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(平5.12.27、裁決事例集No.46 98頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、主として残土の収集及び運搬を業とする同族会社であるが、昭和62年5月1日から昭和63年4月30日までの事業年度(以下「昭和63年4月期」という。)、昭和63年5月1日から平成元年4月30日までの事業年度(以下「平成元年4月期」という。)及び平成元年5月1日から平成2年4月30日までの事業年度(以下「平成2年4月期」といい、これらの事業年度を併せて、以下「本件各事業年度」という。)の法人税の青色の確定申告書に次表のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告した。

(単位:円)
事業年度
項目
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
所得金額 6,849,563 7,662,792 20,992,976
納付すべき税額 1,934,700 2,178,600 7,491,900

 

 その後、請求人は、昭和63年4月期について、昭和63年12月23日に所得金額を16,460,202円、納付すべき税額を5,792,000円と記載した修正申告書を提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成元年1月31日付で過少申告加算税の額を480,500円とする賦課決定処分をした。
 その後、原処分庁は、平成3年1月31日付で本件各事業年度について、次表のとおり更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。

(単位:円)
区分
事業年度
項目
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
更正処分 所得金額 24,720,202 24,255,172 55,741,164
課税留保金額 515,000
納付すべき税額 9,248,200 9,053,400 21,443,000
賦課決定処分 重加算税の額 1,207,500 2,404,500 854,000
過少申告加算税の額 1,350,500

(注)「納付すべき税額」欄は、100円未満の端数を切り捨てた後の額である。

 

 請求人は、原処分に対し不服があるとして、平成3年3月27日に審査請求をした。
 その後、原処分庁は、平成3年6月18日付で平成元年4月期について、所得金額を22,602,992円及び納付すべき税額を8,361,100円とする更正処分並びに重加算税の額を2,163,000円に変更する賦課決定処分をした。
 なお、大蔵省組織規程の一部を改正する省令(平成4年6月19日大蔵省令第○○号)の規定により、平成4年7月10日以後、P税務署長が請求人の納税地を管轄することとなったので、原処分庁は、R税務署長からP税務署長となった。

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2 主張

(1) 請求人の主張

原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)売上金額
 原処分庁が請求人の売上金額と認定した金額のうち、その一部については、次のとおり、請求人の売上金額ではない。
A 次表の入金額は、いずれも請求人の代表取締役であるA(以下「A」という。)がB株式会社(平成元年5月31日に○○株式会社と商号変更している。以下「B社」という。)及び有限会社C(以下「C社」という。)に対して個人的に融資した貸付金の返済を手形等で受けたものである。

(単位:円)
入金年月日 貸付先名 入金額 決済方法
昭和62年12月14日 B社 5,000,000 約束手形
昭和63年3月10日 B社 2,500,000 約束手形
昭和63年6月13日 B社 2,000,000 約束手形
昭和63年8月12日 B社 2,000,000 約束手形
平成元年9月5日 C社 2,100,000 小切手

 

B 請求人が請求人の残土処理の事業のため、その捨場として昭和62年12月ころDからS市T町15号所在の土地(以下「15号捨場」という。)を取得し、その捨場を事業の用に供していたところ、15号捨場にEが請求人の許可を受けず残土を投棄し始めた。
 このため、請求人は、Eと協議し、昭和63年春ころEが引き続きトラック2,000台分くらいの残土を投棄することを認め、その後残土の投棄を中止することで合意し、Eとの合意事項の実行を確認するため、Eが受領すべき捨場代金をA個人の預金口座にいったん入金させることとした。
 したがって、次表のF株式会社(以下「F社」という。)、株式会社G(以下「G社」という。)、有限会社H(以下「H社」という。)及び有限会社I(平成2年5月14日に有限会社××に商号変更している。以下「I社」という。)からの入金額は、請求人がEのために代理受領したものであり、その全額をEに支払っていることから、Eの収益となるものである。

(単位:円)
入金年月日 相手先名 入金額 決済方法
昭和63年6月7日 F社 234,000 現金
昭和63年6月8日 F社 138,000 現金
昭和63年6月8日 F社 200,000 小切手
昭和63年6月17日 F社 130,000 現金
昭和63年9月24日 G社 2,200,000 小切手
昭和63年12月23日 H社 3,000,000 小切手
昭和63年12月25日 H社 3,000,000 小切手
平成元年1月12日 H社 1,500,000 小切手
平成元年5月15日 750,000 現金
平成元年5月15日 750,000 小切手
平成元年6月5日 720,000 小切手
平成元年5月22日 I社 669,500 小切手
平成元年5月22日 I社 1,339,000 小切手

 

 (ロ)債権償却特別勘定繰入額
 原処分庁は、平成2年4月期に請求人が債権償却特別勘定の対象とした債権のうち、請求人の債権とならないと認定した次表の有限会社K(以下「K社」という。)及び有限会社L(以下「L社」という。)から受け取った手形等(以下「本件受取手形等」という。)に係る債権償却特別勘定繰入額(以下「本件債権償却特別勘定繰入額」という。)26,500,000円を損金の額に算入できないとしているが、次のとおり、本件受取手形等は、請求人に帰属するものであるから、本件債権償却特別勘定繰入額を損金の額に算入すべきである。

(単位:円)
債権の種類 振出人 額面金額
手形 K社 40,000,000
小切手 K社 7,000,000
小切手 L社 6,000,000
合計 53,000,000

 

