(令和6年4月15日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が審査請求人(以下「請求人」という。)に対して行った所得税等の更正処分等に対し、請求人が、同処分等の前提となった請求人名義の納税申告書は、他人が成りすまして提出したものであり、当該納税申告は無効であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は別紙のとおりである。
 なお、別紙で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 なお、以下では、所得税及び復興特別所得税を「所得税等」という。

  • イ 請求人について
    • (イ) 請求人の職業について
       請求人は、平成28年から令和2年までの期間のうち、平成28年中及び平成29年中はF社に、令和2年中はG社に勤務する給与所得者であったが、上記以外の期間については無職であった。
    • (ロ) 請求人の住所について
       請求人は、平成28年11月2日、a市b町○−○からa市d町○−○(以下「本件住所1」という。)に転居し、その後、平成30年8月2日に肩書地に転居した。
  • ロ 請求人名義の所得税等の各確定申告書について
    • (イ) 原処分庁に提出された所得税等の各確定申告書について
      • A 令和元年分の所得税等の確定申告書について
         請求人名義の令和元年分の所得税等の確定申告書は、令和3年1月16日、原処分庁に提出された。
         なお、当該確定申告書は、通則法第11条《災害等による期限の延長》及び国税通則法施行令第3条《災害等による期限の延長》第3項に基づく新型コロナウイルスに係る個別指定による申告期限延長の適用を受けたものであった。
      • B 令和2年分の所得税等の確定申告書について
         請求人名義の令和2年分の所得税等の確定申告書は、令和3年1月24日、原処分庁に提出された。
    • (ロ) H税務署長に提出された所得税等の各確定申告書について
      • A 平成29年分及び平成30年分の所得税等の各確定申告書について
      •   請求人名義の平成29年分及び平成30年分の所得税等の各確定申告書は、いずれも令和3年5月16日、H税務署長に提出された。
      • B 平成28年分の所得税等の確定申告書について
      •   請求人名義の平成28年分の所得税等の確定申告書は、令和3年8月2日、H税務署長に提出された(以下、平成28年分から令和2年分までを「本件各年分」、本件各年分の所得税等の各確定申告書を併せて「本件各申告書」といい、本件各申告書による各確定申告を「本件各申告」という。)。
  • ハ 本件各申告書の記載等について
    • (イ) 本件各申告書は、いずれもJにより、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用して作成され、印刷の上、郵送により原処分庁又はH税務署長に提出されたものであった。
    • (ロ) 本件各申告書に納税地として記載されていたのは、令和元年分及び令和2年分は、いずれもe県a市d町○−○(以下「本件住所2」という。)であり、平成28年分から平成30年分までは、いずれもf県g市h町○−○(以下「本件住所3」という。)であった。
       なお、請求人は、本件住所2及び本件住所3のいずれにも居住したことはない。また、本件住所3は、Jの住所であった。
    • (ハ) 本件各申告書には、K社、L社、M社、N社及びP社から報酬が請求人に支払われ、それぞれ所得税等が源泉徴収されたとして、還付される税金が別表の「確定申告」の各「所得税等の納付すべき税額」欄のとおりである旨記載されていた。
       なお、本件各申告書には、所得として営業等による事業所得がある旨が記載され、請求人が報酬の支払を受けたものとして、その支払金額及び源泉徴収税額により所得税等の還付を請求する内容が記載されており、添付されている各収支内訳書には、経費として、地代家賃、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕費、消耗品費及び福利厚生費等が計上されていたものの、請求人は、本件各申告書に報酬の支払者として記載されている各事業者のいずれにおいても勤務したことはなく、また、当該各事業者のいずれからも業務を受託したことはなかった。
    • (ニ) 本件各申告書において、還付される税金の受取場所として、いずれも請求人名義のQ銀行○○支店の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件口座」という。)が指定されていた。
    • (ホ) 本件各申告書のうち、平成28年分、平成29年分及び令和元年分の各確定申告書には、本人確認書類として、請求人の運転免許証を写真撮影して印刷したもの(以下「免許証の写真」という。)が添付されていた。
  • ニ 還付金について
