(令和7年2月18日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の所有権移転登記を受けるに当たり納付した登録免許税の額が過大であるとして、原処分庁に対し、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をしたところ、原処分庁が、過誤納の事実は認められないとして還付通知をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
イ 登録免許税法(令和5年法律第34号による改正前のもの。以下同じ。)第10条《不動産等の価額》第1項は、同法別表第一第1号に掲げる不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
ロ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、同法別表第一第1号に掲げる不動産の登記の場合における同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在において地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格(以下「台帳登録価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
ハ 登録免許税法施行令附則(以下「施行令附則」という。)第3項は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、台帳登録価格のある不動産については、次の(イ)又は(ロ)に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ次の(イ)又は(ロ)に掲げる金額に相当する価額とし、台帳登録価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で台帳登録価格のあるもの(以下「類似不動産」という。)の次の(イ)又は(ロ)に掲げる当該申請の日の区分に応じ次の(イ)又は(ロ)に掲げる金額を基礎として当該登記に係る登記官が認定した価額とする旨規定している。
(イ) 登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるものは、その年の前年12月31日現在における台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額(第1号)
(ロ) 登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在における台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額(第2号)
ニ 施行令附則第4項は、登録免許税法別表第一第1号に掲げる登記で不動産の価額を課税標準とするものについて登録免許税を課税する場合において、登記官が当該登記の目的となる不動産について増築、改築、損壊、地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため施行令附則第3項の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、同法附則第7条に規定する政令で定める価額は、同項の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額とする旨規定している。
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ d市e町○−○所在の土地(地積525u。以下「本件1土地」という。)及び同○−○所在の土地(地積525u。以下「本件2土地」といい、本件1土地と併せて「本件各土地」という。)は、令和5年11月28日に、地目を田から雑種地に変更する旨の登記がいずれもされたところ、同年1月1日現在における台帳登録価格はいずれも○○○○円(課税地目は田)であった。
ロ 請求人は、令和5年12月7日、G氏から本件各土地を買い受けたところ、請求人の従業員であるH氏は、同月8日、D地方法務局E支局に対し、本件各土地について、令和5年12月7日売買を原因とするG氏から請求人に対する所有権移転登記(以下「本件登記」という。)を申請した。
本件登記に係る申請書には、課税価格○○○○円、登録免許税○○○○円との記載があり、請求人は、本件登記の申請に際し、当該登録免許税の額を納付した。
ハ 原処分庁は、上記イのとおり、令和5年11月28日に本件各土地の地目が田から雑種地に変更されていることから、本件登記に係る登録免許税の課税標準として、同年1月1日現在における本件各土地の台帳登録価格(課税地目を田とするもの)の合計額を採用することはできないとして、J市の令和5年度固定資産(土地)評価格通知書に基づき、本件各土地と隣接し、地目が雑種地であるd市e町○−○所在の土地(地積525u。以下「本件認定土地」という。)を類似不動産として選定した上で、令和5年1月1日現在における本件認定土地の台帳登録価格(以下「本件認定土地令和5年度台帳登録価格」という。)○○○○円を本件認定土地の地積で除して算出した1u当たりの価額○○○○円に、本件各土地の地積を乗じて算出した金額○○○○円を本件各土地の価額と認定した(以下、当該認定した価額を「本件登記官認定額」という。)。また、本件登記官認定額を基礎として、課税標準の額を○○○○円(1,000円未満切捨て)、登録免許税の額を○○○○円(100円未満切捨て)と算出し、H氏にその旨を電話により通知した。
ニ 請求人は、令和6年1月19日、本件登記官認定額に基づき算出された登録免許税の額○○○○円から上記ロの納付済みの登録免許税の額○○○○円を控除した○○○○円を納付した。
ホ 原処分庁は、上記ハの登録免許税の額に相当する金額の納付事実が認められ、他に本件登記の申請を却下する事由がないことから、令和6年1月19日、本件登記を完了した。
