ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.43 >> (平4.5.12、裁決事例集No.43 10頁)

(平4.5.12、裁決事例集No.43 10頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成元年4月12日に死亡した○○(以下「被相続人」という。)の共同相続人の一人であるが、その相続税について、課税価格を120,886,000円、納付すべき税額を18,003,900円と記載した相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を法定申告期限までに提出した。
 その後、請求人は、平成3年6月7日に、その相続税の課税価格を120,990,000円、納付すべき税額を18,433,100円と記載した修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出したところ、原処分庁は、同月26日付で過少申告加算税の額を21,000円とする賦課決定をした。
 請求人は、この処分を不服として、平成3年7月22日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月22日付で棄却の異議決定を行った。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分になお不服があるとして、平成3年11月21日に審査請求をした。

トップに戻る

2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 請求人は、本件申告書を提出するに当たって、3回ほどP税務署に赴き、同署の職員に申告の相談を行い、相談を担当した職員(以下「相談担当職員」という。)の指導に基づいて本件申告書を作成の上、原処分庁へ提出した。
ロ その後、原処分庁の調査を受けて、1相続開始日に払い出した預金が申告漏れであったこと及び2R市S町34番2及び同所34番3の農地の評価が誤っていたことを原因として、本件修正申告書を提出した。
ハ ところが、請求人は、原処分庁から過少申告加算税を賦課されたので、P税務署で加算税に関する説明を受けたところ、加算税は罰金のようなものであると言われた。
ニ 以上のとおり、請求人は、本件申告書を相談担当職員の指導に基づいて作成した上で提出したにもかかわらず、本件修正申告書を提出したことに対して、原処分庁が過少申告加算税の賦課決定を行ったことは、違法である。

トップに戻る

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法であり、請求人の主張は理由がない。
イ 本件修正申告書の内容は、次のとおりである。
(イ)請求人は、R市農業協同組合S支所の被相続人名義の定期預金2口2,195,587円を相続開始日の平成元年4月12日に解約し、葬式費用に充当したが、当該解約金を本件申告書に相続財産として申告していなかったため、現金として同解約額を加えた。
(ロ)請求人は、本件申告書において、田として申告していたR市S町34番2及び同所34番3の農地の現況が畑であったことから、畑としての評価額に修正した。
ロ 上記イの事実は、本件申告書の提出後に行った原処分庁の調査によって判明したものであり、相談担当職員は、上記イの事実を知らずに、本件申告書の作成に関する指導をしたものである。
ハ ところで、期限内申告書が提出された場合において、それに係る修正申告書の提出又は更正があったときは、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第1項の規定に基づき、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき通則法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項の規定により納付すべき税額に、100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課することとされている。
 ただし、通則法第65条第4項の規定では、修正申告又は更正に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、納付すべき税額から正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除することとされている。
ニ 本件修正申告書の提出により納付すべき税額の計算の基礎となった事実は、前記イのとおりであり、その計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合に該当しない。 したがって、通則法第65条第1項の規定に基づいて過少申告加算税を賦課したことは、適法である。

トップに戻る

3 判断

 本件修正申告書の提出により納付すべきこととなった税額に対し、通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税を賦課すべきか否かについて争いがあるので、以下検討する。

(1)次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。

イ 請求人は、本件申告書を提出するに当たり、相談担当職員に申告の相談を行い、その指導を受けて本件申告書を作成の上、提出したこと。
ロ 請求人は、原処分庁の調査を受けて、平成3年6月7日に、1相続開始日に払い出した預金が申告漏れであったこと及び2R市S町34番2及び同所34番3の農地の評価が誤っていたことを原因として、本件修正申告書を提出したこと。

(2)原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によると、上記(1)のロの1及び2の事実は、本件申告書を提出した時点では相談担当職員に明らかになっておらず、原処分庁の調査の結果明らかになったことが認められる。

(3)ところで、通則法第65条に規定する過少申告加算税は、申告納税方式による国税の徴収に関し、申告納税の秩序を維持し、納税の実を挙げることを目的とするものであって、当初から正当に申告納税した者とこれを怠った者との間に生ずる不公平を是正するために、適法な申告をしなかった納税者に対し一定率の税を課する趣旨のものである。
 したがって、過少申告加算税は、1通則法第65条第4項に規定する修正申告又は更正に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合及び2同条第5項に規定する修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより、当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときを除き、単に当初申告が過少であるという客観的事実のみによって課されるべき性質のものと解される。
(4)これを本件についてみると、前記(2)のとおり、本件修正申告書を提出する原因となった事実は、本件申告書を提出した時点では相談担当職員に明らかになっておらず、その後の原処分庁の調査によって明らかになったことから、請求人が相談担当職員の指導を受けて本件申告書を作成したものであるとしても、このことが通則法第65条第4項に規定する正当な理由に該当するとはいえない。このほか、同項に規定する正当な理由があったと認めるに足りる証拠はない。したがって、同項の規定の適用はない。
 また、前記(1)のロのとおり、請求人は、原処分庁の調査を受けて本件修正申告書を提出していることから、更正を予知せずに本件修正申告書を提出したものと認めることができない。したがって、通則法第65条第5項の規定の適用はない。
 そうすると、通則法第65条第4項及び同条第5項の各規定の適用はないから、本件修正申告書の提出により納付すべき税額に対し、同条第1項の規定により、過少申告加算税を課するのが相当である。
 したがって、原処分は適法であり、請求人の主張は理由がない。

(5)原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る