    • (イ) 原処分庁は、令和元年分の所得税等の確定申告については令和3年2月2日、令和2年分の所得税等の確定申告については同月8日、それぞれの年分の所得税等の確定申告に係る各国税還付金振込通知書(以下「本件各通知書」という。)を本件住所2宛に送付したが、令和元年分の通知書は同月9日、令和2年分の通知書は同月12日に、宛所に尋ね当たらずとしてそれぞれ原処分庁に返戻された。そこで、原処分庁は、同月15日、原処分庁所属の職員が請求人の住民登録の異動状況を確認した結果を踏まえて、本件住所1宛に本件各通知書を再度送付したが、本件各通知書は、同月17日、宛所に尋ね当たらずとしてそれぞれ原処分庁に再度返戻された。
       原処分庁は、令和3年2月18日、肩書地宛に本件各通知書を送付し、本件各通知書は請求人に送達された。
       本件各通知書には、「振込先金融機関名」として本件口座の銀行名及び支店名、「預金種別」として普通預金、「口座番号」として本件口座の口座番号の上4桁、「手続開始年月日」として令和3年2月25日、「支払金額」として令和元年分については○○○○円、令和2年分については○○○○円と記載されていた。
    • (ロ) 原処分庁は、令和3年2月25日、令和元年分として○○○○円及び令和2年分として○○○○円の各金員を還付する旨の手続を開始し、各金員は、同月26日、本件口座に振り込まれた(以下、上記令和元年分及び令和2年分の各金員を併せて「本件各還付金」という。)。
    • (ハ) 本件各還付金が本件口座に振り込まれたのと同日、パソコンによる振込みの手続が採られ、令和3年3月1日、本件各還付金の額の合計額と同額がJ名義の預金口座に振り込まれた。
    • (ニ) H税務署長所属の職員は、平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告に係る各還付金のうち、平成29年分及び平成30年分の各還付金については令和3年5月27日、平成28年分の還付金については令和3年8月13日に、その支払を留保した。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ H税務署長所属の調査担当職員は、令和3年10月5日、肩書地に所在する請求人宅に臨場したが、請求人と面会できなかった。
     原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和3年10月19日、請求人宅に臨場して請求人と面談し、請求人の納税地を確認した上、請求人に対する調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
     本件調査担当職員は、令和5年5月25日、請求人の税務代理人であるR税理士に対し、本件調査に係る調査結果の説明を行った上で、本件各年分の所得税等について修正申告を勧奨したところ、R税理士は、本件各申告書はJが請求人に成りすまして提出したものであることを理由に、修正申告書を提出しなかった。
  • ロ 原処分庁は、令和5年6月7日付で、別表の「更正処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ハ 請求人は、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を不服として令和5年6月9日に審査請求をした。

2 争点

 Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当するか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
以下のとおり、本件各申告は有効であるから、Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当する。 以下のとおり、本件各申告は無効であるから、Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当しない。
(1) 納税申告は、私人の公法行為というべきものであり、原則として納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく勝手に納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効であると解されるが、納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合には、その納税申告は有効であると解される。 (1) 本件各申告書は、以下のとおり、本件口座に関する情報や請求人の免許証の写真を入手したJが、請求人に成りすまして提出したものであるから、本件各申告は無効である。
  • イ 請求人は、令和元年6月25日にS社の配達員の登録をした際に、Jに対し、本件口座のキャッシュカードを渡すとともに、本件口座情報を教えた。また、その際、Jは、同人のスマートフォンで請求人の運転免許証を写真撮影した。
  • ロ 令和3年2月26日に本件口座に本件各還付金が振り込まれたところ、Jは、同日、本件各還付金の全額を同人名義の預金口座にパソコンにより振り込んだ。
  • ハ 本件口座は、口座開設以来、Jが単独で管理していたものであり、Jは、本件口座を利用して、本件各還付金以外にも家賃支援給付金等を不正に受給するなど本件口座を悪用していた。
