(令和5年8月21日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の滞納国税を徴収するため、運送業を営む請求人が所有する駐車場等の各不動産の公売公告処分を行ったのに対し、請求人が、請求人の滞納国税について「分割納付誓約書」を提出し、これに基づく納付計画に従って納付を継続していることからすれば、当該分割納付計画の期間中にした当該公売公告処分は、公売に付すべき時期を誤った違法又は不当な処分であるとして、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税徴収法(以下「徴収法」という。)第95条《公売公告》第1項は、税務署長(なお、同法第184条《国税局長が徴収する場合の読替規定》は、国税局長が徴収の引継ぎを受けた場合における徴収法の規定の適用については、「税務署長」とあるのは、「国税局長」とする旨規定している。以下、税務署長又は国税局長のことを「国税局長等」という。)は、差押財産等を公売に付するときは、公売の日の少なくとも10日前までに、1公売財産の名称、数量、性質及び所在、2公売の方法、3公売の日時及び場所、その他同項各号に掲げる事項を公告しなければならない旨規定している。
  • ロ 徴収法第96条《公売の通知》第1項は、国税局長等は、同法第95条の公告をしたときは、同条第1項各号(第8号を除く。)に掲げる事項及び公売に係る国税の額を滞納者に通知しなければならない旨規定している。
  • ハ 換価事務の取扱いについて国税庁長官が定めた換価事務提要(平成20年6月13日付徴徴3−9ほか1課共同「換価事務提要の制定について」(事務運営指針)の別冊。以下「換価事務提要」という。)第2章《換価の事前準備》第4節《差押手続等の確認》14《特に換価をしないことを適当とする場合》は、次に掲げるときは、換価をしないものとする旨定めている。
    • (イ) 国税通則法(以下「通則法」という。)第55条《納付委託》第1項第3号の規定により納付委託を受けたとき。
    • (ロ) 賦課交渉中、相続があった場合における承認又は放棄をすべき熟慮期間中(民法第915条《相続の承認又は放棄をすべき期間》)及び訴えの提起があった場合で特に換価をしないことが適当と認められるとき。
    • (ハ) その他特に換価をしないことを適当とするとき。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 原処分庁は、平成12年8月25日から平成22年1月22日までの間、請求人の別表1記載の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)について、通則法第43条《国税の徴収の所轄庁》第3項の規定に基づき、順次、K税務署長から徴収の引継ぎを受けた。
  • ロ 原処分庁は、平成20年9月1日付で、請求人の別表1の番号1ないし32記載の滞納国税を徴収するため、別表2の番号1記載の土地(以下「本件土地」という。)を差し押さえた。
  • ハ 原処分庁は、令和元年10月30日付で、請求人の本件滞納国税を徴収するため、別表2の番号2記載の建物を差し押さえた(以下、本件土地と当該建物を併せて「本件各不動産」という。)。
  • ニ 原処分庁は、令和〇年〇月〇日付で、本件滞納国税を徴収するため、本件各不動産について、徴収法第95条第1項の規定に基づき、公売の開始及び締切りの日時を令和〇年〇月〇日から〇月〇日まで、売却決定の日時を〇年〇月〇日〇時〇分、買受代金の納付の期限を〇日〇時〇分などとする公売公告処分(以下「本件公売公告処分」という。)を行うとともに、同法第96条第1項の規定に基づき、令和〇年〇月〇日付の公売通知書を請求人に送付して同法第95条第1項各号(同項第8号を除く。)に掲げる事項及び本件滞納国税を請求人に通知した。
  • ホ 請求人は、本件公売公告処分に不服があるとして、令和4年10月3日に審査請求をした。

2 争点

 本件公売公告処分は、公売に付すべき時期を誤った違法又は不当なものであるか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
差押財産を公売に付すべき時期については、国税の徴収の所轄庁の合理的な裁量に委ねられていると解されるところ、本件公売公告処分は、次のとおり、公売に付すべき時期について裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから、違法又は不当な処分ではない。 本件公売公告処分は、次の事情等を考慮すれば、公売に付すべき時期を誤った違法又は不当な処分である。
(1) 請求人は、平成9年から平成21年まで繰り返し滞納を発生させ、本件公売公告処分の時点で25年間にわたり滞納が継続している。上記の間、請求人は分割納付を行っているものの、その金額は本件滞納国税に比して僅少であるから、分割納付を継続しても完納するまでには、今後、更に長期間を要する。 (1) 請求人は、平成30年に本税を完納した後、本件滞納国税について、令和4年6月から令和5年5月までの期間に係る「分割納付誓約書」を令和4年6月に提出し、当該「分割納付誓約書」に基づいて毎月の納付額を継続して納付している。加えて、令和5年より納付額を増額して今後も納付を継続する意思がある。
