(令和5年1月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、会社員である審査請求人(以下「請求人」という。)が、副業で行っていたインターネット販売に係る収益について、所得税等及び消費税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、インターネット販売において実在しない会社名や親族の名を使用するなどの隠蔽又は仮装の行為があったとして、重加算税等の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実はないとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第66条《無申告加算税》(平成29年1月1日より前に法定申告期限が到来した国税については、平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)第1項柱書及び同項第1号は、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合を除き、期限後申告書の提出があった場合は、当該納税者に対し、その期限後申告に基づき納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨規定している。
  • ロ 通則法第68条《重加算税》(平成29年1月1日より前に法定申告期限が到来した国税については、平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)第2項は、同法第66条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していた時は、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
  • ハ 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項柱書及び同項第3号は、課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は、その納税義務の成立の日から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定し、同条第5項は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税を含む。)についての賦課決定は、同条第1項の規定にかかわらず、同項第3号が規定する期限から7年を経過する日まで、することができる旨規定している(なお、同条第5項は、令和2年法律第8号による改正前は同条第4項として規定されていたものである。)。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 会社員である請求人は、平成24年頃から副業として、インターネット上に開設したネットショップで、自身で輸入した商品を販売していた。
  • ロ 請求人は、平成26年頃、F社が運営するショッピングサイトに、店舗名を「G」とするネットショップ(以下「本件ネットショップ」という。)を出店した(以下、本件ネットショップにおける取引を「本件ネット販売」という。)。
  • ハ 原処分庁所属の調査担当職員による税務調査が行われていた令和3年7月27日時点で、本件ネットショップの出品者情報を表示する画面(以下「出品者プロフィール画面」という。)内の「特定商取引法に基づく記載事項」欄には、正式名称「H社」、代表者「J」(請求人の母の姓名)、住所「a市d町○−○」と記載されていた。
  • ニ 請求人は本件ネット販売を行うに当たり、平成26年9月までa市d町○−○に所在するバーチャルオフィスサービスを請求人本人名義で契約していた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成26年分ないし令和2年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の各確定申告書を、いずれも法定申告期限までに提出しなかった。
     また、請求人は、平成27年1月1日から平成27年12月31日までの課税期間(以下「平成27年課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)、平成28年課税期間、平成29年課税期間、平成30年課税期間、令和元年課税期間及び令和2年課税期間(以下、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各確定申告書を、いずれも法定申告期限までに提出しなかった。
  • ロ 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、確定申告書に別表1及び別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、令和4年1月25日に提出した。
  • ハ 原処分庁は、これに対し、令和4年2月10日付で、別表1及び別表2の「賦課決定処分」欄のとおりの無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ニ 請求人は、本件各賦課決定処分に不服があるとして、令和4年5月10日に審査請求をした。

2 争点

(1) 請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か(争点1)。

(2) 請求人に、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があったか否か(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。)について

原処分庁 請求人
次のとおり、請求人には、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった。 次のとおり、請求人には、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかった。
イ 請求人は、本件ネットショップにおいて、出品者プロフィール画面の正式名称欄に「H社」と実在しない会社名を記載し、代表者欄に「J」と請求人の母の名を記載するなどして、取引名義を仮装することにより、本件ネット販売を行っていた事実を隠蔽していた。 イ 本件ネットショップの出品者プロフィール画面の出品者情報の内容欄は、出品者の任意記載項目であり、自由に入力ができることから、正式な名称の記載を求められていない。
 なお、本件ネットショップに自身の名前を記載しなかったのは、勤務先では副業が認められておらず、勤務先に対して副業が知られないようにするためであった。
 また、代表者欄に母の名を記載したのは、請求人が会社で勤務している間に母が商品の梱包発送作業に従事していたからである。
 さらに、本件ネット販売で売上代金を受領していた預金口座は請求人名義であること、商品発送時には、発送者名に自身の名の「○○○」と記載していること、発送元の住所も請求人の自宅住所を記載していること、本件ネット販売で顧客との連絡等に使用していた電話番号は請求人が契約しているものであることから、取引名義を仮装したことにはならない。
ロ 請求人は、上記イの行為に税を免れる意図はなく隠蔽仮装の事実はない旨主張するが、重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽、仮装行為を原因として無申告の結果が発生したものであれば足りるものと解されており、税を免れる目的があったか否かは必要でないことからすると、請求人が故意に自らの名前を記載せず、借名等した行為を原因として無申告の結果が発生しているのであるから、通則法第68条第2項の規定に該当する。 ロ 本件ネットショップで自身の名前を記載していなかったものの、顧客とのメール等でのやり取りも「○○」で行っており、請求人の存在を隠匿する意図はなく、課税を免れるために取引を隠蔽するという意識は一切なかった。

