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(令和6年8月29日裁決)
《裁決書(抄)》
1 基礎事実及び審査請求に至る経緯等
(1) 令和5年9月4日の審査請求について
イ 審査請求人A(以下「請求人A」という。)及び同B(以下「請求人B」といい、請求人Aと併せて「請求人ら」という。)が、請求人らにされた各配当処分の取消しを求めて令和5年9月4日に行った審査請求(以下「令和5年9月審査請求」という。)において、請求人らは、国税通則法(以下「通則法」という。)第108条《総代》第1項の多数人が共同して不服申立てをするとき(以下「共同不服申立て」という。)に総代を互選する旨の規定に基づき、請求人Aを総代として選任する旨の総代選任届出書を併せて提出していたところ、所轄庁は、令和5年9月14日付で、令和5年9月審査請求の対象は各請求人を対象とした処分であり、共同不服申立てに当たらないため、総代の選任は認められないことを理由に審査請求の総代として認めない旨を通知する「審査請求の総代として認められない旨のお知らせ」と題する書面を請求人B宛に送付した(以下「本件お知らせ@」という。)。
ロ 令和5年9月審査請求において、請求人らからなされた通則法第95条の2《口頭意見陳述》の申立てについて、所轄庁は、請求人ら各人に対し、それぞれ令和6年3月1日付で、口頭意見陳述の開催日時等について通知する「口頭意見陳述の開催について」と題する書面を送付した。そのうち請求人Bには、同書面及び添付書類として「連絡事項」と題する書面が送付され(以下、当該書面の送付及び請求人B宛の「口頭意見陳述の開催について」と題する書面の送付を併せて「本件連絡」という。)、本件連絡に係る書面には、口頭意見陳述の期日及び場所並びに総代の選任が認められないことに伴い、口頭意見陳述についても請求人Bが総代として選任した請求人Aの出席は認められない旨及び口頭意見陳述について、@本人が出席する又はA代理人を選任して「代理人の選任届出書」を提出するか、どちらかを選択してほしい旨が記載されていた。
(2) 令和6年2月24日の審査請求について
請求人らが、請求人らにされた各配当処分の取消しを求めて令和6年2月24日に行った審査請求(以下「令和6年2月審査請求」という。)について、請求人Aを総代として選任する旨の総代選任届出書を併せて提出していたところ、所轄庁は、令和6年3月1日付で、令和6年2月審査請求の対象は各請求人を対象とした処分であり、共同不服申立てに当たらないため、総代の選任は認められないことを理由に審査請求の総代として認めない旨を通知する「審査請求の総代として認められない旨のお知らせ」と題する書面を請求人B宛に送付した(以下「本件お知らせA」といい、本件連絡と併せて「本件各通知」という。)。
(3) 所轄庁は、下記のとおり請求人ごとに審理手続を併合し、請求人らに通知した。
イ 所轄庁は、請求人Bが令和5年12月8日に行った審査請求について、令和5年12月18日に、令和5年9月審査請求の審理手続に併合し、同日に請求人B及び原処分庁に「審査請求の併合についてのお知らせ」を発送した。
ロ 所轄庁は、令和6年2月審査請求について、令和6年2月29日、請求人Bについては上記イの各審査請求の審理手続に、請求人Aについては、令和5年9月審査請求の審理手続に、それぞれ併合し、令和6年3月1日に請求人ら各人及び原処分庁に「審査請求の併合についてのお知らせ」を発送した。
(4) 請求人らは、令和6年3月25日、令和5年9月審査請求及び令和6年2月審査請求について、所轄庁には総代を解任する権限がないから、所轄庁が送付した本件連絡に係る書面に記載された「総代を解任する旨の行政処分」及び本件お知らせAに係る書面に記載された「行政処分」は法的効力を有しないなどとして、本件各通知の取消しを求めて審査請求をした(以下「本件審査請求」という。)。
2 当審判所の判断
(1) 法令解釈
イ 不服審査の規定による処分
通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項柱書は、国税に関する法律に基づく処分(後記のとおり、通則法第76条第1項各号に掲げる処分を除く。)で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に定める不服申立てをすることができる旨規定するところ、「国税に関する法律」とは、国税について、課税標準、税率、納付すべき税額の確定、納付、徴収、還付等国と納税者との間の権利義務に関する事項を規定している法律をいうと解されている。また、「処分」とは、行政庁が行政法規の具体的な適用又は執行として、公権力の行使として国民に対し優越的な立場で行う、権利義務その他法律上の地位の形成若しくは変動又はその存否範囲の具体的確認等の法律上の効果を発生させる行為であると解されている。
他方、通則法第76条《適用除外》第1項柱書及び第1号は、同法第8章第1節《不服審査》の規定による処分その他同法第75条の規定による不服申立てについてした処分については、同条の規定は適用しない旨規定しているところ、同法第76条第1項で同法第75条の適用を除外する処分は、同条第1項所定の「国税に関する法律に基づく処分」であることが前提となっている。
