(令和4年6月24日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受けて相続税の修正申告をしたところ、原処分庁が、他の相続人が行った相続財産の隠蔽の行為は請求人の行為と同視することができるとして重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該他の相続人には隠蔽の行為はないことから、請求人自身にも隠蔽の行為はないとして、重加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ F(以下「本件被相続人」という。)は、平成29年11月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡し、本件被相続人に係る相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
  • ロ 本件相続に係る相続人は、本件被相続人の配偶者であるG(以下「本件母」という。)及び長男である請求人の2名である。
     なお、本件母は、本件相続開始日において○歳であり、株式の取引経験はなかった。
  • ハ 請求人及び本件母は、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告について、申告書の作成を含めた税務代理をH税理士法人に依頼した。
  • ニ H税理士法人のJ税理士(以下「本件税理士」という。)は、相談に訪れた請求人及び本件母に対し、相続財産を把握するため、本件被相続人宛の郵便物を調べるとともに、証券会社から株式に係る残高証明書を取得して提出するよう指示した。
  • ホ 本件母は、上記ニの指示を受け、自宅に届いた配当通知書等の郵便物の内容を確認することにより把握した本件被相続人名義、本件被相続人の実父であり請求人の祖父であるK(平成12年8月○日相続開始。以下「本件祖父」という。)名義、本件被相続人の実母であり請求人の祖母であるL(平成13年8月○日相続開始。以下「本件祖母」といい、本件祖父と併せて「本件先代」という。)名義及び請求人名義の各株式について、銘柄、株式数及び配当金額等を2冊のノート(以下「本件各ノート」という。)に記載していた。
  • ヘ 本件母は、平成31年3月25日付で、別表1の順号10ないし順号12の本件祖父名義の株式について、同年4月10日付で、同順号1の本件被相続人名義の株式について、株主名簿管理人である信託銀行に対して管理口座を本件母名義の口座へ振り替える手続(以下「本件口座振替手続」という。)を行った。
     また、平成31年4月10日付で、別表1の順号1の本件被相続人名義の株式について、単元未満株式の買取りを求める手続(以下「本件買取請求手続」という。)を行った。

(4) 審査請求に至る経緯等

  • イ 請求人は、本件相続税について、本件母と共同で相続税の申告書に、別表2の「当初申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した(以下、当該申告を「本件当初申告」といい、本件当初申告に係る申告書を「本件当初申告書」という。)。
     なお、本件当初申告において申告した株式は、いずれも本件被相続人名義の株式であった。
  • ロ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和元年9月から同年12月にかけて本件相続税の調査(以下「本件調査」という。)を行い、本件母に対し、本件各ノートに記載があるにもかかわらず、本件税理士に株主名簿管理人が発行する所有株式数証明書等が提出されず、相続財産として本件当初申告書に計上されなかった株式がある旨を指摘した。
  • ハ 請求人は、本件調査担当職員の指摘を受けて、本件相続税について、別表2の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を令和元年12月26日に提出した。
  • ニ 原処分庁は、請求人に対し、令和2年1月24日付で、本件相続税について、別表2の「賦課決定処分」欄のとおり、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
  • ホ 請求人は、上記ニの各賦課決定処分のうち、重加算税の賦課決定処分に不服があるとして令和2年4月15日に審査請求をした。
  • ヘ その後、請求人は、本件相続税について、別表2の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求を令和2年12月24日にしたところ、原処分庁は、令和3年3月22日付で、別表2の「更正処分」欄のとおり、相続税の更正処分及び重加算税の変更決定処分をした(以下、この変更決定処分によりその一部が取り消された後の上記ニの賦課決定処分を「本件重加算税賦課決定処分」という。)。