ヘ 請求人は、令和6年2月13日、原処分庁に対し、本件登記に係る登録免許税に過誤納があるとして、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をした(以下、請求人がした還付通知をすべき旨の請求を「本件還付通知請求」という。)。
ト 原処分庁は、令和6年2月15日付で、本件還付通知請求に対し、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
チ 請求人は、令和6年3月20日、本件通知処分を不服として、審査請求をした。
2 争点
本件登記官認定額は、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大であるか否か。
3 争点についての主張
請求人 |
原処分庁 |
(1) 本件各土地は、正式な進入路がなく、コンクリートの蓋が設置された用水路の上を通路として利用されており、電気の供給及び水道の引き込みが極めて困難な土地であるから、6m道路に接している本件認定土地とは、その経済的評価額が大きく異なるものである。
したがって、本件各土地の類似不動産は、本件各土地の近隣にあるd市f町○−○所在の土地(以下「本件f町土地」という。)を選択することが最も合理的であり、本件f町土地の1u当たりの固定資産評価格○○○○円を基に算出すると、本件各土地の価額は○○○○円となる。
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(1) 本件認定土地は、本件各土地と隣接し、所在地の大字はもちろんその地目及び地積も一致することから、本件各土地の類似不動産である。
したがって、本件各土地の価額は、本件認定土地の1u当たりの固定資産評価格を基に算出するのが正当である。
なお、本件f町土地は、本件各土地と地目は一致するものの、所在地の大字が異なっていること及び地積が大幅に異なっていることからすれば、本件認定土地は、本件f町土地と比較してより近傍類似の土地といえる。
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(2) 令和6年1月1日現在における本件各土地の台帳登録価格の合計額(以下「本件各土地令和6年度台帳登録価格」という。)は○○○○円であり、本件登記官認定額とは評価に大きな差が生じている。
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(2) 本件各土地令和6年度台帳登録価格は、本件登記の申請の日において判明しているものではなく、後発的に判明した価格であることから比較対象とならない。
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(3) 以上のことからすると、本件登記官認定額は、上記(1)の本件f町土地の価格を基に算出した価額○○○○円及び上記(2)の本件各土地令和6年度台帳登録価格○○○○円のいずれの価額と比べても高すぎるから、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大である。
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(3) 以上のことからすると、本件登記官認定額は、本件認定土地の1u当たりの固定資産評価格に本件各土地の地積を乗じて算出した正当なものであるから、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大ではない。
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4 当審判所の判断
(1) 法令解釈
イ 登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定し、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解されるところ、同項の課税標準たる不動産の価額について、同法附則第7条は、当分の間、台帳登録価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。これを受けた施行令附則第3項は、台帳登録価格のある不動産の場合は、台帳登録価格に相当する価額とし、他方、台帳登録価格のない不動産の場合は、類似不動産の台帳登録価格を基礎として当該登記に係る登記官が認定した価額とする旨規定している。
ロ これは、登録免許税が、登記等の時に特別の手続を要せずに納付すべき税額が確定するいわゆる自動確定の租税であることに鑑み、不動産の登記に係る登録免許税の課税標準の額も、登記の時における不動産の価額に基づいて算出することとしたものであるが、他方で、登記の時における不動産の客観的な価額を算出することは容易でなく、登記の都度、登記官において個々の不動産の価額を評価することは実際的でないばかりか、不動産の価額に関する評価が多岐に分かれるおそれがあることから、施行令附則第3項は、課税の公平・納税者の便宜等を考慮して、台帳登録価格のある不動産の場合には、台帳登録価格に相当する価額によって不動産の価額とすることができることとし、専らその台帳登録価格によって登録免許税の課税標準の額を算出することとしたものである。また、施行令附則第3項が、台帳登録価格のない不動産については、類似不動産の台帳登録価格を基礎として当該不動産の価額を算出することとしたのは、台帳登録価格のない不動産についても、飽くまで台帳登録価格に依拠してその価額を算出することにより、台帳登録価格のある場合とない場合とで、課税の公平や価額の均衡を図ることにあると解するのが相当である。
ハ また、施行令附則第4項は、登記官が登記の目的となる不動産について増築、改築、損壊、地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため施行令附則第3項の規定により計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、同項の規定により計算した金額を基礎とし当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額とする旨規定している。
