(令和3年6月17日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、亡父の相続税の申告において債務控除の対象とした借入金について、原処分庁が、当該借入金は債務控除の対象とはならないなどとして、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、原処分は調査手続の違法及び理由の提示に不備があり、また、当該債務は債務控除の対象とすべきであるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第24条《更正》は、税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定している。 
  • ロ 行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項は、行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない旨規定している。
  • ハ 相続税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)第1条の3《相続税の納税義務者》第1号及び同法第11条の2《相続税の課税価格》第1項は、相続により財産を取得した者で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有する者の相続税の課税価格について、当該相続により取得した財産の価額の合計額とする旨規定している。
  • ニ 相続税法第13条《債務控除》第1項は、上記ハの課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から、1被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)(同項第1号)及び2被相続人に係る葬式費用(同項第2号)の金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定している。
  • ホ 相続税法第14条第1項は、上記ニの規定により控除すべき債務は、確実と認められるものに限る旨規定している。
  • ヘ 相続税法第22条《評価の原則》は、相続により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による旨規定している。
  • ト 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)89《家屋の評価》は、家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に1.0の倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
  • チ 民法第520条は、債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 相続開始について
     H(以下「本件被相続人」という。)は、平成26年12月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
     本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の配偶者であるJ、同長男である請求人及び同二男であるK(以下「二男K」といい、J及び請求人と併せて「本件共同相続人」という。)の3名である。
  • ロ 本件被相続人の生前における請求人との契約等について
    • (イ) 請求人は、平成〇年〇月〇日、本件被相続人が所有するa市b町○−○の土地(以下「本件土地」という。)上に、建物(家屋番号○○○○。以下「本件建物」という。)を新築し、本件建物で〇〇〇を営むとともに居住していた。
    • (ロ) 請求人は、平成26年〇月〇日、本件被相続人との間で、請求人を売主、本件被相続人を買主として、本件建物を代金43,020,000円(以下「本件代金」という。)で譲渡する旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、同日付で売買契約書を作成した。
    • (ハ) 請求人は、平成26年〇月〇日、本件被相続人との間で、請求人を貸主、本件被相続人を借主、借入期間を〇年として、43,020,000円を無利息で貸し付ける旨の金銭消費貸借契約書(以下「本件金銭消費貸借契約書」という。)を作成し、同日付で本件代金に係る準消費貸借契約(以下「本件準消費貸借契約」といい、本件売買契約と併せて「本件各契約」という。)を締結した。
  • ハ 本件被相続人の生前における二男Kとの契約等について
    • (イ) 二男Kは、平成〇年〇月〇日、本件被相続人及びJが所有するa市d町○−○の土地(以下「別件土地」という。)上に、建物(家屋番号○○○○の居宅・物置。以下「別件建物」という。)を新築した。
    • (ロ) 二男Kは、平成26年〇月〇日、本件被相続人との間で、二男Kを売主、本件被相続人を買主として、別件建物を代金127,800,000円(以下「別件代金」という。)で譲渡する旨の売買契約(以下「別件売買契約」といい、本件売買契約と併せて「本件売買契約等」という。)を締結し、同日付で売買契約書を作成した。
