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(令和7年1月17日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁による調査を受けて相続税の期限後申告書を提出したところ、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるとして、当該賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第66条(令和4年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)《無申告加算税》第1項本文及び同項第1号は、期限後申告書の提出があった場合には、当該納税者に対し、その申告に基づき納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨規定し、同項ただし書は、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、無申告加算税を課さない旨規定している。
ロ 通則法第66条第2項は、同条第1項に規定する納付すべき税額が50万円を超えるときは、無申告加算税の額は、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする旨規定している。
(3) 基礎事実
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 被相続人、請求人、相続人等について
(イ) D(以下「本件被相続人」という。)は、令和3年2月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡し、本件被相続人に係る相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
(ロ) 本件被相続人は、歯科医師としてd県e市f町において「E」の屋号で歯科医業を営んでいたが、令和2年○月頃に廃業した(以下、本件被相続人が営んでいた歯科医院を「本件歯科医院」という。)。
(ハ) 請求人及びFは、本件歯科医院の従業員であり、請求人は本件歯科医院に約20年間勤務していた。
(ニ) 本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の配偶者であるG及び長男であるH(以下「本件相続人ら」という。)の2名である。
(ホ) 請求人は、本件相続開始日に本件被相続人が死亡した事実を知った。
(ヘ) 請求人は、平成7年頃から本件相続開始日まで本件被相続人と交際関係にあった。
なお、本件被相続人は、平成16年頃から、週末をa市g町にある請求人の自宅で過ごすようになり、令和2年12月頃には、日常的に請求人の自宅で過ごすようになった。
なお、本件被相続人は、平成16年頃から、週末をa市g町にある請求人の自宅で過ごすようになり、令和2年12月頃には、日常的に請求人の自宅で過ごすようになった。
ロ 請求人の取得した財産について
(イ) 請求人は、平成26年頃に、本件被相続人からJ銀行○○支店のED名義の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件預金口座」という。)の通帳及びキャッシュカードを預かり、その後は、請求人がこれらを管理していた。
(ロ) 請求人は、令和3年1月27日頃に、本件被相続人から、本件預金口座に預け入れられている金員は全て請求人に贈与する旨、及び本件被相続人にもしものことがあったときには本件預金口座へ金員を振り込むようFに依頼してあるので、すぐに本件預金口座から金員を引き出すよう告げられた。
(ハ) 請求人は、本件被相続人が入院中に重篤な状況となったことを知った後、令和3年2月○日に本件預金口座を確認すると、上記(ロ)のとおり金員が振り込まれていたため、同日から同月○日までの間に、総額○○○○円の金員を引き出した(以下、当該金員を「本件金員」という。)。
(ニ) 請求人は、令和3年7月15日付の内容証明郵便で、本件相続人らから本件金員の返還を求められたことから、同年8月10日、本件相続人らに対し、本件金員は、本件被相続人から死因贈与を受けたものであり、本件相続人らからの求めには応じることができない旨の回答をした。
(ホ) その後、請求人は、本件相続人らから、本件金員に係る損害賠償請求の訴えを提起されたが、令和5年3月27日、請求人と本件相続人らとの間で、請求人が本件相続人らに対し、解決金として○○○○円を支払うことを内容とした訴訟上の和解が成立した。
ハ 請求人による本件被相続人に係る財産の調査等について
(イ) 請求人は、上記ロの(ニ)において、本件金員の返還を求められた際に代理人に選任したK弁護士から、本件金員が本件被相続人からの死因贈与であれば相続税がかかる可能性があると伝えられ、令和3年9月末頃、K弁護士から紹介されたL税理士に本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について相談した。
請求人から本件相続税についての相談を受けたL税理士は、請求人に対し、相続税の申告手続は被相続人の相続財産の総額が分からないとできない旨の回答をした。
請求人から本件相続税についての相談を受けたL税理士は、請求人に対し、相続税の申告手続は被相続人の相続財産の総額が分からないとできない旨の回答をした。
(ロ) 請求人は、令和3年10月12日、K弁護士を通じて本件相続人らに対し、本件相続税の申告をするに当たり、相続財産の総額を記載する必要があるため、本件被相続人の相続財産の総額を教示願いたい旨の依頼(以下「本件依頼」という。)をしたが、同月27日、本件相続人らから、本件依頼には応じることができない旨の回答があった。