A 請求人は、昭和63年春ころMからU市V町563番地外所在の土地(以下「本件捨場」という。)に残土を捨てる権利の売買の話が請求人に持ち込まれたことから、請求人が行っている残土処理の捨場確保のため、これを購入することとし、その交渉等にNが関わっていた。
 そして、請求人は、Nに要求されるまま数回にわたり、その代金として67,000,000円を前払したが、その資金はAが提供したものである。
 その後、請求人は本件捨場を購入できず、請求人が支払った金銭の返済として53,000,000円相当の本件受取手形等を受領したが、本件捨場を購入する際、立て替えてもらった資金をAへ返済するため、請求人は、請求人とAとの信頼関係から、裏書をせずに、その本件受取手形等をAに渡したものである。
 請求人は、本件捨場を取得すれば、Aが立て替えた前払金相当額67,000,000円をAからの借入金として処理する予定であり、この方法は、従来から請求人が行っている方法である。
B また、Aは、残土処理に関する事業を行っていないこと及び請求人が行っている残土処理の捨場を確保するため、本件捨場の権利を取得するようNと交渉していたことから、その取引に関する収支も当然に請求人に帰属するものである。
 仮に原処分庁が主張するように、K社及びL社の実体がなく、本件受取手形等の裏書をしたのがA個人であったとしても、請求人がNと実際に取引を行ったものであり、請求人の債権となるべきものである。
C 以上のとおり、本件受取手形等は、実質的に請求人の債権となるべきものであり、法人税基本通達(以下「基本通達」という。)9ー6ー5《形式基準による債権償却特別勘定の設定》の形式要件を満たしているから、本件債権償却特別勘定繰入額を平成2年4月期の損金の額に算入すべきである。
(ハ)その他
A 前記(イ)及び(ロ)に関連して更正処分の対象となった平成2年4月期の貸倒引当金の損金算入額及び法人税法第67条《同族会社の特別税率》に規定する課税留保金額並びに平成元年4月期及び平成2年4月期の事業税の額については、仮に前記(イ)及び(ロ)が適法とされた場合には争わない。
B 更正処分の対象となった平成2年4月30日現在のO株式会社(以下「O社」という。)に対する売掛金2,660,833円は、貸倒引当金の損金算入限度額の計算に当たって、平成2年4月期の期末の貸金等の額に含めるべきである。
C 原処分庁が更正処分の対象とした前記(イ)及び(ロ)並びに前記A及びB以外の事項については争わない。
ロ 本件賦課決定処分について
(イ)重加算税の額
 原処分庁は、本件各事業年度の売上計上漏れ(平成2年4月期のO社に対する売上計上漏れ2,660,833円は除く。以下同じ。)について、請求人が意図的に仮装、隠ぺいを行ったと認定しているが、単に、経理ミスであり、請求人には仮装、隠ぺいを意図的に行ったという事実はないから、本件各事業年度の売上計上漏れに係る重加算税の賦課決定処分の一部を取り消すべきである。
(ロ)過少申告加算税の額
 前記イのとおり、平成2年4月期の更正処分は違法であり、その一部を取り消すべきであるから、これに伴い同年4月期の過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 本件更正処分について
(イ)売上金額
A 原処分庁の調査によると、次の事実が認められた。
(A)a信用金庫△△支店のA名義普通預金口座(口座番号321728。以下「a信金A名義預金口座」という。)、b信用金庫□□支店のA名義普通預金口座(口座番号160976。以下「b信金A名義預金口座」という。)、c銀行△△支店のA名義普通預金口座(口座番号330887。以下「c信金A名義預金口座」という。)及び同支店のQ名義普通預金口座(口座番号484933。以下「c銀行Q名義預金口座」といい、これら普通預金を併せて「本件各普通預金口座」という。)を調査したところ、次表のとおり、有限会社W(以下「W社」という。)、B社、F社、有限会社X(以下「X社」という。)、G社、H社、J、I社及びC社から約束手形等の入金が認められたこと。

(単位:円)
入金年月日 相手先名 入金額 決済方法 預金口座名
昭和62年5月6日 W社 760,000 小切手 a信金A名義預金口座
昭和62年12月14日 B社 5,000,000 約束手形 同上
昭和63年3月10日 B社 2,500,000 約束手形 同上
昭和63年6月8日 F社 200,000 小切手 同上
昭和63年6月13日 B社 2,000,000 約束手形 同上
昭和63年6月30日 X社 312,000 小切手 c銀行Q名義預金口座
昭和63年7月12日 X社 728,000 小切手 同上
昭和63年7月12日 X社 546,000 小切手 同上
昭和63年8月12日 B社 2,000,000 約束手形 a信金A名義預金口座
昭和63年9月24日 G社 2,200,000 小切手 c銀行A名義預金口座
昭和63年12月23日 H社 3,000,000 小切手 b信金A名義預金口座
昭和63年12月25日 H社 3,000,000 小切手 同上
平成元年1月12日 H社 1,500,000 小切手 同上
平成元年5月15日 750,000 小切手 同上
平成元年5月22日 I社 669,500 小切手 同上
平成元年5月22日 I社 1,339,000 小切手 同上
平成元年6月5日 720,000 小切手 同上
平成元年9月5日 C社 2,100,000 小切手 同上

 

(B)W社、I社、J、H社及びF社を調査したところ、前記(A)のとおり、本件各預金口座に入金された小切手及び次表に記載した現金は、請求人の売上げに係る入金額であると認められる。

(単位:円)
入金年月日 相手先名 入金額
昭和63年6月7日 F社 234,000
昭和63年6月8日 F社 138,000
昭和63年6月17日 F社 130,000
平成元年5月15日 750,000

 

