(令和7年10月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、L社が納税者Kから債務免除を受けていたところ、その後、審査請求人(以下「請求人」という。)がL社を吸収合併したことにより納付義務を承継したとして、原処分庁が、当該納税者の死亡後に、請求人に対し、国税徴収法に基づく第二次納税義務の納付告知処分をしたのに対して、請求人が、当該債務免除により受けた利益が現に存する限度の額は零円であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

イ 国税徴収法(令和3年法律第11号による改正前のもの。以下「徴収法」という。)第32条《第二次納税義務の通則》第1項は、税務署長は、納税者の国税を第二次納税義務者から徴収しようとするときは、その者に対し、政令で定めるところにより、徴収しようとする金額、納付の期限その他必要な事項を記載した納付通知書により告知しなければならない旨規定している。
ロ 徴収法第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》は、滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の1年前の日以後に、滞納者がその財産につき行った政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分(以下、これらの処分を「無償譲渡等の処分」という。)に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免れた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う旨規定している。
ハ 国税徴収法基本通達(昭和41年8月22日付徴徴4−13ほか5課共同「国税徴収法基本通達の全文改正について」(法令解釈通達)による国税庁長官通達)第39条関係14《受けた利益が債務の免除である場合》(以下「本件通達」という。)は、無償譲渡等の処分により、滞納者から受けた利益が債務の免除である場合には、債務者の支払能力、弁済期等を考慮し、その債権を換価する場合と同様に、その債務が免除された時におけるその債権の価額を算定し、その額が受けた利益の額に当たるものとして、徴収法第39条に規定する「利益が現に存する限度」の額を定める旨定めている。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 当事者等について
(イ) 請求人について
 請求人は、土地及び建物の調査、鑑定等を目的として設立された法人であり、平成30年2月○日に、M社から現在の商号に変更した。
(ロ) L社について
A L社は、不動産賃貸等を目的として設立された法人である。
B L社は、平成30年4月○日、請求人に吸収合併され(以下「本件合併」という。)、解散した。
C 本件合併により、L社に課されるべき国税の納付義務は、国税通則法第6条《法人の合併による国税の納付義務の承継》の規定に基づき、請求人に承継された。
(ハ) 納税者Kについて
A 納税者K(以下「本件亡滞納者」という。)は、平成22年11月以降、平成30年4月にL社が解散するまでの間、継続して、L社の取締役であった。
B なお、本件亡滞納者は、L社の平成25年10月1日から平成26年9月30日までの事業年度(以下「平成26年9月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)において、L社の株主ではなかった。
(ニ) N社について
A N社は、ビル賃貸等を目的として設立された法人である。
B N社は、平成20年10月○日午後5時、P地方裁判所により、破産手続開始の決定がされた後、平成21年1月○日、費用不足による破産手続廃止の決定が確定した。
(ホ) Q社について
 Q社は、芝の販売等を目的として設立された法人である。
ロ L社らの債務関係について
(イ) L社は、別表1−1の番号1ないし3のとおり、平成10年10月から平成12年3月にかけて、原債権者であるR社及びS信用組合から合計2,062,000,000円を借り入れた。
 また、N社は、別表1−1の番号4のとおり、平成10年12月、R社から855,000,000円を借り入れた。
(ロ) T社(以下「本件債権者」という。)は、平成19年3月30日、別表1−1の番号1ないし3に係る各債権を譲り受け、そして、同日付で、別表1−2の番号1ないし3のとおり、債務者であるL社、連帯保証人である請求人及び本件亡滞納者などとの間で、要旨、次のとおりの債務の承認及び弁済に係る契約をそれぞれ締結した。
A L社は、本件債権者に対し、別表1−2の番号1ないし3の「元本」欄及び「未収損害金及び利息」欄記載の債務を負担していることを確認する。
B 別表1−2の番号1ないし3の「連帯保証人」欄記載の各連帯保証人は、本件債権者に対し、L社が本件債権者に対して負担する債務につき、連帯保証していることを確認する。
C L社は、本件債権者に対し、@平成19年4月から平成24年2月までの期間は各月末日に利息を支払い、A平成24年3月31日に元本全額、未収損害金全額及び利息を支払う。
(ハ) また、本件債権者は、平成19年3月30日、別表1−1の番号4に係る債権を譲り受け、そして、同日付で、別表1−2の番号4のとおり、債務者であるN社並びに連帯保証人であるL社及び本件亡滞納者との間で、要旨、次のとおりの債務の承認及び弁済に係る契約を締結した。
A N社は、本件債権者に対し、別表1−2の番号4の「元本」欄及び「未収損害金及び利息」欄記載の債務を負担していることを確認する。
B 別表1−2の番号4の「連帯保証人」欄記載の各連帯保証人は、本件債権者に対し、N社が本件債権者に対して負担する債務につき、連帯保証していることを確認する。
C N社は、本件債権者に対し、@平成19年4月から平成24年2月までの期間は各月末日に利息を支払い、A平成24年3月31日に元本全額、未収損害金全額及び利息を支払う。
(ニ) 本件債権者は、別表1−2の番号1及び4の債権につき、平成19年4月4日付で「平成19年3月30日債権譲渡」を原因として、本件亡滞納者が所有する別表2記載の土地(以下「本件土地」という。)及びL社が所有する別表3記載の土地及び建物(以下、併せて「本件ビル」という。)に対する根抵当権の移転登記を受けた。
(ホ) 本件債権者は、N社の破産を踏まえて、L社との間で、平成23年9月22日付で、L社が別表1−2の番号4に係る債務を重畳的に引き受ける旨の重畳的債務引受契約を締結した。
 その結果、L社は、別表1−2の番号1ないし4の各債務に係る元本並びに未収損害金及び利息(以下「本件債務」という。)の全てについて、主たる債務者として本件債権者に対して弁済を履行する責任を負うに至った。
ハ 本件債務の弁済状況等
(イ) L社は、本件債務の最終弁済期である平成24年3月31日までに、本件債権者に対して、本件債務を弁済しなかったことから、本件債権者は、P地方裁判所に対し、本件土地に係る不動産担保権の実行を申し立て、○年○月○日、本件土地に係る担保不動産競売手続(以下「本件競売」という。)が開始された。
(ロ) L社は、平成25年3月27日、本件ビルを1,870,000,000円で売却し、同日、売却代金のうち1,800,191,262円を本件債務の弁済に充てた。
(ハ) 本件土地は、○年○月○日、本件競売により売却された。
 そして、○年○月○日、本件競売による売却代金のうち○○○○円が本件債権者に配当され、その結果、本件亡滞納者は、L社に対して、同額の求償債権(以下「本件求償債権」という。)を取得した。
(ニ) 本件亡滞納者は、平成26年3月17日付の「債権放棄通知書」をもって、L社に対し、本件求償債権の額○○○○円から、その当時L社に対して負っていた借入金債務額○○○○円を控除した差額○○○○円を免除する旨の意思表示(以下「本件債務免除」という。)をした。
(ホ) このほか、請求人は、平成27年3月27日、U社からの借入れにより調達した資金等の中から318,521,406円を本件債務の弁済に充てた。
 その結果、請求人は、L社に対し、同額の求償債権を取得した。
(ヘ) 上記(ロ)、(ハ)及び(ホ)の各弁済等の結果、本件債務の残高は、別表1−3の「未収損害金及び利息」欄のとおり合計311,956,036円となった。
 そして、本件債権者は、平成27年3月27日、別表1−3の番号1ないし3に係る各債権を代金100,000円で、同表の番号4に係る債権を代金100,000円で、それぞれQ社に譲渡した(以下、これら譲渡を「本件債権譲渡」という。)。