    • (ハ) 二男Kは、平成26年〇月〇日、本件被相続人との間で、二男Kを貸主、本件被相続人を借主、借入期間を〇年として、127,800,000円を無利息で貸し付ける旨の金銭消費貸借契約書を作成し、同日付で別件代金に係る準消費貸借契約(以下「別件準消費貸借契約」といい、別件売買契約と併せて「別件各契約」という。)を締結した。
  • ニ 遺産分割について
    • (イ) 本件共同相続人は、本件相続開始後の平成〇年〇月〇日、本件相続に係る遺産分割協議(以下「本件遺産分割」という。)を成立させた。
    • (ロ) 請求人は、本件遺産分割において、本件土地、本件建物及び本件準消費貸借契約に基づく債務を承継した。本件被相続人には、本件相続開始日において本件準消費貸借契約に基づく残高42,482,250円の債務(以下「本件債務」といい、これに対応する請求人の債権を「本件債権」という。)があったが、本件遺産分割の結果、本件債権と本件債務はいずれも請求人に帰属することとなり、それぞれ本件相続開始日に遡って混同(民法第520条)により消滅した。
    • (ハ) 二男Kは、本件遺産分割において、別件土地、別件建物及び別件準消費貸借契約に基づく債務を承継した。本件被相続人には、本件相続開始日において別件準消費貸借契約に基づく残高126,202,500円の債務(以下「別件債務」といい、これに対応する二男Kの債権を「別件債権」という。)があったが、本件遺産分割の結果、別件債権と別件債務はいずれも二男Kに帰属することとなり、それぞれ本件相続開始日に遡って混同により消滅した。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 本件共同相続人は、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、別表1の「申告」欄のとおり記載した相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を法定申告期限までに共同でL税務署長に提出した。
     なお、本件申告書において、本件建物及び別件建物の価額は、評価通達89の定めに従って、それぞれの固定資産税評価額に1.0の倍率を乗じて計算した金額(以下、それぞれ順次「本件通達評価額」及び「別件通達評価額」という。)によって評価し、また、本件債務及び別件債務の額をそれぞれ債務控除の額として計上していた。
  • ロ L税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の本件相続税の調査(以下「本件調査」という。)に基づき、本件債務は債務控除の対象とはならないなどとして、本件相続税について、平成30年3月9日付で別表1の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」といい、本件更正処分に係る更正通知書を「本件更正通知書」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
     本件更正通知書には、要旨、次のとおり記載されていた。
    • (イ) 請求人が、本件債務を履行することなく消滅させることを計画した上で、本件準消費貸借契約の締結及び本件債務の承継を行ったことは、本件債務を請求人が履行することを予定していないものと認められることから、本件債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には該当せず、同法第13条第1項第1号の規定による課税価格から控除すべき債務とすることはできない。
    • (ロ) 本件共同相続人に係る課税価格の合計額に含まれる他の相続人の課税価格は、当該課税価格から他の相続人に対する貸付金の額を減算し、別件債務の額126,202,500円を加算した額となる。
  • ハ 請求人は、本件更正処分等に不服があるとして、平成30年6月9日に再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年9月4日付で棄却の再調査決定をした。
  • ニ 請求人は、再調査決定を経た後の本件更正処分等に不服があるとして、平成30年10月6日に審査請求をした。
  • ホ その後、L税務署長は、本件調査に基づき、本件相続税について、令和元年5月20日付で別表1の「再更正処分等」欄のとおりの再更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分をした。
  • ヘ さらに、L税務署長は、本件調査に基づき、本件相続税について、令和元年8月23日付で別表1の「再々更正処分等」欄のとおりの再々更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分をした。

2 争点

(1) 本件調査の手続に本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当があるか否か(争点1)。

(2) 本件更正処分の理由の提示に不備があるか否か(争点2)。

