(令和6年5月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の所有権移転登記を受けるに当たり納付した登録免許税の額が過大であったとして、原処分庁に対し、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をしたところ、原処分庁が、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 登録免許税法第9条《課税標準及び税率》は、登録免許税の課税標準及び税率は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、登記等の区分に応じ、同法別表第一の課税標準欄に掲げる金額又は数量及び同表の税率欄に掲げる割合又は金額による旨規定している。
  • ロ 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、同法別表第一第1号に掲げる不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
  • ハ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、同法別表第一第1号に掲げる不動産の登記の場合における同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在において地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に掲げる固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
  • ニ 登録免許税法施行令附則第3項(以下「施行令附則第3項」という。)は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額として、課税台帳に登録された価格のある不動産については、次の各号に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ当該各号に掲げる金額に相当する価額とし、課税台帳に登録された価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で課税台帳に登録された価格のあるものの次の各号に掲げる当該申請の日の区分に応じ当該各号に掲げる金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
    • (イ) 登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるもの
      その年の前年12月31日現在において課税台帳に登録された当該不動産の価格に100分の100を乗じて計算した金額(第1号)
    • (ロ) 登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるもの
      その年の1月1日現在において課税台帳に登録された当該不動産の価格に100分の100を乗じて計算した金額(第2号)
  • ホ 固定資産評価基準第1章《土地》第1節《通則》一《土地の評価の基本》は、土地の評価は、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雑種地の地目の別に、それぞれ定める評価の方法によって行うものとする旨定めるとともに、この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする旨定めている。
  • ヘ 固定資産評価基準第1章第3節《宅地》一《宅地の評価》は、宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点1点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるものとする旨定め、また、同節二《評点数の付設》は、各筆の宅地の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって付設するものとするとし、「市街地宅地評価法」による各筆の宅地の評点数は、各筆の宅地の立地条件に基づき、路線価(以下、固定資産評価に適用される路線価を単に「路線価」という。)を基礎とし、「画地計算法」を適用して付設する旨定め、この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「画地計算法」の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする旨定めている。
  • ト 固定資産評価基準別表第3《画地計算法》の2《画地の認定》は、各筆の宅地の評点数は、一画地の宅地ごとに画地計算法を適用して求めるものとし、この場合において、一画地は、原則として、土地課税台帳に登録された1筆の宅地によるものとするが、1筆の宅地又は隣接する2筆以上の宅地について、その形状、利用状況等からみて、これを一体をなしていると認められる部分に区分し、又はこれらを合わせる必要がある場合においては、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とする旨定めている。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、昭和60年6月○日に設立された、不動産の売買、賃貸、管理、仲介等の取引に関する業務等を目的とする特例有限会社である。
     なお、請求人の唯一の取締役として登記されていたFの死亡を受け、令和○年○月○日、G地方裁判所は、B弁護士を請求人の仮取締役として選任した。
  • ロ 請求人は、令和4年12月12日、登記申請に先立ち、H司法書士を通じて、D地方法務局に対し、a市d町○-○に所在する土地(地積○㎡)、同所○-○○に所在する土地(地積○㎡)及び同所○-○○○に所在する土地(地積○㎡)(以下、順に「○-○の土地」、「○-○○の土地」、「○-○○○の土地」といい、これらの土地を併せて「本件各土地」という。)に係る「固定資産評価額証明情報請求書」を提出したところ、同日、D地方法務局から「土地の評価額等については、次のとおり」として、別表1の「原処分庁」欄の価格が示された。
  • ハ H司法書士は、令和4年12月26日、請求人及びJから委任を受けて、D地方法務局に対し、本件各土地について、上記ロで示された別表1の「原処分庁」欄の価格に基づき、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額を○○○円、登録免許税の額を○○○円として、同日売買を原因とする請求人に対する所有権移転登記を申請し(以下、当該登記申請を「本件登記申請」という。)、請求人は、本件登記申請に係る申請書に収入印紙を貼付する方法で当該登録免許税の額を納付した。
  • ニ D地方法務局の登記官は、令和4年12月26日、本件登記申請のとおり本件各土地の価額を認定し(以下、当該認定された本件各土地の価額(端数処理前の○○○円)を「本件登記官認定額」という。)、所定の登録免許税の納付を確認した上、本件各土地について、本件登記申請どおりの登記(以下「本件登記」という。)をした。
  • ホ 請求人は、令和5年7月21日、原処分庁に対し、本件登記の時における登録免許税の課税標準の正しい額は、別表1の「請求人」欄の価格である○○○円(1,000円未満切捨て)であり、これを基礎に計算した登録免許税の額○○○円(100円未満切捨て)と、上記ハの登録免許税の額○○○円との差額である○○○円は過誤納であるとして、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をした。
  • ヘ 原処分庁は、上記ホの還付通知をすべき旨の請求に対し、令和5年8月4日付で、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(原処分)をした。
  • ト 請求人は、原処分を不服として、令和5年8月12日に審査請求をした。