通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項柱書は、国税に関する法律に基づく処分(後記のとおり、通則法第76条第1項各号に掲げる処分を除く。)で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に定める不服申立てをすることができる旨規定するところ、「国税に関する法律」とは、国税について、課税標準、税率、納付すべき税額の確定、納付、徴収、還付等国と納税者との間の権利義務に関する事項を規定している法律をいうと解されている。また、「処分」とは、行政庁が行政法規の具体的な適用又は執行として、公権力の行使として国民に対し優越的な立場で行う、権利義務その他法律上の地位の形成若しくは変動又はその存否範囲の具体的確認等の法律上の効果を発生させる行為であると解されている。
他方、通則法第76条《適用除外》第1項柱書及び第1号は、同法第8章第1節《不服審査》の規定による処分その他同法第75条の規定による不服申立てについてした処分については、同条の規定は適用しない旨規定しているところ、同法第76条第1項で同法第75条の適用を除外する処分は、同条第1項所定の「国税に関する法律に基づく処分」であることが前提となっている。
ロ 処分性の判断要素
通則法第80条《行政不服審査法との関係》第1項は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、別段の定めがあるものを除いて、行政不服審査法(以下「審査法」という。)の定めるところによる旨規定し、審査法第2条《処分についての審査請求》は、行政庁の処分に不服がある者は、審査請求をすることができる旨規定しているところ、どのような行政上の決定が審査法第2条に規定する「処分」に該当するかは、同じ行政争訟の制度に係る規定として、「処分」の概念を特に別異に解する必要性は乏しいことから、行政事件訴訟法第3条《抗告訴訟》第2項に規定する「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に関する解釈と同様であると解されている。同項の「処分」とは、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決)をいうと解されることから、取消訴訟の対象となる処分性の有無は、@行政庁による、A法律に基づく公権力の行使としてなされる、B直接に国民の権利義務を形成し又はその範囲を具体的に確定する行為に該当するものであるか否かによって決せられることになる。そうすると、本件各通知の処分性の有無を検討するに当たっても、法律の規定に基づくものであるか、国民の権利義務に変動が生じるものであるか及び法律上の地位に対する直接具体的な影響を及ぼすものであるかという観点から判定することが相当である。
通則法第80条《行政不服審査法との関係》第1項は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、別段の定めがあるものを除いて、行政不服審査法(以下「審査法」という。)の定めるところによる旨規定し、審査法第2条《処分についての審査請求》は、行政庁の処分に不服がある者は、審査請求をすることができる旨規定しているところ、どのような行政上の決定が審査法第2条に規定する「処分」に該当するかは、同じ行政争訟の制度に係る規定として、「処分」の概念を特に別異に解する必要性は乏しいことから、行政事件訴訟法第3条《抗告訴訟》第2項に規定する「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に関する解釈と同様であると解されている。同項の「処分」とは、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決)をいうと解されることから、取消訴訟の対象となる処分性の有無は、@行政庁による、A法律に基づく公権力の行使としてなされる、B直接に国民の権利義務を形成し又はその範囲を具体的に確定する行為に該当するものであるか否かによって決せられることになる。そうすると、本件各通知の処分性の有無を検討するに当たっても、法律の規定に基づくものであるか、国民の権利義務に変動が生じるものであるか及び法律上の地位に対する直接具体的な影響を及ぼすものであるかという観点から判定することが相当である。
(2) 検討
イ 処分性の有無(通則法第75条第1項)
所轄庁は、令和5年9月審査請求及び令和6年2月審査請求の対象となった各配当処分が、請求人ら各自が所有する財産に対して執行された滞納処分であり、画一的に処理される必要のある事件ではないことから、共同不服申立てをすることができないものと判断した上で、請求人らに本件各通知を行ったものである。
本件各通知は、所轄庁が審理手続上の事務処理として行ったものであるところ、本件各通知が、通則法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当するか否かについて検討する。
所轄庁は、令和5年9月審査請求及び令和6年2月審査請求の対象となった各配当処分が、請求人ら各自が所有する財産に対して執行された滞納処分であり、画一的に処理される必要のある事件ではないことから、共同不服申立てをすることができないものと判断した上で、請求人らに本件各通知を行ったものである。
本件各通知は、所轄庁が審理手続上の事務処理として行ったものであるところ、本件各通知が、通則法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当するか否かについて検討する。
