(令和5年2月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、主に不動産賃貸物件の仲介業務を行っていた審査請求人(以下「請求人」という。)が、不動産の売買取引及び不動産の売買の仲介取引に係る収入金額等を申告しなかったところ、原処分庁が、不動産の売買取引及び不動産の売買の仲介取引についての事実の隠蔽仮装が認められるとして、重加算税の賦課決定処分を行ったことから、請求人が、事実の隠蔽仮装はないとして、原処分のうち過少申告加算税又は無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は、別紙のとおりである。なお、別紙で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 なお、以下では、所得税及び復興特別所得税を併せて「所得税等」といい、所得税等に係る原処分がされた各年分を併せて「本件各年分」といい、本件各年分の所得税等を「本件各所得税等」という。また、消費税及び地方消費税を併せて「消費税等」といい、その課税期間はその暦年をもって表記する(例えば、平成29年1月1日から同年12月31日までの課税期間を「平成29年課税期間」という。)。平成29年課税期間、平成30年課税期間及び令和2年課税期間の各課税期間の消費税等を「本件各消費税等」という。

  • イ 請求人について
     請求人は、遅くとも平成22年10月1日から、Fの屋号で宅地建物取引業者として、不動産賃貸物件の仲介、広告、リフォーム及び管理等の事業(以下「不動産賃貸仲介等」という。)を営む個人である。
     不動産賃貸仲介等に関する損益は、請求人が「業績管理表実績」と題する表(以下「本件業績管理表」という。)に各月及び各年分の売上高、売上原価及び販売管理費等の必要経費の金額を入力し、これを集計して管理していた。
  • ロ 本件各年分の請求人の収入について
    • (イ) 請求人は、平成29年において、不動産賃貸仲介等による収入を得ていた。
       また、請求人がGから不動産の売買の仲介手数料615,600円を領収した旨の請求人名義の平成29年7月19日付の領収書(以下「本件領収書」という。)が存在する(以下、当該仲介手数料に係る不動産の売買の仲介を「平成29年売買仲介取引」という。なお、平成29年売買仲介取引の存否については当事者間に争いがある。)。平成29年売買仲介取引に係る売上高、売上原価及び販売管理費等の必要経費の金額は、本件業績管理表に入力されていた売上高、売上原価及び販売管理費等の必要経費の金額に含まれていなかった。
    • (ロ) 請求人は、平成30年において、不動産賃貸仲介等による収入を得ていた。
       また、請求人は、HとJの間の不動産の売買の仲介取引を行い(以下「平成30年売買仲介取引」といい、平成29年売買仲介取引と併せて「本件各売買仲介取引」という。)、平成30年8月2日、HとJのそれぞれから平成30年売買仲介取引に係る仲介手数料を得た。平成30年売買仲介取引に係る売上高、売上原価及び販売管理費等の必要経費の金額は、本件業績管理表に入力されていた売上高、売上原価及び販売管理費等の必要経費の金額に含まれていなかった。
    • (ハ) 請求人は、令和元年及び令和2年において、不動産賃貸仲介等による収入を得ていた。
       また、請求人は、令和元年8月以降、Hの助言を受けて不動産売買取引(以下「本件各売買取引」という。)を行うようになった。本件各売買取引に係る売上高、売上原価その他の諸費用の金額は、本件業績管理表に入力されていた売上高、売上原価及び販売管理費等の金額に含まれていなかった。請求人は、請求人が売却した不動産については、その売却の都度、売却物件ごとに売上高、売上原価、その他の諸費用及び利益を集計した表(以下「本件売買計算表」という。)を作成していた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)は、令和3年10月1日、請求人に対し、平成30年分から令和2年分までの所得税等及び平成30年課税期間から令和2年課税期間までの消費税等を対象として同月13日に請求人の事業所において実地の調査を行う旨を通知し、同日、請求人に対する実地の調査を開始した(以下、請求人に対する一連の調査を「本件調査」という。)。
     調査担当職員は、令和3年10月15日、請求人に対し、平成29年分の所得税等及び平成29年課税期間の消費税等を調査対象期間に加える旨を通知した。
     請求人は、本件調査が開始されたことを受け、K税理士を令和2年分以前の所得税等及び令和2年課税期間以前の消費税等の税務代理人に選任し、令和3年10月18日、原処分庁に対して、その旨の税務代理権限証書を提出した。
  • ロ 本件調査に係る事前通知がされるまでの請求人の本件各所得税等及び本件各消費税等を含む平成29年課税期間から令和2年課税期間までの各消費税等の確定申告の状況については、以下のとおりであった。
    • (イ) 本件各所得税等について
      • A 請求人は、原処分庁に対し、別表1の「確定申告」欄の各「年月日」欄記載の年月日に、それぞれ同表の「確定申告」欄のとおり記載した本件各所得税等の各確定申告書を提出した。
         令和元年分の所得税等の確定申告書は、通則法第11条《災害等による期限の延長》及び国税通則法施行令第3条《災害等による期限の延長》第3項に基づく新型コロナウイルスに係る個別指定による申告期限延長の適用を受けた期限内申告書であったが、それ以外の各年分の所得税等の確定申告書は法定申告期限の経過後に提出された期限後申告書であった。
      • B 本件各所得税等の各確定申告は、本件業績管理表に基づいて行われたものであり、本件各所得税等に係る総所得金額の計算上、本件各売買取引や本件各売買仲介取引に係る収入金額、売上原価及びその他の諸費用の額は含まれていなかった。
    • (ロ) 平成29年課税期間から令和2年課税期間までの消費税等について
      • A 請求人は、原処分庁に対し、別表2の「確定申告」欄の各「年月日」欄記載の年月日に、「平成29年課税期間」欄から「令和元年課税期間」欄までの各「確定申告」欄のとおり記載した消費税等の各確定申告書を提出した。
         令和元年課税期間の消費税等の確定申告書は、上記(イ)のA記載の令和元年分の所得税等の確定申告書と同様に申告期限延長の適用を受けた期限内申告書であったが、それ以外の各課税期間の消費税等の確定申告書は法定申告期限の経過後に提出された期限後申告書であった。
         請求人は、本件調査に係る事前通知が請求人に対してされた令和3年10月1日までに令和2年課税期間に係る消費税等の確定申告書を提出しなかった。
      • B 平成29年課税期間及び平成30年課税期間の消費税等の各確定申告は、本件業績管理表に基づいて行われたものであり、課税資産の譲渡等の対価の額や課税仕入れ等の税額の計算上、本件各売買仲介取引に係る収入金額、売上原価及びその他の諸費用の額は含まれていなかった。
      • C 原処分庁は、請求人に対し、平成30年8月31日付で別表2の「確定申告」欄の「平成29年課税期間」欄の「無申告加算税の額」欄のとおり平成29年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の賦課決定処分をし、令和元年6月28日付で別表2の「確定申告」欄の「平成30年課税期間」欄の「無申告加算税の額」欄のとおり平成30年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の賦課決定処分をした。
  • ハ 本件調査に係る調査結果の内容の説明後から原処分までの経過について
     請求人は、令和3年11月30日、原処分庁に対し、K税理士が同日に受けた本件調査に係る調査結果の内容の説明及び修正申告又は期限後申告の勧奨に従い、別表1の「修正申告」欄のとおり記載した本件各所得税等の各修正申告書、別表2の「修正申告」欄の「平成29年課税期間」欄及び「平成30年課税期間」欄のとおり記載した平成29年課税期間及び平成30年課税期間の消費税等の各修正申告書並びに同表の「確定申告」欄の「令和2年課税期間」欄のとおり記載した令和2年課税期間の消費税等の確定申告書(期限後申告書)をそれぞれ提出した。
