(令和5年2月22日裁決)

《裁決書(抄)》

(1) 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の令和元年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、住宅借入金等特別税額控除額を控除できないとして、令和3年10月29日付で更正処分等を行ったのに対し、請求人が、令和4年3月8日に、原処分の全部の取消しを求めて審査請求をした事案である。

(2) 請求人は、原処分に係る通知書(以下「本件通知書」という。)を受け取ったのは令和4年2月28日であるから、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間内にされたものである旨主張するのに対し、原処分庁は、本件通知書は令和3年11月1日に請求人の住所に送達があったことから、本審査請求は、国税通則法(以下「通則法」という。)第77条《不服申立期間》第1項に規定する不服申立期間の経過後にされた不適法な審査請求である旨主張する。

(3) 通則法第12条《書類の送達》第1項は、国税に関する法律の規定に基づいて税務署長が発する書類は、郵便等による送達又は交付送達により、その送達を受けるべき者の住所又は居所に送達する旨規定している。
 また、通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項本文及び同項第1号ロは、国税に関する法律に基づく処分で、税務署長がした処分に不服がある者は、その選択により、国税不服審判所長に対する審査請求をすることができる旨、同法第77条第1項本文は、不服申立ては、処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して3月を経過したときはすることができない旨及び同項ただし書は、正当な理由があるときは、この限りでない旨、それぞれ規定している。

(4) 書類の送達については、その送達を受けるべき者が必ずしも現実にその書類を受領し了知することを要するものではなく、その書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれれば足りるものと解されている。
 これを本件についてみると、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、原処分庁は、令和3年9月29日、同日付でした請求人の令和元年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に係る通知書を簡易書留郵便により請求人の住所(b市d町○−○)へ発送したものの、同年10月11日、受取人不在による保管期間満了を理由に返戻されたことから、改めて同月29日付で原処分を行い、本件通知書を特定記録郵便により請求人の住所へ発送したと認められる。
 ここにいう特定記録郵便とは、日本郵便株式会社が提供する郵便サービスの一つであり、同社は差し出された郵便物の引受けを記録し、その引受けの記録として差出人に受領証を交付するほか、当該郵便物は受取人の郵便受箱に配達され、差出人がその配達状況をインターネット上で確認できるというものである。そして、本件通知書は、D郵便局において、令和3年10月29日に特定記録郵便として引き受けられ、同年11月1日午前11時56分に配達が完了した旨記録されているところ、本件通知書が返戻された事実はなく、当審判所の調査の結果によっても、本件通知書が誤配達された又は上記の記録よりも遅れて配達されたことをうかがわせる証拠は見当たらない。そうすると、本件通知書は、令和3年11月1日午前11時56分に、請求人の住所に設置された郵便受箱に配達されたと認められ、請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価できることから、本件通知書は、令和3年11月1日に請求人に送達されたと認められる。

(5) 以上によれば、本審査請求は、本件通知書が送達された令和3年11月1日の翌日から起算して3月を経過した後である令和4年3月8日にされたものであり、また、請求人が法定の不服申立期間内に本審査請求をしなかったことについて、通則法第77条第1項ただし書に規定する正当な理由があるといえる事情は認められない。

(6) したがって、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間を経過した後にされた不適法なものである。

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