     なお、本件当初申告書に計上されず、本件重加算税賦課決定処分の対象とされた株式は、別表1のとおりである(以下、同表の順号1ないし順号9の本件被相続人名義の株式を併せて「本件本人名義株式」、同順号10ないし順号28の本件祖父名義の株式を併せて「本件祖父名義株式」、同順号29ないし順号44の本件祖母名義の株式と本件祖父名義株式を併せて「本件先代名義株式」、同順号45の請求人名義の株式を「本件請求人名義株式」、同順号1ないし順号45の株式を併せて「本件各株式」とそれぞれいう。)。

2 争点

 請求人に、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
以下のとおり、本件母には、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった。
 そして、請求人は、本件当初申告書を作成するための株式に係る残高証明書の収集を本件母に委任していたところ、その選任及び監督につき請求人に過失がないとする特段の事情はないことから、請求人の行為は、本件母の行為と同視できるものと認められる。
 よって、請求人にも、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった。
以下のとおり、本件母には、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかったから、本件当初申告に必要な財産の把握を本件母に委任していた請求人にも、同項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかった。
(1) 本件各株式が相続財産であることの認識について (1) 本件各株式が相続財産であることの認識について
イ 本件母は、本件相続が開始した後、名義人ごとの株式一覧を本件各ノートに記載するなどして、本件各株式を含む相続財産を管理していた。
 そして、本件各ノートには、証券会社に保管がない株式に関して、株主名簿の管理機関である信託銀行名や口座振替手続の具体的な記載がされていることに加え、本件母は、本件当初申告の後に、別表1の順号1及び順号10ないし順号12の株式について、本件口座振替手続や本件買取請求手続を行っていた。
 そうすると、本件母は、証券会社に保管されていない株式が存在し、株主名簿の管理機関である各信託銀行に保管されていたことも十分に認識していた。
イ 本件各ノートは、本件母が、自宅に届いた有価証券に係る郵便物を記載したメモにすぎず、本件当初申告のために作成したものではない。
 本件母は、確かに本件口座振替手続や本件買取請求手続を行っているものの、これは、本件当初申告の後に、金融機関に対し、亡くなった者の名義の株式をどうしたらいいか相談したところ、金融機関から書類が送られてきたので、どの様な結果になるか分からないまま書類に署名して提出したものである。
ロ また、本件税理士は、本件相続税の相談に応じた際、請求人及び本件母に対し、本件被相続人以外の名義となっている財産であっても、原資が本件被相続人によるものや本件被相続人が管理運用していたものなどは、本件被相続人の財産となることの説明をした。 ロ また、本件各株式のうち本件先代名義株式は、本件被相続人の弟(以下「本件叔父」という。)が、所有者が明確でなく本件当初申告書に記載すべきでない旨述べたことから、H税理士法人のM税理士(以下、本件税理士と併せて「本件税理士ら」という。)に伝えたところ、結果として、本件当初申告書に計上されなかったものである。
ハ したがって、本件母は、遅くとも本件当初申告の時点において、本件各株式が本件被相続人の相続財産である旨を認識していたと認められる。 ハ したがって、本件母は、本件当初申告の時点において、本件各株式が本件被相続人の相続財産である旨を認識していたわけではない。
(2) 隠蔽又は仮装の行為について
 本件税理士は、請求人及び本件母に対し、上記(1)のロの説明をした際、株式等について、証券会社から残高証明書を取得するよう指示していた。
 本件各株式に関する資料及び本件各株式の内容を記載した本件各ノートがあるにもかかわらず、本件母は、本件各株式に関する資料及び本件各ノートを本件税理士に提出しなかった。
(2) 隠蔽又は仮装の行為について
 本件母は、証券会社から入手した株式に係る残高証明書で、本件相続に係る株式を全て網羅していると思っていた。
 また、本件母が本件各ノートを作成した理由は上記(1)のイのとおりであり、そもそも本件各ノートを本件税理士に提出する必要があるとも考えていなかった。
 なお、本件母は、本件調査担当職員から、有価証券に係る記録などはないか聞かれ、自ら本件各ノートを提示しているところ、このことは本件母に相続財産を隠蔽する意図がなかったことを裏付ける事実である。
(3) 特段の行動があったといえるかについて
 以上の事情によれば、本件母は、本件各株式が本件被相続人の相続財産である旨を十分認識していたにもかかわらず、本件税理士に本件各株式に係る資料等を渡さずに、本件税理士をして本件各株式を計上しない本件当初申告書を作成、提出させたものであって、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたものである。
