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(令和6年10月4日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、原処分庁が、死亡した滞納者から納税義務を承継した相続財産法人である審査請求人(以下「請求人」という。)の滞納国税を徴収するため、請求人の有する債権の差押処分をしたのに対し、請求人が、当該差押処分は無益な差押えに該当するなどとして、その全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第5条《相続による国税の納付義務の承継》第1項は、相続があった場合には、民法第951条《相続財産法人の成立》の法人は、その被相続人が納付すべき国税を納める義務を承継する旨規定している。
ロ 国税徴収法(以下「徴収法」という。)第2条《定義》第12号は、強制換価手続とは、滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう旨規定している。
ハ 徴収法第8条《国税優先の原則》は、国税は、納税者の総財産について、徴収法第2章《国税と他の債権との調整》に別段の定めがある場合を除き、全ての公課その他の債権に先立って徴収する旨規定している。
ニ 徴収法第9条《強制換価手続の費用の優先》は、納税者の財産につき強制換価手続が行われた場合において、国税の交付要求をしたときは、その国税は、その手続により配当すべき金銭につき、その手続に係る費用に次いで徴収する旨規定している。
ホ 徴収法第47条《差押の要件》第1項柱書及び同項第1号は、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない旨規定している。
ヘ 徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第2項は、差し押さえることができる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込みがないときは、その財産は、差し押さえることができない旨規定している。
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ A氏(以下「本件被相続人」という。)は、別表1記載の国税(以下「本件滞納国税」という。)を納期限までに完納せず、原処分庁は、令和元年5月28日付で、通則法第37条《督促》の規定に基づき、本件被相続人に対して督促状を送付し、本件滞納国税についてその納付を督促した。
ロ 本件被相続人は、令和元年6月○日に死亡した。
本件被相続人については、相続人のあることが明らかでなかったことから、民法第951条の規定により、その相続財産(以下「本件相続財産」という。)は法人とされ、当該相続財産法人である請求人は、通則法第5条第1項の規定に基づき、本件被相続人から本件滞納国税を納める義務を承継した。
本件被相続人については、相続人のあることが明らかでなかったことから、民法第951条の規定により、その相続財産(以下「本件相続財産」という。)は法人とされ、当該相続財産法人である請求人は、通則法第5条第1項の規定に基づき、本件被相続人から本件滞納国税を納める義務を承継した。
ハ E家庭裁判所は、Fの請求により、令和○年○月○日、民法第952条(令和3年法律第24号による改正前のもの)《相続財産の管理人の選任》第1項の規定に基づき、弁護士であるBを本件相続財産の管理人(以下「本件相続財産管理人」という。)として選任した。
ニ 請求人は、令和2年8月18日、G銀行(○○支店)に「亡A相続財産管理人B」名義の普通預金口座(口座番号○○○○、以下「本件預金口座」という。)を開設した。
ホ 原処分庁は、令和3年6月16日付で、請求人に対し、上記ロの事実を通知するため、「相続による納税義務承継通知書」を送付した。
ヘ 原処分庁所属の徴収担当職員(以下「本件徴収担当職員」という。)は、令和5年8月21日付で、本件滞納国税を徴収するため、徴収法第47条第1項柱書及び同項第1号の規定に基づき、徴収法第62条《差押えの手続及び効力発生時期》第1項に規定する手続により、本件預金口座の残高○○○○円のうち、別表2記載の○○○○円の払戻請求権(以下「本件預金債権」という。)を差し押さえ(以下「本件差押処分」という。)、同処分に係る債権差押通知書は、同日に第三債務者であるG銀行(○○支店)に送達された。
ト 請求人は、令和5年9月13日、本件差押処分に不服があるとして再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年11月28日付で棄却の再調査決定をした。
チ 請求人は、令和5年12月27日、再調査決定を経た後の本件差押処分に不服があるとして、審査請求をした。
2 争点
(1) 本件差押処分は、徴収法第48条第2項に規定する無益な差押えに該当するか否か(争点1)。
(2) 本件差押処分は、不当な処分であるか否か(争点2)。
3 争点についての主張
(1) 争点1(本件差押処分は、徴収法第48条第2項に規定する無益な差押えに該当するか否か。)について
原処分庁 | 請求人 |
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(2) 争点2(本件差押処分は、不当な処分であるか否か。)について