  • ニ 以上からすると、本件各還付金をJが取り込んでいることに加え、Jが本件口座や請求人の免許証の写真を利用して、請求人に成りすまして本件各申告書を作成及び提出することが可能な状態であったのであるから、本件各申告書は、Jが請求人に成りすまして提出したものである。
(2) 請求人が、Jに本件各申告書の作成及び提出を依頼したことを明確に否定していることを踏まえれば、請求人は、Jに対し、本件各申告書の作成及び提出を自ら依頼したとまでは認められないものの、以下のとおり、Jの申述に加えて、本件各通知書が届いた際の請求人の対応状況等からすれば、請求人が、Jによる本件各申告書の作成及び提出を容認していたことは明らかである。
  • イ Jは、本件各申告書の提出について請求人に伝えていた旨申述しており、加えて、請求人以外の関係者の名義で確定申告書を作成及び提出する際、当該関係者に対し、確定申告書を提出したことのほか、申告年分及び還付金額等を伝えていたことからすれば、請求人にも本件各申告書の作成及び提出について伝えていたといえる。
  • ロ 請求人は、本件各申告書に係る各還付金の振込先である本件口座のキャッシュカードをJに渡し、本件口座に係る暗証番号(インターネットバンキングのパスワードも含む。以下「本件口座情報」という。)をJに伝え、請求人の運転免許証をJに写真撮影させていることからすれば、本件口座及び請求人の免許証の写真を本件各申告書の作成及び提出のためにJが自由に使用することを黙認していたといえる。
  • ハ 請求人は、本件各申告書の提出について何ら異議を述べることなく、本件調査開始後もJとソーシャルネットワーキングサービスである○○○○を使用して本件調査に係るやり取りをしていることからすると、遅くとも、本件各還付金についてJに連絡した時点において、Jに対し、Jが本件各申告に係る各還付金を収受することを含め、本件各申告書の提出を容認又は追認していたというべきである。
  • ニ また、請求人は、本件調査において、Jの指示に従って虚偽の申述をしているところ、仮に、請求人がJに無断で本件各申告書を提出されたというのであれば、請求人は、Jの指示に従って虚偽の申述をする必要はないのであるから、請求人のかかる言動は、Jが請求人に成りすまして本件各申告書を提出したものであるとする請求人の申述の信用性を疑わせるものである。
(2) 原処分庁は、請求人が本件口座情報をJに提供した事実やJの申述をもって、請求人が本件各申告書の提出をJに一任していた旨主張するが、以下に述べるとおり、原処分庁のかかる主張には無理がある。
  • イ 請求人は、本件各通知書が自宅に郵送された時、請求人名義の令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書が原処分庁に提出されていたことを初めて知った。
     また、請求人は、本件調査の際に、本件調査担当職員から、請求人名義の平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告書が提出されていることを聞かされて初めて、その旨を知った。
     原処分庁は、Jが請求人以外の関係者の名義で確定申告書を作成及び提出する際、当該関係者に対して申告年分及び還付金額等を伝えていたことをもって、請求人にも本件各申告書の作成及び提出を伝えていたと推認するようであるが、税理士ではないJが税理士業務を行うことは税理士法違反であり、さらに、Jは、請求人名義で不正に家賃支援給付金等を受給していたことからすると、かかる不正な行為を行う人物の申述は信用できず、Jの申述を根拠に、請求人が本件各申告書の作成及び提出をJに一任していたということはできない。
  • ロ 請求人が本件口座のキャッシュカードをJに渡すとともに、本件口座情報をJに伝え、請求人の運転免許証をJに写真撮影させたのは、S社の配達員の登録のためである。
     したがって、請求人は、本件各申告書の作成及び提出のために本件口座及び請求人の免許証の写真を使用することをJに許諾していない。
  • ハ 請求人が本件各申告書の提出について異議を述べていないこと及び請求人が本件調査において、Jの指示に従って虚偽の申述をしていたという本件各申告書の提出後の言動をもって、請求人が、本件各申告書の提出を追認したともいえない。
(3) 以上からすると、請求人は、Jに対して本件各申告書の作成及び提出を一任していたのであって、本件各申告書は、請求人の意思に基づいて提出されたものであり、本件各申告は有効であるから、Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当する。 (3) 以上より、請求人は、本件各申告書の提出をJに一任していないのであるから、本件各申告書は、請求人の意思に基づいて提出されたものではなく、本件各申告は無効であるから、Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当しない。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

納税申告は、私人の公法行為というべきものであり、原則として納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから(通則法第17条等)、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効である。
