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(令和7年4月11日裁決)
《裁決書(抄)》
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の職員の調査を受けて、所得税等の修正申告及び消費税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、所得税等及び消費税等に係る重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はないとして、原処分のうち過少申告加算税又は無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令
(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
2 争点
請求人に、通則法第68条第1項及び第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。
3 争点についての主張
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 以下のとおり、請求人に、通則法第68条第1項及び第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった。 | 以下のとおり、請求人に、通則法第68条第1項及び第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかった。 |
| (1) 所得税等について | (1) 所得税等について |
| イ 隠蔽又は仮装の行為があったといえることについて 請求人は、本件事業に係る売上金額を本件ノートに正しく記載しており、本件ノートから売上金額を月ごとに集計し、下書用の所得税青色申告決算書(一般用)(以下「本件下書用決算書」という。)又は本件ノートに記載していたことから、本件各年分の各月の売上金額及び総収入金額を把握していた。また、請求人は、本件事業に係る経費を自ら集計していたことから、本件各年分の確定申告前には、本件事業に係る実際の所得金額を容易に把握し得た。 それにもかかわらず、請求人は、本件各年分の本件事業に係る総収入金額が実際よりも少額になるよう各月の売上金額を調整して、実際の売上金額よりも過少に申告しており、請求人自身も、このような申告は、納税額を少なくするためという意図的なものであった旨認めている。そのうえ、請求人が、本件事業の開業年から継続して、本件各確定申告書及びこれらに添付された各所得税青色申告決算書(一般用)(以下「本件各決算書」といい、本件各確定申告書と併せて「本件各確定申告書等」という。)に実際の売上金額よりも過少に記載していたことも踏まえると、このような記載は、所得税等の負担を免れることを目的とした意図的な集計違算といえる。 また、請求人は、本件各決算書を作成した後に、本件下書用決算書を破棄し、正に隠蔽又は仮装と評価すべき行為をしている。 そうすると、このような請求人の行動は、所得税等の負担の軽減を積極的に意図したことによるものであるといえるから、請求人に、所得税等に関する隠蔽又は仮装の行為があったといえる。 |
イ 隠蔽又は仮装の行為があったとはいえないことについて 請求人は、消費税の課税事業者となることを免れるため、本件各年分の本件事業に係る売上金額がいずれも1,000万円超であると認識しながら、これらをそれぞれ1,000万円以下にするという目的にほどよく当てはまるように、適当な金額を減算して本件各決算書を作成したにとどまり、これは意図的な過少申告にすぎず、過少申告行為そのものである。 また、請求人は、本件各年分において二重帳簿の作成、帳簿の改ざん又は破棄、架空名義の請求書等の作成並びに他人名義の口座に売上金額を入金させる等の行為はしていない上、本件調査において、虚偽答弁をしたり、通常保存する資料を秘匿したりすることなく、真実の所得解明に積極的に協力した。 さらに、本件下書用決算書は、本件各確定申告書等を作成するためだけに一時的に利用した手控えであり、他者に見せることを予定していなかったことから、作成後は不要なものとして破棄したにすぎず、こうした破棄行為は、隠蔽又は仮装と評価されるものではない。 そうすると、請求人の行為は、過少申告行為そのものであることから、これとは別の隠蔽又は仮装と評価すべき行為があったとはいえない。 |
| ロ 当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったといえることについて 仮に上記イの行為が、過少申告行為とは別の隠蔽又は仮装の行為に該当しない場合であっても、請求人は、所得税等の負担の軽減を継続的かつ積極的に意図し、実際の売上金額が記載された本件下書用決算書を破棄するとともに、開業以降、毎年3割から5割前後もの収入金額を脱漏した過少記載行為を続けて内容虚偽の確定申告書を作成し提出していた。 このような請求人の行動は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動といえる。 |
ロ 当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとはいえないことについて 上記イのとおり、請求人の行為は過少申告行為そのものであるし、本件調査において、請求人は、虚偽答弁をせずに、本件ノートなどの通常保存する資料を秘匿することなく本件調査担当職員に提出するなど、真実の所得解明に積極的に協力した。また、本件下書用決算書は、本件各確定申告書等を作成するためだけに一時的に利用した手控えであり、その破棄も他者に見せる予定のない不要書類の破棄以上の意味を持たない。 このような請求人の行動は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動とはいえない。 |