請求人 | 原処分庁 |
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4 当審判所の判断
(1) 争点1(本件差押処分は、徴収法第48条第2項に規定する無益な差押えに該当するか否か。)について
イ 認定事実
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件差押処分について、必要と見込まれる滞納処分費はない。
(ロ) 本件差押処分時点において、本件預金債権について、他の国税又は地方税の滞納処分による差押えは行われていないほか、反対債権及び他の債権者による質権等の担保権設定はなかった。
ロ 検討及び請求人の主張について
(イ) 徴収法第48条第2項は、差し押さえることができる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込みがないときは、その財産は、差し押さえることができない旨規定している。そして「徴収すべき国税に先立つその他の債権」には、優先抵当権等によって担保される債権(徴収法第15条《法定納期限等以前に設定された質権の優先》ないし徴収法第21条《留置権の優先》までの規定に係る債権)がある。
(ロ) この点、請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のとおり、これらの債権に加え、民法第885条本文の「費用」には相続財産管理人の報酬や立替経費が含まれ、相続財産管理人が、同法第929条ただし書の「優先権を有する債権者」に該当することや、相続財産管理人による相続財産の清算手続は破産手続に類似し徴収法第2条第12号に規定する強制換価手続に相当するものであって徴収法第9条が準用又は類推適用されることから、相続財産管理人の報酬債権も、滞納処分において国税に優先すると主張し、その上で、本件相続財産管理人の予定報酬額は本件預金債権の残高を上回るから、本件差押処分は、無益な差押えに当たり徴収法第48条第2項に反する旨主張する。
しかしながら、相続財産法人に対する債権者は、相続財産法人について相続財産管理人による清算が行われている場合であっても、相続財産法人に帰属する財産に対して強制執行や滞納処分を行うことが妨げられないところ、滞納処分においては、徴収法第8条により、徴収法第2章に別段の定めがある場合を除き国税は他の債権に優先すると規定されているのであるから、民法第885条や同法第929条ただし書の規定は、滞納処分において、相続財産管理人の報酬が国税に優先することの根拠となるものではない。また、破産手続との類似から徴収法第9条の準用ないし類推適用を主張する点についても、破産手続では、国税債権者は滞納処分の執行が制限される一方で破産管財人に交付要求をすることで破産財団から随時弁済や配当を受けることができるのに対し、相続財産管理人による清算手続では、滞納処分の執行は制限されないことや、相続財産をもって相続債権者等に対する債務を完済することができないと認めるときには相続財産管理人は破産手続開始の申立てができること(破産法第223条《相続財産の破産手続開始の原因》、第224条《破産手続開始の申立て》)に鑑みれば、相続財産管理人による清算手続は、破産手続とその性質を異にするものであって、徴収法第2条第12号に規定する強制換価手続に相当するものとはいえないから、相続財産管理人による清算手続について、徴収法第9条が準用又は類推適用されるとは解されず、請求人の主張は採用できない。
請求人は、また、最高裁昭和45年判決は、破産管財人の報酬が公租公課よりも優先されるのは明文の規定がなくとも元来自明のことであるとして法解釈により破産管財人の報酬に優先権を与えており、この元来自明の理は、相続財産管理人の報酬や立替経費にも当然に相当するから、本件相続財産管理人の報酬は本件滞納国税に優先するとも主張するが、以上に述べたとおりの相続財産管理人による清算手続の制度や破産手続との相違に鑑みれば、滞納処分において相続財産管理人の報酬が国税債権に優先することが、自明の理であるとはいえない。
したがって、滞納処分において、相続財産管理人の報酬が国税に優先するとの請求人の主張は採用できない。
しかしながら、相続財産法人に対する債権者は、相続財産法人について相続財産管理人による清算が行われている場合であっても、相続財産法人に帰属する財産に対して強制執行や滞納処分を行うことが妨げられないところ、滞納処分においては、徴収法第8条により、徴収法第2章に別段の定めがある場合を除き国税は他の債権に優先すると規定されているのであるから、民法第885条や同法第929条ただし書の規定は、滞納処分において、相続財産管理人の報酬が国税に優先することの根拠となるものではない。また、破産手続との類似から徴収法第9条の準用ないし類推適用を主張する点についても、破産手続では、国税債権者は滞納処分の執行が制限される一方で破産管財人に交付要求をすることで破産財団から随時弁済や配当を受けることができるのに対し、相続財産管理人による清算手続では、滞納処分の執行は制限されないことや、相続財産をもって相続債権者等に対する債務を完済することができないと認めるときには相続財産管理人は破産手続開始の申立てができること(破産法第223条《相続財産の破産手続開始の原因》、第224条《破産手続開始の申立て》)に鑑みれば、相続財産管理人による清算手続は、破産手続とその性質を異にするものであって、徴収法第2条第12号に規定する強制換価手続に相当するものとはいえないから、相続財産管理人による清算手続について、徴収法第9条が準用又は類推適用されるとは解されず、請求人の主張は採用できない。