これは、不動産について特別の事情が生じ、その結果、台帳登録価格が登記の時における当該不動産の適正な時価を示しているということができず、これを登録免許税の課税標準たる不動産の価額とすることが適当でなくなった場合には、台帳登録価格を基礎とし当該事情を考慮して当該不動産の価額を算定することを規定したものと解されるところ、登記の目的となる不動産について地目の変換があり、地目の変換前の台帳登録価格を基礎として算定することが相当でない場合において、上記ロの台帳登録価格のない不動産と同様に類似不動産の台帳登録価格を基礎として、登記の目的となる不動産の価額を合理的な方法により算定することは、課税の公平や価額の均衡を図るという観点から相当であると認められる。そして、上記ロの施行令附則第3項の趣旨に照らすと、類似不動産とは、登記の申請の日において、登記の目的となる不動産との価額の均衡が図られる近傍類似の不動産を意味するものというべきであり、当該類似性の存否は、価額の均衡が図られる場合の諸事情である、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等を比較して判断すべきであると解するのが相当である。
ニ 一方、登記の目的となる不動産について、類似不動産が存在しない場合又は類似不動産が把握できない場合には、他の合理的な方法により求めた登記の時の価額を課税標準たる不動産の価額(時価)とするものと解するのが相当と認められる。ただし、登録免許税における不動産の課税標準の額は、登録免許税法附則第7条及びこれを受けた施行令附則第3項に規定するとおり、台帳登録価格を基礎としており、地方税法第341条第9号に掲げる固定資産課税台帳には、同法第388条《固定資産税に係る総務大臣の任務》第1項に規定する固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)によって決定された価格を登録するものとされていることからすると、台帳登録価格のない不動産について、固定資産評価基準によってその価額を算出し、その算出した価額が時価を表さないといえるような特段の事情がない限り、当該価額をもって登録免許税の課税標準たる不動産の価額と解するのも、上記ロで述べた登録免許税の課税標準たる不動産の価額を台帳登録価格に基づいて求めることとしている理由にかなうものとして相当であると認められる。
(2) 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 本件各土地、本件認定土地及び本件f町土地の位置関係等について
本件各土地、本件認定土地及び本件f町土地は、いずれも都市計画法第7条《区域区分》に規定する市街化調整区域内に所在する土地であり、これらの位置関係等の概略及びその周辺土地に面する街路に付設された固定資産税路線価(固定資産評価基準に定める路線価をいい、以下、単に「路線価」という。)を図示すると別図のとおりである。
ロ 本件各土地について
(イ) 本件各土地は、建築基準法第43条《敷地等と道路の関係》第1項に規定する接道義務を満たしておらず、その北側で幅員約2.8mの全面に蓋が設置された水路(以下「本件水路」という。)に接しており、本件水路によって、本件各土地の西端から約70m東側に位置する南北に縦断する市道(以下「本件南北道路」という。)に通じている雑種地である。
(ロ) 本件水路には路線価が付設されておらず、本件南北道路の西側に付設された令和5年度の路線価は、○○○○円である。
ハ 本件認定土地について
(イ) 本件認定土地は、その南側において幅員5.3mの東西に横断する市道(以下「本件東西道路」という。)に接している雑種地である。
(ロ) 本件東西道路に付設された令和5年度の路線価は、○○○○円である。
(ハ) 本件認定土地令和5年度台帳登録価格○○○○円は、固定資産評価基準に基づき定められたJ市土地評価事務取扱要領(以下「本件要領」という。)の定めにより、本件東西道路に付設された令和5年度の路線価(○○○○円)に、奥行価格補正率に奥行長大補正率を乗じた画地計算の補正率計(0.86)及び市街化調整区域補正率(0.50)を乗じた○○○○円を単価とし、これに本件認定土地の地積525uを乗じて求められたものである。
ニ 本件f町土地について
(イ) 本件f町土地は、その北側で通路状の空地に接しており、当該通路状の空地を介して幅員約2.8mの通路(以下「本件通路」という。)に通じ、本件通路によって本件南北道路に通じている雑種地であり、その地積は64uである。
(ロ) 本件通路に付設された令和5年度の路線価は、○○○○円である。
(3) 当てはめ
上記1の(3)のイ及びロのとおり、本件登記の申請の日は令和5年12月8日であり、本件各土地はいずれも台帳登録価格のある土地であるから、施行令附則第3項柱書及び同項第2号により、課税標準たる本件各土地の価額は、同年1月1日現在の台帳登録価格に100分の100を乗じて計算した金額となるところ、同イのとおり、本件各土地については、同年11月28日に地目を田から雑種地に変更する旨の登記がされていることから、同号により計算した金額を課税標準の額とすることは適当でないと認められる。そのため、施行令附則第4項に基づき、上記のとおり計算した金額を基礎とし地目の変換がされたことを考慮して登記官が認定した価額が課税標準たる本件各土地の価額となるところ、地目が田である台帳登録価格を基礎として算定することは相当でないから、上記(1)のハのとおり、原処分庁が、本件各土地に係る類似不動産の台帳登録価格を基礎として、本件各土地の価額を合理的な方法により算定していると認められれば、本件登記官認定額は適法に算定されたものといえる。
イ 本件登記官認定額について