(2) 本件滞納国税は、本件公売公告処分の時点で、通則法第46条《納税の猶予の要件等》に基づく納税の猶予や、徴収法第151条《換価の猶予の要件等》及び同法第151条の2に基づく換価の猶予の適用はなく、本件各不動産を公売するに当たり、法令の規定による換価の制限はない。 (2) 本件滞納国税について、通則法第46条の規定に基づく納税の猶予若しくは徴収法第151条又は同法第151条の2の規定に基づく換価の猶予の適用を受けてはいないが、上記(1)のとおり、「分割納付誓約書」を提出していることから、実質的にはこれらの猶予を受けた状態と異ならない。
(3) 本件各不動産が請求人の事業の継続に欠かせない重要な財産であったとしても、車庫、整備場及び休憩場として利用可能な唯一の不動産であるとは認められない。なぜなら、本件各不動産は、接道や用途の状況において特殊な点はないし、請求人は本件各不動産の近隣に所在する土地を駐車場として賃借しているからである。
 また、原処分庁所属の徴収担当職員(以下、請求人と面接等をした各徴収担当職員を「本件各徴収担当職員」という。)は、平成28年11月22日に請求人の当時の代表取締役であったLに対して、公売手続を進める旨を伝えたが、その日から、本件公売公告処分までの期間は、約5年10か月あるから、他の不動産を探す期間として十分である。
(3) 本件各不動産は、請求人が事業を継続していく上で必要不可欠な財産である。本件各不動産のほかに近隣に賃借している駐車場はあるものの、整備及び休憩場としての使用は契約上利用できないため、車庫、整備及び休憩場として使用できる土地はほかになく、十分特殊である。
 また、実際に公売通知を受けてから公売の日までの期間は10日ほどしかなく、他の不動産を探す時間としては不十分であるし、新たな土地を賃借する資金もないことは、提出した財産目録によって原処分庁も確認できたはずである。
(4) 上記(3)のとおり、Lに対して、公売手続を進める旨を伝えて以降、請求人が、「分割納付誓約書」を毎年提出し、当該「分割納付誓約書」に記載された納付計画に従って誠実に分納を履行している間も、そのような分納によって公売手続が停止するとの見解を請求人に対し表明したことはない。
 公売手続が進行中であることは請求人も承知していたから、原処分庁が本件公売公告処分の直前に請求人に対し通知を行わなかったことは、不適当ではない。
 なお、本件各徴収担当職員が請求人に「分割納付誓約書」の提出を求めたのは、本件各徴収担当職員と請求人の双方で、本件滞納国税について分割納付計画を確認するためであって、本件各不動産の換価を猶予する趣旨ではない。
(4) 上記(1)の「分割納付誓約書」を提出した際に、本件各徴収担当職員から公売をする旨の説明は一切なかった。
 また、原処分庁が本件公売公告処分を行うに当たって、上記(1)の「分割納付誓約書」による分割納付の約束を取り消すという通知すらなかった。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈等

  • イ 国税納付の猶予と換価の制限について
    • (イ) 国税納付の猶予に係る換価の猶予について  
      • A 徴収法第89条《換価する財産の範囲等》第1項は、差押財産は、同法第5章《滞納処分》第3節《財産の換価》の定めるところにより換価しなければならない旨、同法第94条《公売》は、差押財産を換価するときは、これを公売に付さなければならない旨、同法第95条第1項は、国税局長等は、差押財産を公売に付するときは、原則として、公売の日の少なくとも10日前までに公売財産の名称等を公告しなければならない旨それぞれ規定している。
      • B この点、国税の徴収は、私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的としており、財産を差し押さえた場合は、滞納者の意思にかかわらず、直ちに換価手続に入るのが原則である。
         他方で、直ちに財産を換価することにより滞納者の事業が壊滅することが見込まれるときに、その事業が立ち直るまで差し押さえた財産の換価処分を猶予することが社会政策上又は国民経済上適当であり、国税徴収の目的にもかなうことから、滞納処分による財産の換価を猶予し、当該猶予の期間中の滞納国税の分割納付を認めている。すなわち、徴収法第151条は、滞納者が納税に対し誠実な意思を有すると認められるときに、1その財産を換価することによりその事業の継続を困難にするおそれがある場合(同条第1項第1号)、又は2その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利である場合(同項第2号)に、滞納処分による財産の換価を猶予することができる旨規定し、徴収法第151条の2は、同法第151条の規定によるほか、滞納者がその国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときは、その国税の納期限から6月以内にされたその者の申請に基づき、滞納処分による財産の換価を猶予することができる旨規定している(以下、徴収法第151条又は第151条の2による換価の猶予のことを「換価の猶予」という。)。また、徴収法第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》第1項により、換価の猶予をする場合には、換価の猶予に係る金額を換価の猶予の期間に分割して納付させるものとしている。