| (2) 消費税等について | (2) 消費税等について |
| イ 隠蔽又は仮装の行為があったといえることについて 上記(1)イの事情に加え、請求人は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じることを認識していたことから、請求人は、本件各課税期間の消費税等の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、本件各確定申告書等に実際の売上金額よりも過少に記載することにより、消費税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実である、基準期間中における課税資産の譲渡等の対価の額を故意に脱漏し、免税事業者であるかのように装い続け、確定申告をしなかったものである。 このような請求人の行動は、消費税等の申告納税義務を免れることを積極的に意図したことによるものであるといえることから、請求人に、消費税等に関する隠蔽又は仮装の行為があったといえる。 |
イ 隠蔽又は仮装の行為があったとはいえないことについて 請求人は、消費税の課税事業者になることを免れたいと考え、本件各年分の所得税等について過少申告したものの、この行為は上記(1)イのとおり、所得税等の過少申告行為にすぎない。 したがって、請求人に、消費税等に関する隠蔽又は仮装の行為があったとはいえない。 |
| ロ 当初から消費税等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったといえることについて 仮に上記イの行為が、隠蔽又は仮装の行為に該当しない場合であっても、請求人は、本件各課税期間の消費税等の負担の軽減及び申告納税義務を免れることを積極的に意図し、上記(1)ロの行動をした。 このような請求人の行動は、当初から消費税等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動といえる。 |
ロ 当初から消費税等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとはいえないことについて 上記(1)イのとおり、請求人の行為は所得税等の過少申告行為にすぎない。 このような請求人の行動は、当初から消費税等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動とはいえない。 |
4 当審判所の判断
(1) 法令解釈
通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の制度は、納税者が国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽若しくは仮装するという不正手段に基づき過少申告をした場合、又は国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽若しくは仮装するという不正手段に基づき法定申告期限までに申告をしなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
そして、ここにいう事実の隠蔽とは、故意に事実を隠匿し、あるいは脱漏することをいい、事実の仮装とは、架空取引の申告や他人名義の利用を行い、あたかもそれが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲することをいうと解される。
また、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものが隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに基づき過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに申告がされなかったことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。
(2) 認定事実
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
なお、本件質問応答記録書の末尾には、回答者として請求人の署名があり、併せて、本件調査担当職員が本件質問応答記録書の内容を読み上げて請求人に閲読させたところ、請求人は誤りのないことを確認した旨の記載がある。
(3) 検討及び原処分庁の主張について
上記(2)ロのとおり、請求人は、将来への不安から、支払う税金をできるだけ少なくしたいと考え、また、売上金額が1,000万円を超えると消費税がかかることを知っていたため、消費税を納めなくて済むよう、令和元年分以降、本件事業に係る売上金額が1,000万円を超えていることを認識していながら、売上金額が900万円前後になるように、実際よりも少ない売上金額を本件各決算書に記載して本件各確定申告書を作成し、提出していた旨を申述しており、かかる申述内容は、上記(2)イ並びに上記1(3)ニ及びチのとおり、本件ノート、本件各確定申告書等及び本件各年分の所得税等の各修正申告書の内容と合致している上、上記1(3)ホのとおり、本件各課税期間の消費税等について、いずれも法定申告期限までに確定申告書を提出しなかった事実とも整合し、動機等その申述内容も自然かつ合理的である。また、本件質問応答記録書の作成過程に不自然な点はないから、本件質問応答記録書に記載された請求人の申述は信用できる。