     なお、令和元年課税期間の消費税等については、本件調査の結果、控除対象仕入税額の増加により還付すべきものと認められた(令和4年1月17日付で減額更正)。
  • ニ 原処分について
    • (イ) 原処分庁は、請求人に対し、令和3年12月16日付で次の各処分をした。
      • A 別表1の「賦課決定処分」欄記載の平成29年分及び平成30年分の各所得税等に係る各重加算税賦課決定処分、令和元年分の所得税等に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分並びに令和2年分の所得税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
      • B 別表2の「賦課決定処分」欄記載の平成29年課税期間及び平成30年課税期間の各消費税等に係る各重加算税賦課決定処分並びに令和2年課税期間の消費税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
    • (ロ) 上記(イ)の各処分のうち、本件各所得税等及び本件各消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)は、請求人が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての事実を隠蔽仮装したことを理由とするものであった。
  • ホ 審査請求について
     請求人は、本件各賦課決定処分の一部(過少申告加算税又は無申告加算税相当額を超える部分)に不服があるとして、令和4年2月25日に審査請求をした。

2 争点

(1) 請求人は、平成29年売買仲介取引を行って当該取引に係る仲介手数料を得たか否か(争点1)。

(2) 請求人は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をしたか否か(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(請求人は、平成29年売買仲介取引を行って当該取引に係る仲介手数料を得たか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人は、以下のとおり、平成29年売買仲介取引を行って当該取引に係る仲介手数料を得た。 請求人は、以下のとおり、平成29年売買仲介取引を行っておらず、当該取引に係る仲介手数料も得ていない。したがって、平成29年売買仲介取引についての事実の隠蔽仮装はない。
イ 平成29年売買仲介取引については、本件領収書が存在しており、請求人は、Gから平成29年売買仲介取引に係る仲介手数料を受領している。
 請求人は、本件領収書について、Hから金額が白地の領収書を渡すよう頼まれて渡したもので、本件領収書に係る取引には関与していないし、本件領収書に記載された金額についても同人から周知されておらず、売上金額を承知していなかった旨主張する。しかしながら、請求人は、Hから本件各売買取引に係る資金を無利息で借用している旨の申述もしており、当該申述に鑑みると、請求人の本件領収書についての主張は不自然で信ぴょう性に乏しいものである。
イ 平成29年売買仲介取引は、請求人が行ったものではなく、関与もしていない。
 平成29年売買仲介取引については、本件領収書が存在するが、本件領収書は、請求人がHからの依頼を受けて同人に白地の領収書を交付した後、同人において金額等を記載して利用したものである。請求人は、Hにおける本件領収書の交付について何ら関与しておらず、同人から本件領収書に記載する金額を周知されていなかったから、当該金額も承知していなかった。
ロ また、請求人は、本件領収書に記載された仲介手数料615,600円(消費税等込み金額。以下同じ。)について、これを請求人の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額とする平成29年分の所得税等及び平成29年課税期間の消費税等の各修正申告書を提出しており、これらに係る重加算税の各賦課決定処分についても無申告加算税相当額を超える部分についての取消ししか求めていない。 ロ 請求人は、本件領収書に記載された仲介手数料615,600円について、これを請求人の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額とする平成29年分の所得税等及び平成29年課税期間の消費税等の各修正申告書を提出し、これらに係る重加算税の各賦課決定処分についても無申告加算税相当額を超える部分についての取消ししか求めていない。しかし、これは本件領収書を交付した取引先に迷惑を掛けたくないことから上記仲介手数料について、請求人の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額とすることを容認したにすぎない。
 平成29年売買仲介取引は、上記イのとおり、請求人が行ったものでなく、存在しない以上、平成29年売買仲介取引について事実の隠蔽仮装はない。

(2) 争点2(請求人は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をしたか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人は、以下のとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をした。 請求人は、以下のとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をしていない。
イ 請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について記載しなかったことは、以下のとおり、内容虚偽の帳簿書類の作成というべきであり、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の仮装に当たる。 イ 請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について記載しなかったことは、以下のとおり、内容虚偽の帳簿書類の作成とはいえないから、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の仮装に当たらない。
(イ) 本件業績管理表は、以下のとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての記載がないことから、内容虚偽の帳簿書類に当たる。 (イ) 本件業績管理表は、以下のとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類ではない。したがって、本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての記載がないとしても内容虚偽の帳簿書類には当たらない。
A 本件業績管理表は、以下のとおり、請求人が確定申告の基礎となる資料として作成した本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類である。
  • (A) 本件業績管理表は、本件調査において、請求人が、調査担当職員に対して、申告の基礎とした帳簿書類として提示したものであり、本件各所得税等並びに平成29年課税期間から令和元年課税期間までの消費税等の各確定申告も本件業績管理表に基づいて行われている。
  • (B) 請求人は、本件業績管理表が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類ではない旨主張し、その理由として、本件各売買取引の収入金額等は、本件業績管理表ではなく、本件売買計算表に記録されていること、本件各売買仲介取引は本件業績管理表に記載すべきものではないし、請求人が行ったのは平成30年売買仲介取引のみであり、これは単発の取引であったため、その収入金額等を記録することを失念したことを挙げる。