      • C そして、換価の猶予が認められる期間は、原則1年間(例外として、猶予期間内に完納できないやむを得ない理由があると認められるときは、徴収法第152条第3項又は第4項が準用する通則法第46条第7項により、当初の猶予期間と併せて2年間の範囲で延長することができる。)とされているところ、これは差押財産の換価を猶予することが国税徴収の目的にかなうとしても、期限内に納付した他の納税者との公平を踏まえ当該期間を制限したものと解される。
      • D 以上のとおり、徴収法第95条第1項において公売公告の時期が規定されている以外には、換価に関する時期について定めた法令上の規定はなく、また、換価の猶予(徴収法第151条)をした場合等の一定の場合を除き、差押財産を公売に付すことを制約する法令上の規定もない。
    • (ロ) 換価事務提要に挙げられた換価をしないことを適当とする場合について  
      • A 差押財産の換価は、国税局長等が差し押さえた滞納者の財産を売却し、その売却代金をもって滞納国税を早期かつ確実に徴収することを最終目的として実施するものであるが、他方で滞納者の権利利益に法律上及び事実上の重大な影響を及ぼす効果を有していることから、差押財産の換価に当たっては、画一的に実施するのではなく、滞納者の個々の実情を踏まえた上で、対象事案を適切に選定する必要がある。そのため、差押財産の換価は、換価事務提要において、換価事務を適正に実施するための実施手続及びこれに関連する様式が整備され、事務処理の統一が図られている。
      • B 換価事務提要第2章第2節《公売予告通知書等の送付》8《出署者への対応》においては、公売手続前において、原則公売予告を行うことにより、滞納者の現況(例えば、事業状況、生計の現況、納付計画等)を十分聴取して極力納付を促すこととし、早急に納付することが困難な者については、その実情により、換価を実施すべき者とそれ以外の方法により滞納整理をすることが適切と見込まれる者とに判別し、それぞれの区分に従ってその後の滞納整理を行うこととしている。
         また、換価事務提要第2章第4節13《法令の規定による換価の制限の有無》において法令の規定による換価を制限すべき事項を定めるほか、同14において特に換価をしないことを適当とする場合として、1通則法第55条第1項第3号の規定により納付委託を受けたとき、2賦課交渉中、相続があった場合における承認又は放棄をすべき熟慮期間中(民法第915条)及び訴えの提起があった場合で特に換価をしないことが適当と認められるとき、3その他特に換価をしないことを適当とするときを挙げている。そして、上記3の「換価をしないことを適当とするとき」の判断に当たっては、差押財産の換価が滞納者の権利・利益に法律上及び事実上の重大な影響を及ぼす効果を有することに鑑みれば、上記1及び2に例示として掲げられた事情のほか、更に滞納者の個々の実情を踏まえ、国税の効果的な徴収に向け、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等諸般の事情をも考慮して判断することが相当であるものと解される。
    • (ハ) 「分割納付誓約書」による取扱いについて  
      • A 滞納者が換価の猶予の期間内に完納できず、更に滞納国税の完納までに長期間を要する場合の対応について、直接には、法令や通達には定めがなく、上記(ロ)の換価事務提要においても、具体的な定めは置かれていない。そのため、換価の猶予の期間経過後の滞納者について、引き続き個別具体的な事情に則した対応を行う必要があることから、国税局長等が滞納者の収支状況や財産状況を確認し、滞納国税に係る分割納付計画が妥当であり、かつ1納税について誠実な意思を有すると認められ、2分割納付の期間中に新たな滞納の発生が見込まれず、3原則完納までの期間が10年未満であると見込まれる場合、滞納者から滞納国税に係る「分割納付誓約書」を提出させることにより、納付計画に基づく分割納付を認める取扱い(以下「分割納付誓約書による取扱い」という。)を行うことがある。
         分割納付誓約書による取扱いが行われる際、滞納者は、国税局長等から示された当該「分割納付誓約書」の用紙に、滞納者に係る滞納国税及び納付計画を記載した上で署名等をすることとなっており、当該用紙には、「万一、納付計画が不履行となった場合あるいは新たな滞納を発生させた場合の、国税徴収法に基づく差押え等の滞納処分について教示を受けました。」との文言が不動文字で印字されている。ただし、「分割納付誓約書」には、滞納者が納付計画に基づく分割納付を行っている間に、国税局長等が差押財産の換価を猶予する旨の記載はない。