 もっとも、納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合は、その納税申告は有効であると解される。
 また、権限なくして行われた申告行為であっても、納税義務者が当該納税申告を追認すれば、当該納税申告は有効となると解するのが相当である(民法第113条《無権代理》第1項)。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人とJの関係について
     請求人とJは遅くとも平成26年頃までに知り合い、一時、交際していたところ、平成31年4月頃にJからS社のキャンペーン登録を勧誘する連絡があり、その後、請求人は、当該キャンペーン登録のためJと連絡を取り合うようになった。
  • ロ 本件口座について
    • (イ) 請求人は、令和元年5月7日、Jから、S社のキャンペーン登録のためQ銀行に預金口座を開設するよう言われたため、肩書地を登録住所として本件口座を開設した。
    • (ロ) 請求人は、令和元年6月25日、S社のキャンペーン登録のためにJに会った際に、本件口座のキャッシュカードをJに対して交付するとともに、本件口座に係る暗証番号を教えた。その後、時期は不明であるが、請求人は、本件口座のインターネットバンキングのパスワードをJに教えた。
       また、請求人は、Jが請求人の運転免許証を写真撮影することを許諾し、Jは、請求人の運転免許証を写真撮影した。
    • (ハ) 本件口座には、令和元年7月9日から令和3年9月9日までの間に、S社等から多数回の振込みがあるほか、令和3年1月26日に家賃支援給付金○○○○円、同年3月4日に持続化給付金○○○○円、同年7月21日に一時支援金○○○○円、同年8月12日に3か月分の月次支援金○○○○円、同年9月2日に月次支援金○○○○円、同月9日に月次支援金○○○○円がそれぞれ振り込まれており(以下、各給付金及び各支援金を併せて「本件各給付金等」という。)、これらの金員と同額の金員が、いずれも振り込まれた日のうちに、あるいは振り込まれた日から間を置かずに、本件口座からJ名義の預金口座に送金されていた。
       なお、本件各給付金等は、請求人名義で申請されているが、請求人が申請書を作成及び提出したものではない。
    • (ニ) 本件口座の登録住所は、令和3年1月26日、Jにより本件住所3に変更された。
  • ハ 本件各通知書受領後の請求人の対応について
    • (イ) 請求人は、令和3年2月下旬に本件各通知書が請求人宅に届いた後、Jが確定申告書を提出したものと思い、Jに連絡を取った。
       請求人は、本件各通知書に係る令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告によって不正に還付金を受領することになることを認識していたものの、Jから「大丈夫だから放っておいてよい。」などと言われたことから、そのまま放置することとし、Jに特段異議を述べることはなかった。
    • (ロ) なお、令和3年1月16日に原処分庁に提出された請求人名義の令和元年分の所得税等の確定申告書上、請求人には事業所得(営業等所得)○○○○円(当該金額は同年分の合計所得金額と同額である。)が生じたものとされていたことから、請求人には当該合計所得金額に対し、令和2年度の市民税及び県民税の支払義務が生じたところ、請求人は、上記市民税及び県民税の合計○○○○円については、Jの指示を受けて自ら支払った。
    • (ハ) 請求人は、本件調査が開始された後である令和3年10月31日以降、○○○○上で、Jに対して、本件調査に対する対応について相談する内容のメッセージを送り、これに対し、Jは、本件各年分の修正申告をした場合に生じる税金を払う準備があるから大丈夫である旨回答した。その後、請求人は、Jが、生きるのが無理であるとの趣旨のメッセージを送ってきたのに対し、上記修正申告をした場合に生じる税金を支払うよう求めるなどした。
       なお、請求人は、令和3年10月31日より前の請求人とJとの○○○○上のメッセージのやり取りを消去していた。
    • (ニ) 請求人は、令和3年11月10日に行われた本件調査担当職員による質問検査において、本件口座の取引履歴を確認した際、本件各給付金等が本件口座に入金され、本件各給付金等と同額がJ名義の預金口座にそれぞれ送金されていたことを知り、当該質問検査の終了後に、Jに対し、○○○○上で、本件各還付金はどこにあることにしているのかと尋ねるとともに、本件口座の預金残高が無いことを本件調査担当職員が知っていることから、本件口座を解約しなくてよいのかという内容のメッセージを送信したものの、その後、本件各給付金等を取り扱う官庁等に問い合わせて本件各給付金等の返納を申し出るといった行動を執ることはなかった。
    • (ホ) 請求人は、令和4年1月25日頃以降Jと連絡が取れなくなったため、同年4月6日、請求人の父と共にT警察署に赴き、本件各還付金及び本件各給付金等の不正受給について、Jに本件口座を悪用される被害に遭ったなどと相談したが、具体的な損害が発生していないことや預貯金口座を他人に譲渡すること自体が犯罪であることを理由に、被害届は受理されなかった。また、請求人と請求人の父は、令和4年9月30日、再度、T警察署に被害の相談に行ったが、預貯金口座を他人に譲渡した行為は犯罪であり、被疑者からの被害届は受理できないなどと言われて、被害届は受理されなかった。