     しかしながら、請求人は、本件売買計算表を作成していたにもかかわらず、本件調査において、当初、本件業績管理表を基に確定申告を行っており、これ以外に請求人の収入はない旨申述して、調査担当職員に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の存在を明らかにせず、本件売買計算表も提示しなかった。したがって、本件業績管理表が、不動産賃貸仲介等の各月の利益金額を把握するための一覧表であって、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類ではないということはできない。
     請求人が平成29年売買仲介取引を行ったことは、上記(1)の「原処分庁」欄のとおりであるし、請求人は宅地建物取引業者として仲介した媒介契約書等の関係書類を保存することが義務付けられているのであるから、平成30年売買仲介取引が単発の取引であったために、その収入金額等の記録を失念したとの主張も理由がない。
A 本件業績管理表は、不動産賃貸仲介等の各月の利益金額を把握するための一覧表である。その形式も不動産賃貸仲介等を想定したものであり、不動産賃貸仲介等と取引内容を異にする取引について適切に入力できる形式になっていない。したがって、本件業績管理表は、不動産賃貸仲介等の損益計算を行うための確定申告の基礎となる資料の一つにすぎず、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類ではない。本件業績管理表を総勘定元帳などの帳簿と同一視することは誤りである。
 本件業績管理表は、上記のとおり、不動産賃貸仲介等と取引内容を異にする本件各売買取引を想定したものではないから、請求人は、本件各売買取引の内容を本件業績管理表にどのように反映したらよいか分からなかった。また、請求人は、本件各売買取引に係る帳簿を作成していなかったものの、本件業績管理表とは別に、売却の都度、本件各売買取引に係る物件ごとの収入金額、売上原価及び必要経費や利益額を把握することができる本件売買計算表を作成し、物件ごとにファイリングした当該取引に係る契約書、請求書及び領収書等と共に保存していた。
 本件各売買仲介取引についても、上記のとおり、本件業績管理表が不動産賃貸仲介等の各月の利益金額を把握するための一覧表であり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類ではないことから、本件業績管理表に記載すべきものではない。また、平成29年売買仲介取引は請求人が行ったものではないことは、上記(1)の「請求人」欄のとおりであって、その収入金額等を記録する必要はなかった。本件各売買仲介取引のうち請求人が行ったものは平成30年売買仲介取引のみであり、その収入金額等を請求人は記録していないが、これは当該取引が単発の取引であったことから、その記録をすることを失念したものである。
B 本件業績管理表は、上記Aのとおり、請求人が確定申告の基礎となる資料として作成した本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類であるから、本件業績管理表には請求人の宅地建物取引業者としての全ての収入金額等が記録されなければならない。
 しかしながら、本件業績管理表には本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等が記録されていないから、本件業績管理表は、請求人の宅地建物取引業者としての全ての収入金額等を記録した真実の資料ではなく、内容虚偽の帳簿書類に当たる。
B 本件業績管理表は、上記Aのとおり、不動産賃貸仲介等の損益計算を行うための確定申告の基礎となる資料の一つにすぎず、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類ではない。したがって、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等が記録されていないとしても内容虚偽の帳簿書類には当たらない。
(ロ) 請求人は、次のとおり、本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記録し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしなければならないことを認識しながら、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図して、本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記録しなかったものである。 (ロ) 本件業績管理表は、上記(イ)のとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記録しなければならないものではないことに加え、請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を記載しなかったのは、次のとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図したものではなかった。
A 請求人は、本件各売買取引について、売却物件ごとの売上高、売上原価、諸費用及び利益を集計した本件売買計算表を作成し、これらを把握していた。
 また、請求人は、本件調査において調査担当職員からの追及を受けて本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を行っていたことを認めた後は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の利益を認識していながら申告していなかったことを認めている。請求人は、本件各売買仲介取引について、請求人が行ったのは平成30年売買仲介取引のみであり、これは単発の取引であったため失念していた旨主張するが、その主張に理由がないことは、上記(イ)のAの(B)のとおりである。
 以上からすれば、請求人は、本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記録し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしなければならないことを認識しながら、本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記録せずに内容虚偽の帳簿書類を作成したものである。
A 本件各売買取引及び本件各売買仲介取引は、上記(イ)のAのとおり、本件業績管理表に収入金額等を記録する必要がなかった。
 仮に本件各売買取引の収入金額等を本件業績管理表に記録することが必要であったとしても、請求人は、上記(イ)のAのとおり、本件業績管理表の形式が不動産賃貸仲介等と取引内容を異にする本件各売買取引の収入金額等を適切に入力できる形式となっていなかったこと、経理や税務知識に詳しくなく、本件各売買取引をどのように本件業績管理表に反映したらよいか分からなかったことから、忙しさに紛れてそのまま放置してしまったものである。したがって、本件各売買取引の収入金額等を本件業績管理表に入力しなかったのは、本件各売買取引についての申告をしないことを意図したからではない。
 本件各売買仲介取引についても、平成29年売買仲介取引を請求人が行ったものではないことは、上記(1)の「請求人」欄のとおりである。したがって、仮に本件業績管理表に本件各売買仲介取引の収入金額等の入力を要するとしても、その入力が必要な取引は平成30年売買仲介取引のみである。そして、これが単発の取引であったことから、請求人が、その記録を失念したことは、上記(イ)のAのとおりである。よって、平成30年売買仲介取引の収入金額等を本件業績管理表に入力しなかったのも、申告をしないことを意図したからではない。
B 請求人は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図して、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を本件業績管理表に記載しなかったものである。