原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)イのとおり、請求人は、本件下書用決算書又は本件ノートに本件事業に係る売上金額を月ごとに集計し、記載しており、本件各年分の確定申告前には、実際の所得金額を容易に把握し得たにもかかわらず、実際の売上金額よりも過少に記載して本件各確定申告書等を提出した上、本件下書用決算書を破棄しており、これらの行為は所得税等の負担の軽減を積極的に意図したことによるものであることから、請求人には、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張する。
そして、上記(2)ロ(ロ)のとおり、請求人は、本件各決算書の作成に当たり、本件ノートの売上げを月ごとに集計し、本件下書用決算書又は本件ノートに記載していることから、請求人は、本件各確定申告書等に記載した売上金額が、本件事業に係る真実の売上金額よりも過少な金額であることを本件各確定申告書等作成時において認識していたとも認められる。
もっとも、上記(1)によれば、本件所得税等各賦課決定処分が適法といえるためには、過少申告行為とは別の隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在することが必要であることから、この点について、更に検討する。
しかしながら、上記A及び上記(2)ロ(ロ)のとおり、本件下書用決算書には、本件ノートから集計した売上金額が記載されていたことから、本件下書用決算書の作成は、真実の売上金額を隠蔽又は仮装したものということはできない。
次いで、本件下書用決算書の処分について検討すると、請求人が、本件事業に係る売上げが正確かつ網羅的に記載されている本件ノートを破棄せず保存し、上記1(3)トのとおり、本件調査において提出していることを踏まえると、本件下書用決算書の処分をもって隠蔽と評価することは困難であり、そのほか、請求人が本件事業に係る真実の売上金額の発覚を防ぐ意図に基づいて何らかの工作をしたことを認めるに足りる証拠はない。
また、当審判所に提出された証拠資料等を精査しても、請求人が、資料の秘匿等をした事実は認められないほか、本件ノート以外に、申告書に記載するための売上げ等を選別するための帳簿等を別途作成したり、本件事業において架空取引の申告や他人名義の利用を行い、あたかもそれが真実であるかのように装ったりしたなどの行為も認められない。
以上によれば、所得税等の過少申告行為とは別の隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在したとは認められず、これと異なる原処分庁の上記主張には理由がない。
もっとも、上記(1)によれば、請求人が、所得税等の納税額を少なくしたいという意図を外部からもうかがい得る特段の行動をし、その意図に基づいて過少申告行為をした場合にも、重加算税の賦課要件が満たされるため、本件でこれらが認められるかについて検討する。
この点について、原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)ロのとおり、請求人が所得税等の負担の軽減を継続的かつ積極的に意図し、本件下書用決算書を破棄するとともに、開業以降、毎年3割から5割前後もの収入金額を脱漏した内容虚偽の確定申告書を継続して作成し提出していたことから、これらの行動は、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当する旨主張する。
確かに、請求人は、平成30年分及び本件各年分の所得税等について、5年間にわたって継続的に過少申告をするとともに、その過少申告の割合は、本件各年分に関する別表1の「確定申告」欄及び「修正申告」欄の各「本件事業に係る総収入金額」欄を比較すると、真実の売上金額の約26%から約47%程度であるところ、これは、上記(2)ロのとおり、支払う税金をできるだけ少なくしたいとの請求人の意図に基づくものであったと認められることから、請求人は、相当の期間にわたって過少申告行為を継続していたとはいえる。
しかしながら、上記1(3)トからヌまでによれば、請求人は、本件調査の実施から平成30年分の所得税等の修正申告書を提出するまでの間、本件調査担当職員の要請を受けて本件ノート等を提出するなど本件調査に協力しており、本件調査において、本件事業に係る真実の売上金額が本件各確定申告書のとおりであるなどとして、真実の売上金額を隠蔽又は仮装することを意図して本件調査担当職員に対して虚偽の説明をするなどの具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価し得る事情は認められない。
また、本件下書用決算書の処分についても上記(イ)Bのとおりであるから、これを外部からもうかがい得る特段の行動と評価することは困難である。
以上によれば、請求人が、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした事実を認めるには足りないというべきであり、これと異なる原処分庁の上記主張には理由がない。
上記3の「請求人」欄の(2)イのとおり、請求人は、消費税の課税事業者になることを免れたいと考え、本件各年分の所得税等について過少申告したものの、当該行為は所得税等の過少申告行為にすぎないことから、消費税等に関する隠蔽又は仮装の行為があったとはいえない旨主張する。
しかしながら、消費税法上の免税事業者に該当するか否かは、基準期間における課税売上高により決せられることから、請求人の本件各年分の所得税等に係る申告における一連の行為が、消費税等における隠蔽又は仮装の行為に直ちに該当しないということはできない。
