(令和7年9月26日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、一般の新築住宅を取得したものとして計算した住宅借入金等特別税額控除額を控除して確定申告を行った後、エネルギー消費性能向上住宅を取得した場合における住宅借入金等特別税額控除額を控除して確定申告をすべき誤りがあったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人が原処分の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》第1項柱書及び同項第3号は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額が過少であるときは、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
ロ 租税特別措置法(令和6年法律第8号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項及び第2項は、個人が、国内において、住宅の用に供する家屋で政令で定めるもの(以下「居住用家屋」という。)の新築又は居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得等をして、これらの居住用家屋を平成19年1月1日から令和7年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合において、その者が当該取得等に係る所定の借入金又は債務(以下「住宅借入金等」という。)の金額を有するときは、当該居住の用に供した日の属する年以後10年間(当該居住の用に供した日の属する年が令和4年又は令和5年である場合には、13年間)の各年のうち、その者のその年分の所得税に係るその年の所得税法第2条《定義》第1項第30号の合計所得金額が2,000万円以下である年については、その年分の所得税の額から、その年の12月31日における住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が借入限度額を超える場合には、当該借入限度額)に控除率を乗じて計算した金額(以下「住宅借入金等特別税額控除額」という。)を控除する旨規定している(以下、措置法第41条に規定する特別控除を「住宅借入金等特別控除」といい、同条第1項に規定する住宅借入金等特別控除を「一般の住宅借入金等特別控除」という。)。
ハ 措置法第41条第10項柱書及び同項第4号は、個人が、国内において、エネルギー消費性能向上住宅(以下「省エネ住宅」という。)の新築又は省エネ住宅で建築後使用されたことのないものの取得等(以下、省エネ住宅の新築と併せて「省エネ住宅の新築等」という。)をして、これらの省エネ住宅を令和4年1月1日から令和7年12月31日までの間に同条第1項の定めるところによりその者の居住の用に供した場合において、当該居住の用に供した日の属する年以後10年間(当該居住の用に供した日の属する年が令和4年から令和7年までの各年である場合には、13年間)の各年において当該省エネ住宅の新築等に係る住宅借入金等(以下「省エネ住宅借入金等」という。)の金額を有するときは、その者の選択により、当該各年における住宅借入金等特別税額控除額は、同条第2項の規定にかかわらず、その年12月31日における省エネ住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が省エネ住宅の借入限度額を超える場合には、当該借入限度額)に省エネ住宅の控除率を乗じて計算した金額として、同条の規定を適用することができる旨規定している(以下、措置法第41条第10項に規定する住宅借入金等特別控除を「省エネ住宅特別控除」という。)。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 請求人は、令和4年9月1日、D社を売主、請求人を買主、a市b町○−○の土地及び同土地上に所在する木造スレート葺○階建ての建物(床面積68.15平方メートル。以下、この建物を「本件家屋」という。)等を目的物とする売買契約を締結した。
ロ 請求人は、令和5年2月14日、E信用金庫から、住宅取得資金に係る借入金として60,200,000円(償還期間40年)を借り入れた。
ハ 請求人は、令和5年2月14日、新築された本件家屋及び上記イの土地を取得し、住所を肩書地に異動して、同月15日以後、本件家屋を居住の用に供している。
ニ 本件家屋は、令和5年3月17日付で、租税特別措置法施行規則(令和6年財務省令第24号による改正前のもの)第18条の21《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の適用を受ける場合の添付書類等》第8項に規定する住宅省エネルギー性能証明書(以下「本件証明書」という。)が発行されており、省エネ住宅に該当する。
ホ 請求人は、令和6年3月10日、令和5年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して申告した(以下、この申告を「本件確定申告」といい、本件確定申告に係る確定申告書を「本件確定申告書」という。)。
 また、本件確定申告書には、住宅借入金等特別税額控除額を一般の住宅借入金等特別控除の計算方法により算出した旨記載された計算明細書(以下「本件計算明細書」という。)が添付されていたが、本件証明書は添付されていなかった。
ヘ 原処分庁所属の担当職員(以下「本件職員」という。)は、請求人に対し、令和6年4月16日付で「書類の提出について」と題する書面を発送し、次の(イ)ないし(ニ)の各書類を令和6年5月7日までに提出するよう依頼した。
(イ) 住宅の工事請負契約書の写し又は売買契約書の写し
(ロ) 土地の売買契約書の写し
(ハ) 金融機関から交付された「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」(原本)
(ニ) 住宅及び土地の登記事項証明書
ト 請求人は、令和6年5月15日、F税務署を訪れ、本件職員に対し、1上記イの売買契約に係る売買契約書(土地・建物)の写し、2住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書並びに3同イの土地及び本件家屋の全部事項証明書を提出した。上記各書類が提出されたこと及び上記各書類の記載内容からすれば、請求人は、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たしており、本件確定申告書に記載された住宅借入金等特別税額控除額(210,000円)は正しく計算されている。
 なお、請求人は、同日、本件職員に対し、本件証明書を提示した上、本件確定申告書に記載した住宅借入金等特別税額控除額について、一般の住宅借入金等特別控除に基づく金額から省エネ住宅特別控除に基づく金額に変更したい旨申し出たが、本件職員は、当該変更はできない旨説明した。
チ その後、請求人は、令和6年6月4日に、本件家屋は省エネ住宅に該当し、省エネ住宅特別控除を適用できるとして、別表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をした。
リ 原処分庁は、これに対し、令和6年7月1日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ヌ 請求人は、本件通知処分を不服として令和6年10月1日に審査請求をした。