      • B 分割納付誓約書による取扱いの期間中の換価については、上記Aのとおり、分割納付誓約書による取扱いが、直接には、法令や通達等には定めがないものであり、また、上記(イ)のBのとおり、財産を差し押さえた場合は、滞納者の意思にかかわらず、直ちに換価手続に入るのが原則であって、当該取扱期間中に差押財産の換価が制限されると解さなければならない理由はない上、「分割納付誓約書」の用紙には、滞納者が納付計画に基づく分割納付を行っている間、国税局長等が差押財産の換価を猶予する旨の記載もないことからすれば、分割納付誓約書による取扱いは、滞納者の当該取扱期間中における支払能力に応じた分割納付方法を国税局長等が容認したにすぎず、国税局長等と滞納者の間で、当該取扱期間中の換価を制限するという法的効果を生じさせる合意がされたとは解されない。
  • ロ 国税局長等が換価をすべき時期に関する裁量について
     上記イの(イ)のDで述べたとおり、国税局長等が換価をすべき時期に関する法令上の制限としては、換価の猶予をした場合等の一定の場合を除き、差押財産を公売に付すことを制限する法令上の規定はなく、同(ハ)で述べたとおり、分割納付誓約書による取扱いにおいて当該取扱期間中の換価を制限する合意がされたとも解されないところ、法令上の制限がない場合の国税局長等による公売に付すべき時期についての判断は、滞納者の個々の実情を踏まえた上で、対象事案を適切に選定する必要があるから、その判断は国税局長等の合理的な裁量に委ねられているものと解される。
     したがって、国税局長等が公売による換価手続の第一段階としてする公売公告処分は、国税局長等の判断が事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又は濫用してされたと認められる場合に限り、当該処分は違法となり、また、当該処分が違法であるとまではいえないものの、国税局長等の公売公告処分に係る裁量権の行使が、上記イで述べた差押財産の換価に係る制度の趣旨・目的に照らし合理性を欠く場合には、不当と判断すべきものと解される。
     そして、上記イの(ロ)の換価事務提要は、換価事務を適正に実施するため、その実施手続及びこれに関連する様式を整備し、事務処理の統一を図ったものであり、ひいては、国税局長等の裁量権行使に係る準則を定めたものであると解されることから、国税局長等がした公売に付すべき時期の判断が裁量権の範囲の逸脱若しくは濫用又は合理性を欠くものであるか否かは、上記イの(ロ)のBのとおり、滞納者の個々の実情を踏まえ、国税の効果的な徴収に向け、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等の諸般の事情を考慮して判断することが相当であると解される。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人に係る滞納整理の状況等について
    • (イ) 滞納国税の発生状況
       請求人は、別表1の「納期限」欄に記載のとおり、平成9年から平成21年までの間において、繰り返し滞納を発生させたものの、平成22年2月以降に新たに納期限が到来する国税について、本件公売公告処分までの間に、原処分庁がK税務署長から新たに徴収の引継ぎを受けた滞納国税はなかった。
    • (ロ) 各「分割納付誓約書」を提出した経緯について
      • A 令和元年6月24日付の「分割納付誓約書」について
        • (A) 本件各徴収担当職員は、令和元年6月11日、請求人の事務所を訪問し、その当時の専務取締役(請求人の現在の代表取締役。以下「本件代表者」という。)、関与税理士ほか2名と面談し、請求人の概況、決算状況、取引先、財産状況及び納付計画等を聴取した上で、近年の分割納付の状況、期限内納付の申出などからすると納税に対する誠意が認められるとして、「分割納付誓約書」を徴取して、分割納付誓約書による取扱いに係る処理を進めることとした。
        • (B) 本件各徴収担当職員は、令和元年6月18日、本件滞納国税の目録を添付し納付計画欄の年月日(令和元年6月30日から令和2年5月31日までの各月末日)及び納付額(〇〇〇〇円、〇〇〇〇円又は〇〇〇〇円)を記載した「分割納付誓約書」を請求人に送付した。
        • (C) 請求人は、本件各徴収担当職員から送付された「分割納付誓約書」の住所、氏名の各欄に記名押印の上、令和元年6月24日、原処分庁に提出した。
      • B 令和2年5月29日付の「分割納付誓約書」について
        • (A) 本件各徴収担当職員は、令和2年4月8日、本件代表者から業務の状況等について聴取した上で「財産目録」及び「収支の明細書」を請求人に送付した。
        • (B) 本件各徴収担当職員は、令和2年5月15日、請求人から提出された「財産目録」及び「収支の明細書」並びに本件代表者から聴取した納付計画を踏まえた上で、本件滞納国税の目録を添付し納付計画欄の年月日(令和2年6月30日から令和3年5月31日までの各月末日)及び納付額(各月〇〇〇〇円)を記載した「分割納付誓約書」を請求人に送付した。