(3) 本件債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するか否か(争点3)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件調査の手続に本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件更正処分等は、通則法第7章の2《国税の調査》の規定に基づく通知並びに説明、勧奨及び交付を経て行われたから、本件調査の手続に本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当はない。 本件調査担当職員は、平成29年12月21日、請求人に対する本件調査の結果の内容説明及び修正申告の勧奨を行った際、修正申告に応じず争いになれば、マスコミなどに取り上げられる旨の発言や、請求人と税理士法人Mとの信頼関係をこじらせようとする発言をした。さらに、平成30年2月13日、請求人が指摘事項の一部について修正申告に応じる意向を示したところ、修正申告の提出を差し止める指導をした。
 本件調査担当職員による上記対応は、裁量権行使の逸脱濫用ないし適正さに欠け、本件調査が通則法に基づく通知並びに説明、勧奨及び交付を経て行われたからといって、適法な調査手続となると解釈することはできない。
 したがって、本件調査の手続には、本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当がある。

(2) 争点2(本件更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

原処分庁 請求人
本件更正通知書には、1本件債務について、請求人が履行することを予定していないと認められるから、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には該当しない旨、2本件申告書における他の相続人の課税価格は、当該課税価格から他の相続人に対する貸付金の額を減算し、別件債務の額を加算した額となる旨それぞれ記載されている。
 また、理由の提示に係る不備の有無は、本件更正通知書の記載内容により判断されるものであり、再調査決定書や答弁書の記載に影響されるものではない。
 したがって、本件更正処分の理由の提示に不備はない。
本件更正処分の理由の提示は、本件債務が確実と認められるものに該当しないと判断した根拠が不十分である。
 また、本件更正通知書には、他の共同相続人の課税価格に加算又は減算した財産の種類(名称)及び金額のみが記載され、加算又は減算した理由が付記されておらず、仮に、請求人が他の共同相続人に対する通知等により、事実上それを知ることができたとしても、処分理由は請求人に対して説明されなければならない。
 さらに、本件更正処分の理由は、本件更正通知書、再調査の決定書及び審査請求における答弁書に記載される都度変転し、一貫していない。
 したがって、本件更正処分の理由の提示には不備がある。

(3) 争点3(本件債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人は、本件代金と本件通達評価額との差額を利用して相続税の負担軽減を図るため、税理士法人Mによる、本件被相続人から請求人へ財産を承継するための提案(以下「本件提案」という。)に基づき、本件各契約を締結し、本件債務を請求人が承継することにより履行することなく混同により消滅させたにすぎない。
 また、請求人が期限の利益の喪失を主張することや返済の催促を行っていないことからすると、本件債務は、本件相続開始日において請求人が履行することを予定していなかったものと認められる。
 したがって、本件債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当しない。
原処分庁が、本件売買契約による本件建物の所有権移転の効果を認容し、本件通達評価額を本件相続税の課税価格に算入したまま、本件債務の全額の債務控除を否認したことから、本件更正処分は、本件相続税の課税価格が過大に計算された違法な処分である。
 そもそも、本件被相続人は、別件建物の取得に伴い二男Kに多額の売買代金を支払うことで、将来的に兄弟間に紛争が生じることを心配し、請求人が所有していた本件建物も相当の対価で購入することを希望して、本件提案に基づき本件各契約を締結し、本件建物を取得したものであり、合理的な必要性や目的があった。
 そして、本件債務は、処分証書(本件金銭消費貸借契約書)が存在し真正に成立したから、法的に履行が強制されるものであり、請求人がこれを承継した結果、混同により消滅したとしても、本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入されなければならない。
 したがって、本件債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当する。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件調査の手続に本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法は、第7章の2において、国税の調査の際に必要とされる手続を規定しているが、同章の規定に反する手続が課税処分の取消事由となる旨を定めた規定はなく、また、調査手続に瑕疵があるというだけで納税者が本来支払うべき国税の支払義務を免れることは、租税公平主義の観点からも問題があると考えられるから、調査手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないものと解される。