2 争点

 請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当し、省エネ住宅特別控除を適用することができるか否か。

3 争点についての主張

請求人 原処分庁
請求人は、本件確定申告をするに当たり、住宅借入金等特別控除について相談してから申告するため、書類一式を持参して税務署に行ったが、3月のシーズンということもあったのか確認してもらえず、税務職員から、ネットで申告できるからやってみてと言われ、とりあえず自分で作成した本件確定申告書を提出した。
 そして、請求人が省エネ住宅に該当する住宅を取得したことは事実であり、当該事実に即して省エネ住宅特別控除が適用されるべきである。
 したがって、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当し、省エネ住宅特別控除を適用することができる。
本件確定申告書に添付された本件計算明細書には、住宅借入金等特別税額控除額を一般の住宅借入金等特別控除の計算方法により算出した210,000円とする旨が記載され、また、省エネ住宅特別控除の適用を受ける旨の記載はない。加えて、本件確定申告書の提出時に本件証明書の添付もなかったことからすると、請求人は、本件確定申告において、一般の住宅借入金等特別控除の適用を選択したことが認められる。
 また、本件確定申告書の内容は、措置法第41条第1項の規定に従ったところで正しく計算された適法なものである。
 そして、昭和55年12月26日付直所3−20ほか国税庁長官通達「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」41−33《住宅借入金等特別控除の控除額に係る特例の規定を適用した場合の効果》は、措置法第41条第10項の規定を適用しないところにより確定申告書を提出した場合には、その後においてその者が更正の請求をしても、同項の規定を適用しない旨定めている。
 したがって、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当せず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。

4 当審判所の判断

(1) 検討

イ 通則法第23条は、更正の請求ができる場合を限定しており、同条第1項に基づく更正の請求は「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」を要するものとしているところ、確定申告の内容が上記規定の要件に該当するか否かは、税法及び関係資料に照らして客観的に判断すべきである。
ロ また、措置法第41条第10項柱書及び同項第4号は、個人が、国内において、省エネ住宅の新築等をして、これらを令和4年1月1日から令和7年12月31日までの間に同条第1項の定めるところによりその者の居住の用に供した場合において、当該居住の用に供した日の属する年以後10年間(一定の場合は13年間)の各年において省エネ住宅借入金等を有するときは、その者の選択により、一般の住宅借入金等特別控除ではなく、省エネ住宅特別控除を適用することができる旨規定している。
 したがって、請求人は、一般の住宅借入金等特別控除及び省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足する場合には、そのいずれを適用するかを選択して確定申告をすることができることとなる。
ハ 本件についてみると、上記1の(3)のホのとおり、本件確定申告書においては、一般の住宅借入金等特別控除の計算方法により住宅借入金等特別税額控除額が算出されているところ、省エネ住宅特別控除を適用するために必要となる本件証明書の添付はなく、同トのとおり、その後に請求人が提出した各書類及びその記載内容によれば、一般の住宅借入金等特別控除の適用要件を満たしており、住宅借入金等特別税額控除額の計算にも誤りがないと認められる。そうすると、本件確定申告は、客観的にみれば税法の規定に従ったものであるといえる。
 したがって、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当しないから、更正の請求ができる場合に当たらず、省エネ住宅特別控除を適用することはできない。

(2) 請求人の主張について

請求人は、省エネ住宅に該当する住宅を取得したことは事実であるから、当該事実に即して省エネ住宅特別控除が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(1)で検討したところによれば、一般の住宅借入金等特別控除と省エネ住宅特別控除の各要件をいずれも充足し、いずれを適用して確定申告するかが納税者の選択に委ねられている場合、そのいずれを選択したとしても、当該確定申告が客観的にみて税法の規定に従ったものである限り、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当しないから、請求人の主張する上記事情を踏まえても、本件は、更正の請求ができる場合に当たらない。
 また、請求人は、税務職員に申告のための書類を確認してもらえなかった旨も主張するが、申告納税制度の下における確定申告は、納税者自身の判断と責任でされるべきものであるから、仮に請求人が主張する上記事情があったとしても、上記(1)のハの判断を左右するものではない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 本件通知処分の適法性について

以上のとおり、請求人が一般の住宅借入金等特別控除を適用して本件確定申告書に記載した課税標準等又は税額等について、通則法第23条第1項に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」には該当せず、還付金の額に相当する税額が過少であるとは認められない。
 また、原処分のその他の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件更正請求に対し、更正をすべき理由がないとした原処分は適法である。

(4) 結論

よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとする。

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