(令和7年9月24日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、請求人名義の預貯金口座に入金された売上代金を売上げに計上していなかったとして、法人税等及び消費税等の修正申告をしたところ、原処分庁が、当該売上げを計上していなかったことにつき隠蔽又は仮装の事実があったとして、法人税等及び消費税等に係る重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、隠蔽又は仮装の事実はないなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

関係法令は、別紙7のとおりである。
 なお、別紙7で定義した略語については、以下、本文及び別表でも使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 請求人の概要等は、以下のとおりである。
(イ) 請求人は、平成30年4月○日に設立された、古物営業法に基づく古物商等を目的とする法人である。
 請求人の代表取締役は、設立当初からG(以下「本件代表者」という。)が務めており、請求人の取締役は、本件代表者のみで、ほかに役員として登記されている者はいない。
(ロ) 請求人の令和2年4月1日から令和3年3月31日までの事業年度(以下「令和3年3月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)の法人税の確定申告書、令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税事業年度(以下「令和3年3月課税事業年度」といい、他の課税事業年度についても同様に表記する。)の地方法人税の確定申告書並びに令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税期間(以下「令和3年3月課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告書を作成した税理士法人は、J(以下「本件税理士」という。)が代表社員を務めていたK税理士法人○○支店であったが、請求人の令和4年3月期の法人税の確定申告書、令和4年3月課税事業年度の地方法人税の確定申告書及び令和4年3月課税期間の消費税等の確定申告書を作成した税理士法人は、本件税理士が代表社員を務めるL税理士法人○○支店であった(以下、K税理士法人○○支店とL税理士法人○○支店を併せて「本件税理士法人」という。)。
ロ 請求人名義の預貯金口座の入金状況等は、以下のとおりである。
(イ) 請求人名義のM銀行の○○○○口座(○○○○○○○○及び○○○○。以下、前者を「本件M口座1」といい、後者を「本件M口座2」といい、これらを併せて「本件各M口座」という。)には、令和3年3月期において、それぞれ別表1及び別表2の入金(以下、これらを併せて「本件各M口座入金額」という。)があった。
(ロ) 請求人名義のN銀行○○○○の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件N口座」という。)には、令和3年3月期及び令和4年3月期(以下、これらを併せて「本件各事業年度」という。)において、別表3の入金(以下「本件N口座入金額」といい、本件各M口座入金額と併せて「本件各入金額」という。)があった。
 なお、本件各事業年度において、本件N口座には、別表3の本件N口座入金額以外の入金はなかった。
(ハ) 本件各入金額は、請求人の古物等の売上げに係る入金及び利息(別表3の順号28)であり、いずれも、請求人の総勘定元帳に計上されていなかった。

(4) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、令和3年9月29日、令和3年3月期の法人税及び令和3年3月課税事業年度の地方法人税の申告期限について新型コロナウイルス感染症の影響による延長申請をしたところ、原処分庁は、当該申請に対して、通則法第11条《災害等による期限の延長》の規定により、当該申告期限を令和3年9月29日まで延長した。
 なお、原処分庁は、請求人の令和3年3月課税期間の消費税等の法定申告期限が法人税及び地方法人税のものと同一であったことから、消費税等についても法人税及び地方法人税と同様に申告期限の延長の申請があったものとして取り扱い、当該申告期限を令和3年9月29日まで延長した。
ロ 請求人は、本件各事業年度の法人税について、各確定申告書に別表4の「確定申告」欄のとおり記載して、令和3年3月期は令和3年9月29日に、令和4年3月期は令和5年2月22日にそれぞれ申告した。
ハ 請求人は、令和3年3月課税事業年度及び令和4年3月課税事業年度(以下、これらを併せて「本件各課税事業年度」という。)の地方法人税について、各確定申告書に別表5の「確定申告」欄のとおり記載し、令和3年3月課税事業年度は令和3年9月29日に、令和4年3月課税事業年度は令和5年2月22日にそれぞれ申告した。
ニ 請求人は、令和3年3月課税期間及び令和4年3月課税期間(以下、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、各確定申告書に別表6の「確定申告」欄のとおり記載し、令和3年3月課税期間は令和3年9月29日に、令和4年3月課税期間は令和5年2月22日にそれぞれ申告した(以下、当該各確定申告書と上記ロ及びハの各確定申告書を併せて「本件各確定申告書」という。)。
ホ 次いで、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査を受け、本件各入金額が売上げに計上されていなかったなどとして、本件各事業年度の法人税、本件各課税事業年度の地方法人税及び本件各課税期間の消費税等について、別表4から別表6までの各「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書を令和6年6月7日に提出した。