     もっとも、通則法は、第24条の規定による更正処分について、「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される。そして、これには、調査を全く欠く場合のみならず、課税処分の基礎となる証拠資料の収集手続に重大な違法があり、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受ける場合も含まれるものと解され、ここにいう重大な違法とは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるなどの場合をいうものと解するのが相当である。
     他方で、証拠収集手続自体に重大な違法がないのであれば、課税処分を調査により行うという要件は満たされているといえるから、仮に、証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続に重大な違法があったとしても、課税処分の取消事由となるものではないと解される。
  • ロ 検討及び請求人の主張について
     請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のとおり、本件調査担当職員の発言及び指導に裁量の逸脱・濫用・不適正があり、通則法に基づく通知並びに説明、勧奨及び交付を経ることによって、適法な調査手続となると解釈することはできないから、本件調査の手続には、本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当がある旨主張する。
     当審判所の調査の結果によれば、本件調査担当職員は、平成29年12月21日、請求人に対して本件調査により是正を要すると認められた事項を指摘し、修正申告の意向を確認した際に、修正申告に応じない場合の仮定の話や、税理士に対する損害賠償についての説明を受けたかどうかの確認など、本来の目的に沿わない発言をしたと認められる。また、本件調査担当職員は、平成30年2月13日、請求人が提出しようとしていた修正申告の内容に、当該指摘事項と異なる部分があったことを理由として、請求人の見解を原処分庁に対して明らかにした上で申告するよう話したと認められる。
     しかしながら、上記イのとおり、課税処分の取消事由となるのは、証拠収集手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等調査を全く欠くのに等しいとの評価を受けるような重大な違法を帯びる場合に限られ、証拠収集手続に影響を及ぼさない手続の違法は課税処分の取消事由とはならないものと解されるところ、上記認定の本件調査担当職員の発言等は、いずれも実地の調査後のものであって、調査を全く欠くのに等しいとの評価を受けるようなものとはいえず、かえって証拠収集手続に影響を及ぼさない性質というべきである。また、上記認定の本件調査担当職員の発言等は、本来の目的に沿わない点はあるものの、直ちに裁量権を逸脱・濫用した違法があるとまではいえないし、上記イのとおり、証拠収集手続に影響を及ぼさない事由は、違法であっても課税処分の取消事由にならないことからすれば、実地の調査後に本来の目的に沿わない発言等があったからといって、取消事由となる不当があるともいえない。
     したがって、本件調査手続に本件更正処分等を取り消すべき違法又は不当があるとは認められないから、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件更正処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されることから、当該処分の理由が、上記の趣旨を充足する程度に具体的に明示するものであれば、同項本文の要求する理由の提示として不備はないものと解するのが相当である。
  • ロ 検討及び請求人の主張について
     請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件更正通知書の理由の記載は、本件債務が確実と認められるものに該当しないと判断した根拠が不十分であり、また、他の共同相続人の課税価格に加算又は減算した財産の種類(名称)及び金額のみが記載され、加算又は減算した理由が付記されておらず、仮に、他の共同相続人に対する通知等により、請求人が事実上それを知ることができたとしても、処分理由は請求人に対して説明されなければならないから、本件更正処分の理由の提示には不備がある旨、さらに、本件更正処分の理由の提示は一貫していない旨主張する。
     しかしながら、本件更正通知書には、上記1の(4)のロの(イ)及び(ロ)のとおり、原処分庁が本件更正処分を行うに至った理由が具体的に明示され、請求人は課税価格の合計額を算出し、不服申立ての要否を判断することが可能といえるから、処分の名宛人の不服申立ての便宜という見地からも欠けるところはない。
     そうすると、本件更正処分の理由の提示は、行政手続法第14条第1項の趣旨目的を充足する程度に具体的に記載されているものといえる。
     なお、再調査決定書の記載内容は、再調査審理庁が再調査請求に対する判断を示したものにすぎず、答弁書の記載内容は、審査請求に係る原処分庁の主張にすぎないから、そもそも処分理由の提示には当たらない。
