(令和4年2月7日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、ふるさと納税を行った地方公共団体から返礼品を受けていたところ、原処分庁が、請求人の受けた返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当するとして、所得税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分庁の算定した当該経済的利益の価額は客観性や合理性を欠くものであるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 所得税法第34条《一時所得》第1項は、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう旨規定し、同条第2項及び同条第3項は、一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額50万円(当該残額が50万円に満たない場合には、当該残額)を控除した金額とする旨規定している。
  • ロ 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定し、同条第2項は、同条第1項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする旨規定している。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、別表1に掲げる複数の地方公共団体(以下「本件各団体」という。)に対し、所得税法第78条《寄附金控除》第2項第1号、地方税法(平成31年法律第2号による改正前のもの。以下同じ。)第37条の2《寄附金税額控除》第1項第1号及び同法第314条の7《寄附金税額控除》第1項第1号に規定する寄附(以下、これらの規定による寄附を総称して「ふるさと納税」という。)を行った。
     請求人は、ふるさと納税を行ったことにより、平成29年及び平成30年(以下、これらを併せて「本件各年」という。)において、本件各団体からふるさと納税に係る返礼品(以下、単に「返礼品」という。)の送付を受け、また、その返礼品の一部を、請求人が指定する者へ送付するよう本件各団体に依頼した(以下、請求人又は当該指定する者へ送付された各返礼品を「本件各返礼品」といい、本件各返礼品の送付された請求人の住所地及び当該指定する者の住所地を併せて「請求人住所地等」という。)。
  • ロ 請求人は、平成29年分及び平成30年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、青色の各確定申告書に別表2の1欄のとおり記載して、F税務署長に対し、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ハ 請求人は、平成30年5月10日、平成29年分の所得税等について、別表2の2欄のとおりとする修正申告書をF税務署長に対し提出した。
  • ニ F税務署長所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、請求人の本件各年分の所得税等に係る調査において、本件各団体へ本件各返礼品に係る照会を行った。そして、本件調査担当職員は、当該照会をした本件各団体から回答を受け、本件各返礼品の名称(品目)、本件各返礼品の請求人住所地等への発送年月日及び到着年月日並びに本件各団体による本件各返礼品の評価額(以下「本件各団体各評価額」という。)などを把握し、本件各団体各評価額を基にして本件各年分の本件各返礼品に係る経済的利益の価額を別表1のとおり算定した(以下、当該算定された本件各返礼品に係る経済的利益の価額を「原処分庁認定額」という。)。
     なお、一部の本件各団体は、本件各団体各評価額に送料相当額(本件各返礼品を請求人住所地等に送付するための送料の額をいう。以下同じ。)が含まれている旨回答した。
  • ホ 請求人は、令和2年2月13日、本件各年分の所得税等について、別表2の3欄のとおりとする各修正申告書をF税務署長に対し提出した。
  • ヘ F税務署長は、令和2年2月27日付で、別表2の4欄のとおり、平成30年分の所得税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分をした。
  • ト F税務署長は、原処分庁認定額が一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額に該当するとして、令和2年3月31日付で、別表2の5欄のとおり、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • チ 請求人は、令和2年4月8日、住所地をa市d町から肩書地へ異動したので、これに伴い、原処分庁はF税務署長からE税務署長となった。
  • リ 請求人は、令和2年6月29日、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、審査請求をした。