    • (ヘ) 請求人は、令和4年4月頃、請求人の父からの指示を受けて本件口座を解約したが、本件口座を解約するまでに本件口座のキャッシュカードの利用の停止及びインターネットバンキングのパスワードの変更等の措置を講じることはなかった。
  • ニ 本件調査開始後の請求人の申述等について
    • (イ) 請求人は、令和3年10月19日、本件調査担当職員による質問検査において、同職員が請求人に本件各申告書及び本件各申告書に添付されていた各収支内訳書の写しを提示し質問したのに対し、本件各申告書を作成したのはJであり、請求人は、本件各申告書の作成及び提出をJに依頼していないと申述したものの、本件各通知書が送達されたことから、令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書が提出されたことを知っていたとして、要旨次のとおりの申述をした。
      • A 令和2年の年末にJにiで会った時に、請求人が婚姻する前に2年間ほど、アルバイト感覚で○○○○をしており、その収入が年40万円程度であったことをJに話したところ、Jから税務署に確定申告をしたら税金が還付されると言われたため、その時にJに確定申告を依頼したかもしれない。
      • B 本件各通知書が請求人宅に届いた時に、以前にJが確定申告をすれば税金が還付されると話していたことから、Jが、請求人名義の令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書を提出したものと思った。
      • C ただ、本件各通知書に記載されていた各還付金の額が、請求人の収入以上の金額であったことから、不安になってJに確認したところ、大丈夫であると言われたため、そのまま放置した。
    • (ロ) 請求人は、令和4年2月10日、本件調査担当職員による質問検査において、以前の本件調査担当職員による質問検査の際に、○○○○で年間40万円程度の収入があった旨申述していたが、請求人が○○○○により受領していた金額は月額40万円から50万円までであったと訂正した上、請求人が○○○○をしていたのは二人であり、そのうちの一人とトラブルになったため、当該トラブルをJに解決してもらった旨申述した。
    • (ハ) 請求人は、令和4年4月6日、本件調査担当職員による質問検査において、スマートフォンを利用して保存していたとされる、Jからの指示の内容が記載されたメモを本件調査担当職員に提示し、本件調査において請求人が○○○○をしていたと話したことは事実ではなく嘘であって、全てJの作り話であり、Jから本件調査において真実とは異なる話を述べるよう指示を受けていた旨申述した。
       請求人が、同日、本件調査担当職員に対して提示した上記メモには、次のような記載がある。
      • A 請求人は、20代半ばから合計二人と○○○○をして、月40万円前後の収入があったところ、当該収入について確定申告をした方がよいとJから勧められたため、Jに確定申告を依頼した。
      • B 請求人が○○○○をやめようとした際に、Jが○○○○の相手に解決金を支払ってくれたことがあったことと、本件各還付金について、請求人の夫に知られた場合に説明する自信がなかったことから、とりあえず、これを一旦Jに預かってもらった。
    • (ニ) 請求人は、当審判所に対し、本件調査が開始された後、Jの指示に従って行動していたことについて、要旨次のとおり答述した。
      • A Jから、令和3年10月5日頃、Jの下に税務調査が入ったので、請求人も調査を受けることになるかもしれないとの連絡があった。そこで、請求人は、Jの指示に従って虚偽の申述をすることになった。
      • B 請求人は、令和4年1月25日頃以降Jと連絡が取れなくなり、Jに騙されたことが分かった。

(3) 検討

本件各申告書は、上記1の(3)のハの(イ)のとおり、請求人ではなくJが作成及び提出したものであるところ、上記(1)のとおり、納税義務者以外の者が、納税義務者の承諾なく納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効である。
 もっとも、納税義務者以外の者が申告書を作成及び提出した場合であっても、その者が納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合や、納税義務者が当該申告行為を追認した場合は、その納税申告は有効となると解されるから、Jが、請求人から明示又は黙示に本件各申告をする権限を与えられていたか否か、あるいは権限なく申告されていたとしても、請求人がJによる本件各申告を追認したか否かについて、以下検討する。

  • イ Jに対する明示の権限の授与について  
     請求人は、上記(2)のハの(ハ)のとおり、令和3年10月31日より前の請求人とJとの○○○○上のやり取りを消去しているため、本件各申告書が作成及び提出される以前において、請求人とJとの間で、本件各申告に関して、何らかのやり取りがされていたことを示す証拠は見当たらない。