     したがって、本件更正処分の理由の提示に不備はないから、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 控除すべき債務の金額の評価について
       相続税法は、相続により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とするとともに(同法第11条の2)、被相続人の債務で相続開始の際に確実と認められるものがあるときは、その金額を相続により取得した財産の価額から控除することとし(同法第13条第1項第1号、同法第14条第1項)、その控除すべき債務の金額を、その時の現況によると規定している(同法第22条)。
       これらの規定は、相続税が財産の無償取得によって生じた経済的価値の増加に対して課せられる租税であるところから、その課税価格の算出に当たっては、相続によって取得した財産と相続人が相続により負担することとなる債務の双方について、それぞれの現に有する経済的価値を客観的に評価した金額を基礎とする趣旨のものであり、控除債務については、その性質上客観的な交換価値がないため、交換価値を意味する「時価」に代えて、その「現況」により控除すべき金額を評価する趣旨と解される(最高裁昭和49年9月20日第三小法廷判決・民集28巻6号1178頁)。
       したがって、弁済すべき金額の確定している金銭債務であっても、同金額が当然に当該債務の相続開始の時における消極的経済価値を示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、控除すべき金額を個別に評価しなければならない。
    • (ロ) 「確実と認められるもの」について
       相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」とは、相続開始日現在において単に債務が存在するのみならず、1債務者においてその債務の履行義務が法律的に強制されるもののほか、2事実的、道義的に履行が義務付けられ、あるいは、履行せざるを得ない蓋然性の表象があり、相続人がその債務を履行し相続財産の負担となることが必然的な債務をいうものと解される(広島高裁昭和57年9月30日判決・税資127号1140頁)。
  • ロ 認定事実
    • (イ) 本件建物及び別件建物の各固定資産税評価額について
       上記1の(2)のトのとおり、評価通達89は、家屋の価額を固定資産税評価額によって評価する旨定めるところ、この額は、地方税法上、各年1月1日時点(基準年度)における当該家屋の「適正な時価」(同法第341条第5号、同法第349条第1項)として評価決定されるものとされている。
       本件建物及び別件建物は、上記1の(3)のロ及びハの各(イ)のとおり、平成〇年新築であり、平成26年度の固定資産税評価額は、それぞれ順次、20,726,840円及び40,738,138円であった。
    • (ロ) 請求人及び二男Kに対する財産の承継に関する提案について
       本件被相続人及びJは、平成〇年〇月〇日付「財産棚卸のご報告と相続対策のご提案」ないし平成〇年〇月〇日付「第7回財産承継提案書」と題する書面により、税理士法人Mから、本件被相続人から請求人への財産の承継に係る本件提案を受けた。また、本件被相続人及びJは、本件被相続人から二男Kへの財産の承継に係る同様の提案を同時に受けていた(以下、両提案を併せて「本件各提案」という。)。
       本件各提案の内容は、要旨、次のとおりである。
      • A 建物は、相続税の計算上、固定資産税評価額により評価され、本件建物及び別件建物の平成26年度の各固定資産税評価額は、20,726,840円及び40,738,138円である。
         本件被相続人が、本件建物及び別件建物を請求人及び二男Kから売買により取得し、預貯金等の金融資産を本件建物及び別件建物に置き換えることで、相続税法上の評価額を圧縮できる。
      • B 同族関係者間の売買となるため、本件建物及び別件建物の「適正な時価」で売買が行われていることが重要である。建物の時価の算定方法としては、不動産鑑定士による鑑定価格や売買実例などを用いることもできるが、不動産所得の計算上使用している建物の取得価額から減価償却累計額を控除した残高である未償却残高(平成26年〇月末時点で本件建物につき43,020,653円、別件建物につき127,802,835円)を時価と考えることができる。当該各金額で本件建物及び別件建物を譲渡した場合には譲渡所得が生じないので、43,020,000円及び127,800,000円を、本件建物及び別件建物の各売買代金とする。
      • C 上記Bの各売買に伴い、本件被相続人から請求人及び二男Kに売買代金を支払う必要があるが、金銭消費貸借とすることも可能である。
      • D 仮に、本件被相続人が請求人及び二男Kに対して、上記Cの金銭消費貸借に基づく金銭債務の支払義務を負ったまま、本件被相続人に相続が発生した場合には、請求人及び二男Kがそれぞれ当該金銭債務を承継することにより、当該金銭債務は消滅する。
