(令和7年1月24日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の滞納国税を徴収するため、債権の差押処分をしたのに対し、請求人が、当該債権は第三者に帰属するとして、当該差押処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第3項は、再調査の請求(法定の再調査の請求期間経過後にされたものその他その請求が適法にされていないものを除く。)についての決定があった場合において、当該再調査の請求をした者が当該決定を経た後の処分になお不服があるときは、その者は、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨規定している。
ロ 国税徴収法(以下「徴収法」という。)第47条《差押の要件》第1項柱書及び同項第1号は、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない旨規定している。
ハ 徴収法第62条《差押えの手続及び効力発生時期》第1項は、債権の差押えは、第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う旨規定し、また、同条第3項は、同条第1項の差押えの効力は、債権差押通知書が第三債務者に送達された時に生じる旨規定している。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、請求人が納付すべき別表1に記載の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)について、通則法第37条《督促》第1項の規定に基づき、同表の「督促年月日」欄に記載された各日付で、請求人に対し督促状をそれぞれ発したが、請求人は、当該各督促状が発せられた日から起算して10日を経過した日までに、本件滞納国税についていずれも完納しなかった。
ロ 原処分庁所属の徴収職員は、令和5年11月16日現在、本件滞納国税が完納されていなかったことから、これを徴収するため、徴収法第47条第1項柱書及び同項第1号の規定に基づき、同日付で別表2に記載の債権(以下「本件債権」という。)を差し押さえ(以下「本件差押処分」という。)、徴収法第62条第1項に規定する手続により、債権差押通知書を第三債務者であるE社に送達した。
ハ 請求人は、本件差押処分を不服として、令和6年2月5日に再調査の請求(以下「本件再調査請求」という。)をしたところ、再調査審理庁は、同年4月19日付で却下の再調査決定をした。
 なお、請求人は、令和6年4月1日に所在地をe市f町○−○から肩書地へ移転した。
ニ 請求人は、再調査決定を経た後の本件差押処分に不服があるとして、令和6年5月19日に審査請求をした。

2 当審判所の判断

(1) 本審査請求の適法性について

イ 本審査請求は、上記1の(3)のハ及びニのとおり、通則法第75条第3項の規定に基づき、再調査の請求についての決定があった場合において、当該再調査の請求をした者が当該決定を経た後の処分に不服があるとしてされたものであるところ、同項の規定に基づく審査請求は、再調査の請求が適法なものであることを要件としている。
 この点、本件再調査請求は、請求の利益を欠く不適法なものであるとして却下されていることから、まず、本審査請求の適法性について検討する。
ロ 差押処分等の国税に関する処分に対し不服申立てができる者は、その処分の取消しを求めることに法律上の利益を有する者、すなわち当該処分によって直接自己の権利を侵害された者でなければならない。
 この点、請求人は、本件差押処分の名宛人であり、本件差押処分により、その法律上の効果を受ける者であるから、本件差押処分の取消しを求めることができることは明らかである。
 そうすると、請求人には、不服申立適格及び請求の利益が認められるところ、ほかに本件再調査請求が不適法であるとする事情は認められないから、本件再調査請求は適法である。
ハ 以上のとおり、本件再調査請求は適法なものであり、ほかに本審査請求を不適法とする事情はないため、本審査請求は適法である。

(2) 本件差押処分の適法性について

イ 上記1の(3)のイ及びロのとおり、請求人が本件滞納国税について、それぞれ督促状が発せられた日から起算して10日を経過した日までに完納しなかったのであるから、本件差押処分は、徴収法第47条第1項柱書及び同項第1号所定の要件を充足している。
ロ この点、請求人は、本件差押処分時には、本件債権が第三者に帰属しているから、本件差押処分は無効である旨主張する。
 しかしながら、審査請求が違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることからすれば、不服申立人は、自己の権利又は法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由として取消しを求めることができないと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、請求人の主張は、本件債権が第三者に帰属するというものであり、仮に当該主張の事実が存在したとしても、本件差押処分によって不利益を受けるのは当該第三者であり、請求人ではないから、結局、請求人がかかる事実を違法事由として主張することは、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とするものである。
 したがって、請求人の主張は、審査請求の理由として取消しを求めることができないものであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ なお、本件差押処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

(3) 結論

よって、本審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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