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(平5.7.9、裁決事例集No.46 87頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、収益事業として不動産貸付業を営む宗教法人であるが、昭和62年4月1日から昭和63年3月31日までの事業年度(以下「昭和63年3月期」という。)及び平成元年4月1日から平成2年3月31日までの事業年度(以下「平成2年3月期」といい、昭和63年3月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書にそれぞれ次表のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

(単位:円)
事業年度
項目
昭和63年3月期 平成2年3月期
所得金額 347,408,199 333,696,395
納付すべき税額 93,800,100 90,097,900

 

 

 また、請求人は、昭和63年3月期について、昭和63年10月21日に所得金額を404,052,816円、納付すべき税額を109,094,000円とする修正申告をした。
 原処分庁は、これに対し、昭和63年11月28日付で過少申告加算税の額を1,529,000円とする賦課決定処分をし、更に、平成3年5月27日付で、本件各事業年度について、次表のとおり法人税の各更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。

(単位:円)
区分
事業年度
項目
昭和63年3月期 平成2年3月期
更正処分 所得金額 583,588,218 333,992,365
納付すべき税額 157,568,800 90,177,900
賦課決定処分 過少申告加算税の額 2,368,000 8,000

 

 請求人は、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として、平成3年7月18日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月27日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 なお、原処分庁は、平成3年12月13日付で本件各事業年度について、次表の「更正処分」欄のとおり法人税の各再更正処分をし、また、平成2年3月期については、次表の「賦課決定処分」欄のとおり過少申告加算税の額を変更する賦課決定処分をしている。

(単位:円)
区分
事業年度
項目
昭和63年3月期 平成2年3月期
更正処分 所得金額 583,588,428 333,992,365
納付すべき税額 157,568,700 90,177,800
賦課決定処分 過少申告加算税の額 7,000

 