ヘ 本件調査担当職員は、令和6年3月25日、本件代表者に対し、通則法第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》の規定に基づく質問を行い、その質問応答の要旨を記録した質問応答記録書(以下「本件質問応答記録書」という。)を作成した。
ト 原処分庁は、令和6年6月26日付で、本件各事業年度の法人税、本件各課税事業年度の地方法人税及び本件各課税期間の消費税等について、別表4から別表6までの各「賦課決定処分」欄のとおり、重加算税の各賦課決定処分をした。
チ 請求人は、原処分に不服があるとして、令和6年9月24日に審査請求をした。

2 争点

 請求人に、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
以下のとおり、請求人は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部を隠蔽したのであり、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった。
(1) 本件代表者は、本件代表者のパソコン(以下「本件パソコン」という。)に、自身で、総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたところ、本件各事業年度に係る会計仕訳の入力の際、本件各入金額についての売上げの会計仕訳を入力しなかった上、本件各入金額に係る本件各M口座の通帳や本件N口座の取引明細を本件税理士法人に渡さなかった。
(2) 本件代表者は、本件各入金額が古物等の売上代金であること及び本件代表者が売上げの会計仕訳を入力せず、本件税理士法人に当該会計仕訳の基となるべき資料を渡さなければ、その入力しなかったものが本件各確定申告書の内容に含まれないことを認識しながら、上記(1)のとおり、本件パソコンに本件各入金額について売上げの会計仕訳を入力しなかった上、当該資料を本件税理士法人に渡さなかったものであり、このような本件代表者の行為は、次のことから、故意に行われたものであると認められるから、隠蔽に該当する。
イ 本件代表者は、本件調査担当職員に対し、本件各M口座入金額を売上げに計上しなかったのは、税金が多額に発生すると思ったからであり、納める税金を抑える目的で計上しなかった旨申述した。
ロ 本件各入金額について、請求人の本件各事業年度における売上高に占める割合や振込回数から、それら全部の会計仕訳が入力されていないのは単なる過失というには不自然である。
ハ 本件代表者は、本件税理士法人に本件各M口座の通帳や本件N口座の取引明細を渡すことができたにもかかわらず渡さなかった。
ニ 本件代表者は、本件各確定申告書を提出する前にその内容を確認していたところ、上記ハの通帳及び取引明細並びに本件代表者が入力していた会計仕訳データと本件各確定申告書とを照合すれば本件各入金額が含まれていないことを容易に認識することができたにもかかわらず、あえて照合しなかった、又は照合をしたが訂正しなかった。
ホ 本件代表者は、本件N口座入金額のほぼ全額を本件M口座2へ送金していたところ、本件N口座入金額が売上げであることを認識していたにもかかわらず、本件M口座2の入金の相手勘定を現金又は仮受金とするなど、事実とは異なる内容で会計仕訳を入力したのであり、本件N口座入金額の存在を隠そうとした。
以下のとおり、請求人は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠蔽しておらず、通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかった。
(1) 本件代表者は、本件パソコンに総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたところ、本件各事業年度については、本件代表者だけでなく、本件税理士法人の事務員も会計仕訳を入力していた。
 結果的に、本件各事業年度に係る会計仕訳の際、本件各入金額についての売上げの会計仕訳の入力がされなかった。
(2) 本件各入金額について売上げの会計仕訳が入力されなかった理由及び本件各入金額が反映されない本件各確定申告書が作成された理由は、本件代表者が多忙で会計仕訳の入力を失念したこと、請求人の従業員であり本件代表者の弟であるP(以下「本件弟」という。)が本件代表者に会計仕訳の入力の基となる取引明細の一部を渡していなかったこと、本件税理士法人の事務員との確認作業に行き違いが生じたこと及び請求人名義の口座に入金された大きな金額を隠すような、誰にでも分かるようなことを行うはずがないことから、本件代表者の故意に基づくものではなく、過失に基づくものである。
 また、原処分庁の主張は、以下のとおり理由がない。
イ 本件代表者は、本件調査担当職員に対し、本件各M口座入金額を売上げに計上しなかったのは、税金が多額に発生すると思ったからであり、納める税金を抑える目的で計上しなかった旨申述した事実はない。
ロ 本件代表者は、本件各確定申告書の提出前の内容の確認について、令和3年3月期については、利益が出た感覚がなかったことなどから法人税確定申告書の別表一と納税額を確認した程度であり、また、令和4年3月期については、多忙で時間がなかったことなどから、細かく調べることはしなかった。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

通則法第68条第1項及び第2項は、同法第65条第1項又は同法第66条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税又は無申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。これは、納税者が過少申告について隠蔽、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 そして、通則法第68条第1項及び第2項に規定する「隠蔽し」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠匿あるいは故意に脱漏することをいい、「仮装し」とは、所得、財産、あるいは取引上の名義等に関し、あたかもそれが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものと解される。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 本件弟の担当業務