2 争点

本件登記官認定額が登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大であるか否か。

3 争点についての主張

請求人 原処分庁
次の理由から、本件登記官認定額は、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大である。 次の理由から、本件登記官認定額は、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大ではない。
(1) 令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格は、当初は○○○円であったが、国土調査法に規定する地籍調査後に再評価が行われ、本件登記の時においては、別表1の「請求人」欄のとおり算定されていたので、令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格はあるといえる。
 したがって、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額は、同欄のとおり○○○円となるべきである。
(1) 令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格は○○○円であり、本件登記の時においても同様に○○○円であったから、令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格はないといえる。
(2) 原処分庁が令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格がないことを前提として、施行令附則第3項に基づき本件各土地に類似する不動産として採用した、a市d町○○-○に所在する土地(以下「○○-○の土地」という。)は、整形地であり、間口が狭く不整形地である本件各土地と類似していないことから、本件登記官認定額は、本件各土地の価額とすべきではない。また、原処分庁が本件各土地に類似する不動産の候補とした同所○○○-○に所在する土地(以下「○○○-○の土地」という。)も、同様の理由から本件各土地と類似していない。
  したがって、本件登記官認定額は、本件各土地の価額とすべきではない。
(2) そのため、D地方法務局の登記官は、施行令附則第3項に基づき、本件各土地に類似する不動産の候補として、地図上において本件各土地に隣接する土地のうちから、本件各土地と同じ登記地目で、本件各土地と同様に道路に近接した土地を調査し、令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された価格のある○○-○の土地及び○○○-○の土地の2筆の各土地を選定した上で、これら2筆の各土地のうち、1㎡当たりの評価額が低い○○-○の土地を本件各土地に類似する不動産として採用することとした。
(3) 本件登記官認定額の算出に当たっては、上記(2)により採用した○○-○の土地の1㎡当たりの評価額に本件各土地のそれぞれの地積を乗じて、本件各土地のそれぞれの価格を別表1の「原処分庁」欄のとおり算出しており、周囲の土地との均衡を図っているのであるから、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額は本件登記官認定額となるべきである。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