(2) 争点2(請求人に、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があったか否か。)について

原処分庁 請求人
請求人が、本件ネット販売に係る収益を認識し、その収益について確定申告が必要であることも認識していたにもかかわらず、請求人が本件ネット販売を行っていなかったかのように事実を隠していた行為は、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当し、当該行為は、同法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」により税額を免れた場合に該当する。 上記(1)の「請求人」欄のとおり、請求人には、課税を免れるという意図はなく、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実はない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条に規定する重加算税は、過少申告加算税、無申告加算税又は不納付加算税を課すべき納税義務違反が事実の隠蔽又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に、違反者に対して課せられる行政上の措置である。ここでいう「事実の隠蔽」とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し又は故意に脱漏することをいい、また、「事実の仮装」とは、所得及び財産あるいは取引上の名義等に関しあたかも真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料及び原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 出品者プロフィール画面内の記載について
       本件ネットショップの出品者プロフィール画面は随時更新されているが、本件各年分の期間(平成26年から令和2年)においては、おおむね以下のとおり記載されていた。
      • A 出品者の正式名称欄には「H」又は「H社」、販売業者欄には「H社」又は「J」、代表者欄には「J」、住所欄には「a市d町○−○」と記載され、いずれの欄にも請求人の姓名が記載されたことはなかった。
         なお、「H」及び「H社」は、法人としての登記がなく、実在しない会社名であり、会社としての実体も認められない。
      • B 電話番号欄には請求人本人名義で契約している携帯電話の番号(以下「請求人携帯番号」という。)が記載されていた。
    • (ロ) 請求人は、本件ネットショップのカスタマーサービス用メールアドレスとして請求人のメールアドレスを登録し、顧客からの問合せのメールに対し「○○ G」と記載し、対応していた。
    • (ハ) 請求人は、顧客に商品を発送する場合、主にゆうパックを利用しており、発送伝票には、依頼主として「G ○○○」を、住所として請求人の住所地を、電話番号として請求人携帯番号を記載していた。
       なお、請求人の母は、平成28年3月25日までは、当該住所地で請求人と同居していたが、平成28年3月26日以降は、他の住所地に居住している。
    • (ニ) 本件ネット販売に係る売上代金についてはF社が購入者から回収しており、請求人は、売上代金の入金口座としてF社に請求人本人名義のK銀行○○支店普通預金口座(口座番号○○○○)を登録し、F社から同口座への振込入金により、当該売上代金を受領していた。
    • (ホ) 請求人が、本件ネット販売のための商品の仕入れに当たり、輸入手続を委託した輸入代行業者が作成した輸入申告書には、輸入者として「D」の名称が記載されている。
    • (ヘ) 請求人は、本件ネット販売の仕入代金を請求人本人名義のL銀行○○支店普通預金口座(口座番号○○○○)及び上記(ニ)のK銀行の口座から支払っていた。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 請求人は、 上記ロの(ニ)ないし(ヘ)のとおり、商品を輸入する際は請求人本人の姓名で輸入申告を行い、請求人本人名義の預金口座で決済しており、商品の仕入先に対しては、請求人の実名で取引を行っていたと認められる。
    • (ロ) また、請求人は、上記ロの(ニ)のとおり、本件ネット販売に係る売上代金について、F社に請求人本人名義の預金口座を登録し、当該預金口座にF社が顧客から回収した売上代金が入金されていたもので、F社に対しても、請求人の実名で取引を行っていたと認められる。