 本件弟は、請求人の従業員として、古物等を仕入れる業務、古物等をインターネットオークションに出品する業務のほか、請求人名義の預貯金口座に係る入出金等の業務を担当していた。
 また、本件弟は、請求人名義の預貯金口座の通帳の写しや取引明細などの書類等について、本件税理士法人からの提出依頼又は本件代表者からの提出指示に従い、本件税理士法人に対して電子メール等によって提出する業務も担当していた。
ロ 本件税理士法人の事務員
 本件税理士法人において、令和3年3月期の請求人の担当者であったQ氏(以下「Q事務員」という。)は、令和2年11月○日に本件税理士法人に採用され、令和3年10月○日に退職した。
 また、本件税理士法人において、令和4年3月期の請求人の担当者であったR氏(以下「R事務員」という。)は、令和4年10月○日に本件税理士法人に採用され、令和6年6月○日に退職した。
 なお、本件税理士法人に、遅くとも令和2年頃から令和7年4月頃までの間、事務員として在籍していたS氏(以下「S事務員」という。)は、Q事務員やR事務員のほか、他の事務員に対する業務指示を行っていた。
 Q事務員、R事務員及びS事務員は、請求人の本件各事業年度の決算に際し、請求人に対し、電子メール等を使用して、請求人名義の預貯金口座の通帳の写しや取引明細などの書類等を提出するよう依頼していた。
ハ 本件各事業年度における請求人の経理及び確定申告の状況
(イ) 請求人は、古物等の商品販売代金を預貯金口座への振込み又は送金によって受領していたところ、その代金の売上げの会計仕訳の入力は、その代金が入金される預貯金口座の通帳の写しや取引明細に基づいて行われていた。
(ロ) 本件N口座入金額のほぼ全額は、各入金があった日から遅くとも1週間以内に、本件M口座2に振り込まれていた。
 なお、上記本件M口座2に振り込まれた際の会計仕訳は、借方は普通預金勘定で、貸方は現金勘定又は仮受金勘定となっていた。
(ハ) 請求人の総勘定元帳及び決算書は、上記(イ)の預貯金口座の通帳の写しや取引明細などの資料に基づいて本件パソコンの会計ソフトへの会計仕訳の入力により作成され、本件各確定申告書は、当該決算書に基づき、本件税理士法人により作成された。
(ニ) 本件代表者は、本件各確定申告書の提出前に、本件各M口座の通帳又は本件N口座の取引明細及び本件パソコンに入力された会計仕訳データと本件各確定申告書を照合していなかった。
ニ 請求人と本件税理士法人との間の各電子メール
 請求人と本件税理士法人との間で要旨以下の内容の電子メールが取り交わされた。
(イ) 本件税理士法人は、令和3年8月○日午前○時○分、請求人に対し、電子メール及び同メールに添付されているQ事務員作成のPDFファイルによって、本件各M口座について要旨以下のとおり依頼した。
A 本件M口座1
 提出された通帳が令和2年9月○日までの記帳で終わっているため、同日以降令和3年3月○日まで記帳された通帳を提出すること。
B 本件M口座2
(A) 提出された通帳が令和3年3月○日までの記帳で終わっているため、同日以降同月○日まで記帳された通帳を提出すること。
(B) 提出された通帳が、令和2年4月○日から同月○日まで、同年10月○日から同年11月○日まで及び令和3年3月○日から同月○日までの表示が「合算」と表記されているため、当該各期間の内訳に係る資料(以下、本件M口座2の上記の期間の内訳に係る資料を「本件合算表記資料」という。)を提出すること。
(ロ) 本件税理士法人は、令和3年9月○日午前○時○分、請求人に対し、電子メールによって、本件M口座1については上記(イ)のAと同一内容、本件M口座2については上記(イ)のBの(A)と同一内容の依頼をした。
(ハ) 請求人は、令和3年9月○日午後○時○分、本件税理士法人に対し、電子メールによって、本件M口座1に係る令和2年9月○日以降の取引が記帳された通帳の画像データを提出した。
(ニ) 請求人は、令和3年9月○日午後○時○分、本件税理士法人に対し、「M銀行の合算の件ですが、照会に10日ほどかかるそうです。」と記載した電子メールを送信した。
(ホ) 請求人は、令和3年9月○日午後○時○分、本件税理士法人に対し、電子メールによって、本件N口座入金額に係る全ての取引明細の画像データを提出した。
(ヘ) 本件税理士法人は、令和3年11月○日午後○時○分、請求人に対し、「先日、当事務所のQが送信していたご依頼事項のメールを再度お送り致します」と記載したS事務員作成の電子メールを送信し、上記(イ)のBの(B)と同一内容の依頼をした。
(ト) 本件税理士法人は、令和4年3月○日午後○時○分、請求人に対し、請求人の令和4年3月期に係る会計仕訳の入力及び本件代表者個人の申告に当たり、「法人の会計入力 個人の申告にあたりまして以下の資料をお願い致します」と記載したS事務員作成の電子メールを送信し、本件M口座1及び本件M口座2の各通帳などの提出を依頼した。
ホ 本件代表者から本件弟に対するメッセージの内容
(イ) 本件代表者は、令和3年9月○日午後○時○分、本件弟に対し、本件税理士法人から請求人に対して送信された、上記ニの(ロ)と同様の依頼事項の電子メールをコピーした内容をソーシャルネットワーキングサービスである「○○○○」(以下「○○○○」という。)で送信するとともに、当該依頼事項に対しては対応済みではないか尋ねた。また、本件代表者は、同日午後○時○分、本件弟に対し、本件税理士名で登録している電話番号を○○○○で送信するとともに、同電話番号に電話を架けるよう指示した。
(ロ) 本件代表者は、令和3年11月○日午後○時○分、本件弟に対し、上記ニの(ヘ)の電子メールのうち依頼事項部分を撮影した画像データを○○○○で送信するとともに、当該依頼事項に対応するよう指示した。
ヘ 本件税理士の答述の内容
 本件税理士は、当審判所に対し、要旨以下の(イ)及び(ロ)のとおり答述したところ、同答述は以下の(ハ)のとおり信用性が認められる。
(イ) 本件パソコンへの会計仕訳の入力