(4) 審査請求に至る経緯

イ 本件亡滞納者は、別表4記載の国税(以下「本件滞納国税」という。)を滞納していたところ、令和3年9月○日に死亡した。
 本件亡滞納者については、相続人のあることが明らかでなかったことから、民法第951条《相続財産法人の成立》の規定により相続財産法人(以下「本件相続財産法人」という。)が成立し、本件滞納国税の納付義務は、国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》第1項の規定に基づき、本件相続財産法人に承継された。
ロ 原処分庁は、本件滞納国税を徴収するため、L社が本件亡滞納者から受けた本件債務免除が徴収法第39条に規定する「債務の免除」に該当するとして、令和6年2月20日付で、上記(3)のイの(ロ)のCのとおりL社に課されるべき国税の納付義務を承継した請求人に対し、徴収法第32条第1項の規定に基づき、納付すべき限度の額を○○○○円などとする納付通知書により告知した(以下、この納付通知書による告知を「本件納付告知処分」という。)。
ハ 本件相続財産法人には、令和6年2月20日時点において、本件滞納国税の全額を納付するに足りる財産はなかった。
ニ 請求人は、本件納付告知処分を不服として、令和6年5月15日に再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年9月25日付で棄却の再調査決定をした。
ホ 請求人は、再調査決定を経た後の本件納付告知処分に不服があるとして、令和6年10月21日に審査請求をした。