 請求人は、本件調査において、当初、調査担当職員に対し、本件各売買取引について本件売買計算表を作成していたにもかかわらず、請求人の事業は賃貸物件に関するもののみで、不動産の売買やその仲介をしたことはない旨申述した。収入についても、損害保険の代理店収入はあるものの、不動産賃貸仲介等に関するもののみで、確定申告は本件業績管理表を基に行っており、本件業績管理表に記載されたもの以外の収入はない旨申述して、本件売買計算表を提示しなかった。
 その後、請求人は、調査担当職員から現況調査において発見された領収書に基づく追及を受けて本件各売買仲介取引をしたこと及びこれに係る申告をしていないことを認めた。さらに本件各売買取引についても追及されたことによって、本件各売買取引をしたこと及びこれに係る申告をしていないことを認めるに至ったものである。
 以上のとおり、請求人は、調査担当職員から追及を受けて本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を認める旨の申述をするまで、調査担当職員に対して虚偽の答弁を繰り返し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を秘匿しようとしていた。かかる事実からすれば、請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記載せずに内容虚偽の帳簿書類を作成したのは、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について申告しないことを意図したものであるといえる。
B 原処分庁は、請求人の本件調査における対応からすれば、請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について記載をしなかったのは、これらについての申告をしない意図に基づくものである旨主張する。
 しかしながら、これらを記載しなかったのが失念によるものであることは、上記Aのとおりである。
 請求人は、本件調査において、調査担当職員からの「収入はこれだけか」との問いに「そうである」と回答したが、当該回答は確定申告書添付の収支内訳書に計上している数値が本件業績管理表のみに基づいたものであるという趣旨の回答であって、本件業績管理表に記載のない収入が存在しないという趣旨ではない。請求人は、本件調査において、調査担当職員からの「不動産取引の仲介や自身での売買取引をしていないか」との問いに対して「していません」とも答弁したが、この答弁は、請求人が本件調査時に緊張していたこと、調査担当職員の言動に少し立腹していたこと、本件各売買仲介取引についてのみ聞かれていると錯誤し、単発の平成30年売買仲介取引についての記憶がなかったことから反射的に答弁したものにすぎない。したがって、本件調査時の請求人の調査担当職員に対する答弁は、請求人が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、申告しないことを意図していたことをうかがわせるものではない。
 請求人は、令和3年10月13日午後の本件調査の再開後、調査担当職員に本件各売買取引があったことを自主的に進言し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の関係資料の提示やパソコンデータの提供などの協力的な対応をしている。このことからしても、請求人は、本件調査において、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を隠し通そうとして終始曖昧な答弁を通したわけではないし、資料を見せられて観念して取引を認めたわけでもない。
 以上のとおり、請求人の本件調査における対応をもって、請求人が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図して、これらの取引を本件業績管理表に記載しなかったということはできない。
(ハ) 以上によれば、請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記載しなかったことは、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図した内容虚偽の帳簿書類の作成というべきであり、当該内容虚偽の帳簿書類の作成は、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の仮装に当たる。 (ハ) 以上によれば、請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記載しなかったことは、内容虚偽の帳簿書類の作成に当たらないし、これらの取引の申告をしないことを意図したものでもないから、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の仮装に当たらない。
ロ 仮に本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収入金額等を記載しなかったことが内容虚偽の帳簿書類の作成に当たらないとしても、次のとおり、請求人は、当初から本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図していたものであり、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしている。したがって、請求人は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をしたものである。 ロ 原処分庁は、請求人の本件調査における対応からすれば、請求人は、当初から本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないことを意図していたものであり、その意図を外部からうかがい得る特段の行動もしている旨主張する。
 しかしながら、請求人が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしなかったのは、上記イの(ロ)のAのとおり、請求人が経理や税務知識に詳しくないことから忙しさに紛れて放置してしまったり、単発の取引であったことから失念したりしてしまったからであり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしないとの意図によるものではない。
 請求人は、上記イの(ロ)のBのとおり、令和3年10月13日午後の本件調査の再開後、調査担当職員に本件各売買取引があったことを自主的に進言し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の関係資料の提示やパソコンデータの提供などの協力的な対応をしている。このことからしても、請求人は、本件調査において、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を隠し通そうとして終始曖昧な答弁を通したわけではなく、資料を見せられて観念して取引を認めたわけでもない。したがって、本件調査において、請求人に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の申告をしない意図をうかがい得る特段の行動は見られなかった。
(イ) 請求人が、上記イの(ロ)のAのとおり、不動産の売却物件ごとに本件売買計算表を作成して、その収益を把握していたこと、本件調査において調査担当職員からの追及を受けて本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を認めた後は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の利益を認識していながら申告していなかったことを認めていることからすれば、請求人は、当初から、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引についての申告をしなければならないことを認識していたといえる。  