(3) 特段の行動があったといえるかについて
 以上の事情によれば、本件母には、当初から相続財産を過少に申告する意図はなく、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしていないし、本件母に本件各株式の存在を隠蔽する意図はなかった。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

通則法第68条第1項は、過少申告をした納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、その納税者に対して重加算税を課する旨規定している。
 この重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠蔽、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠蔽、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の上記賦課要件が満たされるものと解すべきである(最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決・民集49巻4号1193頁参照)。
 また、通則法第68条第1項は、重加算税の賦課要件として、隠蔽又は仮装行為の行為者について「納税者」と規定しているところ、重加算税制度の趣旨に鑑みれば、納税者以外の者が隠蔽又は仮装行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができるときには、当該納税者に対して重加算税を賦課することができると解される。これを相続税についてみると、納税者が、相続税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の把握を他の共同相続人に委任した場合に、当該共同相続人が、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部について隠蔽又は仮装の行為を行い、それに基づいて過少申告が行われたときは、その共同相続人の選任及び監督について、納税者に過失がないと認められる等の特段の事情がある場合を除き、当該共同相続人の行為を納税者の行為と同視して、納税者に重加算税を賦課することができると解するのが相当である。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件被相続人は、生前に、本件税理士に対して、所得税及び復興特別所得税の確定申告を依頼していた。また、本件税理士は、本件先代を被相続人とする相続税の申告の際の関与税理士でもあった。
  • ロ 請求人及び本件母は、平成29年12月から平成30年2月頃までのいずれかの日に、H税理士法人の事務所において、本件税理士に対して、本件被相続人の財産について本件被相続人から何も聞かされておらず、どのような相続財産があるか把握していないことを伝えた。本件税理士は、上記1の(3)のニの指示をするとともに、本件被相続人以外の名義であっても、原資が本件被相続人のものや、本件被相続人が管理運用していたものには、本件被相続人の財産になるものがある旨説明した。
  • ハ 本件税理士は、上記ロの説明を口頭で行い、請求人及び本件母に対し、その内容を記載した書面等は交付しなかった。
  • ニ 請求人は、平成30年3月頃に、H税理士法人の事務所において、本件当初申告書の提出までのスケジュールについて、本件税理士から、スケジュール表を交付されて説明を受けた。その際、本件被相続人の財産のうち、預貯金及び有価証券については請求人及び本件母が把握し、不動産については本件税理士が把握するとの役割が決められた。
  • ホ 本件税理士は、後日、請求人に対し、本件先代の相続に係る遺産分割協議書を本件被相続人の財産を把握する際の参考とするよう指示し、その写しを郵送したが、それ以上の具体的な指示はしなかった。
  • ヘ 請求人は、多忙を理由として、本件被相続人宛の郵便物から本件被相続人の財産を把握して残高証明書を取得することは本件母に委ね、自らは、M税理士から依頼を受けて、M税理士が自宅を訪れた際に本件母が取得した残高証明書や証券会社から送付された取引残高報告書(以下、証券会社が発行した残高証明書と併せて「残高証明書等」という。)を渡す役割を担った。
  • ト 本件被相続人と本件母は、住民票上、平成17年6月14日にa市b町○−○から同町△−△に転居したこととされているが、実際に同日、同町△−△に転居したのは本件被相続人のみであり、本件母は同町○−○に請求人と共に居住し続けていた(以下、同町○−○を「本件被相続人旧住所」といい、同町△−△を「本件被相続人新住所」という。)。
  • チ 本件母は、平成29年12月頃、本件被相続人宛の郵便物を受け取るために、本件被相続人新住所に郵送される本件被相続人宛の郵便物を本件被相続人旧住所に届くように転送手続をした。また、本件母は、本件被相続人宛の郵便物を本件被相続人旧住所で保管していた。