 請求人は、異議決定を経た後の原処分について不服があるとして、平成4年1月22日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
 原処分庁は、請求人が所有するP市R町1丁目2729番3所在の土地の一部361.61平方メートル(以下「本件土地」という。)に賃借権(以下「本件借地権」という。)を有していたA及びB(以下、両名を併せて「旧借地権者」という。)が本件借地権をC住宅株式会社(以下「新借地権者」という。)に譲渡したことに伴い、請求人が旧借地権者及び新借地権者からそれぞれ収受した名義書換承諾料(以下「本件名義書換承諾料」という。)及び堅牢建物建設承諾料(以下「本件堅牢建物建設承諾料」といい、本件名義書換承諾料と併せて「本件名義書換承諾料等」という。)並びに新借地権者から収受した地代(以下「本件地代」という。)を法人税法第2条《定義》第13号に規定する収益事業(以下「収益事業」という。)に係る収入であると認定し、本件更正処分をした。
 しかしながら、次に述べるとおり本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入は、収益事業以外の事業(以下「非収益事業」という。)に係る収入に該当するものである。
(イ)収益事業の判定
 原処分庁は、新借地権者が請求人と土地賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した時は本件土地をオフィスビルの敷地として、その後は立体駐車場の敷地として事業の用に供する目的で賃借しているものと認められることから、本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入は、非収益事業とされる法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項第5号へに規定する「主として住宅の用に供される土地の貸付業」から生じた収入に該当せず収益事業から生じた収入に該当するとして本件更正処分をした。
 しかしながら、本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入が非収益事業から生じたものか否かについては、次のとおりその取引をした時か、少なくとも申告をする時までの客観的な事実により判断すべきである。
A 本件土地は、借地人が旧借地権者であるときは居住の用に供された家屋(以下「本件家屋」という。)の敷地として使用され、また、新借地権者であるときは昭和62年9月7日の本件賃貸借契約の締結時から平成2年11月の本件家屋の取壊し日までの3年2か月の間、原状を変更することなく居住の用に供される家屋の敷地として使用されてきたもので、オフィスビルの敷地として使用されたものではなかった。
B 法人税法施行令第5条第1項第5号へに規定する住宅とは、居住の有無ではなく、その用途により判断すべきであるから、本件家屋が旧借地権者から新借地権者に明け渡されてから取り壊されるまでの間使用されなかったとしても、本件家屋は、登記簿謄本でもその「種類」欄に居宅と表示されているとおり居住用家屋であることに変わりなく、その敷地である本件土地は、法人税法施行令第5条第1項第5号へに規定する主として住宅の用に供される土地に該当する。
C 請求人は、新借地権者から受領している本件地代についても、その額を旧借地権者と同様に法人税法施行規則第4条の2《不動産貸付業で収益事業に該当しないものの要件》に規定する収益事業に該当しないものの要件である本件土地に課されている固定資産税及び都市計画税の合計額の3倍以下の額としている。
D 本件土地の貸付けは、新借地権者の建築計画では1階及び2階を店舗又は事務所の用とし、3階から6階までを居住の用とする賃貸用ビルの建設のためであるから、昭和56年11月20日付直法2ー16国税庁長官通達(以下「法人税基本通達」という。)15ー1ー20《非課税とされる住宅用地の貸付け》に定める非課税とされる住宅用地の面積要件も充足している。
E 本件賃貸借契約の締結時における新借地権者の建築計画では非課税とされる住宅用地の面積要件を充足した賃貸用ビル(店舗、事務所及び居住の用の建物)の建設となっており、本件土地の立体駐車場としての使用については、平成2年11月に至りP警察署長、P市長及び近隣等の要請とそれに基づく新借地権者の利用計画の変更の提示により、平成3年3月13日に承諾したもので、本件賃貸借契約の締結時当初からのものではないことから、原処分庁は事実を誤認している。
(ロ)租税法律主義
A 請求人は、新借地権者が建設する賃貸ビルの居住用部分の面積について、昭和63年8月ころ及び平成3年4月ころの調査時の調査担当職員並びに異議申立て時の異議審理担当職員に対し、「新借地権者から提示された賃貸ビル建設の計画は、口頭によるものであるが1階及び2階を店舗又は事務所の用とし、3階ないし6階を居住の用とするものである」旨説明し、更に調査担当職員の質問に書面で答えるために新借地権者からの申述書を提出して当該面積の判断根拠を示している。