     したがって、請求人が、Jに対し、本件各申告をする権限を事前に明示に与えていたと認めることはできない。
  • ロ Jに対する黙示の権限の授与について
    • (イ) 本件口座の利用許諾について
      • A 本件各申告書においては、上記1の(3)のハの(ニ)のとおり、いずれも還付される税金の受取場所として、請求人名義の本件口座が指定されていた。
         本件口座は、請求人名義の預金口座ではあるものの、上記(2)のロのとおり、Jの指示により請求人が開設した後、Jにおいて、請求人から同口座のキャッシュカードの交付を受け、本件口座情報を教えられているだけでなく、本件口座の登録住所を本件住所3に変更したり、同口座からJ名義の預金口座に送金を繰り返したりしていることからすると、本件口座を現実に管理し利用していたのはJであり、かつ、請求人は、Jが本件口座を管理し、同人が自由に同口座を利用することを許諾していたといえる。
      • B しかしながら、上記(2)のロの(イ)のとおり、請求人は、Jの要請により、S社のキャンペーン登録のため、令和元年5月7日、本件口座を開設したものであり、実際に、上記(2)のロの(ハ)のとおり、請求人が本件口座のキャッシュカードをJに交付した後に、S社から本件口座に多数回の入金があることからすると、当初、本件口座は、S社からの入金の管理のためにJに利用されていたものと推認することができる。そして、本件各申告書が提出されたのは、上記1の(3)のロのとおり、令和3年1月以降であり、請求人がJに対して本件口座のキャッシュカードを交付した令和元年6月25日から本件各申告書が提出されるまでの間に1年半以上が経過していることからすると、請求人が当初から本件口座が本件各申告において還付される税金の受取場所として利用されることを知った上で、Jに対して本件口座の管理及び利用を許諾していたとは認められない。
    • (ロ) 請求人の運転免許証の写真撮影による情報提供について
       上記(2)のロの(ロ)のとおり、Jは、請求人の許諾を受けて、請求人の運転免許証を写真撮影しているところ、平成28年分、平成29年分及び令和元年分の各確定申告書には、上記1の(3)のハの(ホ)のとおり、本人確認書類として、請求人の免許証の写真が添付されていた。しかしながら、この事実から、直ちに、請求人が当初からJにより請求人の免許証の写真が本件各申告に利用されることを知った上で、Jに対して請求人の運転免許証を写真撮影することを許諾したと推認することはできない。
    • (ハ) 本件各通知書受領後の請求人の行動及び本件調査時の申述について
       請求人は、上記1の(3)のニの(イ)及び上記(2)のハの(イ)のとおり、本件各通知書が請求人宅に送達された後、Jが令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書を提出したと思い、Jに連絡を取っている上、上記(2)のニの(イ)のとおり、令和3年10月19日、本件調査担当職員に対し、令和2年の年末に、請求人が、Jに対して、○○○○の収入に関して確定申告を依頼したかもしれないなどと申述している。しかしながら、上記1の(3)のハの(ハ)のとおり、本件各申告書に記載された所得は、同申告書に記載された報酬の支払者や、同申告書に添付されている各収支内訳書の記載内容からみて、〇〇〇〇の収入に関するものであるとはおよそ考え難い上、上記(2)のニの(イ)のCのとおり、請求人は、本件各通知書が請求人宅に届いた際、そこに記載されていた各還付金の額が、請求人の収入以上の金額であったことから不安になってJに確認した旨申述していることからしても、少なくとも、請求人において、Jによる上記のような内容の本件各申告書の作成及び提出をあらかじめ了承した上、これに係る権限を黙示に授与していたと認めることは困難であり、ほかに請求人がJに対し事前に本件各申告をする権限を黙示に授与していたと認めるに足りる証拠も見当たらない。
    • (ニ) 小括
       以上からすると、請求人が、Jに対し、本件各申告をする権限を黙示に与えていたと認めることはできない。
  • ハ 追認について
    • (イ) 本件各申告書の提出を知った時期について
       請求人は、上記3の「請求人」欄の(2)のイのとおり、令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書の提出を知ったのは、本件各通知書を受領した時であり、平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告書の提出を知ったのは、本件調査の際に本件調査担当職員からその旨を聞かされた時である旨主張する。
       これらの点については、請求人がJによる本件各申告書の作成及び提出を事前に知っていたと認めることは困難であること(上記ロの(ハ))からすると、請求人が主張するとおり、請求人がJによる令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書の作成及び提出を知ったのは本件各通知書を受領した令和3年2月下旬頃(上記1の(3)のニの(イ))であるといえる。