2 争点

 本件各年分の本件各返礼品に係る一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は幾らか。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
本件各年分の本件各返礼品に係る一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、次のとおり、本件各団体各評価額を基にして算定した原処分庁認定額によるのが相当である。 原処分庁認定額は、下記(1)のとおり、本件各返礼品に係る経済的利益の価額として適正な金額ではなく、仮に一時所得の金額を計算するとしても、総収入金額に算入すべき金額は、下記(2)によるのが相当である。
 また、原処分庁認定額については、その価額の算定以外にも、その収入すべき時期について下記(3)のとおり誤りがある。
(1) 本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、請求人が本件各返礼品を取得した日における本件各返礼品の価額となり、この場合の「価額」については、次のとおり、本件各団体各評価額を基にして算出した原処分庁認定額によるのが相当である。
  • イ 本件各団体各評価額は、本件各団体による本件各返礼品の調達価格に該当するものであり、当該調達価格は、不特定多数の独立当事者間の自由な取引において通常成立する価額と認められる。
  • ロ そして、本件各団体が本件各返礼品を調達し請求人住所地等に送付するまでの間に、本件各返礼品の価額に大幅な変動が生じることは通常想定されないことからすれば、当該調達価格をもって請求人が本件各返礼品を取得した日における本件各返礼品の価額とすることには合理性がある。
(1) 原処分庁認定額の基となった本件各団体各評価額は、同じ内容の返礼品の場合でも、その評価額が異なるなど、その算定がずさんであり、客観性や合理性を欠くものである。
 また、請求人が本件各返礼品を取得した日と本件各団体が本件各返礼品を調達した日は同じではないから、本件各団体による本件各返礼品の調達価格を請求人が本件各返礼品を取得した日における本件各返礼品の価額とみることはできない。
 加えて、原処分庁認定額は、送料が不明なものを除き、送料を含まない金額として算定され、このことは原処分庁が返礼品本体の価格と運賃などを正確に調査せずに原処分を行ったことをうかがわせるものであり、信頼できるものではない。
(2) 本件各返礼品に係る経済的利益は、所得税法第36条第1項に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」に該当し、また、請求人は本件各返礼品を本件各団体からの贈与により取得したものと認められるから、その収入すべき時期は、請求人が本件各返礼品を取得した日となり、この場合の「取得した日」については、本件各返礼品が請求人住所地等に到着した日(当該到着した日が不明な場合は、本件各団体が本件各返礼品を送付した日の2日後)によるのが相当である。  (2) 本件各返礼品に係る一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、事業の広告宣伝のために支払われる賞品の評価と同様に、所得税基本通達36−20《事業の広告宣伝のための賞金を受けた場合の経済的利益の評価》及び同通達205−9《賞品の評価》の(7)の定めに基づき、原処分庁認定額に60%を乗じた価額相当額(いわゆる処分見込相当額)によるべきである。
  (3) 原処分庁認定額は、本件各返礼品のうち、年末に発送されたもので翌年に受け取ったもの、又は到着年月日が不明なものまでその発送された年分の総収入金額に算入されており、その収入すべき時期に誤りがあるものがある。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

所得税法第36条第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定し、同条第2項は、同条第1項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする旨規定している。
 ここでいう「価額」とは、取得等の時における客観的交換価値、換言すれば、自由市場において市場の事情に通じ、かつ、特別な動機を持たない多数の売主と買主が存在する場合に通常成立すると認められる価額、すなわち時価をいうものと解される。