そこで、上記(1)を踏まえ、請求人の本件各年分の所得税等に係る申告における一連の行為が、消費税等における隠蔽又は仮装と評価すべき行為に該当するかについて検討する。
また、請求人が作成し、提出した本件各決算書の売上金額は、いずれも1,000万円以下となっていた上、上記(2)ロ(イ)及び(ロ)のとおり、請求人は、本件事業に係る売上金額が1,000万円を超えると消費税がかかることを知っており、消費税を納めなくて済むよう、本件各年分の本件事業に係る売上金額が900万円前後になるように、実際よりも少ない売上金額を記載して本件各確定申告書等を作成し、提出していた。
そうすると、請求人は、本件各確定申告書等を作成し、提出する時点において、本件事業に係る売上金額が1,000万円を超えると消費税等の納税義務が生じることを知っており、同金額が1,000万円以下となるように調整した所得税青色申告決算書(一般用)及び所得税等の確定申告書を提出すれば、消費税の納税義務がないかのように装うことができると理解した上で、令和元年分及び令和2年分の所得税青色申告決算書(一般用)及び所得税等の確定申告書をそれぞれ提出して、本件各課税期間の消費税等について、法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったものと認められる。
以上によれば、本件事業に係る売上金額が1,000万円を超えれば消費税等の納税義務が生じること、すなわち同金額が1,000万円以下となるように調整した所得税青色申告決算書(一般用)及び所得税等の確定申告書を提出すれば、消費税等の納税義務がないかのように装うことができると理解していた請求人が、令和元年分及び令和2年分の本件事業に係る真実の売上金額が1,000万円を超えていたにもかかわらず、売上金額を1,000万円以下となるように調整した令和元年分及び令和2年分の所得税青色申告決算書(一般用)及び所得税等の確定申告書をそれぞれ作成し、提出した行為は、消費税法第9条第1項本文の規定の適用を受けるために、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装し、本件各課税期間における消費税等の納税義務がないかのように装うものであることから、請求人の令和元年分及び令和2年分の所得税等に係る申告における一連の行為は、消費税等における隠蔽又は仮装と評価すべき行為に該当すると認められる。
したがって、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認められる。
上記(イ)のとおり、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認められることから、重加算税の賦課要件を満たす以上、請求人の行為が消費税等の無申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動といえるか否かを検討するまでもない。
上記(イ)のとおり、請求人には消費税等における隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在したと認められることから、これと異なる請求人の主張には理由がない。
(4) 本件所得税等各賦課決定処分の適法性について
上記(3)ロのとおり、請求人が本件各年分の所得税等を過少に申告した行為は、所得税等においては通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさないが、他方で、通則法第65条第1項及び第2項に規定する過少申告加算税の賦課要件を満たすと認められる上、本件各年分の所得税等の各修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに当該各修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第5項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。
そして、本件所得税等各賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。したがって、本件所得税等各賦課決定処分は、いずれも過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙1から別紙4までの各「取消額等計算書」のとおり取り消すのが相当である。
(5) 本件消費税等各賦課決定処分の適法性について
上記(3)ハのとおり、請求人には、消費税等においては通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認められることから、本件各課税期間の消費税等について重加算税の賦課要件を満たすといえる。
そして、本件各課税期間の消費税等の重加算税の額については、その計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において、重加算税の額を計算すると、いずれも本件消費税等各賦課決定処分と同額となる。
したがって、本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。
(6) 結論
よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。
別表1 審査請求に至る経緯(所得税等)(省略)
別表2 審査請求に至る経緯(消費税等)(省略)
別紙1 取消額等計算書(省略)
別紙2 取消額等計算書(省略)
別紙3 取消額等計算書(省略)
別紙4 取消額等計算書(省略)