(C)Aは、本件各事業年度において請求人の取締役となっているが、実質的には請求人の代表者であったと認められ、また、Qは、専務取締役の肩書を使用しているが、請求人の従業員であり、両人とも個人として事業を行っていた事実は認められず、更に、前記(A)に記載した本件各普通預金口座は請求人の預金とは認められないから、これらの口座に入金されている前記(A)の約束手形及び小切手は、請求人が売上げを除外した金員であると認められる。
 なお、Aは、平成2年6月25日に請求人の代表取締役に就任している。
(D)原処分に係る調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)が請求人に対し前記(A)のとおり本件各普通預金口座に入金された約束手形及び小切手の入金理由について質問したが、請求人は、回答を拒否し、何らの説明もしなかった。
(E)O社に対する平成2年4月11日から同月30日までの請求金額2,660,833円は、請求人に係る売上金額とすべきものである。
B 以上のことから、前記Aの(A)のとおり、本件普通預金口座に入金された約束手形及び小切手並びにF社及びJを調査したところにより確認された現金による入金額は、請求人が当該売上げに係る入金額を元帳に計上せず、本件各事業年度の売上金額から除外したものであると認められ、また、前記Aの(E)の請求金額は、平成2年4月期の売上金額と認められる。
C したがって、次表の金額を売上計上漏れとして本件各事業年度の益金の額に算入したものである。

(単位:円)
事業年度
取引先名
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
W社 760,000
B社 7,500,000 4,000,000
F社 702,000
X社 1,586,000
G社 2,200,000
H社 7,500,000
2,200,000
I社 2,008,500
C社 2,100,000
O社 2,660,833
合計 8,260,000 15,988,000 8,989,333

 

(ロ)本件債権償却特別勘定繰入額
A 原処分庁の調査によると、次の事実が認められる。
(A)請求人は、平成2年4月期において、Aからの借入金53,000,000円に係る相手勘定として後記aに記載した額面金額合計13,000,000円の小切手を仮払金勘定及び後記bに記載した額面金額合計40,000,000円の手形を受取手形勘定に計上した後、不渡りを原因として本件受取手形等を債権償却特別勘定繰入の対象として、その2分の1に相当する金額26,500,000円を本件債権償却特別勘定繰入額として損金の額に算入した。
a 小切手の明細

(単位:円)
振出年月日 振出人 支払銀行 小切手番号 額面金額
平成元年11月1日 K社 d銀行e支店 16762 7,000,000
平成元年11月27日 L社 d銀行e支店 16838 4,000,000
平成元年12月1日 L社 d銀行e支店 21107 2,000,000
合計 13,000,000

 

b 手形の明細

(単位:円)
振出人 支払場所 支払期日 手形番号 額面金額
K社 d銀行e支店 平成2年1月11日 134748 9,000,000
K社 d銀行e支店 平成2年1月16日 136285 9,000,000
K社 d銀行e支店 平成2年1月28日 132648 11,000,000
K社 d銀行e支店 平成2年2月28日 132647 11,000,000
合計 40,000,000

 

 

(B)K社は、平成元年1月21日に設立された法人で、代表取締役は○×となっているが、設立当時よりその本店所在地であるf市×○23番地1に事業所がなく、所在が知れないこと。
(C)L社は、平成元年1月21日に設立された法人で、代表取締役は○△となってなっているが、設立当時よりその本店所在地であるf市△○846番地1に事業所がなく、所在が知れないこと。
(D)本件受取手形等の裏書人は、すべてAとなっており、請求人の裏書は一切ないこと。
(E)調査担当職員の質問に対し、Aは、本件受取手形等に係る取引の事実を証する書類等の提示並びにK社及びL社(以下「K社等」という。)に対する支払について、その支払年月日、金額及び資金の出所等の具体的事実について説明をしなかったこと。
B 以上のことから、本件受取手形等は、請求人がその取引に基づいて受領したものとは認められず、また、本件受取手形等の額面金額に相当する債権があったとする事実も認められないので、本件受取手形等の額面金額に相当する債権及びこれに係るAからの借入金が正当な理由に基づき計上されたものと認めることはできない。
 したがって、本件受取手形等に対する本件債権償却特別勘定繰入額は、請求人の損金の額に算入することはできない。
C ところで、基本通達9ー6ー5によると、いわゆる形式基準による債権償却特別勘定の繰入れは、「債務者」について、手形交換所において取引の停止処分を受けたこと等の事実が発生した場合を要件としている。
 そうすると、仮に、本件受取手形等は、請求人の主張するようにNが残土捨場権利の購入代金の返済として請求人に持参したものであるとしても、K社等は、請求人の直接の債務者ではないから、本件受取手形等の不渡りを原因として債権償却特別勘定の繰入はできないこととなる。
(ハ)貸倒引当金繰入額
 前記(ロ)で述べたとおり、本件受取手形等は、正当な理由に基づき計上されたものとは認められないので、法人税法第52条《貸倒引当金》に規定する貸倒引当金の繰入の対象となる貸金等には該当しない。
 したがって、請求人が平成2年4月期において損金の額に算入した貸倒引当金繰入額については、その対象となる期末貸金の額から、本件受取手形等の金額から本件債権償却特別勘定繰入額を差し引いた残額26,500,000円を控除した後の金額について同条の規定に基づき貸倒引当金の損金算入限度額を計算すると1,323,053円となるから、請求人が損金の額に算入した貸倒引当金繰入額1,500,000円のうち、上記損金算入限度額を超える金額176,947円は、損金の額に算入することはできない。
(ニ)損金の額に算入されない外注費の額
 損金の額に算入されない外注費の額は、請求人が平成2年4月期において外注費の額として損金の額に算入されていた有限会社Y(以下「Y社」という。)に対する立替金の額1,377,241円である。
(ホ)損金の額に算入されない損害保険料の額
 損金の額に算入されない損害保険料の額は、請求人が平成2年4月期において後記(ト)で損金の額に算入した損害保険料の金額のうち、積立保険料として資産に計上すべき金額18,622,000円である。
(ヘ)損金の額に算入されない前払保険料の額
 損金の額に算入されない前払保険料の額は、請求人が平成2年4月期において後記(ト)で損金の額に算入した損害保険料の金額のうち、積立保険料として資産に計上すべき金額1,125,367円である。
(ト)損金の額に算入した損害保険料の額
 損金の額に算入した損害保険料の額20,000,000円は、請求人が平成元年6月26日にg保険株式会社と締結した損害保険契約(保険証書番号○○○○○。保険期間は、平成元年6月27日から平成6年6月27日までの5年間である。)に係る支払保険料の金額である。
(チ)損金の額に算入した事業税の額
 損金の額に算入した事業税の額は、本件更正処分により増加した所得金額に係るもので平成元年4月期1,047,800円及び平成2年4月期2,042,200円である。
(リ)所得金額
 以上の結果、請求人の本件各事業年度の所得金額は次表のとおりとなり、これらの金額は、いずれも本件更正処分に係る所得金額と同額であるか又はこれを上回る。