(2) 認定事実

原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件各返礼品に係る経済的利益の価額に関するもの
    • (イ) 本件各団体は、ふるさと納税の返礼品の内容をホームページ等で公開しており、ふるさと納税をする者はその金額に応じた返礼品を選択することができる。
    • (ロ) 本件調査担当職員は、別表1に掲げる本件各返礼品のうち、本件各団体各評価額に送料相当額が含まれている旨回答があったもので、当該回答から送料相当額が確認された別表1の1の順号5(別表3の1の順号1)並びに別表1の2の順号10及び53(別表3の2の順号16、17及び29)の本件各返礼品について、本件各団体各評価額から送料相当額を差し引いた後の金額により原処分庁認定額を算定した。
    • (ハ) 当審判所は、本件各団体に対し、本件各返礼品に係る調査を行った。その結果、要旨、次のことが認められた。
      • A 本件各団体各評価額は、本件各団体が本件各返礼品の調達に当たって現に支出した金額である(以下、ふるさと納税を受けた地方公共団体が返礼品の調達に当たって現に支出した金額を「返礼品調達価格」といい、当該調達先の事業者を「調達事業者」という。)。
      • B 本件各団体各評価額に送料相当額が含まれている旨回答した本件各団体は、返礼品の調達から発送に至るまでの業務を一括して調達事業者に委託し、当該委託に係る費用を一括して当該調達事業者に支出していた。
      • C 別表1に掲げる本件各返礼品のうち、別表3に掲げる本件各返礼品(ただし、別表3の1の順号1及び8並びに同表の2の順号16、17、29及び30の本件各返礼品を除く。)については、本件各団体による見直し等の結果、本件各団体各評価額(これらについては原処分庁認定額も同額である。)の算定に誤りがあった。
    • (ニ) 本件各返礼品について、本件各団体と調達事業者との間で不当に高額又は低額で取引されたといった事情は見受けられない。
  • ロ 本件各返礼品に係る経済的利益の価額の収入すべき時期に関するもの
    • (イ) 地方公共団体が返礼品を発送するに当たっては、主に宅配便が利用されている。一般に、宅配便の荷物は、受取人が不在の場合、宅配業者において、おおむね7日間程度保管され、その保管期間経過後は発送人に返送されるが、本件各返礼品について、本件各団体に返送された事実は認められない。
    • (ロ) 本件調査担当職員は、上記1の(3)のニのとおり、本件各団体が回答した本件各返礼品の請求人住所地等への発送年月日及び到着年月日を基にして、以下のとおりの年月日(又は年分)を、本件各返礼品に係る経済的利益の価額の収入すべき日(又は年分)として、原処分庁認定額を算定した。
      • A 具体的な到着年月日の回答があったものは、その年月日。
      • B 具体的な発送年月日のみ回答があったものは、本件各団体の最寄りの郵便局と請求人住所地等までの間の輸送に要する標準的な日数を考慮し、その発送日の2日後の年月日(なお、「1月中」あるいは「3月中」とのみ回答があった数件の返礼品については、その月の属する年分。)。
      • C 具体的な到着年月日及び発送年月日の回答がなかったものは、本件各団体にその到着した年分を再度確認するなどして認定した年月日又は年分。
    • (ハ) 当審判所は、上記(ロ)のBのうち本件各年の12月中に発送された本件各返礼品及び同Cの本件各返礼品について、調達事業者及び本件各団体に対する調査を行った。
       その結果、別表1の1の順号34の返礼品(別表3の1の順号7)は平成30年1月中に、また、別表1の2の順号4のうち一部の返礼品(別表3の2の順号2)は平成29年12月31日に、それぞれ請求人住所地等に到着していたことが認められた。