(ロ) 請求人は、本件各所得税等の申告において本件各売買取引及び本件各売買仲介取引に係る所得を申告していない。また、平成29年課税期間及び平成30年課税期間の消費税等の期限後申告においても本件各売買仲介取引に係る消費税等を申告していないし、令和2年課税期間の消費税等についても法定申告期限までに本件各売買取引に係る消費税等の申告をしていない。以上によれば、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について申告しないことを当初から意図していたといえ、上記各申告は当該請求人の意図に基づいて行われたものである。
 また、当該請求人の意図は、請求人が、上記イの(ロ)のBのとおり、本件調査において、当初、調査担当職員に対し、請求人の事業は賃貸物件に関するもののみで、不動産の売買やその仲介をしたことはなく、収入についても、損害保険の代理店収入はあるものの、不動産賃貸仲介等に関するもののみで、確定申告は本件業績管理表を基に行っており、本件業績管理表に記載されたもの以外の収入はないと申述して虚偽の答弁を繰り返し、本件売買計算表の提示もしなかったことなどからうかがうことができる。これら請求人の行動は、上記請求人の意図をうかがい得る特段の行動に当たる。
 
(ハ) 以上のとおりであるから、請求人は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をしたものである。  

4 当審判所の判断

(1) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の経歴等について
     請求人(昭和○年○月○日生)は、○歳の時に不動産業を営む会社に就職し、その後、不動産関連の会社を数社経て、○歳の時に事業譲渡を受けて独立し、現在の事業を展開するようになった。このような経緯で、請求人は、平成29年時点において、通算20年以上不動産業界での実務経験を有していた。
  • ロ 本件業績管理表について
     本件業績管理表には、不動産賃貸仲介等に係る別表3に記載の各種取引に係る収入が記載されている。本件各売買取引及び本件各売買仲介取引に係る収支は、上記1の(3)のロのとおり、本件業績管理表に記載がなかった。
     なお、本件業績管理表には、不動産賃貸仲介等において通常生ずることが想定される収入及び費用を入力する項目しかなく、本件業績管理表は、本件各売買取引を計上できる形式のものではなかった。
  • ハ 本件各売買取引に関する事実について
     請求人は、本件各売買取引について、上記1の(3)のロの(ハ)のとおり、物件の売却の都度、速やかに事業所において本件売買計算表を作成し、同表において、物件ごとの必要経費を時系列に計上して、売上原価を計算し、売却額を記載の上、純利益を算出していた。その純利益については、別表4のとおり、令和元年分は、1物件で1,550,541円、令和2年分は、8物件の合計14,075,416円となっていた。
     請求人は、本件売買計算表を本件各売買取引に関する契約書や各種領収書などの収支計算の基礎となる帳票類と共に物件ごとにファイルに入れて整理していた。
  • ニ 本件各売買仲介取引に関する事実について
    • (イ) 平成29年売買仲介取引については、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、平成29年7月19日付の、宛先欄に「G」、金額欄に「615,600」との記載がある請求人名義で発行された本件領収書が存在する。本件領収書には、請求人名義の記名押印が存在し、そのただし書欄には「a市d町○−○(土地建物)売買の仲介手数料として領収しました」との記載がある。
       また、請求人は、上記1の(3)のロの(ロ)のとおり、平成30年売買仲介取引を行い、平成30年8月2日、当該仲介に係る売買契約の当事者であるH及びJのそれぞれから当該仲介取引に係る仲介手数料を得た。その金額は、Hが1,300,000円、Jが891,000円であった。
    • (ロ) 請求人は、本件各売買仲介取引の収支を記録した書類を作成していなかった。
  • ホ 請求人の各確定申告等について
     請求人は、上記ロのとおり、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の収支が反映されていない本件業績管理表に基づいて、本件各年分の所得税等の各収支内訳書の下書を作成した。
     請求人は、各確定申告をするために、L税務署に赴き、同署の職員に確定申告書の記載について相談した。そして、請求人は、当該各収支内訳書の下書に基づいて、本件各所得税等の各確定申告書並びに平成29年課税期間、平成30年課税期間及び令和元年課税期間の消費税等の各確定申告書を作成して提出したが、令和2年課税期間の消費税等については、本件調査に至るまで確定申告書を提出しなかった(以下、本件各所得税等の各申告及び平成29年から令和元年までの各課税期間の消費税等の各申告並びに令和2年課税期間の消費税等の無申告を併せて「本件各確定申告」という。)。
     また、請求人は、事前に作成した上記の各収支内訳書の下書及び不動産賃貸仲介等に係る書類をL税務署に持参したものの、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引に係る書類は持参せず、応対した同署の職員に対し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、どのように確定申告すればよいか質問しなかった。
  • ヘ 本件調査の初日における請求人の申述について
    • (イ) 請求人は、本件調査の初日、調査担当職員に対し、不動産売買やその仲介は行っておらず、収入は本件業績管理表に記載されているものが全てであると申述した。調査担当職員は、同日、請求人に対し、不動産売買やその仲介をしていないかを3回質問したが、請求人は、いずれの質問に対しても、不動産の売買もその仲介もしていないと回答した。
       3回目の質問は、調査担当職員が現況調査によって把握した請求人の領収書つづりの中の平成30年売買仲介取引に係る仲介手数料の領収書の存在を指摘して行ったものであるが、請求人は、不動産売買の仲介は令和3年になって初めて行ったものであるとして、令和3年より前に行った不動産売買の仲介の存在や売買仲介手数料の受領を否定した。そして、上記領収書は書き損じた領収書が残っていたものであって、ここにあるということは当該領収書に係る仲介手数料をもらっていないということであると回答した。
    • (ロ) 請求人は、上記(イ)の回答後、調査担当職員から上記領収書に平成30年の不動産売買の仲介手数料である旨の記載がある理由を追及され、平成30年売買仲介取引を行ったことを認めた上、初めての不動産売買の仲介取引で不慣れであったため、売主であるJからすごく怒られたことを覚えているなどと平成30年売買仲介取引について具体的な申述をした。
       加えて、請求人は、調査担当職員から、本件各売買取引の有無について再度質問を受けたところ、その取引の存在を認め、物件ごとに整理された本件売買計算表など、本件各売買取引に係る資料を提示した。
  • ト 当審判所に対する請求人の答述について
     請求人は、当審判所に対し、本件各売買取引に係る収支について、事業所得等として所得税等及び消費税等の申告をする必要があることを認識していた旨を答述した。

(2) 争点1(請求人は、平成29年売買仲介取引を行って当該取引に係る仲介手数料を得たか否か。)について

  • イ 平成29年売買仲介取引に関する書証として、上記(1)のニの(イ)のとおり、平成29年7月19日付の、宛先欄に「G」、金額欄に「615,600」との記載がある請求人名義で発行された本件領収書が存在し、そのただし書欄には「a市d町○−○(土地建物)売買の仲介手数料として領収しました」との記載がある。
     本件領収書には、請求人名義の記名押印が存在するところ、当該押印が請求人の押印であることに争いはないから、本件領収書は、特段の事情のない限り、請求人の意思に基づき真正に成立した文書であると推認される。そして、領収書の性質に照らせば、本件領収書の成立の真正が認められる以上、請求人は、特段の事情のない限り、本件領収書に記載のとおりGから仲介手数料を受領したと認めるのが相当であり、請求人は、平成29年売買仲介取引を行い、その仲介手数料615,600円をGから得たというべきである。