        • (C) 請求人は、本件各徴収担当職員から送付された「分割納付誓約書」の住所、氏名の各欄に記名押印の上、令和2年5月29日、原処分庁に提出した。本件各徴収担当職員は、原処分庁に提出された「分割納付誓約書」に基づき納付計画を検討したところ、徴収法第151条第1項第2号に該当するものの、既に同号に基づく換価の猶予を行っていることから、令和2年6月2日、分割納付誓約書による取扱いを行うこととした。
      • C 令和3年6月7日付の「分割納付誓約書」について
        • (A) 本件各徴収担当職員は、令和3年4月5日、本件代表者に対し、今後の納付計画を聴取し、一括納付が困難である旨の申出を踏まえた上で、「財産目録」及び「収支の明細書」を請求人に送付した。
        • (B) 本件各徴収担当職員は、令和3年6月1日、請求人から提出された「財産目録」及び「収支の明細書」に基づき、納付計画の根拠について本件代表者から聴取したところ、役員報酬減額により納付資金を捻出する旨の申出を踏まえた上で、本件滞納国税の目録を添付し納付計画欄の年月日(令和3年6月30日から令和4年5月31日までの各月末日)及び納付額(各月〇〇〇〇円)を記載した「分割納付誓約書」を請求人に送付した。
        • (C) 請求人は、本件各徴収担当職員から送付された「分割納付誓約書」の住所、氏名の各欄に記名押印の上、令和3年6月7日、原処分庁に提出し、本件各徴収担当職員は原処分庁に提出された「分割納付誓約書」に基づき納付計画を検討したところ、既に徴収法第151条第1項第2号に基づく換価の猶予を行っていることから、同月9日、分割納付誓約書による取扱いを行うこととした。
      • D 令和4年6月10日付の「分割納付誓約書」について
        • (A) 本件各徴収担当職員は、令和4年4月4日、本件代表者に対し、今後の納付計画を聴取し、毎月〇〇〇〇円の分割納付を継続したいとの申出を踏まえた上で、「財産目録」及び「収支の明細書」を請求人に送付した。
        • (B) 本件各徴収担当職員は、令和4年6月2日、請求人から提出された「財産目録」及び「収支の明細書」に基づき、納付計画の根拠について本件代表者から聴取したところ、役員報酬減額や代表者貸付けにより納付資金を捻出する旨の申出を受けた。そこで、本件各徴収担当職員は、上記申出を踏まえると、徴収法第151条第1項第2号に該当するものの、既に同号に基づく換価の猶予を行っていることから、「分割納付誓約書」に基づく分割納付を認めることとして、本件滞納国税の目録を添付し納付計画欄の年月日(令和4年6月30日から令和5年5月31日までの各月末日)及び納付額(各月〇〇〇〇円)を記載した「分割納付誓約書」を請求人に送付した。
        • (C) 請求人は、本件各徴収担当職員から送付された「分割納付誓約書」の住所、氏名の各欄に記名押印の上、令和4年6月10日、原処分庁に提出した(以下、同日付の「分割納付誓約書」における納付計画に係る期間のことを「本件分割納付誓約期間」という。)。
    • (ハ) 本件滞納国税の納付状況
       請求人は、平成15年頃から分割納付を開始し、本件滞納国税に係る分割納付を別表3記載のとおり行っていた。なお、上記(ロ)のAないしDの各「分割納付誓約書」に記載された令和元年6月30日から本件公売公告処分の前月である令和〇年〇月〇日までの納付計画については、各期日前に計画どおり納付が行われており、不履行は一度もなかった。
    • (ニ) 公売手続に係る経緯等
      • A 本件各徴収担当職員は、平成28年11月22日、請求人の当時の代表取締役であったLの立会いの上、本件土地の現地確認を行い、同人に公売手続を進める旨説明した。
      • B 本件各徴収担当職員は、平成30年12月10日、本件代表者に対して電話連絡し、分割納付の継続及び公売手続を進める旨説明した。
      • C 本件各徴収担当職員は、令和元年6月18日、本件代表者に対して電話連絡し、分割納付の継続及び公売手続を進める旨説明した。その際、本件代表者は、本件各不動産の公売実施時期について質問したが、本件各徴収担当職員は、未確定である旨回答した。
      • D 本件各徴収担当職員は、令和3年6月1日、本件代表者に対して電話連絡した。その際、本件代表者は、本件各徴収担当職員に対し、本件各不動産の公売手続が進んでいることは承知しているが、事業に必要な財産であり売却となった場合、事業継続は困難であるが公売手続を進めるとの話であり、どうしようもないと思っている旨発言した。
      • E 本件各徴収担当職員は、令和4年8月16日、原処分庁所属の公売事務を担当する職員からの本件各不動産につき公売対象とすることの可否の問合せに対し、次の(A)ないし(C)の理由から公売相当であると判断し、その旨当該職員に回答した。
        • (A) 平成28年に公売手続を進めてから、当時の担当者が繰り返し公売手続を進める旨を本件代表者に説明しており、本件代表者もその旨を承知しているとの記録があったこと。
