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(平5.12.22、裁決事例集No.46 191頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、主として土地建物売買を業とする同族会社であるが、平成3年7月1日から平成4年6月30日までの事業年度(以下「平成4年6月期」という。)分の青色の法人税の確定申告書に次表のとおり記載して、法定申告期限までに原処分庁に提出した。

(単位:円)
項目 所得金額 課税土地譲渡利益金額 納付すべき税額
申告額 19,416,236 6,245,800

 

 原処分庁は、これについて、平成4年12月22日付で次表のとおり、更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

(単位:円)
区分 所得金額 課税土地譲渡利益金額 納付すべき税額 過少申告加算税の額
更正処分 19,416,236 9,565,000 9,115,300
賦課決定処分 286,000

 

 請求人は、これらの処分を不服として平成5年2月5日にそれぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年4月6日付で異議申立てをいずれも棄却する旨の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分について不服があるとして、平成5年4月30日にそれぞれ審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

イ 更正処分について
 本件更正処分は、次の理由により違法であるから、その全部を取り消すべきである。
(イ)原処分庁は、請求人が土地及び建物を一括して譲渡したことについて、売買契約書に、土地及び建物の対価の額が区分して記載されていることを理由に、租税特別措置法関係通達(以下「措置法通達」という。)の63の2(2)ー4《新築した建物を土地等とともに一括譲渡した場合の対価の区分の特例》に定める「一括譲渡」に該当しないとして同通達を適用せず、売買契約書に記載されている土地の譲渡対価の額を基に、租税特別措置法第63条の2《超短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率》に規定する土地の譲渡等に係る譲渡利益金額(以下「課税土地譲渡利益金額」という。)を計算し本件更正処分をした。
(ロ)しかしながら、措置法通達の63の2(2)ー4に定める「一括譲渡」とは、土地及び建物を一緒に販売する商取引行為を指すものであり、請求人は、土地及び建物を一緒に譲渡したのであるから、たとえ、売買契約書に土地及び建物の譲渡対価の額が区分されているとしても、同通達に定める「一括譲渡」には該当するので、同通達に定めるいわゆる142パーセント基準を適用して課税土地譲渡利益金額を計算すべきである。
 そうすると、課税土地譲渡利益金額はないことになる。
ロ 加算税の賦課決定処分について
 過少申告加算税の賦課決定処分は、本件更正処分の取消しに伴い、その全部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

イ 更正処分について
 本件更正処分は、次に述べるとおり適法に行われている。
(イ)措置法通達の63の2(2)ー4に定める「一括譲渡」とは、単に土地等及び建物を一緒に譲渡する商取引行為のすべてを指すものではなく、土地等及び建物の譲渡対価の総額のみを定めて譲渡する商取引行為を指すものである。
(ロ)本件の場合は、契約上、土地と建物の譲渡対価の額が区分されているから、課税土地譲渡利益金額の計算に当たって、土地等と建物の譲渡対価の額の区分の方法を定めた措置法通達の63の2(2)ー4の適用はない。
 したがって、課税土地譲渡利益金額は9,565,000円となる。
ロ 加算税の賦課決定処分について
 過少申告加算税の額は、国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に従い正しく計算されている。

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3 判断

(1) 更正処分について

 請求人は、土地及び建物を一緒に譲渡したのであるから、たとえ、売買契約書に、土地及び建物の譲渡対価の額が区分して記載されているとしても、措置法通達の63の2(2)ー4に定める「一括譲渡」には該当するので、同通達に定めるいわゆる142パーセント基準を適用して課税土地譲渡利益金額を計算すべきである旨主張するので、当審判所において調査・審理したところ、次のとおりである。
イ 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、平成4年6月期において、本件更正処分の基となった次表の物件(以下、各物件を「物件記号」欄のAからHまでのそれぞれの記号により表示する。)を譲渡したとして申告していること。


物件記号 物件所在地 物件
P市R町258番39 土地及び建物
同上258番30 土地及び建物
同上258番40 土地及び建物
同上258番38 土地及び建物
同上258番35 土地及び建物
同上258番1 土地及び建物
S市T町一丁目2473番地6 土地(畑)
P市U町四丁目2202番 土地(雑種地)