  • ロ この点、請求人は、本件領収書がHにおいて請求人から白地の領収書の交付を受けた後に金額等を記載して利用した領収書であるとして、本件領収書の成立の真正を争う。
     しかしながら、本件領収書に請求人の押印があることは上記のとおりである。また、領収書は、その名義人が領収した金額を明らかにする重要な文書である。請求人が、上記(1)のイのとおり、通算20年以上も不動産業に携ってきた経歴を有していることも考慮すると、他人が金額欄を自由に記載することが可能な金額欄白地の領収書を交付するというのは、通常は考え難い事態であるといえる。このような通常は考え難い行動をとったというのであれば、そのいきさつや原因について、何らかの特別な事情があったものと考えられる。しかし、請求人からは、Hに金額欄白地の領収書を交付したいきさつや原因についての具体的な説明はない。また、金額欄白地の領収書を作成し、交付するということは、発行者自身が白地に補充されるであろう金額を受領したものとみなされる可能性のある書類を作成・交付するということにほかならないから、当該領収書が、交付後どのように利用されたのかについて関心を持つというのが自然な態度である。しかし、Hが本件領収書をどのように利用したのかについて、請求人が関心を持っていたことをうかがわせる事情は見当たらない。このような請求人の態度は、金額欄白地の領収書を発行した者の態度としては不自然であると考えられる。加えて、請求人が本件領収書を交付した相手がHであることや請求人が本件領収書を交付した当時において、本件領収書が金額等の記載のない白地の領収書であったことを認めるに足りる証拠もない。したがって、本件領収書の金額欄が白地であったなど上記領収書が請求人の意思に基づいて真正に成立したものであることを否定すべき特段の事情は認められない。請求人は、本件領収書を交付した相手方であるHにおける本件領収書の交付については何ら関与していない旨主張するが、何ら関与しないとのこと自体、金額欄白地の領収書を交付した者の態度としては不自然であるといえるから、請求人の同主張は、上記認定を左右するに足りるものではない。
     さらに、請求人は、Hが作成した領収書に押印するように頼まれたから押印しただけで、金銭をもらった記憶はない旨主張する一方で、本件領収書記載の仲介手数料について、これを請求人の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額とする平成29年分の所得税等及び平成29年課税期間の消費税等の各修正申告書を原処分庁に提出しているのであって、本件領収書の記載内容に沿う修正申告をしている。このことからも、請求人が平成29年売買仲介取引を行い、その仲介手数料を受領していたことがうかがわれる。この点につき、請求人は、当該各修正申告書の提出について、請求人が白地の領収書を交付した取引先に迷惑を掛けたくないことから、上記仲介手数料について、請求人の収入金額及び課税資産の譲渡等の対価の額とすることを容認したにすぎない旨主張する。しかしながら、請求人がHに金額欄白地の領収書を交付したこと自体、認めるに足りるものでないことは、上記のとおりである。加えて、請求人がHを通じて上記仲介手数料を受領していない旨のHの陳述を得るなど、請求人において可能な請求人主張を裏付ける具体的な反証をしていないことからも、請求人からHへの金額欄白地の領収書の交付があったとは認め難い。
     したがって、請求人の主張は、その前提を欠くものであって採用できない。
  • ハ 以上のとおり、本件領収書は、請求人の押印があることから、請求人の意思に基づいて真正に成立した文書であると推認され、これを覆すべき特段の事情は認められない。そして、領収書の性質を踏まえれば、特段の事情のない限り、本件領収書に記載のとおり請求人が仲介手数料を受領した事実を認めるのが相当であるところ、本件領収書の記載に反して請求人が本件領収書に記載された仲介手数料を受領していないと認めるべき特段の事情もうかがわれない。
     したがって、請求人は、平成29年売買仲介取引を行って、本件領収書に記載の仲介手数料を受領したものと認められる。

(3) 争点2(請求人は、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について、通則法第68条第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽仮装をしたか否か。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 通則法第68条第1項及び第2項は、納税者が、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し又は仮装したところに基づき、納税申告書を提出し又は法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったときは、その納税者に対して重加算税を課することとしている。そして、ここにいう隠蔽と評価すべき行為とは、事実を隠匿し又は脱漏することをいい、仮装と評価すべき行為とは、所得、財産又は取引上の名義を装うなど事実をわい曲することをいうものと解される。
    • (ロ) 上記重加算税の制度は、納税者が隠蔽又は仮装という不正手段を用いて、過少申告書を提出し又は申告書を法定申告期限までに提出しなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
       したがって、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに申告がされなかったことを要するものである。しかしながら、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在するというためには架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当ではなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告しなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である(最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決・民集49巻4号1193頁参照)。
  • ロ 検討
    • (イ) 本件各売買取引について  
      • A 原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のイのとおり、本件業績管理表が請求人において確定申告の基礎となる資料として作成した本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類であるとして、請求人が本件業績管理表に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を記載しなかったことは、これらに係る所得等を申告しない意図に基づく隠蔽又は仮装と評価すべき行為に当たる旨主張する。
         しかしながら、本件業績管理表は、上記(1)のロのとおり、不動産賃貸仲介等において通常生ずることが想定される収入及び費用を入力する項目しかないものとなっており、本件各売買取引を計上できる形式のものではなかった。また、請求人は、上記1の(3)のロの(ハ)及び上記(1)のハのとおり、物件の売却の都度、速やかに本件売買計算表を作成して収支計算をし、その物件に係る利益を把握していたのであって、本件各売買取引に係る収支については、本件業績管理表とは別に本件売買計算表を作成して把握していた。
         以上からすれば、請求人が、本件調査において、当初、本件業績管理表を基に確定申告を行っており、これ以外に請求人の収入はない旨申述していたことを考慮しても、本件業績管理表と本件売買計算表を併せることによって請求人の事業所得に係る収支を記録していた旨の請求人の主張が不自然、不合理であるとはいえず、本件業績管理表が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引を含む請求人の事業全部に係る帳簿書類であったとは認めるに足りない。