(イ) 原処分庁は、上記1の(3)のハのとおり、本件認定土地を類似不動産として選定した上で、本件認定土地令和5年度台帳登録価格を基に本件登記官認定額を算出しているところ、上記(2)のイ、ロの(イ)及びハの(イ)のとおり、本件各土地と本件認定土地は市街化調整区域内において隣接し、地目が一致している。
(ロ) しかしながら、上記(2)のロの(イ)及びハの(イ)のとおり、本件認定土地はその南側において幅員5.3mの市道である本件東西道路に接しているところ、本件各土地は、建築基準法第43条第1項に規定する接道義務を満たしておらず、本件水路によって本件南北道路に通じていること、また同ロの(ロ)及びハの(ロ)のとおり、本件認定土地に面する本件東西道路には路線価の付設があるところ、本件各土地に面する本件水路には路線価の付設がないことからすると、本件認定土地は、接道の状況及びその面する街路に係る路線価の付設の状況において本件各土地とは大きく異なっている。
また、上記(2)のハの(ハ)のとおり、本件認定土地令和5年度台帳登録価格に適用された画地計算の補正は奥行価格補正及び奥行長大補正であるところ、本件登記官認定額は、上記1の(3)のハのとおり、本件認定土地令和5年度台帳登録価格を本件認定土地の地積で除して算出した1u当たりの価額に本件各土地の地積を単に乗じて算出されたものであることからすると、本件認定土地と本件各土地とが接道状況等で大きく異なる点について考慮されているものとはいえない。
(ハ) したがって、本件認定土地を類似不動産とし、その台帳登録価格を基礎として算定された本件登記官認定額は、本件各土地の価額を合理的な方法により算定しているものとは認められない。
ロ 請求人の主張について
請求人は、上記3の「請求人」欄のとおり、本件各土地の類似不動産は本件f町土地を選択することが最も合理的である旨及び本件各土地令和6年度台帳登録価格と本件登記官認定額に大きな差が生じているから、本件登記官認定額は登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大である旨主張する。
しかしながら、上記(2)のロ及びニからすると、本件f町土地は、土地の地積、形状等及び固定資産評価に適用される路線価において本件各土地との類似性は認められないから、本件各土地の類似不動産であるとはいえない。また、上記1の(3)のロのとおり、本件登記の申請の日は令和5年12月8日であるから、施行令附則第3項柱書及び同項第2号の規定上、令和6年1月1日を基準日とする本件各土地令和6年度台帳登録価格を、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額とすることはできない。
したがって、請求人の主張にはいずれも理由がない。
ハ 当審判所が認定する本件各土地の価額について
上記イ及びロのとおり、本件各土地の価額について、本件登記官認定額及び請求人の主張する価額は、いずれも採用することができない。また、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件登記の申請の日において、本件各土地の近隣に、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価等が類似すると認められる土地は確認されなかった。
このような場合、上記(1)のニのとおり、その価額が不動産の時価を表さないといえるような特段の事情がない限りにおいて、固定資産評価基準によってその価額を算出することも相当であると認められる。そして、固定資産評価基準によって本件各土地の価額を算出するに当たり、本件要領は、固定資産評価基準の定めを具体化したものであり、当審判所においても相当であると認められるから、上記(2)のロの(ロ)の本件南北道路の西側に付設された令和5年度の路線価○○○○円に、本件要領に定める各補正率を適用して本件各土地の1u当たりの価額を算出し、それに本件各土地の地積を乗じて本件各土地の台帳登録価格相当額を算出すると、別表のIのとおり、本件各土地の価額は○○○○円となる。また、当審判所の調査及び審理の結果によれば、当該価額が、本件各土地の時価を表さないといえるような特段の事情があるものとは認められない。
したがって、本件各土地の価額は○○○○円とするのが相当であり、本件登記官認定額のうちこれを超える部分については、登録免許税の課税標準たる本件各土地の価額として過大であると認められる。
(4) 本件通知処分の適法性について
上記(3)のハのとおり、本件各土地の価額は○○○○円とするのが相当であるから、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は、別表のJのとおり○○○○円となる。そして、これを基に、租税特別措置法第72条《土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減》の規定により本件登記に係る登録免許税の額を計算すると、別表のKのとおり○○○○円となり、これと請求人が既に納付した登録免許税の額○○○○円との差額である○○○○円については、登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法令の規定に従っていなかったものに当たり、過誤納と認められる。
したがって、本件還付通知請求は、上記過誤納の限度で理由があり、本件通知処分のうち、上記過誤納に係る部分は違法であるから、当該部分を取り消すべきである。
なお、本件通知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
(5) 結論
よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。
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別表 本件各土地の価額及び登録免許税の額等(審判所認定額)(省略)
別図 本件各土地、本件認定土地及び本件f町土地の位置関係等の概略並びにその周辺土地に面する街路に付設された路線価