2 争点

 L社が、本件債務免除により受けた利益が現に存する限度の額はいくらか。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
L社が本件債務免除により受けた利益が現に存する限度の額は、以下の理由により○○○○円である。 L社が本件債務免除により受けた利益が現に存する限度の額は、以下の理由により零円である。
(1) 本件通達が定める債務が免除された時における債権の価額は、当該債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると認められるような特別な事情がない限り、その債権は回収可能性があるものとしてその額面で判断すべきである。
 そして、上記特別な事情には、債務者企業が債権放棄等の金融支援の要請を含む再生計画案を金融債権者に提案する場合に、経営者責任や衡平性の観点から、経営困難な状況に陥ったことに責任のある経営者が、債務者企業に対して有する求償権等の権利を行使せず放棄することが求められ、債権放棄がなされなければ、債務者企業が早晩支払不能となり、更生手続、再生手続、特別清算及び破産手続(以下、これらの法的な債務整理手続を「法的整理」という。)に移行せざるを得なかったといった事情が含まれる。
(1) 本件通達は、滞納者から受けた利益が債務の免除である場合、債務者の支払能力、弁済期等を考慮し、その債権を換価する場合と同様に、その債務が免除された時におけるその債権の価額を算定し、その額が受けた利益の額に当たる旨定めている。
(2) 本件では、本件債務免除時において、本件債権者が本件亡滞納者に対して本件求償債権を放棄するよう求めていた事情は存せず、また、L社が本件債権者に対して金融支援の要請を含む再生計画案を提案していた事情も存しないのであるから、L社には、本件債務免除がなされなければ、早晩支払不能となり、法的整理に移行せざるを得なかったといった事情は認められず、ほかに控除すべき価額もない。 (2) 本件では、@L社が本件ビルを売却して本件債務の弁済に充てたこと、AL社の取締役であった本件亡滞納者が本件競売による配当を本件債務の弁済に充てた上で、本件債務免除を行って一定の経営責任を果たしたこと、B請求人がU社からの借入金等を原資として約3億1,800万円を本件債務の弁済に充てたことを踏まえて、本件債権者は、Q社に対して本件債権譲渡を行い、未収損害金等の残額約3億1,000万円の回収を断念した。
 上記各経緯からすると、本件亡滞納者が本件債務免除をしなければ、本件債権者の協力が得られず、早晩法的整理に移行せざるを得なかったと認められる。また、仮に、本件亡滞納者が本件債務免除をせずに、L社から本件求償債権の回収を行おうとすれば、本件債権者がL社の破産申立等を行って当該回収を阻止したものと認められる。したがって、本件求償債権の価額は、L社が破産した場合に予想される回収額(清算価値)によって認定するしかない。
(3) したがって、L社が本件債務免除により受けた利益の額は、○○○○円となり、利益が現に存する限度の額も同額となる。 (3) L社は、平成25年当時、本件債権者に対して20億円を超える債務を負っており、債務超過に陥って自力による事業継続が困難な状況にあった。
 また、本件債務免除時におけるL社の資産・負債等の状況によれば、本件求償債権については、回収可能性がないことは明らかであり、本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると認められるような特別な事情が認められる。
(4) 以上によれば、L社が破産した場合に予想される回収額(清算価値)が零円を超えることはないことから、本件求償債権の価額も同様に、零円を超えるとは認められない。したがって、L社が本件債務免除により受けた利益の額は現に存しない。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