(4) 審査請求に至る経緯
イ 請求人は、法定申告期限までに本件相続税の申告書を提出しなかったところ、原処分庁所属の調査担当職員による通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の内容の説明に基づき、本件金員と上記(3)のロの(ホ)の解決金との差額○○○○円は本件被相続人からの死因贈与であるとして、令和6年3月8日、本件相続税について課税価格を○○○○円(請求人及び本件相続人らの課税価格の合計は○○○○円)及び納付すべき税額を○○○○円と記載した申告書(以下「本件申告書」という。)を原処分庁に提出した。
なお、本件相続税における相続税法第15条《遺産に係る基礎控除》第1項に規定する遺産に係る基礎控除額は、4,200万円(3,000万円+600万円×2(法定相続人の数))である。
なお、本件相続税における相続税法第15条《遺産に係る基礎控除》第1項に規定する遺産に係る基礎控除額は、4,200万円(3,000万円+600万円×2(法定相続人の数))である。
ロ 原処分庁は、令和6年3月27日付で、請求人に対し、本件申告書に記載された納付すべき税額を基礎として、無申告加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、本件賦課決定処分を不服として令和6年4月22日に審査請求をした。
2 争点
請求人が法定申告期限までに本件相続税の申告書を提出しなかったことにつき、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるか否か。
3 争点についての主張
請求人 | 原処分庁 |
---|---|
以下のとおり、請求人が法定申告期限までに本件相続税の申告書を提出しなかったことに正当な理由がある。 請求人は、本件被相続人の法定相続人ではなく、本件被相続人から死因贈与を受けたにすぎない者であるから、本件被相続人の相続財産の総額を知ることはできない。 また、請求人は、本件被相続人の相続財産の総額について調べる方法が分からなかったため、K弁護士を通じて本件相続人らに対し、本件依頼をしたが、本件相続人らは、本件被相続人の相続財産の総額の回答を拒否した。 そのため、請求人が相当の努力を払って調査しても遺産に係る基礎控除額を超える額の相続財産を把握することはできなかった。 |
以下のとおり、請求人が法定申告期限までに本件相続税の申告書を提出しなかったことに正当な理由はない。 通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、法定申告期限内に申告できなかったことについて真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、無申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解されるところ、本件相続人らから本件被相続人の相続財産の総額の回答を拒否されたことは、請求人と本件相続人らの人間関係に起因する事情であり、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があったとは認められない。 |
4 当審判所の判断
(1) 法令解釈
イ 通則法第66条に規定する無申告加算税は、納税者に期限後申告書を提出したという事実があれば、原則として、その納税者に課されるものであり、これによって当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的な不公平の実質的な是正を図るとともに、無申告による納税義務の違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。
このような無申告加算税の趣旨に照らせば、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、期限内申告書が提出されなかったことについて、例えば、災害、交通や通信の途絶等、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような無申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。
このような無申告加算税の趣旨に照らせば、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、期限内申告書が提出されなかったことについて、例えば、災害、交通や通信の途絶等、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような無申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に無申告加算税を課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。
ロ ところで、相続税法第27条《相続税の申告書》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者は、その被相続人からこれらの事由により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合で、その者の相続税の課税価格に係る相続税額があるときは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨規定しているところであり、法定申告期限までに適正な相続税を自主申告するためには、納税者として相続財産の全容を正確に認識していることが必要であるから、相続財産を調査し、その全容を把握するよう努力すべきであるというのが同項の趣旨と解される。
