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(令和6年9月26日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、消費税等の確定申告に当たり本則課税制度により控除対象仕入税額を計算したことについて、請求人は消費税簡易課税制度選択届出書を提出していることから、簡易課税制度を適用して控除対象仕入税額を計算すべきであるとする原処分庁からの指摘に従い修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、確定申告書を提出した際に、原処分庁が上記指摘をするなどの行政指導を行わずに過少申告加算税を賦課したことは不当であるなどとして、原処分の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
なお、消費税及び地方消費税(以下、併せて「消費税等」という。)の課税期間については、各個別の終了年月をもって表記する(例えば、令和2年10月1日から令和3年9月30日までの課税期間は、「令和3年9月課税期間」などと表記する。)。また、令和5年9月課税期間を「本件課税期間」という。
なお、請求人は、本件課税期間の初日の前日までに、消費税法第37条第1項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書(同条第5項)を原処分庁へ提出していない。
なお、本件修正申告書の提出は、通則法第65条第1項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないものであった。
なお、本件賦課決定処分には、加重分として○○○○円が加算されて賦課されていた。
2 争点
原処分庁が行政指導を行わずに本件調査を行い課した本件賦課決定処分は、不当か否か。
3 争点についての主張
原処分庁 | 請求人 |
---|---|
以下のとおり、本件賦課決定処分は、不当ではない。 | 以下のとおり、本件賦課決定処分は、不当である。 |
(1) 原処分庁に対し、調査を行う前に行政指導の実施を義務付ける法令上の規定はない。 申告納税方式の下では、納税者は自己の責任と判断の下に行動すべきであるから、請求人が本則課税制度を適用して作成した本件確定申告書を提出したことについては、請求人自身がその責めを負うべきである。 また、加算税の賦課決定処分は法令の規定に基づき当然に行われるものであり、原処分庁の裁量で行われるものではない。 |
(1) 請求人が本件確定申告書を提出した際に、原処分庁から当該確定申告書の様式が本則課税制度を適用するものであり誤っている旨の行政指導があれば、過少申告加算税が課されることはなかった。 したがって、原処分庁が、請求人に対し、当該行政指導を行わずに本件調査を行い、本件賦課決定処分をしたことは不当である。 |
(2) 過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則として、その違反者に対して課されるものである。 そして、通則法第65条第2項に規定する過少申告加算税の加重分は、同条第1項の規定により過少申告加算税が課される場合において、修正申告により納付すべき税額が、期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときに必然的に課されるものであって、過少申告となった原因事実によって加重分が不適用となる旨の規定はないから、本件賦課決定処分は不当なものではない。 |
(2) 仮に、原処分庁が請求人に対し行政指導を行わずに過少申告加算税を課したことが不当でなかったとしても、課税売上高に変動がなく、仕入税額控除の計算方式を本則課税制度から簡易課税制度へと変更するのみの修正申告で、納付すべき税額が本件調査を開始する前から確定しているような場合には、原処分庁の主張する「過少申告による納税義務違反」に該当しないから、過少申告加算税に加重分が加算されることは不当である。 |
4 当審判所の判断
(1) 検討
請求人は、上記1の(3)のホ及びヘのとおり、本件調査を受け、本件調査担当職員からの指摘に従い、本件修正申告書を提出していることから、請求人には、原則として、通則法第65条第1項及び第2項の各規定に基づく過少申告加算税が課されることとなるところ、請求人は、本件賦課決定処分は不当である旨主張するため、本件において処分の不当性が認められるか、以下検討する。
(2) 請求人の主張について
しかしながら、本件賦課決定処分をするに当たり、原処分庁に裁量権が付与されたものでないことは、上記(1)のロにおいて説示したとおりであり、また、原処分庁が、調査を行う前に行政指導を行うべきとする法令等の規定又は定めは存在しない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
そして、通則法第65条第2項に規定する過少申告加算税の加重分は、同条第1項の規定に該当する場合において、修正申告により納付すべき税額が期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときに一律に課されるものであり、法令上、加重分のみが不適用となる場合に関する規定は存在しない。
また、同へのとおり、本件修正申告書の提出による新たに納付すべき税額(○○○○円)は、期限内申告税額に相当する金額(○○○○円)を超えている。
そうすると、請求人には、通則法第65条第1項及び第2項の各規定に基づき、加重分を加算した過少申告加算税が賦課されることとなるのであり、この点について原処分庁に裁量権が付与されたものではないことは、上記(1)のロで説示したとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(3) 本件賦課決定処分の適法性について
以上のとおり、本件賦課決定処分は、通則法第65条第1項及び第2項の各規定の要件を充足し、また、本件修正申告書の提出により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、当該修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第5項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、当審判所においても、請求人の本件課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の額は、本件賦課決定処分における額と同額であると認められる。
また、本件賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件賦課決定処分は適法である。
(4) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。