       また、平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告書に係る各還付金の支払は留保されており(上記1の(3)のニの(ニ))、請求人に対して還付金振込通知書が送付されていないことに加えて、請求人がJから平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告書をH税務署長に提出した事実を、本件調査の開始前に聞かされていたと認めるに足りる証拠もないことからすると、請求人が主張するとおり、請求人がJによる平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告書の作成及び提出を知ったのは、令和3年10月19日に行われた本件調査担当職員による質問検査の時(上記1の(4)のイ及び上記(2)のニの(イ))であると認められる。
    • (ロ) 本件各申告書の提出を知った後の請求人の言動について
      • A 原処分庁に問い合わせず、Jに異議を述べていないこと
         請求人は、上記(イ)のとおり、本件各通知書を受領した令和3年2月下旬頃には、請求人名義の令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書がJによって作成及び提出されたことを知り、しかも、上記(2)のハの(イ)のとおり、当該各年分の所得税等の各確定申告によって不正に還付金を受領することになることも認識していた。
         それにもかかわらず、請求人は、上記(2)のハの(イ)のとおり、Jから放っておいてよいなどと言われたことに対して、特段異議を述べることもなく、本件調査が開始された令和3年10月19日まで(上記1の(4)のイ)、約8か月にわたって何らの対応もせずに事態を放置していたばかりか、上記(2)のハの(ロ)のとおり、請求人名義の令和元年分の所得税等の確定申告書上、請求人に事業所得(営業等所得)が生じたものとされていたことによって支払義務が生じた、令和2年度の市民税及び県民税をJの指示を受けて自ら支払っている。
         仮に、他人によって、自身の意思に反して、不正な申告行為がなされたのであれば、不正な申告行為を行った者に対して異議を述べたり、税務署に問い合わせて、事後の対応を相談するといった行動を執ったりするのが通常であるところ、請求人は何らの対応もせずに事態を放置したのみならず、本来支払う必要のない令和2年度の市民税及び県民税の支払をしたことは、Jによる本件各申告を、事後的に容認したものと評価できる。
      • B 本件口座の不正利用を防ぐ措置を講じていないこと
         請求人は、上記1の(3)のニの(イ)並びに上記(2)のハの(イ)及び(ニ)のとおり、令和3年2月下旬頃、本件口座の銀行名、支店名及び口座番号の上4桁等が記載された本件各通知書を受領し、本件口座がJによって不正な還付金の受領のために利用されていることを認識し、さらに、同年11月10日には、本件口座がJによって不正な本件各給付金等の受領のために利用されていることも認識し、Jに対して、本件口座を解約しなくてよいのかという相談をしている。
         それにもかかわらず、請求人は、上記(2)のハの(ヘ)のとおり、請求人の父からの指示を受けて令和4年4月頃に本件口座を解約するまで、Jによる本件口座の不正利用を防ぐ措置を講じることもなく、Jが本件口座を不正に利用し得る状態を放置していた。
         仮に、他人によって、自身の意思に反して、預貯金口座が悪用されたのであれば、当該預貯金口座を解約する等の不正利用を防ぐ措置を講ずるのが通常であるところ、上記の請求人の不作為は、Jによる本件口座の不正利用を容認したものと評価でき、そのことは、請求人が、Jによる本件各申告についても、事後的に容認していたことを示すものであるということができる。
      • C 本件調査時の対応
         請求人は、上記(2)のハの(ハ)及び(ニ)のとおり、本件調査への対応について○○○○上でJの指示を仰いでおり、また、上記(2)のニの(イ)及び(ロ)のとおり、本件調査が開始された令和3年10月19日、本件調査担当職員に対し、本件各通知書が請求人宅に届いた際に、Jが令和元年分及び令和2年分の所得税等の各確定申告書を提出したことを知り、不安になってJに確認したところ、大丈夫であると言われたので、そのまま放置した旨の申述をした上、請求人がJによる平成28年分から平成30年分までの所得税等の各確定申告書の作成及び提出を知った後である令和4年2月10日に行われた質問検査の際にも、請求人が○○○○により受領していたとする金額を訂正した上、Jから○○○○の相手とのトラブルを解決してもらったなどと申述し、本件各申告が請求人の意思に沿うものであることを否定するような発言をしてはいない。
         このように、請求人は、本件各申告を知った後においても、Jの指示を仰ぎつつ本件調査に対応しており、本件調査担当職員に対し、本件各申告を否定することなく、むしろこれを是認する趣旨の発言をしていたのであるから、この事実も、請求人がJによる本件各申告を事後的に容認していたことを示すものと評価できる。
    • (ハ) 小括