しかしながら、納税者として常に法定申告期限内に相続財産の全容を把握することができるとは限らないことから、申告後において相続税額に不足を生じたり過大になったりした場合には、修正申告又は更正の請求をすることができるものとしている(通則法第19条《修正申告》、通則法第23条《更正の請求》、相続税法第31条《修正申告の特則》、同法第32条《更正の請求の特則》)のであって、相続財産の全容が判明しない場合に、その理由がいかなるものであったとしても申告書の提出義務を免除したり猶予したりする規定は存在しない。
しかしながら、納税者として常に法定申告期限内に相続財産の全容を把握することができるとは限らないことから、申告後において相続税額に不足を生じたり過大になったりした場合には、修正申告又は更正の請求をすることができるものとしている(通則法第19条《修正申告》、通則法第23条《更正の請求》、相続税法第31条《修正申告の特則》、同法第32条《更正の請求の特則》)のであって、相続財産の全容が判明しない場合に、その理由がいかなるものであったとしても申告書の提出義務を免除したり猶予したりする規定は存在しない。
ハ 上記イ及びロを踏まえると、相続税において通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、通常の納税者を基準として、納税者が相続税を申告することが期待できず、法定申告期限内に相続税の申告をしなかったことが真にやむを得ない事情のある場合に限られるものと解されるところ、当該やむを得ない事情は、請求人において、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかった事実が認められる場合をいうと解するのが相当である。
(2) 認定事実
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 本件相続開始日を含む本件預金口座の通帳には、平成29年6月29日以降の取引が記載されているところ、本件預金口座には、同年7月から令和2年○月まで、毎月、本件被相続人の営んでいた本件歯科医院に係る診療報酬が振り込まれていたほか、別表のとおり、本件被相続人から金員が振り込まれていた。
なお、別表の順号3から6までの金員は、Fが本件被相続人の指示を受け、M信用金庫○○支店の本件被相続人名義の普通預金口座から本件預金口座に振り込んだものであった。
なお、別表の順号3から6までの金員は、Fが本件被相続人の指示を受け、M信用金庫○○支店の本件被相続人名義の普通預金口座から本件預金口座に振り込んだものであった。
ロ 請求人は、上記1の(3)のハの(ロ)の本件依頼をしたほかには、本件被相続人の相続財産を把握するための行動はせず、本件相続人らから本件依頼に対する回答を拒否された後は、納税義務があれば税務署から連絡があると考え、自ら税務署や税理士に相談することもなかった。
なお、請求人は、Fが本件被相続人の指示を受け、本件被相続人の金員を取り扱っていたことを把握していたものの、Fは、上記1の(3)のロの(ホ)の訴訟において本件相続人ら側に立ってしまったため、請求人がFに接触することはできなかった。
なお、請求人は、Fが本件被相続人の指示を受け、本件被相続人の金員を取り扱っていたことを把握していたものの、Fは、上記1の(3)のロの(ホ)の訴訟において本件相続人ら側に立ってしまったため、請求人がFに接触することはできなかった。
(3) 検討
イ はじめに
請求人は、上記1の(3)のロの(ニ)のとおり、本件相続人らからの本件金員の返還を求める内容証明郵便により、本件被相続人の法定相続人は本件相続人ら2名であることを把握していたのであり、同ハの(イ)のとおり、本件相続税についてL税理士に相談していたのであるから、本件相続税の遺産に係る基礎控除額は、上記1の(4)のイのとおり、4,200万円であることを容易に把握することができた。これを前提に、請求人において、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識していたかどうかについて検討する。
請求人は、上記1の(3)のロの(ニ)のとおり、本件相続人らからの本件金員の返還を求める内容証明郵便により、本件被相続人の法定相続人は本件相続人ら2名であることを把握していたのであり、同ハの(イ)のとおり、本件相続税についてL税理士に相談していたのであるから、本件相続税の遺産に係る基礎控除額は、上記1の(4)のイのとおり、4,200万円であることを容易に把握することができた。これを前提に、請求人において、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識していたかどうかについて検討する。
ロ 請求人における相続税がかかる財産の認識の可能性
(イ) 上記1の(3)のロの(イ)のとおり、本件預金口座は平成26年頃から請求人が管理をしていた。そして、上記(2)のイのとおり、本件預金口座には、本件歯科医院に係る診療報酬が振り込まれていたほか、令和2年○月頃に本件歯科医院が廃業した後においても、別表の順号3から6のとおり、本件被相続人から金員が振り込まれていたのであるから、本件被相続人には、本件預金口座以外にも多くの貯蓄があったことをうかがわせる事情が認められ、この事情を請求人は認識できたと推認できる。さらに、上記(2)のロのとおり、請求人は、Fが本件被相続人の指示を受け、本件被相続人の金員を取り扱っていたことを把握していたのであるから、Fが管理していた金員についても、相続財産に該当することは容易に認識できたと推認できる。
(ロ) 上記1の(3)のイの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件被相続人は歯科医師として本件歯科医院を営んでおり、請求人は本件歯科医院の従業員として約20年間勤務していたのであるから、請求人は、本件歯科医院の建物及びその敷地である土地が本件被相続人の所有する財産である可能性を認識できたと推認できる。