(単位:円)
事業年度
項目
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
確定申告書又は修正申告書に記載された所得金額 1 16,460,202 7,662,792 20,992,976
売上計上漏れ加算額 2 8,260,000 15,988,000 8,989,333
損金の額に算入されない債権償却特別勘定繰入額 3 26,500,000
損金の額に算入されない貸倒引当金繰入額 4 176,947
損金の額に算入されない外注費の額 5 1,377,241
損金の額に算入されない損害保険料の額 6 18,622,000
損金の額に算入されない前払保険料の額 7 1,125,367
損金の額に算入した損害保険料の額 8 20,000,000
損金の額に算入した事業税の額 9 1,047,800 2,042,200
所得金額(123456789 24,720,202 22,602,992 55,741,664

 

(ヌ)課税留保金額
 請求人の平成2年4月期の課税留保金額は、前記イの(リ)の平成2年4月期の所得金額について、法人税法第67条の規定を適用して算定すると515,000円となり、この金額は平成2年4月期の課税留保金額と同額である。
(ル)以上のとおり、本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
(イ)重加算税の額
 請求人は、前記イの(イ)のBに記載したとおり、請求人の売上げに係る小切手等を前記イの(イ)のAの(A)及び(B)に記載したとおり本件各普通預金口座に入金して、これらに係る売上金額を除外し、また、前記イの(ニ)のとおり請求人が争わないY社から受領した立替金の額を外注費の額から控除せず、又は雑収入に計上せず、当該立替金に係る小切手をb信金A名義預金口座に入金するなどして本件各事業年度の所得金額を過少に申告していた事実が認められる。
 これらの事実は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定するその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに該当するので、同条第1項の規定に基づき重加算税を賦課決定したことは適法である。
(ロ)過少申告加算税の額
 平成2年4月期の更正処分により納付すべきこととなった法人税額については、請求人の場合、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、平成2年4月期の更正処分により増加することとなった法人税額のうち、前記(イ)の重加算税の対象となる部分を除く金額について同条第1項及び第2項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、売上金額の一部についての帰属並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分の適否にあるので、以下審理する。

(1) 本件更正処分について

イ 売上金額
(イ)次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
A a信金A名義預金口座に入金されている昭和62年5月7日にW社が振り出した小切手による入金額760,000円については、請求人の売上金額であること。
B c銀行Q名義預金口座に入金されている昭和63年6月12日にX社が振り出した小切手による入金額312,000円並びに同月30日に同社が振り出した小切手による入金額728,000円及び546,000円については、請求人の売上金額であること。
C 平成2年4月期に係る請求人のO社に対する売上計上漏れの金額が2,660,833円であること。
D a信金A名義預金口座には、次表のとおりB社振出しの約束手形が入金されていること。

(単位:円)
入金年月日 入金額 振出年月日 手形番号
昭和62年12月14日 5,000,000 昭和62年11月18日 01 14338
昭和63年3月10日 2,500,000 昭和63年2月6日 01 16382
昭和63年6月13日 2,000,000 昭和63年5月19日 01 16394
昭和63年8月12日 2,000,000 昭和63年7月15日 01 18532

 