        • (B) 令和元年から引き続き「分割納付誓約書」を徴取しているが、これまでの担当者も公売手続を進めてきたこと。
        • (C) 年々分割納付の金額が下がっていたことからしても、自分が担当の時に処理方針を覆す特別な事情は認められないこと。
      • F 請求人は、令和〇年〇月〇日、本件各徴収担当職員に対して電話連絡し、本件各不動産については公売されることは理解していたが、話が急であり事業に支障を来すため公売を中止してほしい旨発言した。
  • ロ 請求人の収支状況及び財産の保有状況について
    • (イ) 請求人の収入及び支出状況
       請求人の令和3年4月から1年間の収支状況は、ほぼ毎月〇〇〇〇であり、令和4年5月以降の平均的な収入及び支出の見込月額についても、1月当たり〇〇〇〇であった。
    • (ロ) 財産の保有状況
       令和4年5月時点の請求人の財産は、本件各不動産を除くと、当面の事業継続に必要な程度の現金・預貯金、売掛金、車両、駐車場の敷金及び協同組合への出資金・保証金の保有しかなかった。
  • ハ 本件各不動産の見積価額について
     原処分庁は、令和〇年〇月〇日、本件各不動産の見積価額を〇〇〇〇円と決定した。
  • ニ 本件各不動産の利用状況について
     請求人は、令和4年5月時点でリースのものを含め車両13台(その内訳は、大型車両5台、3トン車1台、2トン車6台、ワゴン車1台)を保有しており、本件土地は、大型車両5台の駐車場、従業員用の駐車場及び車両整備用の車庫として利用されている。また、本件土地上の建物については、整備機材等の置場及び休憩所等として利用されている。
  • ホ 法令の規定による換価の制限について
     本件滞納国税は、本件公売公告処分の時点で、通則法第46条に規定する納税の猶予や、徴収法第151条及び同法第151条の2に規定する換価の猶予の適用はなく、その他法令の規定による換価の制限の適用はなかった。

(3) 検討

  • イ 本件公売公告処分は裁量権の範囲の逸脱又は濫用による違法な処分か否か
    • (イ) 上記(1)のロのとおり、公売公告処分は、国税局長等の判断が事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又は濫用してされたと認められる場合に限り、当該処分は違法な処分となる。
       これを本件公売公告処分についてみると、1別表1記載のとおり、請求人が本件公売公告処分の時点で納付すべき滞納国税の総額は〇〇〇〇円(不納付加算税〇〇〇〇円、延滞税〇〇〇〇円)であったこと、2上記(2)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人は、平成9年から平成21年まで繰り返し滞納を発生させ、令和元年6月24日付の「分割納付誓約書」から本件公売公告処分に至るまで、3年以上の期間にわたって分割納付誓約書による取扱いがされてきたところ、請求人の納付金額については、令和2年5月29日までは1か月に〇〇〇〇円以上を納付していたものの、同年6月30日からは1か月に〇〇〇〇円の納付、令和3年6月30日から本件公売公告処分に至るまでの間は、1か月に〇〇〇〇円の納付にとどまり、その納付金額は減少の一途をたどっていたこと、3上記(2)のロの(イ)のとおり、本件公売公告処分の当時、請求人の平均的な収入及び支出の見込月額は〇〇〇〇であったことからすれば、請求人の滞納国税の総額は多額である一方で、請求人の月間の納付金額は少なく、〇〇〇〇であった請求人が分割による月々の納付金額を増額できる見込みも乏しかったというべきであり、分割納付のみでは自主納付による完納の見込みがあったとはいえない。
       また、4上記(2)のハのとおり、本件各不動産の見積価額は〇〇〇〇円であったところ、上記2のとおり、本件分割納付誓約期間における1か月の納付金額が〇〇〇〇円であったことからすれば、上記見積価額は分割納付〇か月分に相当する金額を一括して徴収することができるものであったといえる。
       そして、5上記(2)のロの(ロ)及び同ニのとおり、請求人は本件各不動産を除いて、当面の事業継続に必要不可欠な財産しか所有していないところ、本件各不動産についても、請求人が運送業に使用する大型車両の駐車場及び車両整備用の車庫等として利用しており、その事業に必要なものであることは否定できない。しかしながら、請求人が本件土地と同様に運送業に利用できる代替土地等を賃借するなどして利用することもでき、本件各不動産が請求人の事業に必要不可欠なものであるとまではいえない上、上記2で述べたとおり、請求人については3年以上の期間にわたって分割納付誓約書による取扱いがされてきたことからすれば、請求人が本件公売公告処分までに本件各不動産の代替土地を確保するための期間もあったというべきであり、必ずしも本件公売公告処分が請求人の事業の継続を不可能にするものであるとはいえない。