      • E 上記AないしDを前提として、仮に、本件被相続人に相続が発生し、請求人が本件建物及び金銭消費貸借契約に係る本件被相続人の請求人に対する金銭債務を承継し、二男Kが別件建物及び金銭消費貸借契約に係る本件被相続人の二男Kに対する金銭債務を承継した場合、本件建物及び別件建物の各売買代金額(各未償却残高相当額)と各相続税評価額(各固定資産税評価額)との間にそれぞれ差額が生じ、当該各差額により相続税の軽減効果が期待できる。
    • (ハ) 本件各契約及び別件各契約について
      • A 本件被相続人は、上記1の(3)のロ及びハのとおり、平成26年〇月〇日、請求人との間で本件各契約を、二男Kとの間で別件各契約を、それぞれ締結したところ、本件売買契約等は、本件各提案中、上記(ロ)のAの内容と同様に、本件建物及び別件建物を本件被相続人が取得するものであり、定められた本件代金及び別件代金は、上記1の(3)のロ及びハの各(ロ)のとおり、それぞれ順次43,020,000円及び127,800,000円で、本件各提案で示された上記(ロ)のBの各代金額といずれも同額とされていた。また、これらの金額は、上記(ロ)のAのとおり、本件各提案で示された上記(イ)の各固定資産税評価額を、それぞれ順次22,293,160円及び87,061,862円上回る金額となっていた。
      • B 上記(ロ)のCのとおり、本件各提案は、本件建物及び別件建物の代金を本件被相続人が支払わず、準消費貸借とすることも想定するものであったが、上記1の(3)のロ及びハの各(ハ)のとおり、本件被相続人は本件代金及び別件代金を支払わず、本件準消費貸借契約及び別件準消費貸借契約を締結した。
      • C 上記1の(3)のロ及びハの各(ハ)のとおり、本件準消費貸借契約及び別件準消費貸借契約において、借入期間はそれぞれ〇年と定められたが、本件被相続人は、これらの契約締結当時、〇歳であった。
    • (ニ) 本件各契約及び別件各契約締結後の状況等について
      • A 上記1の(3)のロ及びハの各(イ)のとおり、本件建物は平成〇年〇月〇日に、別件建物は平成〇年〇月〇日に新築されたところ、いずれも新築後から本件売買契約等の締結後に至るまで、請求人の住所は、本件建物の所在地にあり、二男K、本件被相続人及びJの住所は、別件建物の所在地とは異なるa市d町○−○にあった。
         なお、請求人は本件売買契約の前後を通じて本件建物において〇〇〇を営み居住していたため、その利用状況に変更はなく、また、証拠資料からは、別件建物の具体的な利用状況は明らかではないものの、その利用状況に変更があった気配はない。
      • B 上記1の(3)のイのとおり、本件において、本件各契約及び別件各契約締結後、約〇か月が経過した平成26年12月○日、本件相続が開始した。本件各提案は、上記(ロ)のDのとおり、本件被相続人が準消費貸借契約に基づく債務を負ったまま相続が発生することも想定するものであったが、本件相続開始日における本件債務の額及び別件債務の額は、上記1の(3)のニの(ロ)及び(ハ)のとおり、それぞれ順次42,482,250円及び126,202,500円となっており、本件相続開始日までに、それぞれ順次537,750円及び1,597,500円減少したにすぎなかった。また、本件債務の額(42,482,250円)と本件通達評価額(20,726,840円)及び別件債務の額(126,202,500円)と別件通達評価額(40,738,138円)の各差額は、それぞれ順次21,755,410円及び85,464,362円であった。
      • C 上記1の(3)のニのとおり、本件共同相続人が行った本件遺産分割は、本件各提案における上記(ロ)のEの財産承継と同様の内容であった。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 上記ロの(ロ)のAないしC並びに同(ハ)のA及びBのとおり、本件各契約及び別件各契約は、本件建物及び別件建物を、各固定資産税評価額を大きく上回る本件各提案と同額で本件被相続人が取得し、その代金を準消費貸借にするという本件各提案に沿った内容で、本件各提案がされた時期に、それぞれ締結されている。
       また、上記ロの(ロ)のDのとおり、本件各提案は、本件被相続人が上記準消費貸借に基づく債務を残して相続が発生することも想定しているところ、本件準消費貸借契約及び別件準消費貸借契約に基づく各債務は、同(ハ)のCのとおり、本件被相続人が借入期間を〇年として負ったものであって、生前に完済されることが予定されていたとは解されず、実際に、同(ニ)のBのとおり、大部分を残したまま、約〇か月で本件相続に至っている。加えて、本件建物及び別件建物は、本件売買契約等の締結後も利用状況に変わりがあった気配はなく、殊更本件売買契約等の締結当時に本件被相続人の所有としなければならなかったことをうかがわせるような事情は見当たらない。そして、上記ロの(ロ)のE及び同(ニ)のCのとおり、本件共同相続人は、本件各提案どおりの内容の本件遺産分割を行っている。
       以上の事情を総合すると、本件各契約及び別件各契約が、本件被相続人から請求人及び二男Kへの本件各提案に沿った財産承継を実現する趣旨・目的で締結されたことは明らかである。そして、その目的とされた財産承継とは、具体的には、本件建物及び別件建物について、本件通達評価額及び別件通達評価額に大きな上積みをして本件代金及び別件代金を定め、これを準消費貸借としたまま、相続開始後の遺産分割において、請求人に本件建物及び本件債務を、二男Kに別件建物及び別件債務をそれぞれ承継させて、混同により本件債務及び別件債務を消滅させるというものであり、その目的は、上記ロの(ニ)のCのとおり、実際に、本件遺産分割によって実現される結果となっている。