  • リ 本件母は、本件税理士から上記ロの指示を受けた後、本件被相続人宛の郵便物により判明した、本件被相続人との取引実績がある証券会社(N社、P社、Q社及びR社)に対し、本件被相続人名義の残高証明書等の交付申請を行うなどし、平成30年3月までにこれらを取得した。
     また、本件母は、本件税理士からの指示はなかったものの、本件被相続人宛の郵便物などにより本件被相続人を株主名簿に記載していることが判明したS社に対しても、本件被相続人名義の所有株式数証明書の交付申請を行い、平成30年3月にこれを取得した。
     なお、本件母が取得した残高証明書等及び所有株式数証明書の中に本件本人名義株式に係るものはなく、上記のほかに、請求人及び本件母が証券会社や株主名簿管理人に対し、本件被相続人名義の上場株式に係る残高証明書等及び所有株式数証明書の交付申請を行った事実は確認できない。
  • ヌ S社が管理する本件被相続人名義の株式には、本件被相続人新住所が住所地として登録されているものと、本件被相続人旧住所が住所地として登録されているものがあったが、上記リで本件母が取得した所有株式数証明書に記載された株式は、いずれも本件被相続人新住所が住所地として登録されていた。
  • ル 本件本人名義株式のうち上場株式は、別表1の順号1ないし順号4の株式であるところ、これらの株式はいずれの証券会社の口座でも管理されておらず、そのうち、同順号1及び順号3の株式は、S社が株主名簿管理人、同順号2の株式は、T社が株主名簿管理人、同順号4の株式は、U社が株主名簿管理人となっており、いずれの株式についても、本件被相続人旧住所が本件被相続人の住所地として登録された上で、各株主名簿管理人の下で管理されていた。
     なお、本件相続開始日において、別表1の順号1及び順号4の株式のほかに、これらと同一銘柄の本件被相続人名義の株式があったが、当該同一銘柄の株式については、本件母は、上記リのとおり、それぞれ、S社又はQ社から所有株式数証明書又は残高証明書等を取得していた。
  • ヲ 本件本人名義株式のうち別表1の順号5ないし順号9の株式は、いずれも非上場株式であり、同順号5ないし順号8の株式は当該株式の発行会社に、同順号9の株式は株主名簿管理人に、それぞれ所有株式数証明書など所有株式数の分かる書類を交付申請する必要があったが、本件母は、いずれの株式についても所有株式数証明書などの交付申請を行わなかった。
     なお、本件税理士らは、請求人及び本件母に対し、非上場株式について、証券会社ではなく、株式の発行会社等から所有株式数の分かる書類を直接取得する必要がある旨の注意喚起を行っていなかった。
  • ワ 本件母は、本件先代名義株式及び本件請求人名義株式について、証券会社や株主名簿管理人に対し、残高証明書等及び所有株式数証明書の交付申請を行わなかった。
  • カ 請求人及び本件母は、上記リの交付申請などによって取得した全ての残高証明書等及び所有株式数証明書を、M税理士を介するなどして、本件税理士に提出した。
     また、本件被相続人名義の株式のうち、上記リの交付申請などによって残高証明書等及び所有株式数証明書を取得したと認められるもの以外のものについて、請求人及び本件母が、残高証明書等又は所有株式数証明書を取得したにもかかわらず、本件税理士らに提出しなかったものがあった事実は確認できない。
  • ヨ M税理士は、請求人から残高証明書等の資料を受け取るために4、5回ほど請求人及び本件母の自宅を訪れたが、その際、当該資料の取得手続の進捗状況やほかに申告するものがないかなどの確認はしたものの、相続財産の範囲について改めて注意喚起したり、資料の提出がない財産を具体的に指摘したりすることはなかった。
  • タ 本件税理士は、上記カのとおり提出された残高証明書等及び所有株式数証明書のうち、残高証明書等に基づいて本件当初申告書を作成した。上記カのとおり提出された残高証明書等及び所有株式数証明書は、全て本件当初申告書に添付されていたが、当該所有株式数証明書に記載された株式については、同様に提出された残高証明書等にも記載されていた2銘柄を除き、本件当初申告書に計上されなかった(これら本件当初申告書に所有株式数証明書の添付があるものの本件当初申告書に計上されなかった株式については、本件重加算税賦課決定処分の対象とはなっておらず、上記1の(4)のニの過少申告加算税の賦課決定処分の対象となっている。)。
  • レ 請求人及び本件母が、本件税理士と面談したのは、上記ロ及びニの説明の際並びに申告書の最終確認の際の計3回であり、本件税理士が、請求人及び本件母に対し、相続財産の範囲を改めて注意喚起したり、資料の提出がない財産を具体的に指摘したりすることはなかった。
  • ソ 本件先代に係る相続の状況等