E 平成元年9月5日、b信金A名義預金口座にC社振出しの額面金額2,100,000円の小切手が入金されていること。
F 昭和63年6月8日にa信金A名義預金口座にF社が昭和63年6月7日に振り出した額面金額200,000円の小切手が入金されていること。
G 昭和63年9月24日にc銀行A名義預金口座にG社が昭63年6月7日に振り出した額面金額2,200,000円の小切手が入金されていること。
H 本件各事業年度において、Aは請求人の取締役であったが、実質的には請求人の代表者として法人の経営に参画していること。
 なお、Aは、平成2年6月25日に請求人の代表取締役に就任している。
(ロ)請求人は、B社から受領した各約束手形及びC社から受領した小切手による入金額について、前記2の(1)のイの(イ)のAのとおり、Aが個人的に同社に貸し付けた金額の返済を受けたものである旨主張するのに対し、原処分庁は、前記2の(2)のイの(イ)のAの(A)のとおり請求人の売上金額である旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
A 当審判所が調査したところによれば、次のとおりである。
(A)B社の経理担当取締役であったh(以下「h」という。)は、当審判所に対し、次のとおり答述していること。
a 前記(イ)のDの各約束手形は、iから融資を受けた際に同人に対して振り出したものである。
b また、上記の融資に係る資金は、請求人が拠出したものである旨iから聞いている。
c B社は、◎◎株式会社□○工場の下請運送会社として、同社の製品である段ボールを専門に運送していたものであり、当時所有していた車両は、2トン車及び4トン車の普通トラックである。
d B社は、請求人から融資を受けた以外に請求人との取引はない。
(B)Aは、当審判所に対して、B社に対する貸付金は、その当時手もとにあった現金で融資した旨答述していること。
(C)C社の代表取締役jは、当審判所に対して、次のとおり答述していること。
a C社と請求人との間には、今まで一回も取引がなかった。
b C社とNとは当時取引があり、Nに小切手で融資したことがある。
 前記(イ)のEの小切手は、その時の小切手と思われる。
c Nは、当時請求人と取引があったと聞いている。
d Nは、現在行方不明である。
(D)原処分関係資料及び当審判所に対して提出した請求人の資料によれば、次の事実が認められること。
a 請求人は、当審判所に対し、AがC社に対して貸付金を有していたとする証拠資料を提出していない。
b 請求人から提出された後記(ハ)のAの(B)のaの伝票渡控帳の写しによれば、請求人が発行する「1荷渡書、2荷受書(控)」と標題され、一連番号が付された券(2枚複写で50組が1冊となっており、以下「残土捨場券」という。)のC社の名称での取引の事実が見当たらない。
c 請求人から提出された本件各事業年度の総勘定元帳には、C社に対する貸付金及び売上げの記載がいずれもない。
d a信金A名義預金口座及びb信金A名義預金口座は、請求人に帰属する預金口座ではなく、Aの個人口座である。
B これを本件についてみると、次のとおりである。
(A)前記Aの(A)のhの答述によれば、1B社が残土運搬等の営業を行ってはいないこと、2前記(イ)のDの各約束手形は、iに対して融資を受けた際に振り出したこと及び3当該融資の資金を請求人が出したことが認められ、また、前記Aの(B)のAの答述からも、AがB社から受領した前記(イ)のDの各約束手形は、Aが同社に対する貸付金の返済として受けたものと認められることから、前記(イ)のDの各約束手形による入金額は、請求人の売上金額であるとは認められない。
(B)前記Aの(C)のjの答述によれば、1C社と請求人との間に取引がないこと、2C社は、Nに前記(イ)のEの小切手を渡していること及び3Nが現在行方不明であることが認められ、Nと請求人との間の取引については不明であることから、前記(イ)のEの小切手による入金額を請求人の売上金額であると認めるに足る証拠はない。
(C)したがって、これらの点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ハ)請求人は、前記2の(1)のイの(イ)のBのとおり、F社、G社、H社、J及びI社から受領した各小切手等は、Eの収益となるものである旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
A 当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。
(A)b信金A名義預金口座に次表の小切手が入金されていること。

(単位:円)
入金年月日 入金額 振出年月日 振出人
昭和63年12月24日 3,000,000 昭和63年12月23日 H社
昭和63年12月26日 3,000,000 昭和63年12月25日 H社
平成元年1月17日 1,500,000 平成元年1月12日 H社
平成元年5月17日 750,000 平成元年5月15日
平成元年5月22日 669,500 平成元年5月22日 I社
平成元年5月22日 1,339,000 平成元年5月22日 I社
平成元年6月6日 720,000 平成元年6月5日

 

(B)Aは、当審判所に対して、次のとおり答述していること。
a 請求人の残土捨場を利用する者は、残土捨場券を購入しなければならない。
 なお、請求人は、残土捨場券の発行日付、番号及び購入者名等を伝票渡控帳と標題されたノート(以下「伝票渡控帳」という。)に記載して管理している。
b Eの不法投棄を解決するため、請求人は、Eがダンプカーの残土を請求人の15号捨場に投棄することを認めたが、このダンプカーの運転手が請求人の残土捨場券を使用することはない。
 なお、Eに認めた搬入車輛台数の総数については、E側が管理しているが、毎日、請求人に報告があるので、請求人は、それを日報に記載して管理している。
c 前記(イ)のF及びG並びに前記(A)の各小切手の取立てによる現金については、b信金A名義預金口座又はa信金A名義預金口座から払戻しが可能になった日にEの配下の者が銀行まで受取に来る。
(C)請求人が当審判所に提出した伝票渡控帳の写しには、次のとおり記載されていること。

 
発行年月日 伝票番号 車番(購入者名)
平成元年5月17日 15151〜15200
平成元年5月17日 15201〜15250
平成元年5月20日 29501〜29550 I’社
平成元年5月20日 28001〜28050 I’社

 

