(令和5年12月7日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、勤務先である内国法人の親会社(外国法人)の株式報酬制度に基づいて支給された株式に係る給与所得の申告が漏れていたとして、所得税等の修正申告書を提出したところ、原処分庁が、当該修正申告書の提出に係る過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該修正申告書の提出時において調査があったとはいえないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、当該納税者に対し、その修正申告に基づき納付すべき税額に100分の10の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、100分の5の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定している。
  • ロ 通則法第65条第2項は、同条第1項の規定に該当する場合において、同項に規定する納付すべき税額がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする旨規定している。
  • ハ 通則法第65条第5項は、同条第1項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》第1項第4号及び第5号に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(以下「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない旨規定している。
  • ニ 通則法第74条の9第1項は、税務署長は、税務署の当該職員に納税義務者に対し実地の調査において通則法第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする旨規定している。
    • (イ) 質問検査等を行う実地の調査を開始する日時(第1号)
    • (ロ) 実地の調査を行う場所(第2号)
    • (ハ) 実地の調査の目的(第3号)
    • (ニ) 実地の調査の対象となる税目(第4号)
    • (ホ) 実地の調査の対象となる期間(第5号)
    • (ヘ) 実地の調査の対象となる帳簿書類その他の物件(第6号)
    • (ト) その他実地の調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項(第7号)
  • ホ 国税通則法施行令第27条《過少申告加算税等を課さない部分の税額の計算等》第3項は、通則法第65条第5項に規定する政令で定める事項は、通則法第74条の9第1項に規定する実地の調査において質問検査等を行わせる旨とする旨規定している。
  • ヘ 国税庁長官が発出した平成24年9月12日付課総5−11ほか9課共同による「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」(以下「本件事務運営指針」という。)は、要旨次のとおり定めている。
    • (イ) 本件事務運営指針は、法令を遵守した適正な調査の遂行を図るため、調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等を定めるものである。
    • (ロ) 納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行う(本件事務運営指針の別冊の第2章の1《調査と行政指導の区分の明示》)。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、平成29年ないし令和2年において、D社(同社は、令和2年4月○日にE社に組織変更した。以下、この組織変更の前後を通じて「D社」という。)に勤務していた。
  • ロ 請求人は、平成29年ないし令和2年において、D社の親会社であり、アメリカ合衆国に所在する法人であるF社(以下「本件親会社」という。)から付与されていた制限株式ユニット(以下「RSU」という。)の制限解除及び従業員持株購入プラン(以下「ESPP」という。)への参加に基づき本件親会社の株式を時価より低額で取得したことによる各経済的利益(以下、これらを併せて「本件各インセンティブ報酬」という。)を受けた。
  • ハ 請求人は、平成29年分、平成30年分、令和元年分及び令和2年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、別表の「確定申告」欄のとおり記載された確定申告書(以下「本件各申告書」といい、本件各申告書に係る申告を「本件各申告」という。)を原処分庁にいずれも法定申告期限内に提出した。
     なお、請求人は、本件各申告において、本件各インセンティブ報酬に係る給与所得を申告していなかった。
  • ニ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和4年9月15日、請求人に対し、本件各インセンティブ報酬について確認したい旨電話連絡(以下「本件電話」という。)した。
  • ホ G税理士法人(以下「本件代理人」という。)は、令和4年9月26日、請求人からの依頼を受け、本件各年分に係る所得税等について、別表の「修正申告」欄のとおり記載された各修正申告書(以下「本件各修正申告書」といい、本件各修正申告書に係る申告を「本件各修正申告」という。)を原処分庁に提出した。
     なお、本件各修正申告の主たる修正の内容は、本件各申告の申告額に本件各インセンティブ報酬に係る給与所得を加算したものであった。
  • ヘ 原処分庁は、令和4年10月28日付で、本件各修正申告に対し、別表の「賦課決定処分」欄のとおりの本件各年分に係る所得税等の過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
     なお、本件各賦課決定処分の通知書には、本件各修正申告書は、調査の結果に基づくものであるため、更正を予知しない修正申告書には該当しない旨記載されていた。
  • ト 請求人は、本件各賦課決定処分に不服があるとして、令和5年1月24日に審査請求をした。