(3) 検討

  • イ はじめに
    • (イ) 返礼品は、個人がふるさと納税をした場合、地方公共団体がその謝礼として当該ふるさと納税をした個人に送付するものであり、当該個人は、法人(地方公共団体)からの贈与により、当該返礼品を取得したものと認められる。
       また、返礼品に係る所得(経済的利益)に対して、所得税法第9条(令和3年法律第11号改正前のもの)《非課税所得》の規定の適用はなく、その他の法令等においても所得税を課さないとする旨の規定はない。そして、上記1の(2)のロのとおり、所得税法上、各種所得の金額の計算上収入すべき金額又は総収入金額に算入すべき金額には、金銭以外の物その他経済的な利益の価額も含まれる。
       そうすると、返礼品に係る所得(経済的利益)は、課税所得に該当し、また、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれの類型にも当たらず、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであるから、一時所得に該当する。よって、本件各返礼品に係る所得(経済的利益)は一時所得に該当する。
    • (ロ) 本件の争点は、上記2のとおりであるところ、具体的には、1本件各返礼品に係る経済的利益の価額及び2当該価額の収入すべき時期が争いとなっているので、以下これらの点を検討した上で争点について判断する。
  • ロ 本件各返礼品に係る経済的利益の価額について
    • (イ) 上記イの(イ)のとおり、返礼品は、ふるさと納税を受けた地方公共団体が、その謝礼として当該ふるさと納税をした個人に送付するものであるから、当該地方公共団体は、募集に要する費用の額や当該返礼品について、予算計画、返礼品の選定、調達個数、市場調査、事業者との折衝などを踏まえて、ふるさと納税の金額に応じた返礼品を選定し調達するものと推測することができる。このため、当該返礼品を選定し調達を行う地方公共団体が、当該返礼品の価値を最も理解しているものと考えられる。
    • (ロ) また、上記イの(イ)のとおり、ふるさと納税をした個人は、地方公共団体からの贈与により返礼品を取得するのであるが、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、当該贈与による当該個人に供与されることとなる経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した返礼品調達価格をその算定の基礎とすることが相当である。
       そして、返礼品調達価格については、地方公共団体と調達事業者との合意により成立したものであり、上記(2)のイの(イ)のとおり、地方公共団体がふるさと納税の金額に応じた返礼品をホームページ等で公開していることを踏まえると、当該合意された金額について、地方公共団体と調達事業者との間に特別な動機を挟む余地はなく、通常、地方公共団体が当該返礼品をその調達時における時価を超える金額で調達することはないと考えられる。
       なお、本件各返礼品について、不当に高額又は低額で取引されたといった事情が認められないことは、上記(2)のイの(ニ)のとおりである。
    • (ハ) さらに、地方公共団体は、通常、調達事業者による返礼品の発送をもって、当該調達事業者へその代金(返礼品調達価格)を支払っているものと考えられ、当該代金は当該発送により確定するものと認められる。そうすると、地方公共団体が返礼品を調達した時期とふるさと納税をした者が当該返礼品を取得する時期は、近接していると認められ、この二つの時期を同時期であるとみても特段不合理ではない。
    • (ニ) これらのことからすると、本件各返礼品に係る返礼品調達価格は、本件各団体が返礼品を調達した時における当該返礼品の客観的交換価値(時価)を示すものと評価することができるから、請求人は、本件各返礼品の送付を受け、これを取得することにより、本件各返礼品につき返礼品調達価格に相当する経済的利益を受けたことになる。そして、上記(2)のイの(ハ)のAのとおり、本件各団体は、本件各団体各評価額を本件各返礼品の返礼品調達価格であるとしていることを踏まえると、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各団体各評価額によるのが相当である。
       なお、上記(2)のイの(ハ)のCのとおり、本件各団体各評価額の一部に誤りがあり、正しくは、別表3の「審判所認定額」欄のとおりである。
  • ハ 請求人の主張について(本件各返礼品に係る経済的利益の価額についての主張)
    • (イ) 請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)のとおり、1本件各団体各評価額は、同じ内容の返礼品の場合でも、その評価額が異なるなど、客観性、合理性を欠くものであり、また、2請求人が本件各返礼品を取得した日と本件各団体が本件各返礼品を調達した日は同じではないから、原処分庁認定額は本件各返礼品に係る経済的利益の価額として適正な金額ではない旨主張する。
       しかしながら、経済的利益の「価額」に相当する「客観的交換価値」とは、上記(1)のとおり、自由市場において市場の事情に通じ、かつ、特別な動機を持たない多数の売主と買主が存在する場合に通常成立すると認められる価額、すなわち時価をいうものと解されている。この点、本件各返礼品は、本件各団体により別個に調達され、その調達価格もその調達事業者との折衝などを踏まえ、本件各団体と当該調達事業者との間で個別に合意されるものであることからすれば、同じ内容の返礼品の場合でも、それらの価額がその合意に至る経緯、事情などによって異なることがあっても、そのこと自体は特段不合理であるとはいえない。そして、上記(2)のイの(ニ)のとおり、本件各返礼品については、不当に高額又は低額に取引された事情は認められず、その他にそれらの価額を不適当とする特別な事情が存在したとも認められないことからすれば、本件各団体各評価額のいずれの価額も客観的交換価値とみなし得る合理的な範囲内の価額であるということができる。