  • イ 登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額について、当該登記の時における不動産の価額による旨規定しているところ、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解される。
  • ロ また、登録免許税法附則第7条は、登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額について、当分の間、課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。これは、登記の時に特別の手続を要せずに納付すべき税額が確定する登録免許税においては、登記官が課税標準たる不動産の価額をその都度判断することは容易でなく、評価方法の選択等によっては評価が異なるおそれもあることから、課税の公平、納税者の便宜等を考慮し、課税台帳に登録された価格を基礎として課税標準たる不動産の価額を計算することにしたものであると解される。
  • ハ そして、登録免許税法附則第7条の規定による委任を受けた施行令附則第3項は、課税台帳に登録された価格のある不動産については、当該不動産の課税台帳に登録された価格に100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とし、課税台帳に登録された価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で課税台帳に登録された価格のあるものは、その類似する不動産の課税台帳に登録された価格に100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とする旨規定している。このように、課税台帳に登録された価格のない不動産について、当該不動産に類似する不動産の課税台帳に登録された価格を基礎として計算することにした趣旨は、課税台帳に登録された価格のない不動産についても、課税台帳に登録された価格に依拠して計算することにより、課税台帳に登録された価格がある場合とそれがない場合における価額の均衡を図ることにあると解される。このような趣旨に照らすと、施行令附則第3項に規定する当該不動産に類似する不動産とは、当該不動産と価額の均衡が図られる近傍類似の不動産を意味するものというべきであり、その類似性の有無は、価額に影響を及ぼすことになる不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況、接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や路線価等を比較して判断すべきであると解される。
  • ニ 一方で、課税台帳に登録された価格のない不動産について、施行令附則第3項に規定する当該不動産に類似する不動産が存在しない場合には、登録免許税法附則第7条及び施行令附則第3項に規定する方法によって直ちに課税標準たる不動産の価額を決定することはできないことになる。
     しかしながら、登録免許税法附則第7条及び施行令附則第3項に規定する方法によって課税標準たる不動産の価額を計算するときには、課税台帳に登録された価格を基礎とするところ、この課税台帳に登録された不動産の価格は、固定資産評価基準に定める評価方法に従って決定された価格が登録されたものであり(地方税法第380条《固定資産課税台帳等の備付け》第1項及び同法第403条《固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務》第1項等の規定参照)、それとの均衡等を考慮すると、課税台帳に登録された価格のない不動産について、施行令附則第3項に規定する当該不動産に類似する不動産が存在しない場合にも、固定資産評価基準に定める評価方法に従って決定した価額が適正な時価を表さないといえるような特段の事情がない限り、固定資産評価基準に定める評価方法に従って決定するのが相当であり、それによって決定した価額をもって、課税標準たる当該不動産の価額と推認することができるものと解される。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 本件各土地について
    • (イ) 令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された価格について
       K市長は、本件各土地について、公共の用に供されている旨の所有者からの申請に基づき、自治会の公園用地に供されている土地であるとして、固定資産税を非課税としたため、令和4年度の固定資産税の賦課期日(令和4年1月1日現在)における課税台帳に登録するそれぞれの価格を算定しなかった。
       また、本件各土地の登記地積は、国土調査法に規定する地籍調査の結果に基づき令和4年9月6日付で更正登記が行われていたが、当該更正登記の前後を通じて同年1月1日現在における課税台帳に登録する本件各土地のそれぞれの価格が算定されることはなかった。
       したがって、令和4年1月1日現在における課税台帳に登録された本件各土地のそれぞれの価格は、同年中のいずれの時点においてもなかった。
    • (ロ) 令和5年1月1日現在において課税台帳に登録された価格について