A 本件各事業年度においては、本件代表者が、本件税理士法人の事務所に持参し、預けた本件パソコンに入力された会計仕訳データと請求人から提出された領収証などの書類や通帳、メールで依頼して提出させた資料を確認の上、当時の担当者が決算整理仕訳を入力し、決算書を作成していた。本件税理法人においては、その決算書を基に本件税理士法人の事務所の申告書作成ソフトに入力し、本件各確定申告書を作成していた。
B 本件代表者は、月に1度、dの古物市場に来て、その際に本件税理士法人の事務所に本件パソコンを預けていたが、その時点で入力された会計仕訳データの内容は不完全であったため、請求人から提出された書類を基に本件税理士法人のその当時の担当者が確認して、会計仕訳を本件パソコンに入力していた。
C 元々、本件代表者には、自身で記帳をしてもらい、本件税理士法人は決算と申告のみを行うこととしていたが、徐々に本件税理士法人の担当者が本件パソコンに会計仕訳を入力する量が増加し、ほとんどの部分を担当者が入力することとなったようである。しかしながら、本件税理士法人の担当者の確認が不足したまま、チェックが不十分な状態で本件各確定申告書を作成し提出したのは、本件税理士法人の責任である。
(ロ) 本件各入金額に係る資料の受渡し等
A 請求人の売上げは全て金融機関への振込みによるものなので、本件税理士法人では、上記(イ)のAの会計仕訳データのほか、全ての預貯金口座の通帳の写しや取引明細など、請求人から提出された書類を確認していた。
B 書類等の提出依頼については本件弟が対応していたので、提出を求めた資料について本件弟から問合せがあると、その内容等について本件税理士法人のその当時の担当者が説明して提出を依頼していた。
C 上記ニの(ニ)のメールのやりとりを見る限り、当該メールに記載された「M銀行の合算の件」に関する書類を受け取っていたとしても、Q事務員が令和3年10月○日に退職した後、R事務員が令和4年10月○日に勤務するまで、請求人から提出された資料が溜まっており、整理がされないまま、R事務員が担当することになったので、Q事務員が受け取っていた書類が引き継がれなかったのかもしれない。
D 今回の売上げの計上もれについては、本件税理士法人において本件弟から正しい売上げを計上できる資料の提供を受けていながら、担当者がその内容を申告に反映させていなかったことが原因で、これは、担当者の確認不足によるものでもある。
(ハ) 本件税理士の答述の信用性
A 本件税理士は、上記(イ)のAのとおり、当審判所に、本件各事業年度においては、請求人から提出された書類や通帳、メールで依頼して提出させた資料を確認の上、当時の担当者が決算整理仕訳を入力していた旨及び同Bのとおり、請求人から提出された書類を基に本件税理士法人のその当時の担当者が確認して、会計仕訳を本件パソコンに入力していた旨、それぞれ答述している。これらの答述のうち、通帳等を請求人から本件税理士法人に提出させていたという点については、令和3年3月○日までの取引が記帳されている本件M口座1及び本件M口座2の各通帳を提出するよう本件税理士法人から請求人に対し依頼をしている電子メールの内容(上記ニの(イ))及び令和4年3月期に係る請求人の会計処理に当たり本件M口座1及び本件M口座2の各通帳を提出するよう本件税理士法人から請求人に対し依頼している電子メールの内容(同(ト))と整合している。また、提出させた通帳等を基に本件税理士法人において会計仕訳作業を行っていたという点についても、わざわざ会計仕訳の基礎となる通帳等を提出させていることからすれば、税理士法人の業務として通常行うであろう合理的な作業といえる。
B 本件税理士は、上記(ロ)のAのとおり、当審判所に、請求人の売上げは全て金融機関への振込みによるものなので全ての預貯金口座の通帳や取引明細等、請求人から提出された書類を確認していた旨答述しているところ、上記ニの(ハ)のとおり、請求人は、本件税理士法人に対し、本件M口座1に係る令和2年9月○日以降の取引が記帳された通帳の画像データを提出していると認められること、上記ニの(イ)のBの(A)のとおり、本件M口座2に係る令和3年3月○日まで記帳された通帳を提出していると認められること及び上記ニの(ホ)のとおり、本件N口座入金額に係る全ての取引明細の画像データを提出していると認められることから、客観的状況とも整合している。
C 本件税理士は、上記(ロ)のBのとおり、当審判所に、請求人に係る書類等の提出依頼については本件弟が対応し、本件弟から問合せがあると、その内容等について本件税理士法人の担当者が説明して提出を依頼していた旨答述しているところ、上記イのとおり、本件弟は、請求人名義の預貯金口座の通帳の写しや取引明細などの書類等について、本件税理士法人からの提出依頼又は本件代表者からの提出指示に従い、本件税理士法人に対して電子メール等によって提出する業務を担当していたと認められる点で客観的状況とも整合している。
D 本件税理士は、上記(ロ)のCのとおり、当審判所に、Q事務員が令和3年10月○日に退職した後、R事務員が令和4年10月○日に勤務するまで、請求人から提出された資料が溜まっており、整理がされないままであった旨答述しているところ、従業員が退職する際には残務整理や取引先への挨拶などを通常業務と並行して行うことになるほか社会保険や雇用保険などの退職に係る事務手続も必要となることから、多忙で慌ただしくなることが一般的で、本件税理士法人における請求人の担当者であったQ事務員が退職後、次の担当者となるR事務員が採用されるまでほぼ1年の間隔があったことからすれば、本件税理士法人において請求人から提出された資料が整理されないままとなっていても不自然ではない。
E 以上のとおり、本件税理士の答述は、客観証拠と整合するほか自然で合理的なものであり、その他当該答述の信用性に疑いを生じさせる証拠も存在しないことから、全体として信用性が認められる。

(3) 本件代表者の申述の信用性