 しかしながら、1回目の調査担当職員がこの点に触れながらも、その段階で更正処分をしなかったことは、計画の住宅部分の面積が2分の1以上であることを承知していたからであるといえる。
B また、請求人が賃貸しているのは土地であり家屋ではないので、家屋の所有者でも管理責任者でもない請求人には居住者については知り得ないのだから、その家屋が空き家になったか否かでその都度収益事業か否かを区分することまで税法は要求していないし、そのような規定もない。
C 平成2年11月に本件家屋が取り壊されたことにより、本件土地の利用状況が収益事業に該当することとなったのであり、本件地代及びその付随収入である本件名義書換承諾料等の各収入について、本件家屋の取壊しを4年前の本件賃貸借契約と結びつけて課税することは租税法律主義に反する。
ロ 本件賦課決定処分について
 以上のとおり、本件更正処分は違法であるから、これに伴い本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 本件更正処分について
(イ)収益事業の判定
A 本件土地の貸付けに係る本件名義書換料等及び本件地代の各収入は、次の事実からいずれも収益事業に係る収入である。
(A)本件家屋は、旧借地権者が昭和62年8月28日に明け渡してから、新借地権者が平成2年11月10日に取り壊すまでの間空き家となって使用されなかったこと。
(B)昭和62年4月13日付借地権譲渡承諾願書及び昭和62年4月27日付承諾書によれば、請求人は、新借地権者が居住の用に供されていた本件家屋を取り壊し、賃貸用ビルを建設することを承認していること。
(C)本件土地に建設が予定されていた賃貸用ビルについては、請求人及び新借地権者との間で全体の具体的な計画はもとより居住用部分の規模についても明確な取決めはなく、また、請求人からは当該賃貸用ビルの床面積の2分の1以上が居住の用に供される旨の証拠の提示もないこと。
(D)新借地権者の専務取締役であるDは、原処分に係る調査担当職員に対して次のとおり申述していること。
a 本件土地にオフィスビルを建設するという条件で請求人と交渉し、本件賃貸借契約を締結した。
b 本件土地の利用方法については、当初、1階及び2階は店舗の用、3階から5階までは事務所の用としてテナントビルを建設する予定であったが、必ずしも確定的なものではなくマンション建設の可能性も皆無ではなかったので、本件契約では使用目的を賃貸用ビル(店舗、事務所及び居住の用)の敷地とした。
c 昭和62年頃、地価が下落し始めたため採算の悪いテナントビルの建設を取り止め、駐車場の建設を検討したが、道路幅の関係で建築許可が下りないことが判明したため、あらゆる種類の建物の建設を見合わせていた。
B 本件家屋が居住の用に供されているか否かの判断に当たっては、その外形又は旧借地権者のその利用状況によるのではなく、新借地権者において現実に居住の用に供し、あるいは供しようとしているか否かによるべきである。
C 以上により、本件土地は住宅の用に供される土地とは認められないことから、本件土地に係る本件地代及びその付随収入である本件名義書換料等の各収入は、法人税法施行令第5条第1項第5号へに規定する非収益事業に係る収入には該当せず、収益事業に係る収入として計上すべきものであり、請求人の主張は独自の見解によるもので認めることはできない。
 また、本件賃貸借契約を締結した時において、本件土地が現に住宅の用に使用されている事実があるかどうか、また、仮に本件土地が現に住宅の用に使用している事実がないとしても、本件賃貸借契約を締結した時における客観的な証拠資料に基づき、本件土地が住宅の用に供されることが確実であるか否かにより判断するのが相当である。
(ロ)租税法律主義
 本件土地は、前記(イ)で述べた理由により居住の用に供される家屋の敷地には該当しないことから、本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入は収益事業に係る収入として判断したもので、平成2年11月に本件家屋が取り壊され、その後立体駐車場が建設されたことから、本件土地がその敷地になったことをもって4年前にさかのぼって本件事業年度の収益事業に係る収入と判断したものではない。
ロ 本件賦課決定処分について
 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、かつ、請求人には国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、同条第1項の規定を適用して過少申告加算税の賦課決定処分をしたものである。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入が非収益事業に係る収入に該当するか否か並びに本件更正処分が租税法律主義に反する違法なものであるか否かにあるので、以下審理する。