    • (イ) 本件相続開始日において、本件先代名義のままとなっている株式(本件先代名義株式)が別表1の順号10ないし順号44のとおり存在した。本件先代名義株式は、発行会社の合併等により、本件先代の相続に係る遺産分割協議書の記載とはその銘柄が異なるものがあったほか、本件先代名義株式の株式数は、当該遺産分割協議書に記載された株式数から大幅に変動(ほとんどが減少)していた。本件税理士は、本件相続開始日から本件相続税の申告期限までの間に、本件叔父から、本件先代名義株式の帰属について相談を受けたが、本件税理士らでは解決できないので自分たちで解決するよう回答した。
    • (ロ) 請求人は、平成30年3月から同年5月頃、本件叔父から、本件先代名義株式の帰属の協議のため、本件先代名義株式に係る郵便物を本件叔父に交付するよう依頼され、本件叔父に当該郵便物を交付した。しかし、本件当初申告までに、請求人及び本件母と本件叔父との間で、本件先代名義株式の帰属についての協議は整わなかった。
    • (ハ) 本件相続開始日において、本件被相続人と本件叔父との間では、本件先代名義株式のほかにも、清算未了の預金が多額に存在したが、これについては、本件当初申告までに清算が完了したため、本件税理士は、当該清算により本件被相続人の財産とされた範囲の預金を本件当初申告書に計上した。
  • ツ 本件各ノートにおける記載について
    • (イ) 本件各ノートには、本件被相続人名義、本件先代名義及び請求人名義の各株式の銘柄、株式数、配当金額、配当受領期間及び株主優待の内容などが手書きで記載されているものの、本件各ノートの記載からは、各記載がされた日付は明らかではない。本件各ノートのページの中には、その冒頭部分に株式の名義人の名前などの表題が、その下に当該名義人に係る株式等がそれぞれ記載されているページもあるが、全てのページにおいて名義人や証券会社ごとの分類がなされているわけではなく、株式の名義人が明らかでない記載を含むページも多数存在する上、同じ株式に関する配当等の情報が複数回記載されているものもある。また、各ページは、名義人や証券会社ごとに整理されず、順不同であった。
       本件各ノートには、株式以外の金融資産や不動産等の財産に関する情報の記載もあるが、本件当初申告の際に相続財産とされた財産の全てが記載されているわけではない。また、金融資産とは無関係と思われる商品名や格言などの書き込みもされている。
    • (ロ) 本件各ノートのうちページの冒頭部分に本件被相続人の名前が表題として記載された複数のページにおいて、本件当初申告書に相続財産として計上された株式と共に本件本人名義株式についても銘柄、株式数及び配当金額等の記載があるが、各株式の記載の順番に規則性は認められない。
    • (ハ) 本件各ノートのうちページの冒頭部分に本件祖父の名前が表題として記載されたページには、本件祖父名義株式について銘柄、株式数及び配当金額等の記載がある。
    • (ニ) 本件各ノートのうちページの冒頭部分に本件祖母の名前が表題として記載されたページには、本件祖母名義の株式について銘柄、株式数及び配当金額等の記載がある。
    • (ホ) 本件各ノートのうちページの冒頭部分に本件被相続人の名前と請求人の名前が併せて表題として記載されたページには、本件被相続人名義の株式と共に、当該株式と同一銘柄の請求人名義の株式についても、その銘柄、株式数及び配当金額等の記載があり、その銘柄の記載の先頭部分に、請求人を表す「○」の記載がある。なお、本件各ノートのうち冒頭部分に「配当」と記載されたページには、「○○(F)」(「F」は、本件被相続人を表す。)及び「○○」の記載がある。
  • ネ 請求人及び本件母は、本件税理士らに対し、本件各ノートを提出しなかった。
  • ナ 本件母は、本件調査における本件調査担当職員とのやり取りの中で、特定の銘柄の株式が話題となった際、当該株式について自身が本件各ノートに記載した覚えがあったことから、資料がある旨申し出て、本件各ノートを本件調査担当職員に提出した。

(3) 検討

上記(2)のヘのとおり、請求人は、本件当初申告書を作成するための相続財産の把握及び相続財産として把握した株式の残高証明書等の収集を本件母に委任し、株式に関し、本件母が把握して収集した資料に基づいて本件当初申告を行っていることから、請求人につき、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったといえるか否か判断する前提として、以下、本件母に、同項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるか否かを検討する。

  • イ 本件本人名義株式について
     本件本人名義株式は、本件各ノートに記載があるものの、本件母は、本件税理士らに対し、本件本人名義株式に係る所有株式数証明書、本件各ノートや本件被相続人宛の郵便物等の資料を提出しなかった。
     もっとも、本件各ノートに関しては、上記(2)のツの(イ)及び(ロ)のとおり、本件本人名義株式を含む本件被相続人名義の株式について乱雑に記載されている上、本件被相続人名義の株式に関する情報についても、本件各ノートの様々なページに分散して、整理されないまま記載されており、こうした状況からすれば、本件各ノートは、本件母において単なる備忘メモ的なものとして使用されていたと考えられる。