イ 本件通達は、無償譲渡等の処分により滞納者から受けた利益が債務の免除である場合には、債務者の支払能力、弁済期等を考慮し、その債権を換価する場合と同様に、その債務が免除された時におけるその債権の価額を算定し、その額が受けた利益の額に当たるものとして、当該利益が現に存する限度の額を定める旨定めているところ、本件通達に基づき算定される債権の価額は、公売財産の換価手続における基準価額、いわゆる客観的時価に相当する価額をいうものと解される。
ロ 徴収法第39条に規定する第二次納税義務は、本来の納税義務者である滞納者が、その者の国税の法定納期限の1年前の日以後に、その者の財産について無償譲渡等の処分を行ったことにより、その者の財産に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められることとなった場合に、無償譲渡等の処分により権利を取得し、又は義務を免れた第三者に対して、補充的に当該国税について履行責任を負わせることによって、当該国税の徴収確保を図ろうとする制度であることからすれば、債務の免除がされた時におけるその債権の客観的時価に相当する価額を、債務の免除により受けた利益の額とする本件通達の取扱いは、合理性があるから、当審判所においても相当と認められる。
ハ そして、金銭債権の実質的価値は、債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情に依拠するところが大きいことから、その評価に当たっては、当該事情を踏まえて算定するのが相当であるところ、債務者につき、@手形交換所における取引停止処分を受けたとき、A法的整理の開始決定がされたとき、B事業の廃止又は休業の事実が発生しているときその他その債権金額の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情が認められる場合には、当該特別な事情による減価を適切に見込んで評価すべきであり、そのような特別な事情が認められない場合には、額面上の金額で評価するのが相当である。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ L社の損益状況について
(イ) L社の平成24年9月期から平成29年9月期までの各事業年度における売上高及びその内訳、経常損益並びに当期純損益の金額は、それぞれ別表5−1記載のとおりである。
(ロ) L社は、別表5−1の「売上高合計」欄、「家賃収入」欄及び「管理費収入」欄の各記載のとおり、本件ビルを所有・賃貸していた平成24年9月期においては相当額の家賃収入及び管理費収入を得ていたところ、上記1の(3)のハの(ロ)のとおり、平成25年3月に本件ビルを売却したことから、平成25年9月期以降、家賃収入及び管理費収入が減少した。
(ハ) L社は、別表5−1の「業務委託収入」欄のとおり、平成27年9月期において業務委託収入として○○○○円を計上しているところ、当該収入は、本件ビルの売却に伴い、買主から依頼を受けた、本件ビルの入居者の退去に係る交渉業務の対価として計上されている。
(ニ) L社は、別表5−1の「売上高合計」欄のとおり、平成29年9月期における売上高が○○○○円であった。
(ホ) L社は、別表5−1の「経常損益」欄のとおり、平成25年9月期において、○○○○円の経常○○を計上しているところ、その主な要因は、上記1の(3)のロの(ホ)の債務引受に基づいて本件債権者に対する弁済を行ったことに関し、雑○○(○○○○円)を計上したことによるものと認められる。
(ヘ) L社は、別表5−1の「当期純損益」欄のとおり、平成26年9月期において、○○○○円の当期純○○を計上しているところ、その主な要因は、本件債務免除により、債務免除益(○○○○円)を計上したことによるものと認められる。
ロ L社の財務状況について
(イ) L社の平成24年9月期から平成29年9月期までの各事業年度における流動資産及び固定資産の期末残高、固定負債の期末残高並びに純資産の期末残高は、それぞれ別表5−2記載のとおりである。
(ロ) L社は、別表5−2の「純資産合計」欄のとおり、平成24年9月期から平成29年9月期まで、いずれも債務超過の状況にあった。
(ハ) L社は、別表5−2の「固定負債合計」欄のとおり、平成24年9月期から平成26年9月期までは固定負債の額を計上しており、そのほぼ全額が本件債権者に対する長期借入金であったが、平成27年3月以降は新たに金融機関から資金の借入れを行っておらず、平成27年9月期から平成29年9月期においては固定負債の額を計上していない。
(ニ) L社は、別表5−2の「流動資産合計」欄のとおり、平成26年9月期に流動資産の額として174,376,480円を計上しているところ、その主な内訳等は、要旨、以下のとおりである。
A 請求人に対する短期貸付金・未収入金 合計95,193,221円
B Q社に対する短期貸付金・未収入金 合計40,316,752円
C V社に対する短期貸付金・未収入金 合計27,402,911円
D Xに対する短期貸付金・未収入金 合計10,781,148円
E Yに対する短期貸付金・未収入金 合計636,033円
F なお、上記CないしEについては、平成26年9月期から平成29年9月期まで期末残高が同一である。
(ホ) L社は、別表5−2の「建物」欄及び「土地」欄のとおり、平成26年9月期において、建物の額として2,088,498円、土地の額として5,500,000円をそれぞれ計上しているところ、これらは区分所有建物に係るものであったが、当該区分所有建物については、平成27年11月1日に代物弁済を原因として、請求人に所有権移転登記がされている。
ハ L社の法的整理等について
 L社は、本件債務免除時において、法的整理は開始されておらず、また、事業の廃止又は休業の事実も発生していなかった。