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、本件代表者が、本件パソコンに、自身で、総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたところ、故意に、本件各入金額についての会計仕訳を入力していなかったと主張し、この主張を裏付ける証拠として、本件質問応答記録書に記載の申述(以下「本件申述」という。)を挙げている。これに対し、請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)及び(2)のイのとおり、本件申述の信用性を争っているので、以下、当該信用性について検討する。

イ 本件申述の内容
(イ) 本件質問応答記録書には、本件代表者が、本件各事業年度を含む事業年度における法人税確定申告書の作成及び申告手順につき、「法人税確定申告書の作成から申告までの流れですが、まず私がパソコンに仕訳を入力します。仕入れに係る請求書、売上に係る請求書、通帳、ネットバンキングの履歴、出張先や従業員と食事をした際の領収証を一枚ずつ確認しながらパソコンに入力しています。私のパソコンは毎日持ち歩いているので、出張先のホテルの部屋で入力することが多いです。仕入れと売上に係る請求書は、従業員から○○○○やメールで私宛に送信してもらい入力をしています。パソコンへ入力するソフトは○○○○です。○○○○に日付、金額、相手先、内容を入力しています。一年間の入力が全て終了したタイミングでFの申告関係全て任せています税理士のJ税理士に私が入力したデータと入力するにあたり基となった資料等を全て預けています。また、売上を入力する際は、通帳も一緒に渡しています。J税理士は、私が入力したデータを確認した後申告書を作成してT税務署に提出されるのだと思います。」と申述した旨が記載されている。
(ロ) 本件質問応答記録書には、本件代表者が、本件各M口座入金額につき、「私の判断で意図的に売上計上をしなかったわけではありませんが、(中略)ランダムで私が売上に計上していないようにとらえられても仕方がありません。売上に計上しなかったのは、税金が多額に発生すると思ったからで納める税金を抑える目的で売上に計上しませんでした。」と申述した旨が記載されている。
ロ 信用性の検討
(イ) 本件申述のうち、上記イの(イ)の申述からすれば、本件各事業年度についても、本件代表者が請求人の全ての会計仕訳を入力していたように読み取れる。
 しかしながら、本件税理士は、当審判所に、上記(2)のへの(イ)のA及びBのとおり、本件各事業年度においては、請求人から提出された通帳等の資料を基に、本件税理士法人の当時の担当者が会計仕訳を入力していた旨及び同Cのとおり、本件パソコンへの仕訳入力のほとんどを本件税理士法人の担当者が行うようになっていた旨それぞれ答述しており、本件申述は、信用できる当該答述と相反している。
(ロ) また、上記(イ)のとおり読み取れる本件申述は、上記(2)のニの(ト)の、請求人がS事務員から、「法人」、すなわち請求人の会計仕訳の入力のため、本件M口座1及び本件M口座2の各通帳の提出などを依頼されているという電子メールとも、少なくとも令和4年3月期の会計仕訳の入力行為者について相反している。
(ハ) さらに、本件質問応答記録書には、上記イの(ロ)のとおり、「私の判断で意図的に売上計上をしなかったわけではありませんが、(中略)ランダムで私が売上に計上していないようにとらえられても仕方がありません。」と本件各M口座入金額についての売上げ等に係る会計仕訳の入力行為及び当該行為を故意に行ったことを否定する内容が録取されている直後に、「売上に計上しなかったのは、税金が多額に発生すると思ったからで納める税金を抑える目的で売上に計上しませんでした。」と本件各M口座入金額についての売上げ等に係る会計仕訳の入力行為及び当該行為を故意に行ったことを肯定するという、明らかに相矛盾する内容が録取されており、これ自体本件申述の信用性に疑いを生じさせるものである。それにもかかわらず、本件代表者の申述経過やその変遷の理由について何ら録取されていないのであるから、本件代表者が、本件各M口座入金額についての売上げ等に係る会計仕訳の入力行為及び当該行為を故意に行ったことを肯定する内容を述べたのか相当疑わしいといわざるを得ない。
(ニ) 以上のとおり、本件申述は、客観証拠と整合せず、相反する供述証拠も存在する一方で、本件申述の信用性を認め得る根拠もないため、結局、本件申述には、信用性が認められないといわざるを得ず、採用することはできない。

(4) 検討

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、本件代表者は、本件パソコンに、自身で、総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたところ、本件各入金額についての売上げの会計仕訳を入力しなかった上、本件各入金額に係る本件各M口座の通帳や本件N口座の取引明細を本件税理士法人に渡さなかったのであり、これらの行為は、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する旨主張する。
 そこで、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実が認められるか否か、以下検討する。

イ 本件各入金額についての売上げ等に係る会計仕訳の入力
 上記(3)のロの(ニ)のとおり、本件申述は採用することができないところ、原処分庁提出証拠並びに当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件質問応答記録書のほかに、本件代表者が、本件パソコンに、自身で、総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力する際、故意に本件各入金額についての会計仕訳を入力していなかったとする原処分庁の主張を裏付ける証拠はない。
 したがって、本件各事業年度において、本件代表者が故意に本件各入金額についての売上げ及び上記1の(3)のロの(ハ)の利息に係る会計仕訳を入力しなかったとの事実は認めることができない。
ロ 本件各入金額に係る資料の受渡し
(イ) 本件M口座1の受渡し