請求人は、また、最高裁昭和45年判決は、破産管財人の報酬が公租公課よりも優先されるのは明文の規定がなくとも元来自明のことであるとして法解釈により破産管財人の報酬に優先権を与えており、この元来自明の理は、相続財産管理人の報酬や立替経費にも当然に相当するから、本件相続財産管理人の報酬は本件滞納国税に優先するとも主張するが、以上に述べたとおりの相続財産管理人による清算手続の制度や破産手続との相違に鑑みれば、滞納処分において相続財産管理人の報酬が国税債権に優先することが、自明の理であるとはいえない。
したがって、滞納処分において、相続財産管理人の報酬が国税に優先するとの請求人の主張は採用できない。
(ハ) 上記イのとおり、本件預金債権について、必要と見込まれる滞納処分費はなく、本件差押処分時において、本件預金債権につき、他の国税又は地方税の滞納処分による差押えは行われておらず、また、反対債権及び他の債権者による質権等の担保権も確認できなかった。
以上によれば、本件差押処分は、徴収法第48条第2項に規定する無益な差押えには該当しない。
以上によれば、本件差押処分は、徴収法第48条第2項に規定する無益な差押えには該当しない。
(2) 争点2(本件差押処分は、不当な処分であるか否か。)について
イ 法令解釈
(イ) 徴収法第47条第1項柱書及び同項第1号は、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない旨規定している。もっとも、滞納者の財産をいつ差し押さえるかについては、
国税は滞納となった場合であっても自主的に納付されるのが望ましいこと、
差押えの前提として、差押可能な財産の有無等についての調査が必要であるところ、大量かつ反復的に発生する滞納事案の全てについて、督促状を発した日から起算して10日を経過した日後に直ちに差押えを行うことは実際上困難であることからすると、法は、個々の滞納事案における自主納付の見込みを踏まえた差押えの必要性及び差押処分の時期についての判断を徴収職員の合理的な裁量に委ねていると解される。


(ロ) また、滞納者の財産を差し押さえる場合、どの財産をどの範囲で差し押さえるかについても、差押処分時において権利関係を把握した上でその財産評価をすることがそもそも困難である上、国税の徴収が公売等による換価を待って初めて実現するものであって、差押処分時に換価額を正確に予測することが困難であること等に照らし、徴収職員の合理的な裁量に委ねられていると解される。
(ハ) 以上によれば、差押処分について、事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当性を欠き、差押えの必要性、差押えの時期又は差押財産の選択に関する徴収職員の裁量権の範囲を逸脱し又は濫用してされたと認められる場合は、違法と判断すべきものと解され、差押処分が違法であるとまではいえない場合であっても、徴収職員の裁量権の範囲内における当該処分に関する判断が、法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理なものであると認められる場合には、当該差押処分は不当となることがあるものと解するのが相当である。
ロ 認定事実
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 滞納国税の納付状況について
原処分庁は、請求人に対し、令和3年6月16日付で「相続による納税義務承継通知書」を送付した以後、本件差押処分に至るまで、電話又は文書による納付催告を複数回行ったが、本件相続財産管理人は、本件相続財産管理人の報酬すら不足している状況であり、国税に充てる金額は残っていない旨回答して、一度も本件滞納国税を自主納付しなかった。
原処分庁は、請求人に対し、令和3年6月16日付で「相続による納税義務承継通知書」を送付した以後、本件差押処分に至るまで、電話又は文書による納付催告を複数回行ったが、本件相続財産管理人は、本件相続財産管理人の報酬すら不足している状況であり、国税に充てる金額は残っていない旨回答して、一度も本件滞納国税を自主納付しなかった。
(ロ) 請求人の所有財産について
本件相続財産のうち、原処分庁が本件差押処分時までに把握していたものは、本件預金口座の残高のほか、田畑等の不動産のみであった。
本件相続財産のうち、原処分庁が本件差押処分時までに把握していたものは、本件預金口座の残高のほか、田畑等の不動産のみであった。
ハ 当てはめ
上記ロの(イ)のとおり、請求人は、令和3年6月16日付で「相続による納税義務承継通知書」の送付を受けた以後、本件差押処分までの2年以上の間、原処分庁から複数回の催告を受けたにもかかわらず、国税に充てる金額は残っていないとして本件滞納国税を自主納付しなかったことからすると、自主納付による完納の見込みがあったとはいえないから、本件差押処分の時点において、同処分を行う必要性は高かったと認められる。また、上記ロの(ロ)のとおり、本件相続財産のうち、原処分庁が本件差押処分時に把握していたのは、本件預金口座の残高のほか、田畑等の不動産のみであり、本件滞納国税が約○○○○円であったことからすれば、本件徴収担当職員が本件滞納国税を徴収するために、滞納処分費が見込まれる上に公売手続に時間を要する不動産ではなく、本件預金債権を差押えの対象として選択した判断が、特段不合理であったとは認められない。