       K市長は、令和5年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地のそれぞれの価格について、別表2の「更正前」欄のとおり算定し、請求人に対して、同年4月6日付の令和5年度の固定資産税・都市計画税納税通知書において通知していたところ、その後、当該算定に当たり適用していた所要の補正率の適用に誤りがあったとして、これを是正して別表2の「更正後」欄のとおり算定し、請求人に対して、同年11月17日付で同月13日に更正した旨を通知した。
       なお、上記更正前及び更正後の各通知における本件各土地の課税地目は、いずれも雑種地とされていた。
    • (ハ) 本件登記の時における形状等について
       本件各土地は、登記地目はいずれも宅地で、都市計画法上の第一種住居地域に所在し、別図のとおり、隣接する3筆の各土地で一体をなすほぼ台形の土地として利用されており、本件各土地の西側に位置する道路(以下「本件西側道路」という。)には水路を挟んで○-○の土地及び○-○○の土地が接面していた。
       なお、本件各土地は、公園用地として利用されていた跡地であると認められるところ、本件西側道路からの進入用に橋が架設されており、本件西側道路や周囲の土地との間にはほとんど高低差はなく、建物、構築物、工作物及び樹木など撤去すべきものがない空き地の状態であった。
    • (ニ) 本件登記の時における固定資産評価基準上の立地条件等について
       固定資産評価基準上、本件各土地は、普通住宅地区に所在し、その利用状況等から課税地目は雑種地、評価単位は一画地とされ、その一画地の形状(間口距離は9.20m、奥行距離は34.90m、地積の合計は○㎡)から不整形地補正率0.88を適用して評価される不整形地の土地であった。
       なお、本件西側道路に付設された令和4年度の路線価は○○○円(令和5年度の路線価も同額。)であり、本件各土地が公園用地かその跡地かの違いはあるものの、その形状等及び立地条件等には、少なくとも令和4年1月1日から令和5年1月1日までの間に、固定資産評価基準に定める評価方法に基づき算出される価額に影響を与える変更は生じていなかった。
  • ロ 原処分庁が採用した本件各土地に類似する不動産について
     上記イの(イ)のとおり、令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格はなかったことから、原処分庁は、本件各土地に類似する不動産の課税台帳に登録された価格から本件各土地のそれぞれの価格を算出することとし、本件各土地に類似する不動産の候補として○○-○の土地及び○○○-○の土地の2筆の各土地を選定した。
     また、原処分庁は、令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された当該2筆の各土地の価格を確認し、課税台帳に登録された価格の1㎡当たりの評価額が低い○○-○の土地を基礎として、○○-○の土地の1㎡当たりの評価額に本件各土地のそれぞれの地積を乗じて、本件各土地のそれぞれの価格を別表1の「原処分庁」欄のとおり算出し、上記1の(3)のニのとおり、当該算出したそれぞれの価格の合計額を本件登記の時における本件各土地の価額と認定した。
     なお、○○-○の土地及び○○○-○の土地の本件登記の時の形状等及び立地条件等は、次のとおりである。
    • (イ) ○○-○の土地について
       ○○-○の土地(地積○㎡)は、別図のとおり、○-○○○の土地の南側に隣接する土地で、東側で隣接するa市d町○○-○○に所在する土地(地積○㎡。以下「○○-○○の土地」という。)と一体をなす長方形の土地として、建物の敷地に利用されており、○○-○の土地及び○○-○○の土地は、いずれも登記地目は宅地で、都市計画法上の第一種住居地域に所在し、これらの土地の東側に位置する道路(以下「本件東側道路」という。)には○○-○○の土地が接面していた。
       また、固定資産評価基準上、○○-○の土地及び○○-○○の土地は、普通住宅地区に所在し、その利用状況等から課税地目は宅地、評価単位は一画地とされ、その一画地の形状(間口距離は12.50m、奥行距離は50.96m、地積の合計は○㎡)から不整形地補正率1.00を適用して評価される整形地の土地であった。
       なお、本件東側道路に付設された令和4年度の路線価は○○○円であった。
    • (ロ) ○○○-○の土地について
       ○○○-○の土地(地積○㎡)は、別図のとおり、○-○○の土地の北側に隣接する土地で、単独で利用されるほぼ正方形の土地として、建物の敷地に利用されており、登記地目は宅地、都市計画法上の第一種住居地域に所在し、○○○-○の土地の北側に位置する道路(以下「本件北側道路」という。)及び水路を挟んで本件西側道路の二方で接面していた。
       また、固定資産評価基準上、○○○-○の土地は、普通住宅地区に所在し、その利用状況等から課税地目は宅地、評価単位は単独で一画地とされ、その一画地の形状(間口距離は19.20m、奥行距離は16.73m)から不整形地補正率0.96を適用して評価されるほぼ整形地の土地であった。
       なお、正面路線となる本件西側道路に付設された令和4年度の路線価は○○○円で、側方路線となる本件北側道路に付設された同年度の路線価は○○○円であった。