         したがって、本件業績管理表に本件各売買取引に係る収支の記載がないことをもって、直ちに内容虚偽の帳簿書類を作成したとは認められず、請求人が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について記載のない内容虚偽の帳簿を作成したことが隠蔽又は仮装と評価すべき行為に当たる旨の原処分庁の主張は、採用できない。
      • B もっとも、請求人は、上記1の(4)のロのとおり、本件業績管理表に基づいて本件各確定申告を行い、本件各売買取引に係る所得等については、当該各申告において所得金額及び課税資産の譲渡等の対価の額(以下、所得金額及び課税資産の譲渡等の対価の額を併せて「所得金額等」という。)に含めて申告していない。そこで、当該各申告において、本件各売買取引に係る所得金額等を申告しなかったことについて隠蔽又は仮装と評価すべき行為が認められるかについて、以下検討する。
         この点、請求人は、上記のとおり、令和元年8月以降始めた本件各売買取引について、物件の売却の都度、速やかに本件売買計算表を作成して収支計算をし、その物件に係る利益を把握し、また、上記(1)のトのとおり、本件各売買取引に係る所得金額等も事業所得等として申告をする必要があることを認識していた。にもかかわらず、請求人は、上記(1)のホのとおり、不動産賃貸仲介等に係る金額のみが記載され、本件各売買取引の内容が反映されていない帳簿書類たる本件業績管理表のみに基づいて、本件各所得税等の各収支内訳書の下書を作成し、L税務署で本件各確定申告をした際、本件売買計算表等の本件各売買取引に係る書類を一切持参せず、当該各収支内訳書の下書と不動産賃貸仲介等に関する資料のみを持参して、同署において申告相談を受けた。その際、申告相談を担当した同署の職員に対して、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引については、どのように確定申告すればよいかを質問しなかった。
         以上の事実に照らせば、請求人は、本件各確定申告に当たり、本件売買計算表により算出した本件各売買取引に係る所得金額等も含めて申告すべきであることを知りながら、当該所得金額等を申告しないことを意図して、本件各売買取引に係る収入金額等を除外した内容虚偽の各収支内訳書の下書を作成してL税務署に持参し、同署の職員に提示して相談した上で、その結果に基づいて、所得金額等を意図的に過少に記載して本件各確定申告をしたと認められる。
         請求人は、上記(1)のハのとおり、本件各売買取引に係る本件売買計算表を物件ごとに作成して当該物件の取引に係る帳票類と共にファイルに入れて整理していた。このような本件売買計算表その他本件各売買取引に係る帳票類の管理方法に加え、本件各売買取引が、請求人の事業全部の中で大きな金額を占める重要な取引であると考えられること(上記(1)のハ及び別表4)からすれば、請求人が本件各売買取引について失念することは考え難いところ、請求人は、上記(1)のヘのとおり、本件調査において、当初、調査担当職員から繰り返し質問を受けたにもかかわらず、複数回にわたって本件各売買取引を行っていることを否認し、本件売買計算表を提出することもなかった。このことからすれば、請求人の本件調査における当初の回答は、本件各売買取引の存在及びその内容を秘匿する意図に基づくものと推認され、このことからも請求人が本件各確定申告に本件各売買取引に係る所得金額等を含めなかったのは、本件各売買取引に係る所得金額等を申告しないことを意図したものであって、請求人が、法定申告期限において、当該意図を有していたことが推認される。
         したがって、本件各売買取引に係る所得金額等については、請求人に、通則法第68条第1項及び第2項に規定する「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったといえる。
    • (ロ) 本件各売買仲介取引について  
      • A 請求人には、上記1の(3)のロの(イ)及び(ロ)並びに上記(2)のとおり、本件各売買仲介取引に係る仲介手数料の収入があった。請求人は、平成29年売買仲介取引の存在を争うが、当該取引の存在とこれに係る仲介手数料の受領が認められることは、上記(2)のとおりである。
      • B 請求人は、上記(1)のニの(ロ)のとおり、本件各売買仲介取引の収支を記録した書類を作成しておらず、これを本件業績管理表にも記載していなかった。請求人が平成29年時点において通算20年以上の不動産業界での実務経験を有していた者であること、不動産賃貸仲介等に係る仲介手数料については法定申告期限を経過しながらも所得税等の確定申告の際に収入として申告していることからすると、不動産に関する仲介業務であるという点で共通する本件各売買仲介取引についても、その仲介手数料収入を申告しなければならないとの認識を有していたものと推認される。
         この点につき、請求人は、本件各売買仲介取引の収支の記録が存在しない理由について、本件各売買仲介取引が平成30年売買仲介取引のみの単発取引であったことから失念したものである旨主張する。しかしながら、請求人が受領した本件各売買仲介取引に係る仲介手数料の金額は、上記(1)のニの(イ)のとおり、いずれも61万円を超えるものであるところ、その金額は本件各年分の不動産賃貸仲介等の仲介手数料の平均月額が約19万円(別表3の仲介料の各年分の月平均額を計算)であることと比較しても高額である。また、請求人は、本件各売買仲介取引よりも相当程度少額かつ年に数回しかない引越し紹介料といった従たる取引まで毎年本件業績管理表に計上している上(上記(1)のロ及び別表3)、本件各売買取引については、本件業績管理表が本件各売買取引を計上できる形式ではないとの理由で、物件の売却の都度、その収支を記録した本件売買計算表を作成するなど、自身が行った取引を忘れないよう記録しようとしている。以上に加え、本件各売買仲介取引の仲介手数料が、請求人が得る平成29年及び平成30年の収入の中では特に高額であること、本件各売買仲介取引は、いずれも請求人の取引先であり本件各売買取引の助言者でもあるHの依頼による取引であったと考えられることからすれば、本件各売買仲介取引が単発取引であったために、その記録を請求人が失念したとは考え難い。
         さらに、平成30年売買仲介取引は、上記(1)のヘのとおり、請求人が、本件調査において、調査担当職員から平成30年売買仲介取引に係る領収書に関して追及を受けて認めるに至ったものであるが、請求人は、当初、当該領収書を示されても平成30年売買仲介取引を行っていたことを否定していた。そして、請求人は、当該取引を認めるに至った際、当初は本件各売買仲介取引を行っていたことを否認していた理由や平成30年売買仲介取引について記憶が喚起されるに至った端緒などについて説明することなく、平成30年売買仲介取引についての具体的な申述をした。これらに加え、上記(イ)のBのとおり、本件各売買取引についての請求人の本件調査における当初の回答が本件各売買取引について秘匿する意図に基づくものであったと推認されることも考慮すれば、請求人の本件調査における当初の回答は、本件各売買取引に関する回答と同様、本件各売買仲介取引について隠蔽する意図に基づくものであったと推認される。
         請求人の主張立証を考慮しても、請求人の主張を裏付ける事情は見受けられないことから、本件各売買仲介取引に関する収支の記録が存在しないのは、その記録を請求人が失念したからではなく、請求人に本件各売買仲介取引に係る所得金額等を申告する意図がなかったことに基因するものと認められる。