(D)F社は、原処分庁に対し、請求人との取引に関し、現金で昭和63年6月7日234,000円、昭和63年6月8日138,000円及び昭和63年6月17日130,000円を、小切手で昭和63年6月8日200,000円を請求人に支払ったことを平成2年11月14日付で回答していること。
(E)G社の代表取締役であるkは、当審判所に対して、前記(イ)のGの小切手は、t個人に対する貸付金であり、また、tの所在は現在わからない旨を答述していること。
(F)上記小切手の裏面には、Aの住所氏名が記載されていること。
(G)H社は、原処分庁に対し、請求人との取引に関し、小切手で昭和63年12月23日3,000,000円、昭和63年12月25日3,000,000円及び平成元年1月12日1,500,000円を請求人に支払ったことを平成2年9月19日付で回答していること。
(H)H社の代表取締役mは、調査担当職員に対し、当社の現場の近くに請求人の残土捨場があったので、当社がその捨場を使用できるようにその捨場の責任者である請求人の従業員と交渉したところ、翌日許可されたので、前記(G)の各小切手を請求人の従業員に手渡した旨説明していること。
(I)Jは、原処分庁に対し、請求人との取引に対する支払額を次表のとおりであると確認する旨の確認書を提出していること。
 なお、上記確認書には、平成元年5月15日に購入した残土捨場券は番号15151から番号15250までである旨記載している。

(単位:円)
支払年月日 支払金額 決済方法 支払銀行
平成元年5月15日 750,000 小切手 n銀行p支店
平成元年5月15日 750,000 現金  
平成元年6月5日 720,000 小切手 r銀行p支店

 

(J)また、Jは、原処分庁に対し、平成元年6月5日付のあて先がI社及び領収金額が720,000円と記載され、請求人の所在地、名称及び電話番号が社判で押印され、かつ、請求人の社印が押印された領収証の写しを提出していること。
(K)I社の代表者であるsは、原処分庁に対し、当初50枚の残土捨場券を外注運転手が持ってきたので、この50枚の残土捨場券の購入代金の支払時に請求人の事務所において、更に100枚分の残土捨場券を購入し、これらの対価として平成元年5月20日振出しの各小切手でそれぞれ669,500円及び1,339,000円を支払った旨を記載した申述書を提出していること。
(L)I社は、原処分庁に対し同社保管の残土捨場券(控)(番号15501から番号15550まで、番号28001から番号28050まで及び番号29501から番号29529まで)の写しを提出していること。
(M)a信金A名義預金口座、c銀行A名義預金口座及びb信金A名義預金口座は、請求人に帰属する預金口座ではなく、Aの個人口座であること。
(N)c銀行Q名義預金口座は、請求人に帰属する預金口座ではなく、Qの個人口座であること。
(O)請求人の平成元年4月期及び平成2年4月期の総勘定元帳の写しの売上、工事収入及び工事未収入金勘定には、前記2の(1)のイのBの各小切手及び各現金の入金額の記載がないこと。
B これを本件についてみると、次のとおりである。
(A)前記Aの(D)によれば、F社は、請求人との取引に対し、現金合計額502,000円及び前記イの(イ)のFの小切手を支払っていることが認められるから、当該現金及び小切手による入金額は、請求人の売上金額であると認められる。
(B)前記Aの(G)及び(H)によれば、H社は、残土捨場の使用の対価として請求人に対し、前記Aの(A)のとおり額面金額の合計額7,500,000円を各小切手で支払っていることが認められるから、当該各小切手による入金額は、請求人の売上金額であると認められる。
(C)前記Aの(A)、(B)、(C)、(I)及び(J)によれば、1Jが原処分庁に提出した残土捨場券の番号は、伝票渡控帳の記載事項と一致すること、2残土捨場券の発行によって受領した代金は、請求人に帰属するものであること及び3請求人が発行した領収書があることが認められるから、Jからの入金額は、請求人の売上金額であると認められる。
(D)前記Aの(K)及び(L)によれば、1I社には請求人発行の残土捨場券の控えが保存されており、この券の番号は、前記Aの(C)の伝票渡控帳の写しの記載がI社をI’社と誤って記載している事実は認められるものの、その記載内容と一致し、また、前記Aの(B)のbのAの答述からも明らかなように残土捨場券の発行によって受領した代金は、請求人に帰属するものであると認められることから、I社からの小切手による入金額は、請求人の売上金額であると認められる。
(E)前記Aの(E)及び(F)によれば、1前記イの(イ)のGのG社振出しの小切手は、t個人に対する貸付金であること、2当該小切手の裏面には、Aの住所氏名が記載されていること及び3tなる個人が請求人の売上先とは認められないことから、G社からの小切手による入金額は、請求人の売上金額であるとは認められない。
(G)したがって、請求人がG社から受領した小切手による入金額に関する請求人の主張以外は理由がない。
(ニ)以上により、請求人の各事業年度の売上計上漏れ金額は、次表のとおり昭和63年4月期760,000円、平成元年4月期9,788,000円及び平成2年4月期6,889,333円である。

(単位:円)
事業年度
取引先名
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
W社 760,000
F社 702,000
X社 1,586,000
H社 7,500,000
2,220,000
I社 2,008,500
O社 2,660,833
合計 760,000 9,788,000 6,889,333

 

ロ 本件債権償却特別勘定繰入額
 請求人は、残土捨場の権利を取得するために要する費用をAに一時的に立て替えてもらい支払っていたところ、当該権利を取得することができなくなったため、その返済として本件受取手形等を受け取ったものであり、Aの一時立替分を同人からの借入金として受け入れるといった経理処理はこれまでにも行っていることから、この本件受取手形等の債権は請求人に帰属するものである旨主張するので、以下審理する。
(イ)次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
A 請求人は、平成2年4月期において、次表(A)及び(B)の本件受取手形等をAから受領して、請求人の資産として当該各小切手の額面金額の合計額13,000,000円を仮払金勘定及び当該各約束手形の額面金額の合計額40,000,000円を受取手形勘定に計上し、これらの相手勘定をAからの借入金として長期借入金勘定に53,000,000円を計上したこと。
(A)小切手の明細