    • (ハ) これに対し、請求人は、上記ロの(イ)のAのとおり、顧客との取引においては、出品者プロフィール画面の正式名称欄に「H社」等の実在しない会社名を記載し、代表者欄に「J」と請求人の母の名を記載し、請求人の姓名は記載しない一方で、上記ロの(イ)のB及び上記ロの(ロ)のとおり、出品者プロフィール画面に請求人携帯番号を記載し、カスタマーサービス用のメールアドレスには請求人のメールアドレスを表示し、顧客からの問合せのメールに対しては請求人の姓を名乗って対応し、また、上記ロの(ハ)のとおり、顧客に商品を発送する際は、発送伝票に請求人の姓と請求人携帯番号、請求人自身の住所地を記載するなどしていた。
       確かに、請求人の姓と、請求人の母の姓は同一であって、出品者プロフィール画面には、代表者名として、請求人の母の姓名が記載されていること、発送伝票の記載には請求人の姓のみを記載し、メール等でも請求人の姓のみを名乗って対応していたこと、出品者プロフィール画面において、請求人のフルネームが記載されたことはなかったことからすると、かかる記載等をすることが、顧客に対し、本件ネット販売を請求人ではなく請求人の母が行っているかのように誤認させる行為となっているとも言い得る。
       しかしながら、請求人は、一方で、上記のとおり、顧客からの問合せ先として請求人自身のメールアドレスを表示し、出品者プロフィール画面や顧客への発送の際の発送伝票に請求人携帯番号を記載し、また、当該発送伝票の依頼主の住所に請求人自身の住所地を記載して(なお、上記ロの(ハ)のとおり、平成28年3月26日以降、請求人は母と別居したが、別居後も請求人自身の住所地を依頼主の住所として記載し続けている。)、顧客に対しても、請求人の母ではなく、請求人自身が本件ネット販売を行っていることを示す行為をしていること、上記(イ)及び(ロ)のとおり、商品の出品及び顧客への引渡しの前後で行われた商品の仕入れやF社を通じての売上代金の回収において、一貫して、請求人の実名で取引を行い、請求人本人名義の口座を用いていたことからすると、商品の出品及び顧客への引渡しの段階において、上記のように請求人の母の姓名を記載したり請求人の姓のみを記載したりしていたことをもって、直ちに請求人が本件ネット販売を行っていることを隠した又は請求人の母が本件ネット販売を行っているかのように装ったと評価することはできない。
       また、出品者プロフィール画面の出品者の正式名称欄等に、実在しない会社名を記載することや従前契約していたバーチャルオフィスの住所地を記載し続けていたことについても、特定商取引法等の問題は別にして、上記で述べたのと同様に、請求人携帯番号や請求人のメールアドレスの表示等、請求人自身の表示・記載をしている部分もあることなどからすると、このような会社名の使用等をもって、直ちに本件ネット販売に係る取引上の名義を隠す、あるいは、他人と偽る行為であるということはできない。
    • (ニ) 以上のことからすると、請求人は、商品の仕入れ、商品の出品や顧客への引渡し、F社を通じての代金回収といった本件ネット販売の各取引段階において、取引上の名義に関し、あたかも請求人以外の者が取引を行っていたかのごとく装い、故意に事実をわい曲するなどの仮装行為を行っていた又は請求人に帰属する本件ネット販売の売上げを秘匿する等の隠蔽行為を行っていたと認めることはできない。そして、他に、請求人が本件ネット販売に係る売上げを隠蔽し、又は売上げが請求人に帰属しないかのごとく取引名義を仮装したことを示す証拠は見当たらない。
       したがって、本件ネット販売において、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実の隠蔽又は仮装の行為があったとは認められず、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。
  • ニ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、上記3の(1)の「原処分庁」欄のイのとおり、本件ネット販売において、出品者プロフィール画面に実在しない会社名を記載し、代表者欄に請求人の母の名前を記載するなどして、取引名義を仮装することにより、本件ネット販売を行っていた事実を隠蔽した旨主張する。
     しかしながら、出品者プロフィール画面に実在しない会社名を記載したことや、代表者欄に請求人の母の名前を記載等したことのみをもって、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認められないことは、上記ハのとおりである。
     したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