       また、請求人が本件各返礼品を取得した時期と本件各団体が本件各返礼品を調達した時期を同時期とみても特段不合理でないことは、上記ロの(ハ)のとおりである。
       したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
    • (ロ) 請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)のとおり、原処分庁認定額は、送料相当額の扱いが一致しておらず、信頼できるものではないから、本件各返礼品に係る経済的利益の価額として適正な金額ではない旨主張する。
       この点、原処分庁は、上記(2)のイの(ロ)のとおり、一部の本件各返礼品(別表3の1の順号1並びに同表の2の順号16、17及び29に掲げる本件各返礼品)について、本件各団体各評価額(送料相当額を含めた金額)から送料相当額を差し引いた後の金額により、原処分庁認定額を算定したことが認められる。
       ところで、上記(2)のイの(ハ)のBのとおり、本件各団体各評価額に送料相当額が含まれている旨回答した本件各団体は、当該調達から発送に至るまでの業務を一括して調達事業者に委託する方法により当該返礼品を調達し、また、当該委託に係る費用を当該調達事業者に一括して支出していたことが認められる。
       この場合、上記ロで述べたとおり、地方公共団体が返礼品の調達・提供のために支出した返礼品調達価格が、請求人に供与されることとなる経済的利益の価額であると認められることから、本件各団体各評価額に送料相当額が含まれている旨回答があった本件各返礼品については、当該送料相当額を差し引かずに本件各返礼品に係る経済的利益の価額を算定するのが相当である。
    • (ハ) 請求人は、上記3の「請求人」欄の(2)のとおり、仮に一時所得の金額を計算するとしても、本件各返礼品に係る一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、事業の広告宣伝のために支払われる賞品の評価と同様に、所得税基本通達36−20及び同通達205−9の(7)の定めに基づき、原処分庁認定額に60%を乗じた価額相当額によるべきである旨主張する。
       しかしながら、返礼品は、上記イの(イ)のとおり、ふるさと納税を受けた地方公共団体が、その謝礼として当該ふるさと納税をした個人に送付するものであり、事業の広告宣伝のために支払われる賞品ではないから、その価額を評価するに当たって、当該賞品に適用される各通達の定めによるべきである旨の請求人の主張は、その前提を欠くものであり採用することができない。
  • ニ 本件各返礼品に係る経済的利益の価額の収入すべき時期について
    • (イ) 返礼品は、上記イの(イ)のとおり、ふるさと納税を受けた地方公共団体が、その謝礼として当該ふるさと納税をした個人に送付するものであるが、当該返礼品の内容(例えば果物などの季節もの)によっては、また、その発送年月日が年末であったような場合には、当該個人がふるさと納税をした年分と当該返礼品の送付を受ける年分とが必ずしも一致するものではない。そして、同(イ)のとおり、返礼品に係る所得(経済的利益)は一時所得に該当し、また、一時所得に係る総収入金額の収入すべき時期は、一般的にその支払を受けた日であることを踏まえると、本件各返礼品に係る経済的利益の価額の収入すべき時期は、請求人が本件各返礼品を贈与により受けた(取得した)日、具体的には、本件各返礼品が請求人住所地等に到着した日(又は到着したと合理的に認められる日)の属する年分とするのが相当である。
    • (ロ) そこで、この点について検討すると、まず、具体的な到着年月日が分かる本件各返礼品については、その年月日をもって請求人住所地等に到着した日とするのが相当である。次に、その到着年月日は不明であるものの具体的な発送年月日が特定されている本件各返礼品のうち、本件各年の1月から11月までの間に発送されたものについては、上記(2)のロの(イ)の事情を考慮すれば、その発送された年中には請求人住所地等に到着したものと認めるのが相当である。
    • (ハ) 一方で、上記(ロ)のいずれにも該当しない本件各返礼品(到着年月日は不明であるものの具体的な発送年月日が特定されている本件各返礼品のうち、本件各年の12月に発送されたもの並びに具体的な発送年月日及び到着年月日のいずれも不明なもの)については、上記(2)のロの(ハ)のとおり、当審判所がその到着年月日を調査した結果、一部のものについては、別表3(同表の1の順号7及び9、同表の2の順号2及び31)のとおり、原処分庁が請求人住所地等に到着したと認定した日又は年分に誤りがあり、その収入すべき時期(年分)に誤りがあることが認められた。
       この点、請求人は、どの地方公共団体のどの返礼品に収入すべき時期に係る誤りがあるか具体的に主張しないものの、当該誤りがあることは上記のとおりであるから、この限りでその収入すべき時期に誤りがある旨の請求人の主張には理由がある。
  • ホ 小括
     上記ロ及びニのとおり、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各団体各評価額によるのが相当であり、また、当該価額の収入すべき時期は、本件各返礼品が請求人住所地等に到着した日(又は到着したと合理的に認められる日)の属する年分とするのが相当である。これらに基づき、上記(2)のイの(ハ)のC及び同ロの(ハ)のとおりの当審判所の調査の結果を踏まえ、本件各年分の本件各返礼品に係る一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額を算定すると、別表3の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
  • ヘ 本件各年分の本件各返礼品に係る一時所得の金額について
     別表3の「審判所認定額」欄のとおり算定した金額を基にして、本件各年分の本件各返礼品に係る一時所得の金額を算定すると、別表4のとおりとなる。

