は、前記3の(3)の「請求人」欄のイのとおり、原処分庁が算定した本件各年分の事業所得の金額は、必要経費について、本件事業に係る業務実態を反映していない旨主張する。
     しかしながら、上記ロの(イ)のとおり、類似同業者の平均値により推計する場合は、当該類似同業者間に通常存する程度の営業条件等の差異は、その平均値に吸収され捨象されるものであるから、原処分庁が採用した推計方法がその基礎的要件に欠けるところがない以上、当該平均値による推計自体を不合理ならしめる程度の顕著なものでない限り、これを考慮する必要はないと解するのが相当である。
     そして、請求人が本件事業の実態として主張する事情は、経費の処理の差異であり、類似同業者の平均値を採用することにより捨象されるべき事情に当たるというべきであり、当審判所の調査の結果によっても、原処分庁が採用した同業者平均必要経費率を請求人に適用することについて、その合理性を否定すべき特段の事情とは認められない。
     また、請求人は、前記3の(3)の「請求人」欄のロのとおり、請求人が本件事業の遂行に際して支払った本件交通費等は立替金であり、当該立替金を工賃等と区分して請求書に記載し請求しているのであるから、売上先から支払われた本件交通費等に相当する額は総収入金額に算入すべきではない旨主張する。
     別表3の順号6の請求書(控)綴りによれば、請求人は、本件各年分において、N社から請け負った内装工事に際して支払った交通費や駐車場代等(本件交通費等)について、同社に対し、当該内装工事に係る工賃等の額と区分して記載した請求書により請求していることが認められる。しかしながら、当該費用は、請求人が、本件事業に係る業務を遂行する過程においてその必要に応じて支払った費用であって、本件交通費等に係る領収書の宛名がN社となっていないことなどから、同社から支払われた当該費用に相当する金額を総収入金額に算入しない取扱いは認められない。
     したがって、請求人の主張にはいずれも理由がない。

(4) 争点4(本件交通費等に相当する金額は、消費税の課税標準額に含まれるか否か。)について

  • イ 検討
     上記(3)のハのとおり、本件交通費等は、請求人が本件事業に係る業務を遂行する過程において必要に応じて支払った費用であるから、売上先から支払われる当該費用に相当する金額は、本件事業に係る業務としての役務の提供との間に対価関係があるものと解することが相当である。
     したがって、本件交通費等に相当する金額についても、資産の譲渡等(役務の提供)の対価の額として、消費税の課税標準額に含まれると解すべきである。そして、消費税法第28条第1項の規定に基づき、請求人が売上先から対価として収受し、又は収受すべき金銭等の額により、本件各課税期間の消費税の課税標準額を算定すると、別表7の「8課税標準額」欄の各「原処分庁主張額」欄と同額となる。
  • ロ 請求人の主張について
     請求人は、前記3の(4)の「請求人」欄のとおり、本件交通費等は立替金であるから、本件交通費等に相当する金額は、消費税法第28条第1項に規定する消費税の課税標準額に含まれない旨主張する。
     しかしながら、上記(3)のハのとおり、本件交通費等は、請求人が本件事業に係る業務を遂行する過程において必要に応じて支払った費用であって、本件交通費等に係る領収書の宛名がN社となっていないことなどから、本件交通費等に相当する金額を消費税法第28条第1項に規定する消費税の課税標準額に含めない取扱いは認められない。

(5) 本件青色承認取消処分の適法性について

本件青色承認取消処分は、上記(1)のハのとおり、これを取り消すべき理由はなく、本件青色承認取消処分は適法である。

(6) 本件所得税等各更正処分の適法性について

請求人の本件各年分の事業所得の金額は、上記(3)のロの(ホ)のCのとおりとなることから、これに基づき、請求人の本件各年分の所得税等の納付すべき税額を計算すると、別表6の「所得税等の納付すべき税額」欄の各「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも本件所得税等各更正処分の額を下回るから、いずれもその一部を別紙2ないし別紙4の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 なお、本件所得税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(7) 本件所得税等各賦課決定処分の適法性について

上記(6)のとおり、本件所得税等各更正処分は、いずれもその一部が取り消されることに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額は、平成27年分が○○○○円、平成28年分が○○○○円及び平成29年分が○○○○円となる。
 また、本件所得税等各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件所得税等各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、いずれも国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》(平成28年12月31日以前に法定申告期限が到来する国税については、平成28年法律第15号による改正前のもの。以下、同条において同じ。)第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 したがって、通則法第65条第1項及び第2項の規定に基づき、本件各年分の所得税等に係る過少申告加算税の額を計算すると、別表6の「過少申告加算税の額」欄の各「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも本件所得税等各賦課決定処分の額を下回るから、いずれもその一部を別紙2ないし別紙4の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(8) 本件消費税等各更正処分の適法性について

上記(4)のイのとおり、請求人の本件各課税期間の課税売上高は、別表7の「7課税資産の譲渡等の対価の額(6×100/108)」欄の各「原処分庁主張額」欄と同額となる。これに基づき、当審判所において本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額を計算すると、いずれも本件消費税等各更正処分の額と同額となる。
 なお、本件消費税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件消費税等各更正処分はいずれも適法である。

(9) 本件消費税等賦課決定処分の適法性について

上記(8)のとおり、平成27年課税期間の消費税等の更正処分は適法であり、当該更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、当該更正処分前の税額の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」に該当する事情は認められない。
 そして、当審判所においても、通則法第65条第1項及び地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいて、平成27年課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の額を計算すると、本件消費税等賦課決定処分の額と同額であることが認められる。
 したがって、本件消費税等賦課決定処分は適法である。

(10) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

トップに戻る

トップに戻る