     そして、上記(2)のルによれば、本件本人名義株式のうち別表1の順号1ないし順号4の株式については、本件被相続人旧住所が住所地として登録されていたという共通点がある。別表1の順号1及び順号3の株式については、上記(2)のリ及びヌのとおり、同じ株主名簿管理人から所有株式数証明書を取得した他の株式とは登録された住所地が異なっていたことから、所有株式数証明書に記載されず、本件被相続人旧住所で再度交付申請する必要があると本件母に認識されないまま、見逃された可能性がある。また、上記(2)のルのとおり、別表1の順号2の株式については、当該株式を保管する証券会社がなく、株主名簿管理人も信託銀行ではないなど、他の株式とは異なっていたことから、所有株式数証明書が取得されないまま見逃された可能性がある。さらに、別表1の順号1及び順号4の株式については、株主名簿管理人又は証券会社からそれぞれ同一銘柄の他の株式に係る所有株式数証明書又は残高証明書等を既に取得済みであったことから、同順号1及び順号4の株式についてのみ、別途、所有株式数証明書を取得する必要があることを認識されないまま、見逃された可能性がある。加えて、上記(2)のヲのとおり、別表1の順号5ないし順号9の非上場株式に係る所有株式数証明書などの交付申請は、株式の発行会社又は株主名簿管理人に依頼する必要があったが、本件母は、本件税理士らから、証券会社とは別に株式の発行会社等に交付申請しなければならない場合があることについて教示されておらず、むしろ、上記1の(3)のニのとおり、株式については証券会社から残高証明書等を取得して提出するよう指示を受けて、本件税理士の指示どおりに証券会社から残高証明書等を取得したのであるから、これで本件被相続人名義の株式については全て把握できたと誤認した可能性も否定できない。
     これらの事情や、上記のとおり、本件各ノートが単なる備忘メモ的なものであったと考えられることからすると、本件各ノートの記載内容がよく顧みられないまま交付申請が行われたことにより、本件本人名義株式の所有株式数証明書などが取得されずに、本件当初申告書に計上されなかった可能性も否定できない。
     以上に加えて、上記(2)のリ、カ、タ及びナのとおり、本件母は、本件被相続人宛の郵便物から判明した証券会社に管理委託されていた本件被相続人名義の株式については、全て残高証明書等を取得して本件当初申告書に相続財産として計上し、本件税理士から指示のなかった所有株式数証明書についても、株主名簿管理人から一部取得し、取得したものは全て本件税理士らに提出し、本件調査の際には、本件調査担当職員に対して、調査の一助とすべく自発的に本件各ノートを提出している。また、本件被相続人名義の株式のうち、残高証明書等及び所有株式数証明書を取得したと認められるもの以外のものについても、請求人及び本件母がこれらを取得したにもかかわらず、本件税理士らに提出しなかったものがあったとは認められない。そして、本件母が取得して、請求人及び本件母が本件税理士らに提出した所有株式数証明書については、その一部は本件税理士により所有株式数証明書の株式が本件当初申告書に計上されなかったものの、所有株式数証明書自体は全て本件当初申告書に添付されていた。
     これらを併せ検討すると、本件母において、本件被相続人名義の株式に係る残高証明書等及び所有株式数証明書などを漏れなく取得しているか、本件当初申告書に計上した財産と本件税理士らに提出した残高証明書等及び所有株式数証明書の内容とが一致しているかなどの確認を怠ったことは認められるものの、本件本人名義株式を相続税の申告財産から除外するために、あえて所有株式数証明書などを取得しなかった又は本件税理士に本件各ノート等の資料を提出しなかったとまでは認め難い。その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件母が、本件本人名義株式に係る所有株式数証明書などを取得せず、本件税理士らに本件各ノート等の資料を提出しなかった行為について、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に出たものと認めるに足る事情は認められない。
  • ロ 本件先代名義株式について
     本件先代名義株式は、本件各ノートに記載があるものの、本件母は、本件税理士らに対し、本件先代名義株式に係る所有株式数証明書や本件各ノート等の資料を提出しなかった。