       以上からすれば、請求人は、本件調査の開始日である令和3年10月19日には、Jによる本件各申告書の作成及び提出を認識したにもかかわらず、その後も本件各申告を放置しており、また、令和4年2月10日の質問検査の時点でも、本件各申告を是認する趣旨の発言をしていたのであるから(上記(ロ))、遅くとも同日までには、Jによる本件各申告を黙示に追認したものと認めるのが相当である。
    • (ニ) その他の事情について
      • A 請求人は、上記(2)のハの(ハ)のとおり、令和3年10月31日以降、Jとの○○○○上でのやり取りにおいて、Jに対し修正申告をした場合に生じる税金の支払を求めているが、このことは修正申告の前提である本件各申告を有効と認めた上で、請求人とJとの間において、Jに修正申告による税額に相当する金額の金銭的負担を負うよう求めるものであるから、請求人が本件各申告を追認したこと(上記(ハ))と矛盾するものではない。
      • B 請求人は、上記(2)のハの(ホ)のとおり、令和4年4月6日以降、二度にわたりT警察署に赴き、本件各還付金の不正受給について、Jに本件口座を悪用される被害に遭ったなどと相談したものの、被害届は受理されておらず、本件口座が悪用されたことを原因として警察による捜査が行われているといった事情も証拠上認められない。また、請求人がT警察署に相談に行ったのは、令和4年4月6日以降であって、上記(ハ)の追認より後であるから、請求人がT警察署に相談した事実は、当該追認があったとの認定を覆すまでの事情ではない。
  • ニ 小括
     よって、請求人がJに対し明示又は黙示に本件各申告をする権限を与えていたとは認められないが、請求人は、権限なくされたJによる本件各申告を本件各申告書が提出された後に追認したといえるから、本件各申告は有効となり、Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当する。

(4) 請求人の主張について

  • イ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)のとおり、本件各申告書は、Jが請求人に成りすまして提出したものであるから、本件各申告は無効である旨主張する。
     しかし、本件各申告書が、たとえJが請求人に成りすまして請求人に無断で作成及び提出されたものであっても、請求人がJによる本件各申告を追認した場合には、本件各申告は有効となることは、上記(1)のとおりであり、そして、請求人が、Jによる本件各申告を本件各申告書が提出された後に追認したことは、上記(3)のハの(ハ)で説示したとおりであるから、請求人の主張には理由がない。
  • ロ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(2)のハのとおり、請求人がJによる本件各申告書の提出について異議を述べていないことや、請求人が本件調査においてJの指示に従った申述をしていたという事後の請求人の言動をもって、請求人がJによる本件各申告書の提出を追認したとはいえない旨主張する。
     しかしながら、請求人が本件各申告を追認したといえることは上記(3)のハの(ハ)において説示したとおりである。そして、そもそも追認は、権限なく行われた法律行為の効果が自身に帰属することを事後的に認めるものであって、本件各申告書が提出されていたことを知った後の請求人の言動から、本件各申告を追認したか否かを判断するものであるから、事後の請求人の言動をもって追認したと判断することはできない旨の請求人の主張には理由がない。

(5) 本件各更正処分の適法性について

上記(3)のとおり、本件各申告は有効となり、Jによる本件各申告書の提出は、通則法第24条に規定する「納税申告書の提出があった場合」に該当する。そして、当審判所の調査の結果に基づき、請求人の本件各年分の所得税等の総所得金額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも本件各更正処分の金額と同額となる。
 また、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。

(6) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(5)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、本件各申告は有効であるから、通則法第65条第1項に規定する「期限内申告書が提出された場合」にも該当し、そして、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。さらに、当審判所においても、請求人の本件各年分の過少申告加算税の額は、本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額といずれも同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(7) 結論

 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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