(単位:円)
振出年月日 額面金額 振出人 支払銀行 小切手番号
平成元年11月1日 7,000,000 K社 d銀行e支店 AC016762
平成元年11月27日 4,000,000 L社 d銀行e支店 AC016838
平成元年12月1日 2,000,000 L社 d銀行e支店 AC021107

 

(B)約束手形の明細

(単位:円)
振出人 額面金額 支払場所 支払期日 手形番号
K社 9,000,000 d銀行e支店 平成2年1月11日 AA134748
K社 9,000,000 d銀行e支店 平成2年1月16日 AA136285
K社 11,000,000 d銀行e支店 平成2年1月28日 AA132648
K社 11,000,000 d銀行e支店 平成2年2月28日 AA132647

 

B その後、請求人は、不渡りを原因として本件受取手形等を債権償却特別勘定への繰入れの対象とし、本件受取手形等の額面金額の合計額の2分の1に相当する金額26,500,000円を本件債権償却特別勘定繰入額として平成2年4月期の損金の額に算入したこと。
(ロ)当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
A Aは、当審判所に対し、Nに67,000,000円を現金で何回にも分けて支払っているので現在では記憶にないが、支払年月日等については、A名義及びその家族名義の銀行預金口座の出金状況から明らかにできる旨答述していること。
B 請求人は、当審判所に対し、AがNに67,000,000円を支払ったとする証拠資料を何ら提出していないこと。
C 請求人の総勘定元帳の写しによれば、請求人がNに67,000,000円を支払ったとする記帳がないこと。
D A及びその家族名義の預金口座等によれば、Nに現金で支払ったとする67,000,000円に相当する出金がないこと。
E Nは、現在行方不明であること。
F 前記(イ)のAの(A)の各小切手は、b信金A名義預金口座に入金された後にAから同信金に対して依頼返却の届けが出されていること。
G Aは、その依頼返却日以後においてK社等が振り出した次表の各小切手(額面金額の合計額12,850,000円)をb信金A名義預金口座で取り立てていること。
 なお、同合計額の取引については、請求人の総勘定元帳に記帳がない。

(単位:円)
入金年月日 入金額 振出人 支払銀行 小切手番号
平成元年11月1日 350,000 K社 d銀行e支店 AC016772
平成元年11月13日 4,000,000 L社 d銀行e支店 AC016824
平成元年11月17日 5,000,000 L社 d銀行e支店 AC016834
平成元年12月5日 2,000,000 L社 d銀行e支店 AC021108
平成元年12月11日 1,500,000 L社 d銀行e支店 AC021117

 

(ハ)ところで、基本通達9ー6ー5の定めによれば、債務者について、手形交換所において取引の停止処分を受けたこと等の事実が発生した場合には、当該事実が発生した日の属する事業年度終了の日において、当該事実が発生した日に法人が当該債務者に対して有していた売掛金、貸付金その他の債権(以下「貸金等」という。)の額から、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に貸金等とみられない金額等を控除した金額の50パーセントに相当する金額以下の金額を当該事業年度において損金経理により債権償却特別勘定に繰り入れることができるとされているところ、当審判所においてもその取扱いは相当と認められる。
(ニ)これを本件についてみると、次のとおりである。
A 請求人は、前記(イ)のAの(A)及び(B)の本件受取手形等は、AがNから請求人に代って立替払いした立替金の返済を受けたものであると主張するが、前記(ロ)のA、B、C及びDによれば、Aは当審判所に対しNに対して支払ったとする金額67,000,000円に関する証拠資料を提出せず、かつ、当審判所においても上記67,000,000円をAが支出したとする事実を確認することができないから、本件受取手形等は、請求人の債権であると認めることはできない。
B また、前記(ロ)のF及びGによれば、K社等から受領した前記(イ)のAの(A)の各小切手を依頼返却しており、その後、Aは、K社等から受領した額面金額の合計額12,850,000円の各小切手をb信金A名義預金口座で取り立てていることが認められるところ、通常の経済取引においては、依頼返却された各小切手については、これに相当する額の小切手等がAに支払われたものとみるのが相当であることから、前記(イ)のAの(A)の各小切手の額面金額については、AがK社等から既に立替金の返済を受けているものと推認される。
 したがって、前記(イ)のAの(A)の各小切手は、請求人の債権とは認められない。
C 以上により、本件受取手形等は、請求人の貸金等とは認められないから、本件債権償却特別勘定繰入額は、請求人の損金の額に算入することはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
ハ 貸倒引当金繰入限度超過額
 原処分庁は、請求人が損金の額に算入した貸倒引当金繰入額1,500,000円のうち176,947円は、法人税法第52条第1項及び法人税法施行令第97条《貸倒引当金勘定への繰入限度額》第1項の規定により損金の額に算入できないとしているところ、前記ロで述べたとおり、本件受取手形等は、請求人の債権とは認められないから、原処分庁が法人税法第52第1項に規定する貸倒引当金の繰入の対象となる貸金等には該当しないとしたことは相当である。
 ところで、原処分庁が認定したO社に対する売掛金2,660,833円については、期末の貸金等の額に含めるべきである旨の請求人の主張は相当と認められるので、法人税法施行令第97条第1項の規定に基づき貸倒引当金の損金算入限度額を再計算すると、1,341,572円となり、これは更正処分に係る貸倒引当金の損金算入限度額1,323,053円を上回ることになるから、損金の額に算入することができない金額は、18,519円だけ減額すべきで158,428円となる。
ニ その他の額
 前記2の(2)のイの(ニ)ないし(ト)については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。
ホ 損金の額に算入した事業税の額
 原処分庁は、事業税について、平成元年4月期1,047,800円及び平成2年4月期2,042,200円を損金の額に算入しているところ、当審判所の調査によれば、損金の額に算入すべき事業税の額は、平成元年4月期91,200円及び平成2年4月期1,163,600円となる。
ヘ 所得金額
 以上の結果、請求人の本件各事業年度の所得金額は次表のとおりとなり、これらの金額は、本件更正処分に係る所得金額に満たないこととなるから、その一部を取り消すべきである。