     しかしながら、上記(2)のソのとおり、本件先代名義株式を含む本件先代の相続に係る財産については、本件被相続人と本件叔父との間で清算が完了しないまま本件相続が開始したこと、未清算であった本件先代の相続に係る財産のうち預金については、本件当初申告までに清算が完了し、当該清算に基づいて本件当初申告書において相続財産に計上されていること、本件先代名義株式は、その種類も多い上、本件先代の遺産分割協議書の記載から株式数等に変動もあって、当該株式を把握すること自体困難であったこと、本件当初申告書を提出するまでに、請求人及び本件母と本件叔父との間で、本件先代名義株式の帰属について協議が整わなかったことが認められる。また、上記(2)のホ、ヨ及びレのとおり、請求人及び本件母は、本件税理士から本件先代の相続に係る遺産分割協議書の写しを渡されたものの、それ以上の具体的な指示を受けていないこと、本件税理士らから本件先代名義株式について資料提出を促されなかったことなどの各事情があった。これらのことから、本件母において、本件叔父との間でその帰属が具体的に決まらない状態であった本件先代名義株式について、本件当初申告に当たり、本件被相続人に帰属するものであることが明らかになるまで申告する必要がないと誤解した可能性は否定できない。
     なお、上記(2)のロのとおり、本件税理士は、本件母に対し、本件被相続人以外の名義であっても本件被相続人が管理運用していたものは相続財産になり得る旨の説明をしているものの、当該説明について書面も交付せず口頭で説明したにすぎないことや、その後の本件税理士らの対応等からすれば、本件母が上記のような誤解をしたとしても不思議ではない。
     さらに、上記イのとおり、本件各ノートは単なる備忘メモ的なものにすぎない上、上記(2)のナのとおり、本件母は、本件調査の際には、本件調査担当職員に対して調査の一助とすべく自ら本件各ノートを提出するなどしている。
     以上の事情を勘案すると、本件母において、本件先代名義株式を相続税の申告財産から除外するために、あえて所有株式数証明書を取得しなかったものとは認め難く、その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件母が、本件先代名義株式に係る所有株式数証明書を取得せず、本件税理士らに本件各ノート等の資料を提出しなかった行為について、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に出たものと認めるに足る事情は認められない。
  • ハ 本件請求人名義株式について
     本件請求人名義株式は、本件各ノートに記載があるものの、本件母は、本件税理士らに対し、本件請求人名義株式に係る残高証明書等及び所有株式数証明書並びに本件各ノート等を提出しなかった。
     しかしながら、本件母は、請求人から、本件請求人名義株式に係る株主優待券を借り受けたことがある旨答述していることや、上記イのとおり、本件各ノートが単なる備忘メモ的なものにすぎないことなどに照らすと、本件税理士が、本件母に対し、本件被相続人以外の名義であっても原資が本件被相続人のものや、本件被相続人が管理運用していたものは相続財産になり得る旨口頭で説明したことがあった点を考慮しても、本件母が、本件請求人名義株式は請求人に帰属するものと考えて、残高証明書等及び所有株式数証明書を取得しなかった可能性は否定できない。
     さらに、上記(2)のナのとおり、本件母は、本件調査の際には、本件調査担当職員に対して調査の一助とすべく自ら本件各ノートを提出するなどしている。
     以上の事情を勘案すると、本件母において、本件請求人名義株式を相続税の申告財産から除外するために、あえて残高証明書等及び所有株式数証明書を取得しなかったものとは認め難く、その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件母が、本件請求人名義株式に係る残高証明書等及び所有株式数証明書を取得せず、本件税理士らに本件各ノート等の資料を提出しなかった行為について、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に出たものと認めるに足る事情は認められない。
  • ニ 小括
     以上によれば、本件母が、本件税理士らに対し、本件各株式に係る資料を提出せず、本件各株式を本件当初申告書に計上しなかったことについて、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものとは認められないから、本件母に、重加算税の賦課要件である通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ない。
     よって、請求人は、本件当初申告書を作成するための相続財産の把握等を本件母に委任し、株式に関し、本件母が把握して収集した資料に基づいて本件当初申告を行っていることから、請求人についても通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件である「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないといわざるを得ない。

(4) 原処分庁の主張について

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、本件本人名義株式のうち別表1の順号1の株式及び本件祖父名義株式のうち同順号10ないし順号12の株式について、本件当初申告の後に本件母が、本件口座振替手続や本件買取請求手続を行っていることからも、本件各株式について、相続財産としての認識があった旨主張する。