(1) 本件更正処分について

イ 収益事業の判定
(イ)次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
A 昭和62年4月13日に旧借地権者及び新借地権者は、請求人に対し、本件借地権の譲渡の承諾を願い出たところ、同年4月27日に請求人は、新旧借地権者間における本件借地権の売買を承諾したこと。
B 昭和62年4月27日に旧借地権者は、新借地権者に対し本件借地権及び本件家屋を売買価格875,040,000円で売買する不動産売買契約を締結したこと。
C 昭和62年9月5日に請求人は、旧借地権者から本件名義書換承諾料として131,260,000円を受領し、昭和63年3月期において非収益事業に係る収入として計上したこと。
D 昭和62年9月7日に請求人は、新借地権者と本件土地の用途を賃貸ビル(店舗、事務所及び居住の用の堅牢建物)の敷地として使用することに限る本件賃貸借契約を締結し、新借地権者から本件堅牢建物建設承諾料として125,060,000円を受領し、昭和63年3月期において非収益事業に係る収入として計上したこと。
E 本件各事業年度に係る本件土地の貸付けの対価の合計額は、低廉(当該事業年度の貸付期間に係る貸付けの対価の合計額がその貸付けに係る土地に課される固定資産税額及び都市計画税額の合計額の3倍以下であることをいう。以下同じ。)であったこと及び本件土地の面積が本件家屋の床面積の10倍以下であったこと。
F 請求人は、新借地権者から本件地代として昭和63年3月期において421,332円及び平成2年3月期において1,026,420円をそれぞれ受領し、非収益事業に係る収入として計上したこと。
 なお、請求人は、本件家屋の取壊し日以後に係る本件地代については、収益事業に係る収入として計上している。
(ロ)当審判所の調査によれば、次のとおりである。
A 平成4年5月20日付の閉鎖登記簿謄本の写しによれば、本件家屋は、木造スレート瓦亜鉛メッキ鋼板葺2階建の居宅(床面積1階126.65平方メートル及び2階80.33平方メートル)であり、平成2年11月10日に取り壊されたことが認められる。
B 昭和62年4月13日付借地権譲渡承諾願書によれば、新借地権者は、当初、本件土地を賃貸用ビル(店舗・事務所・居住用建物)の敷地として使用する予定であったこと及びその賃貸用ビルの建設については未定であったことが認められる。
C 原処分関係資料によれば、新借地権者は、本件土地の用途として、マンション、ビジネスビル(店舗及び事務所の用)並びにファッションビル(店舗の用)等の敷地に使用することなどを検討したところ、いずれも実現しなかったが、平成3年ころから駐車場の用として使用することを決め、平成3年8月1日にパーキングタワーの建設工事をE株式会社に発注したことが認められる。
D 平成3年3月13日に請求人は、新借地権者に対し本件土地の用途として駐車場の用を追加することに何ら異議を申し立てることなく、これを承諾し、その際、追加に伴う変更料を何ら求めていないことが認められる。
E 新借地権者の常務取締役であるFの答述によれば、新借地権者は、本件賃貸借契約の締結日から本件家屋の取壊し日までの間、本件家屋を居住の用として使用したことがないこと及び本件家屋を貸し出すために入居者の募集等をしたことがないことが認められる。
(ハ)ところで、法人税法では、宗教法人を含む公益法人等に対する法人税の課税について、法人税法第7条《内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税》において、収益事業から生じた所得以外の所得については法人税を課さないこととするとともに、公益法人が行う不動産貸付業にあっては、法人税法第2条第13号及び法人税法施行令第5条第1項第5号への規定により、主として住宅の用に供せられる土地の貸付業で、その貸付けの対価の額が低廉であることその他一定の要件を満たすものについては、収益事業課税の対象となる不動産貸付業から除外することとされている。
 これを本件についてみると、旧借地権者に対する土地の貸付けにあってはいずれも上記の要件を満たしており非収益事業と認められ、このことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いのないところである。
(ニ)つぎに、法人税基本通達15ー2ー11《借地権利金等》によれば、1土地又は建物の貸付けに際して収受する権利金その他の一時金(以下「権利金等」という。)の額で土地の譲渡による収益の額に該当しないものの額及び2土地又は建物の貸付けに係る契約の更新又は更改に際して収受する更新料又は更改料(以下「更新料等」という。)の額は、不動産の貸付けに係る収益の額とすると取り扱われているところ、当審判所においてもその取扱いは相当と認められる。
 そして、借地権の譲渡に伴って底地権者がその譲渡の承諾のため受け取る名義書替承諾料は、上記の権利金等あるいは更新料等に相当するものであり、その額は不動産の貸付けに係る収益の額と認められる。
(ホ)借地権を譲渡する場合には、民法第612条の規定によれば、賃借人は賃貸人すなわち底地権者の承諾を得ることが必要とされており、譲渡について承諾がなされた場合には、賃借人の契約上の地位は一体をなして譲受人すなわち新賃借人に移転すると解されている。
 この場合、借地権の譲渡に伴い授受される名義書換承諾料は、これを経済的効果から見るといわゆる権利金等及び更新料等と性質を同じくするものであって、新賃借人がその土地を将来に向かって賃借することの対価として賃貸人に対して支払うものと解するのが相当であるから、それが収益事業に係る収入であるか否かは、1本件賃貸借契約の実質的な内容、すなわち、本件賃貸借契約において、本件土地の使用が主として住宅の用に限定されていたか否か、2本件名義書換承諾料等の性質及び3新賃借人の土地の使用状況によって総合的に判断するのが相当と認められる。