(3) 検討

  • イ 上記1の(3)のハのとおり、本件登記申請は、令和4年12月26日にされているから、施行令附則第3項に規定する基準日は、同年1月1日現在になるところ、上記(2)のイの(イ)のとおり、同年中のいずれの時点においても、同年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地のそれぞれの価格はなかった。
  • ロ そうすると、上記1の(2)のニのとおり、施行令附則第3項の規定により、本件各土地の課税標準たる価額は、本件各土地に類似する不動産で課税台帳に登録された価格があるものが存在するのであれば、その価格を基礎として計算することになるところ、原処分庁は、上記(2)のロのとおり、本件各土地に類似する不動産として、○○-○の土地及び○○○-○の土地の2筆の各土地を候補として選定した後、課税台帳に登録された価格の1㎡当たりの評価額が低い○○-○の土地を採用し、その価格を基礎として、本件各土地のそれぞれの価格を別表1の「原処分庁」欄のとおり算出している。
     確かに、上記(2)のイの(ハ)及び(ニ)並びにロの(イ)によれば、本件各土地と○○-○の土地は、いずれも都市計画法上の第一種住居地域に所在し、固定資産評価基準上の地区区分も同じ普通住宅地区で、これらの行政上の規制は同じである。
     しかしながら、本件各土地は、固定資産評価基準上、本件各土地をもって一画地となる不整形地補正率0.88が適用されるほぼ台形の不整形地であり、その一画地の地積は○㎡、間口距離は9.20m、奥行距離は34.90m、利用状況は公園跡地、水路を介して接道する道路は本件西側道路で、その路線価は○○○円である一方で、○○-○の土地は、○○-○○の土地と合わせて一画地となる不整形地補正率1.00が適用される長方形の整形地であり、その一画地の地積は○㎡、間口距離は12.50m、奥行距離は50.96m、利用状況は建物の敷地、○○-○○の土地を介して接道する道路は本件東側道路で、その路線価は○○○円であるなど、本件各土地と○○-○の土地とは、形状が大きく異なるほか、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況や路線価にも違いがある。
     これらのことからすると、○○-○の土地は、本件各土地に類似する不動産であるとは認められない。なお付言すれば、同様の理由から、○○○-○の土地についても、本件各土地に類似する不動産であるとは認められない。
  • ハ そして、当審判所において調査した結果によっても、本件各土地の近傍には、本件登記の時において、本件各土地と形状、地積、間口、奥行き、利用状況、接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や路線価等を比較して本件各土地に類似する不動産は存在しなかったことから、施行令附則第3項に規定する課税台帳に登録された価格のない不動産に類似する不動産は存在しないといえる。
  • ニ そのため、上記(1)のニの法令解釈に照らし、課税台帳に登録された価格がなく、かつ、施行令附則第3項に規定する課税台帳に登録された価格のない不動産に類似する不動産が存在しない本件各土地については、特段の事情がない限り、固定資産評価基準に則して、本件登記の時における本件各土地の価額(時価)を検討すべきことになる。
     なお、当審判所の調査によれば、L市においては、固定資産評価基準上の普通住宅地区に所在する宅地に囲まれた雑種地の評価は、路線価を基礎として価格を求める方法により計算し、また、その現況のまま建物の敷地として使用できない場合に限り造成費相当分を控除することとし、本件各土地の形状や接する水路の程度では造成費相当分を控除する必要はないものと取り扱っていることが認められる。
     これを本件各土地についてみると、上記(2)のイの(ハ)及び(ニ)のとおり、本件各土地は、固定資産評価基準上の課税地目は雑種地であるものの、その現況のまま建物の敷地として使用することが可能と認められるから、本件各土地のそれぞれの価格は、路線価を基礎とする画地計算法により計算し、造成費を控除せずに算出することが相当といえる。
  • ホ よって、本件各土地のそれぞれの価格については、上記(2)のイの(ハ)及び(ニ)の本件各土地の形状等及び立地条件等に照らし、固定資産評価基準に定められた補正率等に当てはめて計算した結果、別表3のとおり、本件各土地の1㎡当たりの評点数は○○○点になり、別表4のとおり、本件登記の時における本件各土地の価額は○○○円(別表4の順号4欄のとおり。)となる。
     さらに、当審判所に提出された証拠資料等を精査しても、上記(1)のニの特段の事情はうかがわれないから、本件登記の時における本件各土地の価額は○○○円とするのが相当であり、本件登記官認定額は、本件登記の時における本件各土地の価額を上回る。
     したがって、本件登記官認定額は、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大であると認められる。