 しかしながら、上記(3)のイのとおり、本件母は、本件税理士らの指示どおりに証券会社から残高証明書等を取得して提出していたため、本件本人名義株式は、本件当初申告書に計上されていると思い込んでいた可能性が否定できないことに加え、本件母において、本件被相続人の相続財産となる株式の把握が適切にできていなかった状況がうかがわれることからすれば、意図せず本件当初申告書に計上されなかった可能性も十分に考えられるところであり、別表1の順号1の株式につき、本件母が、本件当初申告の後に本件口座振替手続や本件買取請求手続を行っていたとしても、本件当初申告の際に相続財産として認識しながら、あえて申告財産から除外したとまでは認められない。
 また、本件先代名義株式をめぐっては、本件当初申告の時点において本件叔父との間で協議が整っておらず、そのため本件当初申告において申告の必要がないと誤解した可能性があることは上記(3)のロのとおりであって、本件当初申告の後に、どのような経緯で、本件先代名義株式の一部である別表1の順号10ないし順号12の株式のみについて本件口座振替手続が行われることとなったのかも定かでないことからすれば、これらの株式につき、本件母が、本件当初申告の後に本件口座振替手続を行っていたとしても、相続財産として認識しながら、あえて申告財産から除外したとまでは認められない。
 原処分庁の主張する「特段の行動」とは、結局のところ、本件母が本件各株式について本件各ノートに記載することで本件各株式を本件被相続人の相続財産と明確に認識した上で、過少申告の意図を持って、あえて本件各ノートや本件各ノートの記載の基となった資料を本件税理士らに渡さなかったことをいうものであるところ、本件母は、本件調査担当職員及び当審判所の質問に対して、要領を得ない回答が多く、本件母自身の申述及び答述からは、本件各ノートの作成目的等を明らかにすることはできない。
 それゆえ、本件各ノートの記載事項自体からこれらを明らかにするしかないが、上記(3)のイのとおり、本件各ノートは、その記載状況からみて、単なる備忘メモ的なものであったと考えられることからすれば、本件母が、本件税理士らを含む第三者に提出する目的で本件各ノートを作成したものではないことは推認できる。このような本件各ノートの性質に加えて、上記(2)のナのとおり、本件調査において、本件調査担当職員との間で、特定の株式の銘柄が話題になった際には、本件母自ら資料がある旨申し出て、本件調査担当職員に本件各ノートを提出したこと、同リ及びカのとおり、請求人及び本件母は、交付申請などにより取得した残高証明書等及び所有株式数証明書を本件税理士らに提出している状況などから、あえて本件各ノートや本件各ノートの記載の基となった資料を本件税理士らに提出していなかったとまでは認められないことなど、これら本件当初申告書の提出の前後の請求人及び本件母の行為や言動に鑑みると、本件母が、単に本件各ノートや本件各ノートの記載の基となった資料を本件税理士らに提出しなかったことをもって、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとみることは困難であり、当該事実につき過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するものとも認められない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(5) 本件重加算税賦課決定処分の適法性について

上記(3)のとおり、本件母が本件各株式を本件当初申告の相続財産に含めなかったことについて、本件母に通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があるとは認められないことから、請求人についても、同項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実は認められず、同項の重加算税の賦課要件を満たしていない。
 他方、請求人につき、本件各株式が修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第1項に規定する要件を満たしているところ、同条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、本件重加算税賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件重加算税賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法があるから、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すのが相当である。

(6) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すこととする。

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