       このような本件各契約及び別件各契約の趣旨・目的及び結果からすると、本件債務及び別件債務は、本件共同相続人間において、いずれ相続の過程で混同により消滅させるべきものとして成立した債務であって、相続開始後の任意の弁済や履行の強制が予定されていたとは解し難い。
    • (ロ) 本件代金及び別件代金は、上記ロの(イ)のとおり、適正な時価として評価決定された本件通達評価額及び別件通達評価額に大きな上積みをしたものであるから、本件建物及び別件建物の経済的価値を大きく超えるものと推認される。そして、本件債務及び別件債務のうち本件建物及び別件建物の経済的価値を大きく超えて上積みした部分を、いずれ相続の過程で混同により消滅させるべき債務として成立させ、これを相続の対象としたからといって、それが客観的にみて相続によって無償取得した財産の経済的価値を減ずるものとは認め難い。
       また、上記イの(イ)のとおり、相続税が財産の無償取得によって生じた経済的価値の増加に対して課せられる租税であるところから、相続税法が定める債務控除は、相続人が相続により負担することとなる債務の現に有する経済的価値を客観的に評価する趣旨のものと解される。そうすると、本件債務及び別件債務のうち、本件建物及び別件建物の経済的価値を大きく超えて上積みした部分は、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎないものであるから、本件相続開始日における消極的経済価値を示すものとはいえない。
    • (ハ) 一方で、以上のような本件各契約及び別件各契約の趣旨・目的に従う限り、請求人及び二男Kは、相続によりそれぞれ本件建物及び別件建物を取得しながら、本件代金及び別件代金のうち本件建物及び別件建物の経済的価値に見合う部分の債権も失うべきこととなり、上記ロの(ニ)のCのとおり、実際にこれらを失う結果となっている。それにもかかわらず、請求人及び二男Kが、本件相続により本件建物及び別件建物を取得して経済的価値が増加したと認めることは困難であるから、上記各部分に係る本件債務及び別件債務は、本件相続開始日における消極的経済価値を示すものと認めるのが相当である。そして、本件建物及び別件建物の経済的価値は、相続税の課税上は、本件通達評価額及び別件通達評価額により把握されるものであり、上記のとおり、本件相続による本件建物及び別件建物の無償取得によって経済的価値の増加が認められないことが、本件債務及び別件債務の消極的経済価値として把握されるのであるから、本件相続開始日の現況における本件債務及び別件債務の消極的経済価値は、本件通達評価額及び別件通達評価額をもって把握するのが相当である。
       以上によれば、本件相続開始日の現況において、確実と認められる本件債務及び別件債務の額は、それぞれ順次本件通達評価額に相当する額20,726,840円及び別件通達評価額に相当する額40,738,138円となる。
  • ニ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のとおり、本件債務については、真正に成立した処分証書が存在しており、法的に履行が強制されるから、請求人がこれを承継し混同により消滅したとしても、本件相続税の課税価格の計算の基礎に算入されなければならず、その全額が相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当する旨主張する。
       本件債務が、本件共同相続人間で履行の強制を予定したものでなく、本件各契約の趣旨・目的に従う限り、請求人は、遺産分割により本件債務を混同により失う結果となると解されることは、上記ハのとおりであるが、本件各契約にはこれを義務付けるような定めは見当たらず、その結果の実現は、本件共同相続人の信義に委ねられていたと解する余地がある。そして、確かに、本件準消費貸借契約については、上記1の(3)のロの(ハ)のとおり、請求人及び本件被相続人の意思に基づき真正に成立した処分証書があるから、請求人が、本件各契約の趣旨・目的に沿った遺産分割に応じないなど上記結果を実現させようとせず、二男KやJに対し、本件債務の各法定相続分に相当する部分の履行の強制をすることが法的に不可能とまで断ずることは困難である。
       しかしながら、上記ハの(ロ)のとおり、本件債務の元となった本件代金が、本件建物の経済的価値を大きく超えるものと推認されることに変わりはないから、仮に、本件各契約が、本件共同相続人間で履行の強制も予定した経済的価値ある債権を請求人に取得させたものであるとすれば、その経済的価値ある債権は、本件建物の経済的価値と本件建物の経済的価値に上積みした部分の経済的価値が一体となったものであるので、そのような行為は、その上積みした部分について請求人に対して特別受益を与えたとみることができ、「相続財産の前渡し」があったと評価されるはずである。
       この場合、具体的相続分の計算では、請求人は本件各契約により上記上積みされた部分の経済的価値を取得したことが考慮されるため、その上積みされた部分に相当する相続財産を取得できず、他の相続人(配偶者及び子)が上積みされた部分に相当する財産を取得することになる(民法第903条《特別受益者の相続分》(平成30年法律第72号による改正前のもの。))。