(4) 請求人の主張について

請求人は、上記3の「請求人」欄のとおり、国土調査法に規定する地籍調査後に再評価が行われ、本件登記の時には、令和4年1月1日現在における課税台帳に登録される本件各土地の価格は、○○○円と算定されていたとして、令和4年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格はあったのだから、その価格をもって登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額とすべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(2)のイの(イ)のとおり、令和4年中のいずれの時点においても、同年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格はなかったのであるから、請求人の上記主張には、その前提とする認識に誤りがある。
 また、上記(3)のホのとおり、本件登記の時における本件各土地の価額は○○○円とするのが相当である。
 なお、請求人は、本件に係る証拠としてK市長から通知された令和5年4月6日付の令和5年度の固定資産税・都市計画税納税通知書を提出しているところ、請求人が主張する本件各土地の価額○○○円は、上記(2)のイの(ロ)のとおり、当該通知書に記載された本件各土地のそれぞれの価格の合計額と一致するものの、当該通知書に記載された価格は、そもそも、K市長により同年11月13日に更正されている。また、この点はおくとして、当該価格は令和5年1月1日現在において課税台帳に登録された本件各土地の価格であって、施行令附則第3項各号に規定される登記の申請の日の属する日の区分に応じた価格(本件の場合、令和4年1月1日において課税台帳に登録された本件各土地の価格)に当たるものではないから、当該証拠は、請求人の主張する価額○○○円が正しいことを示すものとは認められない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(5) 原処分庁の主張について

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、本件登記官認定額は、本件各土地に類似する不動産の候補として○○-○の土地及び○○○-○の土地を選定し、そのうち、1㎡当たりの評価額が低い○○-○の土地を本件各土地に類似する不動産として採用し、周囲の土地との均衡を図っているから、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額は本件登記官認定額となるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(3)のロのとおり、本件各土地と○○-○の土地とは、形状が大きく異なるほか、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況や路線価にも違いがあるため、○○-○の土地は施行令附則第3項に規定する課税台帳に登録された価格のない不動産(本件各土地)に類似する不動産とは認められないことから、本件登記官認定額は施行令附則第3項に規定する登記機関が認定した価額として適正なものとはいえない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。

(6) 原処分の適法性

上記(3)のホのとおり、本件登記の時における本件各土地の価額は○○○円となるから、本件各土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は○○○円(1,000円未満切捨て)となり、これを基に、登録免許税法第9条、同法別表第一第1号の(二)のハ及び租税特別措置法(令和5年法律第3号による改正前のもの。)第72条《土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減》の規定により登録免許税の額を算定すると、○○○円(100円未満切捨て)となるから、これと、上記1の(3)のハのとおり、請求人が納付した登録免許税の額○○○円との差額である○○○円については、登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法令の規定に従っていなかったものと認められ、過誤納と認められる。
 したがって、請求人の還付通知をすべき旨の請求は、上記過誤納の限度で理由があり、原処分のうち、上記過誤納に係る部分は違法であるから、当該部分を取り消すべきである。
 なお、原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(7) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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