(ヘ)これを本件についてみると、請求人は、1本件土地が居住の用に供されてきた本件家屋の敷地として使用されている限り、その居住の有無に関係なくその用途により判断すべきであり、たとえ本件家屋が新借地権者に明け渡されてから空き家であったとしても、本件土地は、主として住宅の用に供される土地に該当すること及び2本件賃貸借契約締結時には、新借地権者は本件土地を賃貸用ビルの敷地として主たる住宅の用に使用することとなっていたが、平成2年11月に至って立体駐車場として使用することに変更したもので、原処分庁がその事実を誤認したことから本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入は非収益事業に係る収入である旨主張するが、前記(ロ)のB、C及びEの事実によれば、1本件賃貸借契約において、新借地権者及び請求人が本件土地の使用を主として住宅の用に限定していたとは認められず、また、2新借地権者は、本件家屋については、それを取り壊して新たに賃貸ビルを建築する予定であり、実際、本件家屋を取り壊すまでの期間それを居住用として使用しなかったことが認められることから、新借地権者が本件土地を主として住宅の用に限定して使用しようとしていたとは到底認められない。
 更に、前記(ロ)のDの事実によれば、請求人が本件土地の用途の追加を承諾するに際し、何ら異議を申し立てず、追加に対する変更料を求めていないことから、本件賃貸借契約における本件土地の用途については、当初から何ら制限が付されていなかったとするのが相当である。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ト)以下の結果、本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入は、収益事業に係る収入であるとするのが相当であり、本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入は、収益事業に係る収入であるとしてした本件更正処分は適法である。
ロ 租税法律主義
(イ)当審判所が、原処分庁の請求人に対する過去の税務調査の状況に関して、原処分関係資料を調査したところは、次のとおりである。
A 調査担当職員は、昭和63年8月ころ請求人に対して行った税務調査において、請求人から本件名義書換承諾料等についての事情を聴取したことは伺えるものの、本件名義書換承諾料等が収益事業に係る収入に当たるか否かについて確認はしていないし、本件名義書換承諾料等に関し非収益事業に係る収入であるとした請求人の申告について格別の処理もしていないこと。
B 請求人は、昭和63年8月ころに実施された税務調査の対象とされた事業年度である昭和63年3月期の法人税の確定申告書に本件名義書換承諾料等に関する明細書を添付し、本件名義書換承諾料等を非収益事業に係る収入とした事績を明らかにしていること。
(ロ)ところで、租税法関係の分野においては、憲法第84条《課税》の規定により租税を課したり、変更する場合は法律又は法律の定める条件によることを必要とするという租税法律主義の原則が貫かれるべきものであり、これに反することは許されないものと解される。
(ハ)これを本件についてみると、請求人は、1原処分庁の請求人に対する過去の税務調査において、調査担当職員が、本件名義書換承諾料等を非収益事業に係る収入としていた請求人の申告に対して更正処分をしなかったのは、計画の住宅部分の面積が2分の1以上であることを承知していたからである旨及び2本件家屋が空き家になったか否かで収益事業か否かを区分することは税法上要求もないし規定もない旨主張するが、請求人の主張する事情のうち、更正処分をしなかった事実については、前記(イ)のとおり認められるものの、更正処分をしなかったからといって、原処分庁が本件名義書換承諾料等及び本件地代の各収入を非収益事業に係る収入として是認したものとは認められないし、また、確定申告は納税者が自己の判断と責任において収益事業か否かの区分を判断して行うものであって、請求人側にも注意義務が存したのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、原処分庁が本件家屋の取壊しを4年前の本件賃貸借契約と結び付けて課税することは租税法律主義に反する旨主張するが、前記イの(ヘ)のとおり、当審判所の調査によっても、請求人が主張するような理由で本件更正処分をしたものでないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ニ)以上の結果、本件更正処分が租税法律主義に反したものとは認められない。

(2) 本件賦課決定処分について

 以上のとおり、本件更正処分は適法であり、また、請求人には、確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の基礎とした税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づきした本件賦課決定処分は適法である。

(3) その他

 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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