       したがって、前渡しに係る持戻しにより、請求人が、本件相続により上記上積みされた部分の経済的価値を取得したこととなり、本件被相続人の相続財産は、その上積みされた分だけ増加することになるので、本件共同相続人間では本件債務の存在は、上積みされた部分の限度で相続により無償取得する財産の経済的価値を減ずることにはならない。
       仮に、本件債務の全額が履行の強制も予定した経済的価値を有するとすれば、そうであるにもかかわらずこれを本件債権と混同させて消滅させた本件遺産分割は、上記の前渡しに係る持戻しをしたのと実質的には異ならないということもできる。
       一方で、本件建物の経済的価値に相当する部分については、「相続財産の前渡し」に当たらないため、持戻しをする必要がないから、本件債務のうち本件建物の経済的価値に相当する部分は、相続により無償取得した財産の経済的価値を減ずることになり、その減じられる経済的価値は、本件建物の本件通達評価額で把握するのが相当と解される。
       そうすると、結局、本件債務には履行の強制があったとする請求人の主張を前提としてみても、本件相続開始日の現況における本件債務の消極的経済価値は、上記ハの(ハ)のとおり、本件通達評価額をもって把握するのが相当であり、本件相続開始日の現況において、確実と認められる本件債務の額は本件通達評価額と解されるから、請求人の主張には理由がない。
    • (ロ) 請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のとおり、本件被相続人は、別件建物の取得に伴い二男Kに多額の売買代金を支払うことで、将来的に兄弟間に紛争が生じることを心配して、本件提案に基づき本件各契約を締結し、本件建物を取得したものであり、本件各契約には、合理的な必要性や目的がある旨主張する。
       しかしながら、上記のような本件被相続人の主観的な動機によって、本件相続開始日の現況における本件債務の客観的な経済価値が異なるものとなるわけではないから、請求人の主張には理由がない。
  • ホ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、上記3の(3)の「原処分庁」欄のとおり、本件債務が履行を予定していないことから、その全額が確実と認められるものに当たらない旨主張する。
     しかしながら、本件建物の客観的価値に相当する部分については、混同により消滅することが予定されていても、本件相続開始日の消極的経済価値を認め得ることは、履行を前提とするかしないかに応じ、上記ハ及びニのとおりである。
     仮に、本件債務及び別件債務の全額の債務控除を否定する場合には、本件共同相続人が相続により無償取得する財産の経済的価値は、本件各契約及び別件各契約の締結前より、本件通達評価額及び別件通達評価額に相当する分だけ増大する結果となるが、本件各契約及び別件各契約は、上記ハのとおり、相続の過程でいずれ混同で消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎないものであって、これによって相続により無償取得する財産の客観的な経済的価値が変動するというのは、実質的にみても不合理である。
     したがって、原処分庁の主張は、本件通達評価額及び別件通達評価額に相当する額の債務控除を否定する限度で理由がない。

(4) 本件更正処分の適法性について

上記(3)のとおり、確実と認められる本件債務及び別件債務の額は、本件相続開始日の現況において、それぞれ順次20,726,840円及び40,738,138円と認められる。これに基づき、請求人の本件相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、別表2の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 そうすると、本件更正処分のうち、同欄の課税価格及び納付すべき税額を上回る部分の金額は、いずれも違法であるから、本件更正処分は、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
 なお、本件更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(5) 本件賦課決定処分の適法性について

本件更正処分は、上記(4)のとおり、その一部を取り消すべきであるから、本件賦課決定処分の基礎となる税額は〇〇〇〇円となる。
 また、これらの税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについては、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、請求人の過少申告加算税の額は〇〇〇〇円となり、本件賦課決定処分の金額に満たないから、本件賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(6) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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