 本件各入金額を売上げとする会計仕訳の基となる本件M口座1の通帳の写しの受渡し状況についてみると、上記(2)のニの(ハ)のとおり、請求人は本件税理士法人に対し、本件M口座1の通帳の写しを令和3年9月○日に提出していた。
 したがって、本件代表者が、本件税理士法人にその会計仕訳の基礎となる本件M口座1の資料を令和3年3月期の各確定申告書の提出日までに渡さなかったとは認められないため、当然、故意に渡さなかったことも認めることができない。
(ロ) 本件N口座に係る資料の受渡し
 本件各入金額を売上げとする会計仕訳の基となる本件N口座に係る取引明細等の資料の受渡し状況についてみると、上記(2)のニの(ホ)のとおり、請求人は本件税理士法人に対し、本件N口座入金額に係る全ての取引明細の写しを令和3年9月○日に提出していた。
 したがって、本件代表者が、本件税理士法人にその会計仕訳の基礎となる本件N口座の資料を令和3年3月期及び令和4年3月期の各確定申告書の提出日までに渡さなかったとは認められないため、当然、故意に渡さなかったことも認めることができない。
(ハ) 本件M口座2に係る資料の受渡し
 本件M口座2については、確かに、上記(2)のニの(ヘ)及び同ホの(ロ)のとおり、令和3年3月期に係る確定申告書を提出した日である令和3年9月○日の後においても、請求人から本件税理士法人に本件合算表記資料が提出されていないと認められるかのような電子メール及び○○○○のやりとりも存在する。
 しかしながら、当該電子メールは、上記(2)のニの(ヘ)のとおり、令和3年3月期の請求人を担当したQ事務員ではなく、S事務員が作成したものであること、上記(2)のヘの(ロ)のCのとおり、本件税理士も、当審判所に対し、請求人から本件税理士法人に提出された書類について、Q事務員からの適切な引継ぎがなされていなかった可能性もある旨答述していることから、令和3年3月期に係る確定申告書を提出した日以前に本件合算表記資料が請求人から本件税理士法人に提出されていたものの、Q事務員の退職日である令和3年10月○日が迫っていたために、本件合算表記資料がS事務員に適切に引き継がれなかった可能性が否定できない。
 そして、請求人は、本件税理士法人に対し、上記(2)のニの(イ)及び(ロ)のとおり、本件M口座2について、本件合算表記資料以外の部分、すなわち令和3年3月○日までの部分が記載された通帳を提出していたと認められること、上記(イ)及び(ロ)のとおり、本件M口座1及び本件N口座については会計仕訳の基礎となる資料を令和3年3月期及び令和4年3月期の各確定申告書の提出日までに提出していたことが認められるから、本件合算表記資料のみ故意に提出しなかったとするのは不自然である。加えて、上記1の(3)のロの(ハ)のとおり、本件N口座入金額(別表3の順号28の利息を除く。)が請求人の古物等の売上げに係る入金であることに争いはなく、そうすると、本件代表者も本件N口座入金額が請求人に帰属する売上げであると当然に認識していたと認められるところ、上記(2)のハの(ロ)のとおり、本件N口座入金額のほぼ全額は、本件M口座2に振り込まれ、上記(2)のニの(ホ)のとおり、請求人が本件税理士法人に対し、本件N口座入金額に係る全ての取引明細の画像データを提出していたことも考慮すれば、請求人が故意に本件M口座2に振り込まれた売上げを除外しようとしていたと認めるのは困難であり、むしろ本件税理士法人に正確な売上げを報告しようとしていたと考えるのが自然である。
 以上のことから、令和3年3月期の確定申告書の提出後における上記(2)のニの(ヘ)及び同ホの(ロ)の電子メール及び○○○○のやりとりをもって、本件合算表記資料が、請求人から本件税理士法人に提出されていないとまで認定することはできないというべきであり、少なくとも、上記(2)のホのとおり、本件代表者が、本件税理士法人の求めに対し、その都度本件税理士法人への書類等の提出業務を担当していた本件弟に対してその会計仕訳の基礎となる資料や申告のための資料の準備を指示していること、上記(2)のヘの(ロ)のDのとおり、本件税理士も、当審判所に、本件弟から正しい売上げを計上できる資料の提供を受けていながら、担当者がその内容を申告に反映させていなかったことが原因である可能性がある旨答述していること、上記のとおり、請求人が、本件税理士法人に対し、本件合算表記資料以外の部分が記載された本件M口座2の通帳並びに本件M口座1及び本件N口座の資料を提出していたと認められることからすれば、原処分庁が主張する、本件代表者が、故意に、その会計仕訳の基礎となる本件合算表記資料を本件税理士法人に渡さなかった事実を認定できるまでの証拠は認められない。
(ニ) 小括
 上記(イ)及び(ロ)のほか、原処分庁提出証拠並びに当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件代表者が、故意に、本件各入金額に係る資料を本件税理士法人に渡さなかったとする原処分庁の主張を裏付ける証拠はない。
 以上のことから、本件代表者が、故意に、本件各入金額に係る資料を本件税理士法人に渡さなかったとは認められない。
ハ 原処分庁の主張について
(イ) 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)のとおり、本件代表者が本件各入金額について売上げの会計仕訳を入力しなかった旨主張し、また、上記3の「原処分庁」欄の(2)のイ及びロを根拠として、本件代表者が本件各入金額について売上げの会計仕訳を故意に入力しなかった旨主張する。
 しかしながら、上記3の「原処分庁」欄の(1)については、本件パソコンに本件各入金額についての売上げの会計仕訳を入力しなかった行為が、本件代表者によって行われたとまでは認められないことについては、上記イのとおりである上、上記3の「原処分庁」欄の(2)のロについても、本件代表者が本件各入金額についての売上げの会計仕訳を入力しなかったことを前提としているため、採用することはできない。また、上記3の「原処分庁」欄の(2)のイの申述、すなわち本件申述は、上記(3)のロの(ニ)のとおり、信用性が認められないといわざるを得ず、採用することができない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。