そのため、本件差押処分において、差押えの必要性、差押えの時期又は差押財産に関する選択に裁量権の逸脱又は濫用はなく、上記イの(ハ)のとおり、徴収職員の差押処分に関する判断が裁量権の範囲内であっても、法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理なものであると認められる場合には、当該差押処分は不当となることがあるものと解されるが、以上の差押えに至る経緯によれば、本件差押処分に関する判断は、法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理とは認められない。
したがって、本件差押処分は不当な処分であるとはいえない。
上記ロの(イ)のとおり、請求人は、令和3年6月16日付で「相続による納税義務承継通知書」の送付を受けた以後、本件差押処分までの2年以上の間、原処分庁から複数回の催告を受けたにもかかわらず、国税に充てる金額は残っていないとして本件滞納国税を自主納付しなかったことからすると、自主納付による完納の見込みがあったとはいえないから、本件差押処分の時点において、同処分を行う必要性は高かったと認められる。また、上記ロの(ロ)のとおり、本件相続財産のうち、原処分庁が本件差押処分時に把握していたのは、本件預金口座の残高のほか、田畑等の不動産のみであり、本件滞納国税が約○○○○円であったことからすれば、本件徴収担当職員が本件滞納国税を徴収するために、滞納処分費が見込まれる上に公売手続に時間を要する不動産ではなく、本件預金債権を差押えの対象として選択した判断が、特段不合理であったとは認められない。
そのため、本件差押処分において、差押えの必要性、差押えの時期又は差押財産に関する選択に裁量権の逸脱又は濫用はなく、上記イの(ハ)のとおり、徴収職員の差押処分に関する判断が裁量権の範囲内であっても、法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理なものであると認められる場合には、当該差押処分は不当となることがあるものと解されるが、以上の差押えに至る経緯によれば、本件差押処分に関する判断は、法や制度の趣旨及び目的に照らして不合理とは認められない。
したがって、本件差押処分は不当な処分であるとはいえない。
ニ 請求人の主張について
請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件差押処分のような運用が認められてしまうと、相続財産管理人の役職を引き受ける者もいなくなるという不当な状況に陥る可能性があり、また、原処分庁は、回収の努力もせずに、本件相続財産管理人の努力の結果集められたものを横取りしているに等しいなどとして、本件差押処分は不当であると主張する。
しかしながら、上記1の(3)のロのとおり、請求人は、通則法第5条第1項の規定により、本件被相続人が納付すべきであった本件滞納国税を納める義務を承継しているところ、上記ハのとおり、自主納付による完納の見込みがあったとはいえなかったのであるから、原処分庁としては、本件滞納国税を徴収するためには、財産の差押えによって回収を図らざるを得なかったというべきであり、また、上記ハのとおり、本件差押処分に関する判断が特段不合理でないことからすると、たとえ請求人が上記3の(2)の「請求人」欄において主張するような事情があったとしても、本件差押処分が不当な処分であるとは認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、本件差押処分のような運用が認められてしまうと、相続財産管理人の役職を引き受ける者もいなくなるという不当な状況に陥る可能性があり、また、原処分庁は、回収の努力もせずに、本件相続財産管理人の努力の結果集められたものを横取りしているに等しいなどとして、本件差押処分は不当であると主張する。
しかしながら、上記1の(3)のロのとおり、請求人は、通則法第5条第1項の規定により、本件被相続人が納付すべきであった本件滞納国税を納める義務を承継しているところ、上記ハのとおり、自主納付による完納の見込みがあったとはいえなかったのであるから、原処分庁としては、本件滞納国税を徴収するためには、財産の差押えによって回収を図らざるを得なかったというべきであり、また、上記ハのとおり、本件差押処分に関する判断が特段不合理でないことからすると、たとえ請求人が上記3の(2)の「請求人」欄において主張するような事情があったとしても、本件差押処分が不当な処分であるとは認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(3) 本件差押処分の適法性等について
本件差押処分は、上記1の(3)のイ及びヘのとおり、徴収法第47条第1項柱書及び同項第1号が規定する差押えの要件を充足しており、上記(1)のとおり、無益な差押えには該当しない。そして、本件差押処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件差押処分は適法であり、上記(2)のとおり、これが不当な処分であるともいえない。
(4) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表1 本件滞納国税の明細(省略)
別表2 本件差押処分に係る債権の内容(省略)