(単位:円)
事業年度
項目
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
確定申告書又は修正申告書に記載された所得金額 1 16,460,202 7,662,792 20,992,976
売上計上漏れ加算額 2 760,000 9,788,000 6,889,333
損金の額に算入されない債権償却特別勘定繰入額 3 26,500,000
損金の額に算入されない貸倒引当金繰入額 4 158,428
損金の額に算入されない外注費の額 5 1,377,241
損金の額に算入されない損害保険料の額 6 18,622,000
損金の額に算入されない前払保険料の額 7 1,125,367
損金の額に算入した損害保険料の額 8 20,000,000
損金の額に算入した事業税の額 9 91,200 1,163,600
所得金額(123456789 17,220,202 17,359,592 54,501,745

 

ト 課税留保金額
 前記ヘのとおり、請求人の平成2年4月期の所得金額は54,501,745円となる。
 したがって、請求人の平成2年4月期の課税留保金額を法人税法第67条の規定を適用して再計算すると2,408,000円となり、課税留保金額に対する税額は240,800円となる。

(2) 本件賦課決定処分について

イ 重加算税の額
 請求人は、売上計上漏れは、単に経理ミスであり、請求人には仮装、隠ぺいを意図的に行ったという事実はないから、本件各事業年度の売上計上漏れに係る重加算税の賦課決定処分の一部を取り消すべきである旨主張するので、以下審理する。
(イ)次表のW社及びX社からの入金額を除くa信金A名義預金口座及びb信金A名義預金口座に入金された小切手並びにF社及びJから受領した現金が請求人の売上金額であることは、前記(1)のイの(ハ)のBの(A)、(B)、(C)及び(D)で判断したとおりであり、これらの金額を請求人の帳簿に記載せず、所得金額を過少に申告したことが認められる。
 なお、次表のうち、W社及びX社からの入金が請求人の売上金額であることは、請求人は争わないところであるが、当審判所の調査によれば、これらの金額を請求人の帳簿に記載せず、所得金額を過少に申告したことが認められる。

(単位:円)
入金年月日 取引先名 金額 決済方法 預金口座名
昭和62年5月7日 W社 760,000 小切手 a信金A名義預金口座
昭和63年6月7日 F社 234,000 現金  
昭和63年6月8日 F社 138,000 現金  
昭和63年6月8日 F社 200,000 小切手 a信金A名義預金口座
昭和63年6月17日 F社 130,000 現金  
昭和63年6月30日 X社 312,000 小切手 c銀行Q名義預金口座
昭和63年7月12日 X社 728,000 小切手 同上
昭和63年7月12日 X社 546,000 小切手 同上
昭和63年12月23日 H社 3,000,000 小切手 b信金A名義預金口座
昭和63年12月25日 H社 3,000,000 小切手 同上
昭和元年1月12日 H社 1,500,000 小切手 同上
昭和元年5月15日 750,000 現金  
昭和元年5月15日 750,000 小切手 b信金A名義預金口座
昭和元年5月22日 I社 669,500 小切手 同上
昭和元年5月22日 I社 1,339,000 小切手 同上
昭和元年6月5日 720,000 小切手 同上

 

(ロ)また、前記(1)のイの(ロ)のAの(D)のd並びに(ハ)のAの(M)及び(N)のとおり、上記普通預金口座がA又はQの個人預金口座であり、請求人の預金口座でないことは明らかである。
(ハ)ところで、国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課決定処分は、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したことを要件とするところ、これを本件についてみると、前記(イ)のとおり、請求人は、F社、X社及びH社等に係る売上金額を帳簿に記載せずに本件各事業年度の所得金額を過少に申告したことは、課税標準の基礎となるべき事実を隠ぺいして法人税の申告をしたものと認められる。
(ニ)したがって、更正処分により納付すべき税額のうち、一部取消しに伴い減額される部分以外の税額を基礎とする部分に係る重加算税の賦課決定処分は適法である。
 ところで、本件各事業年度の重加算税の基礎となる税額及び重加算税の額が次表のとおりとなるところ、これらの金額は、いずれも賦課決定処分に係る金額に満たないので、昭和63年4月期及び平成元年4月期の重加算税の賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

(単位:円)
事業年度
項目
昭和63年4月期 平成元年4月期 平成2年4月期
重加算税の基礎となる税額 1 310,000 3,980,000 1,770,000
重加算税の額(1×0.35) 108,500 1,393,000 619,500

 

ロ 過少申告加算税の額
 請求人には、確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が過少申告加算税の額の計算の基礎とした税額に係る事実を確定申告の税額の計算の基礎としなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、平成2年4月期の事業税及び課税留保金額の再計算並びに所得金額の一部取消しに伴い、国税通則法第65条第1項及び第2項の規定に基づいて過少申告加算税の額を再計算をすると1,403,000円となる。
ハ また、前記イ及びロのとおり平成2年4月期の重加算税及び過少申告加算税の額の合計額は2,022,500円となり、平成2年4月期の賦課決定処分のうちそれを超える部分の金額は取り消すべきである。

(4) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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