2 争点

 本件各修正申告書の提出が、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当するか否か。

3 争点についての主張

請求人 原処分庁
以下のとおり、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当する。 以下のとおり、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当しない。
(1) 「調査があったこと」について
 本件事務運営指針の別冊の第2章の1は、「納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行う。」旨定めているところ、本件調査担当職員は、本件電話において調査又は行政指導の行為のいずれの事務として行うかを明示していないから「調査」があったということはできない。
(1) 「調査があったこと」について
 本件調査担当職員の令和4年9月6日から同月15日までの間の行為は、証拠資料の収集、証拠の評価及び法令の解釈適用を租税官庁内部において行ったものと認められるので、本件各修正申告書の提出がされる前に、請求人の本件各年分の所得税等について、本件調査担当職員による通則法第65条第5項の「調査」があったと認められる。
(2) 「更正があるべきことを予知してされたもの」について
 上記(1)のとおり、本件調査担当職員は、本件電話での来訪依頼時点では調査又は行政指導の行為のいずれの事務として行うかを明示しておらず、調査があったとはいえないから、調査があったことを前提に、「更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しないとはいえない。
(2) 「更正があるべきことを予知してされたもの」について
 本件各修正申告は、本件各インセンティブ報酬に係る給与所得を計上するものであるところ、請求人は、本件各修正申告書の提出時において、本件調査担当職員が本件各インセンティブ報酬に係る所得が本件各申告に計上されていないことを把握し当該所得金額を算定できる状況にあることを十分に認識していた。そうすると、本件各修正申告書の提出と本件調査担当職員による調査には関連性があることが明らかであり、請求人は、本件各インセンティブ報酬に係る所得について修正申告をしなければ当該所得に係る更正処分がなされることを予知していたと認められる。
(3) 「調査通知がある前に行われたもの」について
 上記(1)のとおり、本件電話での来訪依頼時点では調査又は行政指導の行為のいずれの事務として行うかを明示していないから、「調査通知」は行われていない。
(3) 「調査通知がある前に行われたもの」について
 本件調査担当職員は、令和4年9月15日、請求人に対し、調査を実施することを明示しており、請求人の主張はその前提を欠くものである。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

  • イ 過少申告加算税の制度は、過少申告により納税義務に違反した者に加算税を課することによって、当初から適正に申告した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であると解される。
     一方、通則法第65条第5項は、過少申告がされた場合であっても、その後修正申告書の提出があり、その提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたものであるときは、過少申告加算税を賦課しない旨規定しているところ、これは、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。
  • ロ 上記イの規定の趣旨などからすると、修正申告書の提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」というのは、税務職員がその申告に係る国税についての調査に着手してその申告が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に、納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでないことをいうものと解するべきである。
     そして、上記段階が到来していたか否か、「納税者がやがて更正に至るべきことを認識した上で修正申告を決意し修正申告書を提出したものでない」といえるか否かについては、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情等を総合考慮して判断すべきである。
  • ハ また、上記イにいう「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、いわゆる机上調査のような課税庁内部における調査をも含むものと解される。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件調査担当職員は、令和4年9月6日から同月15日までの間に、所得税法第228条の3の2《外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書》の規定に基づきD社から所轄税務署長に対し提出された調書を基に作成された資料(以下「本件各資料」という。)の内容を確認した。
     本件各資料には、請求人の平成29年ないし令和2年における本件各インセンティブ報酬に係る権利の種類、供与年月日及び経済的利益の額等が記載されていた。
  • ロ 本件調査担当職員は、令和4年9月15日、請求人に対し、本件電話により、本件各インセンティブ報酬について確認する旨連絡し、確認が可能な日時を連絡することを依頼した。
  • ハ 請求人は、令和4年9月16日、本件調査担当職員に対し、同月30日にH税務署を訪問する旨を伝えた。
  • ニ 請求人は、令和4年9月19日、本件代理人に対し、本件代理人が用意している「初回お問合せフォーム」を利用して、要旨次のとおり問合せ等をした。
    • (イ) 税務署から突然電話がかかってきて、本件各インセンティブ報酬について確認したいと言われた。
    • (ロ) RSUについて制限解除された金額が複数年申告漏れになっていることが上記(イ)の電話連絡の原因だと思う。
    • (ハ) 9月30日に税務署に行く約束をしたため、その前に、過去に遡って申告及び納税を済ませたいと思っており、サポートをお願いしたい。
  • ホ 本件代理人は、令和4年9月26日、本件各修正申告書を提出し、本件調査担当職員に対し、本件各修正申告書を提出したこと及び納税を済ませたことを連絡した。
  • ヘ 本件調査担当職員は、令和4年9月30日、H税務署を来訪した請求人及び本件代理人の事務員に対し、本件各年分の本件各インセンティブ報酬に関する聴取を行い、請求人が本件親会社から本件各インセンティブ報酬を得ていることなどを確認した。
     また、本件調査担当職員は、請求人が本件親会社の株式を管理する証券会社から取得した本件各インセンティブ報酬の金額等が記載された一覧表(以下「本件一覧表」という。)と、本件各修正申告の内容を突合し、整合することを確認した。
  • ト 本件調査担当職員が本件各資料により把握していた本件各インセンティブ報酬の金額等の内容と請求人が本件各修正申告書の資料として原処分庁に提出した本件一覧表に記載されている内容は、共に請求人が本件親会社から付与を受けたRSUの制限解除がされたこと及びESPPにより本件親会社の各株式を取得したことに基づく経済的利益についてであり、その内容に相違はない。