(ハ) 上記イのとおり、請求人は、本件相続税の法定申告期限内に、本件被相続人の法定相続人が本件相続人ら2名であることを把握しており、本件相続人らにも一定の財産が相続されると考えるのが通常であることや、上記(イ)、(ロ)及び歯科医師であった本件被相続人の職業を踏まえると、請求人は、本件被相続人には本件預金口座以外にも、預貯金や不動産などの財産があったと認識できたと推認される。また、請求人が、上記推認を妨げる、本件相続人らがそれぞれ取得する財産が、本件金員よりも少ない可能性があると認識していたと認めるべき特段の事情は認められない。そうすると、請求人は、本件被相続人が本件金員のほか、相続人一人当たり、本件金員の金額と同額かそれ以上の財産を有していた(本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える)と認識できたと認められる。
(ニ) 加えて、上記(2)のロのとおり、請求人は、本件依頼のほかには、Fに本件預金口座に振り込まれた金員の原資について問合せをしたり、本件歯科医院の建物及びその敷地である土地の登記事項証明書を取得したりするなど、本件被相続人の相続財産を把握するための行動はせず、本件相続人らから本件依頼に対する回答を拒否された後は、納税義務があれば税務署から連絡があると考え、本件相続税の申告のための行動をしていなかった。
ハ 小括
上記イ及びロを併せ考慮すると、通常の納税者を基準として、請求人において、本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められない。
したがって、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことにつき、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとはいえない。
上記イ及びロを併せ考慮すると、通常の納税者を基準として、請求人において、本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えない又は超える可能性が極めて小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったとは認められない。
したがって、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことにつき、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとはいえない。
(4) 請求人の主張について
イ 上記3の「請求人」欄のとおり、請求人は、本件相続人らから本件依頼に対する回答を拒否されたため、相当の努力を払って調査しても遺産に係る基礎控除額を超える額の相続財産を把握することができなかったのであるから、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことにつき、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると主張する。
ロ 確かに、上記1の(3)のハの(ロ)及び上記(2)のロのとおり、請求人は、本件相続人らから本件依頼に対する回答を拒否されたことや、請求人と本件相続人らとの間の訴訟において、Fが本件相続人らの側に立ってしまったために接触できなかったという事情が存在する。
しかしながら、これらの事情は、請求人と本件相続人らあるいはFとの間の人間関係に起因する主観的な事情であって、真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情とはいえない上、請求人は、上記(3)のロの(ハ)のとおり、本件被相続人が本件金員のほか、相続人一人当たり、本件金員の金額と同額かそれ以上の財産を有していた(本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える)と認識できていたのであるから、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
しかしながら、これらの事情は、請求人と本件相続人らあるいはFとの間の人間関係に起因する主観的な事情であって、真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情とはいえない上、請求人は、上記(3)のロの(ハ)のとおり、本件被相続人が本件金員のほか、相続人一人当たり、本件金員の金額と同額かそれ以上の財産を有していた(本件被相続人の相続財産に係る課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える)と認識できていたのであるから、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(5) 本件賦課決定処分の適法性について
上記(3)のとおり、請求人が法定申告期限までに本件申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
これに基づき、当審判所において請求人の無申告加算税の額を計算すると、本件賦課決定処分の額と同額となる。
また、本件賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件賦課決定処分は適法である。
(6) 結論
よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。
別表 本件被相続人から振り込まれた金員(省略)