(ロ) 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)のハのとおり、本件代表者は、本件税理士法人に本件各M口座の通帳や本件N口座の取引明細を渡すことができたにもかかわらず渡さなかった旨主張するが、その主張の根拠が判然としない上、上記ロにおいて検討したとおり、本件M口座1及び本件N口座に係る資料が請求人から本件税理士法人に提出されていることは明らかであり、かつ、本件M口座2についても、少なくとも、本件代表者が、故意に、本件各入金額に係る資料を本件税理士法人に渡さなかったとは認められない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。
(ハ) 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)のニのとおり、本件代表者は、本件各確定申告書の提出前にその内容を確認していたところ、本件各M口座の通帳及び本件N口座の取引明細並びに本件代表者が入力していた会計仕訳データと本件各確定申告書を照合すれば本件各入金額が計上されていないことを容易に認識できるにもかかわらず、あえて照合しなかった、又は照合したが訂正しなかった旨主張する。
 この点、上記(2)のハの(ニ)のとおり、本件代表者が、本件各確定申告書の提出前に、本件各M口座の通帳、本件N口座の取引明細及び本件パソコンに入力された会計仕訳データと本件各確定申告書を照合していなかったことは認められる。
 しかしながら、上記(2)のホのとおり、本件代表者は、本件税理士法人からの資料の提出依頼に基づき、本件弟に当該依頼に対応するよう指示していることからすれば、本件代表者は、本件各入金額について確定申告書を作成するために必要な資料が提出済みであり、本件税理士法人において作成された本件各確定申告書には本件各入金額が売上げとして反映されているものと信頼し、その詳細を照合しようとしなかったとしても不自然とまではいえず、請求人が「隠蔽し、又は仮装し」たことを根拠付ける事情とまでは認められない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。
(ニ) 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)のホのとおり、本件代表者は、本件N口座入金額のほぼ全額を本件M口座2へ送金していたところ、本件M口座2の入金の相手勘定を現金又は仮受金とするなど、事実とは異なる内容で会計仕訳を入力したのであり、本件N口座入金額の存在を隠そうとした旨主張する。
 この点、上記(2)のハの(ロ)のとおり、本件N口座から本件M口座2に振り込まれた際の会計仕訳は、借方が普通預金勘定、貸方が現金勘定又は仮受金勘定となっていることは、原処分庁主張のとおりである。
 しかしながら、上記(2)のニの(ト)の電子メール及び上記(2)のヘの(イ)の信用できる本件税理士の答述により、本件各事業年度において、本件税理士法人のその当時の担当者が総勘定元帳の基となる会計仕訳を入力していたと認められることから、本件代表者が事実と異なる内容で仕訳入力したとまでは認定できず、結局、本件代表者が本件N口座入金額の存在を隠そうとしたとは認められない。
 したがって、原処分庁の主張には理由がない。
ニ 結論
 以上のことからすれば、原処分庁の主張はいずれも理由がなく、その他当審判所における調査及び審理の結果によっても、請求人に通則法第68条第1項又は第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められない。

(5) 原処分の適法性

イ 本件各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
(イ) 令和3年3月期の法人税
 上記(4)のニのとおり、請求人に、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。
 他方で、令和3年3月期の法人税については、通則法第65条第1項及び第2項所定の要件を充足するところ、令和3年3月期の法人税の修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、当該修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、請求人は令和3年3月期の法人税に係る過少申告加算税の額等につき、計算の基礎となる金額及び計算方法については争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、令和3年3月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙1「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
(ロ) 令和4年3月期の法人税
 上記(4)のニのとおり、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。
 他方で、令和4年3月期の法人税については、通則法第66条第1項及び第2項所定の要件を充足するところ、令和4年3月期の法人税の期限内申告書の提出がなかったことについて、同条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められず、また、修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第5項が準用する通則法第65条第4項第1号に規定する正当な理由があるとも認められない。そして、請求人は令和4年3月期の法人税に係る無申告加算税の額等につき、計算の基礎となる金額及び計算方法については争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、令和4年3月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分は、無申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ロ 本件各課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の各賦課決定処分