(4) 本件各更正処分の適法性について

  • イ 平成29年分の更正処分について
     当審判所で認定した平成29年分の一時所得の金額は、別表4の「平成29年分」欄の4欄のとおり○○○○円となる。そして、この金額を基に請求人の同年分の所得税等の納付すべき税額を計算すると、別表5の「平成29年分」欄の7欄のとおり○○○○円となり、同金額は同年分の所得税等の更正処分の金額を上回る。
     また、平成29年分の所得税等に係る更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は見当たらない。
     したがって、平成29年分の更正処分は適法である。
  • ロ 平成30年分の更正処分について
     当審判所で認定した平成30年分の一時所得の金額は、別表4の「平成30年分」欄の4欄のとおり○○○○円となる。そして、この金額を基に請求人の同年分の所得税等の納付すべき税額を計算すると、別表5の「平成30年分」欄の7欄のとおり○○○○円となり、同金額は同年分の所得税等の更正処分の金額を下回るから、当該更正処分は、別紙「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。
     なお、平成30年分の所得税等に係る更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は見当たらない。

(5) 本件各賦課決定処分の適法性について

次のとおり、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

  • イ 平成29年分の賦課決定処分について
     上記(4)のイのとおり、平成29年分の所得税等の更正処分は適法であり、また、当該更正処分により請求人の納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。
     そして、当審判所においても、平成29年分の所得税等に係る過少申告加算税の額は、同年分の所得税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分における金額と同額であると認められる。
  • ロ 平成30年分の賦課決定処分について
     上記(4)のロのとおり、平成30年分の所得税等の更正処分は、その一部が取り消されるものの、同年分の所得税等に係る過少申告加算税の基礎となる税額は、同年分の所得税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分の基礎となる税額と同じ○○○○円(ただし、国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第3項の規定により、10,000円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)となり、また、当該税額の計算の基礎となった事実が当該更正処分の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。
     そして、当審判所においても、平成30年分の所得税等に係る過少申告加算税の額は、同年分の所得税等に係る過少申告加算税の賦課決定処分における金額と同額であると認められる。

(6) 結論

よって、本審査請求は、平成30年分の更正処分については理由があるから、その一部を取り消すこととし、その他の原処分については理由がないから、これを棄却することとする。

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