(2) 争点2(請求人に、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があったか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第70条は、国税の更正、決定等の期間制限を定めているところ、同条第5項において「偽りその他不正の行為」によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等の除斥期間を7年と規定し、それ以外の場合よりも長い除斥期間を規定している。これは、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合に、これに対して適正な課税を行うことができるよう、より長期の除斥期間を規定したものである。
     このような通則法第70条第5項の趣旨からすれば、同項が規定する「偽りその他不正の行為」とは、税額を免れる意図のもとに、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為をいうものと解するのが相当である。
  • ロ 当てはめ
     上記(1)のとおり、請求人が、本件ネット販売に係る売上げについて、自己に帰属しないかのごとく取引名義を仮装していた又は当該売上げを隠蔽していたとは認められないところ、隠蔽又は仮装の具体的事実を特定できない本件にあって、他に何らかの偽計その他の工作を伴う不正の行為があったと認めるに足る証拠はない。
     したがって、請求人に、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があったとは認められない。
  • ハ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のとおり、請求人が本件ネット販売に係る収益及び確定申告の必要性を認識していたにもかかわらず、本件ネット販売を行っていなかったかのように事実を隠していた行為は、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当し、同法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」にも該当する旨主張する。
     しかしながら、請求人に、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があったと認められないことは、上記ロのとおりである。
     したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(3) 本件各賦課決定処分の適法性について

  • イ 平成26年分及び平成27年分の所得税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
     上記(2)のとおり、請求人に通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があるとは認められない。そうすると、請求人の平成26年分及び平成27年分の所得税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分は、同項が掲げる賦課決定には当たらないから、同条第1項第3号が規定する期限から7年を経過する日まですることができる場合には該当しない。
     したがって、平成26年分及び平成27年分の所得税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分は、通則法第70条第1項柱書に規定する賦課決定の期間制限を徒過してなされた違法な処分であり、その全部を取り消すべきである。
  • ロ 平成28年分ないし令和2年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分
     上記(1)のとおり、請求人に通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実は認められず、重加算税の賦課要件を満たしていないところ、平成28年分ないし令和2年分の各期限後申告書の提出により納付すべき税額の基礎となった事実のうちに期限内申告書の提出がなかったことについて、同法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、無申告加算税の賦課要件は満たしている。
     そして、他に計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は見当たらない。
     したがって、平成28年分ないし令和2年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の金額については、別紙1ないし別紙5の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ハ 平成27年課税期間の消費税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分
     上記(2)のとおり、請求人に通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」があるとは認められない。そうすると、請求人の平成27年課税期間の消費税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分は、同項が掲げる賦課決定には当たらないから、同条第1項第3号が規定する期限から7年を経過する日まですることができる場合には該当しない。
     したがって、平成27年課税期間の消費税等に係る無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分は、通則法第70条第1項柱書に規定する賦課決定の期間制限を徒過してなされた違法な処分であり、その全部を取り消すべきである。
  • ニ 平成28年課税期間ないし令和2年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分
     上記(1)のとおり、請求人に通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実は認められず、重加算税の賦課要件を満たしていないところ、平成28年課税期間ないし令和2年課税期間の各期限後申告書の提出により納付すべき税額の基礎となった事実のうちに期限内申告書の提出がなかったことについて、同法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、無申告加算税の賦課要件は満たしている。
     そして、他に計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は見当たらない。
     したがって、平成28年課税期間ないし令和2年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の金額については、別紙6ないし別紙10の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(4) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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