(イ) 令和3年3月課税事業年度の地方法人税
 上記(4)のニのとおり、請求人に、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。
 他方で、令和3年3月課税事業年度の地方法人税については、通則法第65条第1項及び第2項所定の要件を充足するところ、令和3年3月課税事業年度の地方法人税の修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、当該修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、請求人は令和3年3月課税事業年度の地方法人税に係る過少申告加算税の額等につき、計算の基礎となる金額及び計算方法については争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、令和3年3月課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙3「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
(ロ) 令和4年3月課税事業年度の地方法人税
 上記(4)のニのとおり、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
 他方で、令和4年3月課税事業年度の地方法人税については、通則法第66条第1項所定の要件を充足するところ、令和4年3月課税事業年度の地方法人税の期限内申告書の提出がなかったことについて、同項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められず、また、修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第5項が準用する通則法第65条第4項第1号に規定する正当な理由があるとも認められない。そして、請求人は令和4年3月課税事業年度の地方法人税に係る無申告加算税の額等につき、計算の基礎となる金額及び計算方法については争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、令和4年3月課税事業年度の地方法人税に係る重加算税の賦課決定処分は、無申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙4「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
ハ 本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分
(イ) 令和3年3月課税期間の消費税等
 上記(4)のニのとおり、請求人に、通則法第68条第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていない。
 他方で、令和3年3月課税期間の消費税等については、通則法第65条第1項及び第2項所定の要件を充足するところ、令和3年3月課税期間の消費税等の修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、当該修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第4項第1号に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、請求人は令和3年3月課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の額等につき、計算の基礎となる金額及び計算方法については争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、令和3年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、過少申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙5「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
(ロ) 令和4年3月課税期間の消費税等
 上記(4)のニのとおり、請求人に、通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められず、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
 他方で、令和4年3月課税期間の消費税等については、通則法第66条第1項及び第2項所定の要件を充足するところ、令和4年3月課税期間の消費税等の期限内申告書の提出がなかったことについて、同条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められず、また、修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第4項が準用する通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとも認められない。そして、請求人は令和4年3月課税期間の消費税等に係る無申告加算税の額等につき、計算の基礎となる金額及び計算方法については争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、令和4年3月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分は、無申告加算税相当額を超える部分の金額につき違法であり、別紙6「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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