      • C 通則法第68条第1項及び第2項に規定する隠蔽又は仮装が認められるためには、上記イの(ロ)のとおり、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、少なくとも、納税者が、当初から所得を過少に申告すること又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたことが必要であるところ、上記に説示したところに加え、請求人が、本件各確定申告に当たり、L税務署の職員に申告相談をした際、当該職員に対して、本件各売買仲介取引に係る所得についても何ら明らかにしていないことなども併せ考慮すれば、請求人において、当初から本件各売買仲介取引に係る所得金額等を申告しない意図を有していたことを外部からうかがい得る特段の行動があったといえる。
         したがって、請求人が本件各確定申告において本件各売買仲介取引に係る所得金額等を申告しなかったことについては、通則法第68条第1項及び第2項に規定する隠蔽又は仮装が認められるというべきである。
    • (ハ) 小括
       以上のとおりであるから、請求人が本件各売買取引及び本件各売買仲介取引に係る所得金額等を申告しなかったことについては、通則法第68条第1項及び第2項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。
  • ハ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、本件各売買取引について、税務調査の際に物件ごとに整理、保存している関係資料を提出して自発的に修正申告するつもりであった旨主張する。
       しかしながら、請求人は、上記(1)のハ及びトのとおり、本件各売買取引に係る所得金額等について所得税等及び消費税等の申告をする必要があることを認識していたし、物件の売却の都度、物件ごとに本件売買計算表を作成して収支計算を行い、その収支を把握しており、また、本件売買計算表を物件ごとに帳票類と共にファイルに入れて整理していた。したがって、本件各確定申告に当たって行ったL税務署での申告相談において、同署の職員に対し、本件各売買取引等に係る所得金額等の申告について相談した上で、その申告を行うことが可能であった。にもかかわらず、請求人は、上記申告相談において、同署の職員に対し、本件各売買取引に係る所得金額等の申告について何ら相談しなかった。このことは請求人が本件各売買取引に係る所得金額等について自発的に申告する意思を有していたことと矛盾する。請求人は、税務調査の際に自発的に修正申告をするつもりであった旨主張するが、そもそも納税者にとって税務調査が行われるか否かは申告時には不明であるし、上記のとおり、上記申告相談時に本件各売買取引に係る所得金額等の申告について相談することが可能であった以上、税務調査があるまで申告を行わない合理的理由は存在しない。したがって、請求人が税務調査の際に本件各売買取引に係る所得金額等について自発的に修正申告をするつもりであったとは認められない。
       よって、請求人の主張には理由がないから、採用できない。
    • (ロ) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のイの(ロ)のBのとおり、本件業績管理表に記載のない収入が存在しないという趣旨の発言はしていない旨、また、調査担当職員からの質問を本件各売買仲介取引についてのみ聞かれていると錯誤したこと及び当該取引を失念したことにより反射的に本件各売買仲介取引を行っていない旨答弁したにすぎず、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引について申告しないことを意図していたものではない旨主張する。
       しかしながら、請求人が本件各確定申告に当たって本件各売買取引に係る所得金額等を申告しない意図を有していたことは、上記ロの(イ)のBのとおり、本件売買計算表の作成による物件ごとの収支の把握や本件売買計算表の保管方法、請求人が本件各確定申告に当たって行った申告相談の状況等によって認めることができるのであり、本件調査における請求人の対応によって左右されるものではない。また、調査担当職員が作成した令和3年11月25日付の請求人に係る質問応答記録書によれば、請求人は、調査担当職員の質問に対して、本件各売買取引と本件各売買仲介取引を区別して回答していると認められるから、請求人が本件各売買仲介取引についてのみ質問されていると錯誤して回答したとは認められない。本件各売買取引と本件各売買仲介取引とでは、本件各売買取引の方が本件調査と近接した時期に行われており、その取引金額も高額であることに加え、本件各売買取引についてのみ本件売買計算表の作成や取引に係る帳票類の整理がされているなど、種々の違いが存在するのであるから、請求人が、本件各売買取引に関する質問と本件各売買仲介取引に関する質問とを間違って回答してしまったというのは不自然である。請求人が、調査担当職員からの本件各売買取引に係る質問に対し、これを行っていない旨を明確に回答していることからしても、これが本件各売買仲介取引について失念した上での回答であるとは解し難い。
       また、請求人は、本件業績管理表に記載のない収入が存在しない趣旨の発言はしていない旨も主張するが、上記質問応答記録書は、問答形式で作成されており、請求人が当初から本件業績管理表に記載された収入が全てであって、これ以外にはない旨の申述をしたことが明確に記載されている。しかるに、この記載に請求人が異議を述べたことはうかがわれないのであるから、上記質問応答記録書の記載内容は信用できる。
       したがって、上記発言をしていない旨の請求人の主張は採用できない。
    • (ハ) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のロのとおり、本件調査の初日の午後には、本件各売買取引があったことを自主的に進言し、本件各売買取引に係る資料及び本件各売買仲介取引に係る資料やパソコンデータを提供するなど本件調査に協力しており、取引を隠そうとして終始曖昧な答弁を通したわけではないから、請求人に本件各売買取引及び本件各売買仲介取引の申告をしない意図を外部からもうかがい得る特段の行動は見られなかった旨主張する。
       しかしながら、上記ロに説示したところによれば、仮に、請求人の主張のとおり、本件調査の初日の午後に本件各売買取引があることを自主的に進言し、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引に係る資料も提供するなど本件調査に協力したとしても、それまでの請求人の一連の行動によって、請求人が本件各所得税等及び本件各消費税等の法定申告期限において、本件各売買取引及び本件各売買仲介取引に係る所得金額等を申告しない意図を有しており、当該所得金額等を申告しなかったことについて通則法第68条第1項及び第2項に規定する隠蔽又は仮装が認められると判断しているのであるから、上記請求人主張の事情は、上記判断を左右するものではない。
       また、上記(1)のヘのとおり、請求人は、本件調査の初日において、調査担当職員が把握した本件各売買仲介取引に係る領収書を基に追及されて、初めて本件各売買仲介取引を認めたのであり、本件各売買仲介取引に係る他の資料を自らが積極的に示すなどしてほかにも申告漏れがあることを自主的に申し出ることもなかった事実に変わりはない。
       以上のことからすると、請求人の主張には理由がなく、採用できない。

(4) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(3)のロのとおり、請求人のした過少申告行為、又は無申告行為は、通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすと認められ、上記(3)のハのとおり、請求人の主張にはいずれも理由がない。
 そして、本件各所得税等及び本件各消費税等に係る重加算税の額については、その計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において重加算税の額を計算すると、原処分の額といずれも同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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