    • (ロ) 以上のとおり、請求人には自主納付による完納の見込みがあったとはいえないこと、本件各不動産の換価額として相応の金額が見積もられていたこと、請求人が事業のために使用していた本件各不動産を公売に付することにより、必ずしも同事業の継続を不可能にするものであるとはいえないことなどの上記1ないし5の各事情を考慮すれば、本件公売公告処分の当時、本件各不動産を公売に付さないことが適当なときであるとはいえない旨の原処分庁の判断が、事実の基礎を欠くか又は著しく妥当性を欠いているということはできない。
       したがって、本件公売公告処分により本件各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法である。
  • ロ 本件公売公告処分は裁量権の行使の合理性を欠く不当な処分か否か
    • (イ) はじめに
       上記イで述べたとおり、本件公売公告処分は適法であるが、上記(1)のロのとおり、本件公売公告処分が違法であるとまではいえなくても、原処分庁の裁量権の行使が、差押財産の換価に係る制度の趣旨・目的に照らし合理性を欠く場合には、不当と判断すべきであるから、以下、本件公売公告処分の不当性の有無について検討する。
    • (ロ) 自主納付の見込みに関する事情について
       請求人は、上記(2)のイの(イ)のとおり、平成22年2月以降、新たに納期限が到来する国税について滞納を発生させておらず、また、同(ハ)のとおり、本件滞納国税に比して僅少ではあるものの、平成15年頃から本件公売公告処分までに20年近くにわたって本件滞納国税の分割納付を継続している。そして、当該分割納付の額は、令和元年6月以降、上記(2)のイの(ロ)のAないしDのとおり、分割納付誓約書による取扱いにより、請求人の収支状況及び財産の保有状況から支払可能な金額として、原処分庁も認めた金額であったといえる。
       以上のような自主納付の見込みに関する事情からすれば、本件公売公告処分の当時、少なくとも本件分割納付誓約期間内に、請求人が納付計画どおりの自主納付を継続する蓋然性が高かったというべきである。
    • (ハ) 公売による換価額に関する事情について
       上記(2)のハのとおり、本件各不動産の見積価額は〇〇〇〇円であり、同イの(ロ)のDのとおり、本件分割納付誓約期間における請求人による分割納付が月額〇〇〇〇円であったことからすれば、本件各不動産の公売による換価額は相応の金額を一括して徴収することができるものであったというべきものではあるものの、他方で、本件公売公告処分の当時に、本件各不動産を直ちに換価しなければその価額が下落して、徴収の目的を達せられなくなるなどの事情があったとは認められない。
       また、本件滞納国税は、別表1記載のとおり、不納付加算税及び延滞税の附帯税のみであって本税の未納は残されておらず、今後、更に未確定の延滞税が加算されることはない。そうすると、例えば、本件各不動産を直ちに換価し、その換価代金を滞納国税に充てて未確定の延滞税の発生を抑止することで、滞納国税の総額に対する本件各不動産の換価額の割合の低下を防止し、換価額の相対的な価値が維持されるなど、本件各不動産を直ちに換価することで徴収上有利となる事情もない。
       以上からすれば、本件各不動産については、本件公売公告処分の当時、直ちに換価をすることで、換価額の下落の回避又は換価額の相対的な価値の維持ができたとは認められない。そうすると、公売による換価額に関する事情として、本件分割納付誓約期間内に直ちに本件各不動産を公売に付すべき、あるいは、付さなければならない事情はなかったというべきである。
    • (ニ) 本件各不動産の公売による請求人への影響について
      • A 本件土地は、上記(2)のニのとおり、大型車両の駐車場及び車両整備用の車庫等として利用されている。そのため、本件土地が公売に付された場合に、請求人が従前と同様の事業を継続するためには、請求人の運送業において大型車両の駐車場及び車両整備用の車庫等として利用できる本件土地の代替土地の確保が必要となる。
         しかしながら、大型車両複数台を駐車できる面積があり、かつ、車両整備用の車庫も設置することができる代替土地を確保するには、相応の期間を要すること、また、そのような代替土地が確保できない場合には、請求人が運送業に使用する大型車両の保有台数を減らして事業規模を縮小するなどして対処せざるを得ないことが想定される。
      • B ところが、上記(2)のイの(ロ)のDのとおり、本件各徴収担当職員は、令和4年6月2日には、「分割納付誓約書」を請求人に送付し、同月10日には、請求人の記名押印がされた「分割納付誓約書」の提出を受けた一方、他方で、同(ニ)のとおり、本件各徴収担当職員は、請求人に対し、令和元年6月18日には、公売手続を進める旨の説明をしたものの、それ以降、本件公売公告処分に至るまで、公売手続を進める旨の説明や公売時期に関する説明を行っていない。
         そして、請求人も、請求人が、上記(2)のイの(ニ)のD及びFのとおり、本件各不動産の公売手続は進められている旨理解していたとはいうものの、請求人が本件公売公告処分がされた後に、「話が急であり事業に支障を来す」などと申述していたことからすれば、令和4年6月10日付の「分割納付誓約書」の納付計画のとおりに分割納付を履行している限りは、本件分割納付誓約期間内に直ちに本件各不動産が公売に付されることはないと期待していたと認められる。