(3) 当てはめ

イ L社は、上記(2)のハのとおり、本件債務免除時において、法的整理は開始されておらず、また、事業の廃止又は休業の事実も発生していなかったものの、@平成25年3月に本件ビルを売却したことにより家賃収入及び管理費収入が減少していること(上記(2)のイの(ロ))、A業務委託収入は平成27年9月期のみ計上されており、一時的な収入にとどまること(同(ハ))、B本件合併前の平成29年9月期においては売上高が○○○○円であったこと(同(ニ))が認められる。加えて、CL社が平成24年9月期から平成29年9月期までの各事業年度においていずれも債務超過の状況にあったこと(上記(2)のロの(ロ))、DL社が平成27年3月以降、新たに金融機関から資金の借入れを行っていないこと(同(ハ))も考慮すると、L社は、平成25年3月に本件ビルを売却して以降、経営状況が悪化し、本件債務免除が行われた平成26年9月期においては、新たに金融機関から資金を借り入れるなどして事業を継続することが極めて困難な状況にあったと認められる。
ロ 次に、L社の平成26年9月期の貸借対照表によれば、上記(2)のロの(ニ)のとおり、流動資産174,376,480円が計上されており、そのうち請求人に対する短期貸付金等95,193,221円、Q社に対する短期貸付金等40,316,752円がそれぞれ計上されている。
 しかしながら、上記1の(3)のハの(ホ)のとおり、@平成27年3月、請求人がU社からの借入金などを原資として本件債権者に318,521,406円を弁済し、そして、同(ヘ)のとおり、A本件債権譲渡がされているところ、本件債務の債務者であるL社及び別表1−3の番号1及び4の債務について連帯保証人となっていた本件亡滞納者は、上記@の請求人による弁済と上記Aの本件債権譲渡により、本件債権者から、債務者及び連帯保証人として責任を追及されることを免れるに至ったと認められる。
 この状況を踏まえると、L社及び本件亡滞納者は、本件債務の弁済を優先する必要があるものと考えていたと認められ、本件債務免除時において、L社の保有する資産(流動資産及び固定資産)を換価するなどした上で、本件債務の弁済を差し置いて、本件求償債権に対する弁済を行うことは、事実上不可能ないし著しく困難であったと認められる。
 なお、上記(2)のロの(ニ)のFのとおり、V社、X及びYに対する短期貸付金等は、平成26年9月期から平成29年9月期までの各事業年度において期末残高が同一であり、増減等の異動が認められないことからすると、L社の帳簿等には計上されているものの、その回収が著しく困難であったと認めるのが相当である。
ハ 小括
 以上のとおり、上記イ及びロの各事情が認められる本件については、本件債務免除時において、本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認めるのが相当である。そして、当該各事情の下におけるL社の支払能力等を考慮すると、本件債務免除時における本件求償債権の価額は、零円と評価するのが相当である。
 したがって、L社が本件債務免除によって受けた利益の額は現に存せず、零円であると認められる。

(4) 原処分庁の主張について

イ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、本件債務免除時において、本件債権者が本件亡滞納者に対して本件求償債権を放棄するよう求めていた事情は存せず、また、L社が本件債権者に対して金融支援の要請を含む再生計画案を提案していた事情も存せず、本件求償債権の回収について債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情はなかった旨主張する。
ロ しかしながら、上記(3)のハのとおり、本件債務免除時において、本件求償債権の全部又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるような特別な事情があったと認められることから、原処分庁の主張には理由がない。

(5) 本件納付告知処分の適法性について

以上のとおり、本件では、L社が本件亡滞納者から本件債務免除を受けた事実については認められるものの、上記(3)のハのとおり、L社が本件債務免除により受けた利益の額は現に存しないと認められることから、L社から納付義務を承継した請求人が第二次納税義務者として納付すべき限度の額が○○○○円であるとして行われた本件納付告知処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。

(6) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の全部を取り消すこととする。

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