(イ) 本件連絡について
本件連絡は、令和5年9月審査請求に関して、請求人Aを総代として認めない旨を知らせる本件お知らせ@を前提として行われたものであるところ、通則法第108条は、共同不服申立てに関し、総代の選任、解任及び総代の権限について規定している。同条第1項は、「総代を互選することができる」と規定し、「互選」とは、選任権の要件と被選任権の要件が一致する場合の選任であると解されるが、共同不服申立てを認めるべき範囲や総代を認めるべき資格の有無は、同条により一義的に明確になっているとはいい難く、同条所定の要件の該当性は法律上審査を主宰する所轄庁の判断に委ねられているといえる。
そして、本件お知らせ@は、上記(1)のロに当てはめると、上記要件の該当性を所轄庁が判断し、「多数人が共同して不服申立てをするとき」に当たらないとの意思決定を通知したものであり、令和5年9月審査請求について、請求人Aの総代の権限を制限することを確定する行為であるから、処分に該当するということができる。
そうすると、本件お知らせ@を前提として行われた本件連絡についても、令和5年9月審査請求について、請求人Aに口頭で意見を述べる地位を与えないことを確定する行為であるから、処分に該当するということができる。
本件連絡は、令和5年9月審査請求に関して、請求人Aを総代として認めない旨を知らせる本件お知らせ@を前提として行われたものであるところ、通則法第108条は、共同不服申立てに関し、総代の選任、解任及び総代の権限について規定している。同条第1項は、「総代を互選することができる」と規定し、「互選」とは、選任権の要件と被選任権の要件が一致する場合の選任であると解されるが、共同不服申立てを認めるべき範囲や総代を認めるべき資格の有無は、同条により一義的に明確になっているとはいい難く、同条所定の要件の該当性は法律上審査を主宰する所轄庁の判断に委ねられているといえる。
そして、本件お知らせ@は、上記(1)のロに当てはめると、上記要件の該当性を所轄庁が判断し、「多数人が共同して不服申立てをするとき」に当たらないとの意思決定を通知したものであり、令和5年9月審査請求について、請求人Aの総代の権限を制限することを確定する行為であるから、処分に該当するということができる。
そうすると、本件お知らせ@を前提として行われた本件連絡についても、令和5年9月審査請求について、請求人Aに口頭で意見を述べる地位を与えないことを確定する行為であるから、処分に該当するということができる。
(ロ) 本件お知らせAについて
本件お知らせAは、本件お知らせ@と性質を同じくすることから、上記(イ)と同様の理由により、処分に該当するということができる。
本件お知らせAは、本件お知らせ@と性質を同じくすることから、上記(イ)と同様の理由により、処分に該当するということができる。
(ハ) 小括
以上によれば、本件各通知は、通則法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当する。
以上によれば、本件各通知は、通則法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当する。
ロ 適用除外(通則法第76条第1項)
上記(1)のイのとおり、通則法第76条第1項柱書及び第1号は、同法第75条の適用が除外される処分として、同法第8章第1節の規定による処分その他同法第75条の規定による不服申立てについてした処分を掲げている。
上記イの(ハ)のとおり、本件各通知は、通則法第75条第1項に規定する処分に該当するものの、同(イ)及び(ロ)のとおり、同法第8章第1節の規定による処分(同法第108条第1項)であって、同法第76条第1項の規定によって同法第75条第1項の適用が除外される処分に該当することから、不服申立てができない処分となる。
上記(1)のイのとおり、通則法第76条第1項柱書及び第1号は、同法第75条の適用が除外される処分として、同法第8章第1節の規定による処分その他同法第75条の規定による不服申立てについてした処分を掲げている。
上記イの(ハ)のとおり、本件各通知は、通則法第75条第1項に規定する処分に該当するものの、同(イ)及び(ロ)のとおり、同法第8章第1節の規定による処分(同法第108条第1項)であって、同法第76条第1項の規定によって同法第75条第1項の適用が除外される処分に該当することから、不服申立てができない処分となる。
ハ 結論
上記のとおり、本件各通知は、通則法第8章第1節の規定による処分であって同法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当するものの、同法第76条第1項の規定による適用除外に該当することから、同項の規定により、不服申立てをすることができないものである。
したがって、本件審査請求は不適法なものである。
上記のとおり、本件各通知は、通則法第8章第1節の規定による処分であって同法第75条第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当するものの、同法第76条第1項の規定による適用除外に該当することから、同項の規定により、不服申立てをすることができないものである。
したがって、本件審査請求は不適法なものである。
別紙 審査請求人明細(省略)