      • C 以上の事情からすれば、本件各徴収担当職員が、請求人に対し、令和4年6月10日付の「分割納付誓約書」による分割納付を認めつつ、本件各不動産に係る公売時期の説明をしなかったことで、請求人が、同「分割納付誓約書」の納付計画のとおりに分割納付を履行している限りは、本件分割納付誓約期間内に直ちに本件各不動産が公売に付されることはないと期待したことにより、本件各不動産の代替土地の確保のための機会及び期間が事実上なかったというべきである。そうすると、本件各徴収担当職員が請求人に対して、公売時期の説明をするなどして上記期待を排斥することなく本件公売公告処分がされたことで、本件公売公告処分による請求人の事業への影響がより大きくなったことは否定できない。
    • (ホ) 小括
       以上で述べたとおり、少なくとも本件分割納付誓約期間内においては、請求人が納付計画どおりの自主納付を継続する蓋然性が高く、直ちに換価をすることで、換価額の下落の回避又は換価額の相対的な価値の維持ができたともいえず、また、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産が公売に付されることはないと期待した請求人としては、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なく、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったというべきであり、これらの各事情を考慮すると、本件公売公告処分は、滞納者である請求人の個々の実情を十分に踏まえたものであるとはいい難く、また、必ずしも本件滞納国税の効果的な徴収に資するものであったともいい難いものであるといわなければならない。そうすると、本件公売公告処分は、原処分庁が本件分割納付誓約期間内に公売に付したという時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であるといわなければならない。

(4) 原処分庁の主張について

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(3)及び(4)のとおり、1本件各不動産が車庫、整備場及び休憩場として利用可能な唯一の不動産とは認められないこと、2本件各徴収担当職員が請求人に公売手続を進める旨伝えてから本件公売公告処分までの期間は約5年10か月あるから、代替土地を探す期間として十分であること及び3請求人に対し、「分割納付誓約書」による分割納付を行っているからといって、公売手続が停止するとの見解を表明していないことなどの事情を考慮すれば、本件公売公告処分は裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから違法又は不当な処分ではない旨主張する。
 確かに、原処分庁の主張する上記1ないし3の各事情は認められ、上記(3)のイで述べたとおり、本件各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法である。
 しかしながら、本件公売公告処分は、上記(3)のロの(ニ)で述べたとおり、請求人が令和4年6月10日付の「分割納付誓約書」の納付計画のとおりに分割納付を履行している限りは、本件分割納付誓約期間内に直ちに本件各不動産が公売に付されることはないと期待し、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なかったというべき時期においてされており、本件各不動産の公売による請求人の影響が大きいという事情があった反面、同(ロ)及び(ハ)のとおり、自主納付の見込み及び公売による換価額に関する各事情からは、本件公売公告処分を本件分割納付誓約期間内に直ちにしなければならないというべき点を見出すことはできない。そうすると、本件公売公告処分は、上記各事情を考慮すれば、本件分割納付誓約期間内に直ちに行われた点において、公売に付する時期の判断が合理性を欠いているというべきである。
 したがって、これらの原処分庁の主張には理由がない。

(5) 本件公売公告処分の適法性について

  • イ 上記(3)のイのとおり、本件公売公告処分を行った時期についての原処分庁の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったということはできないから、本件公売公告処分が違法であるとは認められない。
  • ロ しかしながら、上記(3)のロのとおり、本件公売公告処分は、公売に付すべき時期について裁量権の行使が合理性を欠く不当な処分であり、その全部を取り消すべきである。

(6) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の全部を取り消すこととする。

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