(3) 当てはめ

  • イ 通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査」があったか否かについて
     本件調査担当職員は、上記(2)のイ及びロのとおり、令和4年9月6日から同月15日までの間に、本件各資料の内容を確認した上で、請求人に対し、本件各インセンティブ報酬について確認する旨を連絡している。これらのことからすると、本件調査担当職員は、本件各申告書に記載されている給与所得の収入金額と本件各資料から算定される本件各インセンティブ報酬の金額の合計額を比較検討することにより、本件各申告において本件各インセンティブ報酬に係る給与所得の金額が計上されていないことをあらかじめ確認した上で請求人に本件各インセンティブ報酬について確認する旨を連絡したものと推認され、これらは、原処分庁における課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められることから、上記(1)のハに照らし、請求人の本件各年分の所得税等について、本件調査担当職員による通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査」があった場合に該当すると認められる。
  • ロ 本件各修正申告書の提出が、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当するか否かについて
    • (イ) 調査の内容・進捗状況
       上記(2)のイないしハ及び上記イのとおり、本件調査担当職員は、本件各申告書に計上されていない本件各インセンティブ報酬があることを把握した上で、令和4年9月15日、請求人に対し、本件各インセンティブ報酬について確認する旨を連絡しており、同月30日にはH税務署において請求人に対する質問検査等を実施する予定であった。
    • (ロ) 調査の内容・進捗状況に関する請求人の認識
       請求人は、上記(2)のロのとおり、令和4年9月15日、本件電話により本件各インセンティブ報酬について確認する旨の連絡があったことを契機に、同ニのとおり、本件代理人に問合せ等を行い、RSUについて制限解除された金額が複数年申告漏れになっていることを述べた上で、本件各修正申告書の提出等に係るサポートを求めていることから、本件各修正申告書が提出された時点において、請求人は、本件調査担当職員が本件各申告において本件各インセンティブ報酬に係る給与所得の金額が計上されていないことを把握していることを認識していたと認められる。
    • (ハ) 本件各修正申告に至る経緯
       請求人は、上記(2)のロのとおり、本件電話で本件各インセンティブ報酬について確認する旨の連絡を受けた後、同ニのとおり、本件代理人に修正申告書の作成を依頼し、本件各修正申告をしたものである。
    • (ニ) 本件各修正申告と調査の内容との関連性
       本件各修正申告の主たる修正の内容は、上記1の(3)のホ及び上記(2)のトのとおり、本件各申告書に計上されていなかった本件各インセンティブ報酬に係る給与所得を加算するものであり、本件調査担当職員による調査も、上記イのとおり、請求人の本件各インセンティブ報酬に対するものであるから、本件調査担当職員による調査と本件各修正申告は、いずれも本件各インセンティブ報酬を対象とする関連性のあるものであった。
    • (ホ) 小括
       上記(イ)ないし(ニ)の各事情からすれば、本件各修正申告の時点において、本件調査担当職員による調査は、その後の調査が進行し本件各申告が本件各インセンティブ報酬を計上しない不適正なものであることが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達していたというべきであり、また、本件電話を受けて本件代理人に問合せ等を行っていた請求人については、やがて更正に至るべきことを認識した上で本件各修正申告を決意し、本件各修正申告書を提出したものと認められる。
       よって、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しない。
  • ハ 本件各修正申告書の提出が、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当するか否かについて
     上記ロのとおり、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しないため、調査通知の有無にかかわらず、通則法第65条第5項の規定は適用されない。
  • ニ 以上により、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたもの」に該当しない。

(4) 請求人の主張について

請求人は、上記3の「請求人」欄のとおり、本件電話があった時点では、本件調査担当職員が、調査又は行政指導の行為のいずれの事務として行うかを明示していないことから、「調査」及び「調査通知」があったということはできず、調査があったことを前提に、本件各修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しないということもできない旨主張する。
 しかしながら、本件調査担当職員による一連の行為が通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があった」場合に該当することは、上記(3)のイのとおりであるし、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しないため、調査通知の有無にかかわらず、請求人に通則法第65条第5項の規定は適用されないことは、上記(3)のハのとおりであるから、請求人の上記主張は、その前提を誤るものである。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(5) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(3)のとおり、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」に該当しない。また、本件において、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、当審判所においても、本件各修正申告書に係る過少申告加算税の額は、本件各賦課決定処分における金額といずれも同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分は適法である。

(6) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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