 

(ロ)請求人は、前記(イ)のAからHまでの各土地の譲渡に係る課税土地譲渡利益金額の計算に当たり、AからFまでの各土地については、措置法通達の63の2(2)ー4に定めるいわゆる142パーセント基準を適用して各土地の譲渡対価の額を算出し、また、G及びHの各土地については、売買契約書に記載されている譲渡対価の額を基にして、AからHまでの各土地の譲渡による収益の額を178,980,452円、当該収益に係る原価の額を173,480,452円、当該土地の譲渡のために要した経費の額を11,564,066円及び課税土地譲渡利益金額を零円(計算上はマイナス6,064,066円)として申告していること。
(ハ)これに対し、原処分庁は、AからHまでの各土地について、売買契約書に記載されている譲渡対価の額を基にして、各土地の譲渡による収益の額を194,288,000円、当該収益に係る原価の額を173,480,452円、当該土地の譲渡のために要した経費の額を11,242,066円及び課税土地譲渡利益金額を9,565,000円とする更正処分を行っていること。
(ニ)請求人は、前記(イ)のAからFまでの「土地及び建物」のうち、土地については、建築条件付である土地の販売価格を記載した散らしを配付し、建物については、新築しようとする建物の譲渡対価の額を当該土地の購入予定者と交渉の上決定し、また、各「土地及び建物」の譲渡に当たっては、上記の散らしに記載された土地の譲渡対価の額及び交渉の上決定した建物の譲渡対価の額並びにそれらの総額を明記した売買契約書を作成し、その後、各売買契約書に記載されている土地及び建物の各譲渡対価の額を総勘定元帳に土地売上及び建物売上としてそれぞれ計上していること。
(ホ)前記(イ)のAからFまでの各建物に係る建築確認通知書の建築主は、請求人ではなく、各土地の購入者となっていること。
(ヘ)請求人は、平成4年6月期の課税期間の消費税の確定申告に当たって、前記(ニ)の売買契約書等に記載されている建物の譲渡対価の額を基に課税標準額を計算していること。
ロ ところで、超短期所有に係る土地等を譲渡した場合の課税土地譲渡利益金額の計算は、当該土地等の譲渡による収益の額から、当該収益に係る原価の額及び当該土地等の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額を控除して算定することとされている。
 当該土地等の譲渡による収益の額とは、土地等の譲渡対価の額をいうが、土地等と新築した建物とを一括して譲渡した場合における土地等の譲渡対価の額については、土地等及び建物の譲渡対価の総額を土地に係るものと新築した建物に係るものとにそれぞれ合理的に区分して算定することが実務上困難な場合もあることから、このような場合における簡便的な区分の方法として、措置法通達の63の2(2)ー4が定められている。
ハ 本件の場合、前記イの(イ)のAからFまでの各「土地及び建物」の譲渡は、前記イの(ニ)及び(ホ)のとおり、建築条件付の土地を譲渡し、その土地の上に建物を新築してその建物を譲渡するという、いわゆる売建方式の譲渡であり、売買契約書は一つであるにしても、本来異なる二つの取引であると認められること、また、売買契約書上、その譲渡対価の額が総額のみの表示とはなっておらず、土地とその土地の上に新築した建物の譲渡対価の額はそれぞれ明らかであることから、一括して譲渡したとは認められず、措置法通達の63の2(2)ー4の適用はない。
 なお、請求人は、前記イの(ヘ)のとおり、消費税の課税標準額の算定に当たっては、売買契約書に記載されている建物の譲渡対価の額を基に算定し、一方、課税土地譲渡利益金額の算定に当たっては、措置法通達の63の2(2)ー4に定めるいわゆる142パーセント基準を適用して計算した建物の譲渡対価の額を基に算定しているが、このような算定方法には合理性が認められない。
 おって、売買契約書に記載されている土地と建物の譲渡対価の額が実情にそぐわない不合理なものとする理由も認められない。
 したがって、原処分庁が措置法通達の63の2(2)ー4を適用することなく、各売買契約書に記載されている土地の金額を前記イの(イ)のAからFまでの土地の譲渡対価の額として課税土地譲渡利益金額を算定したことについて、これを不相当とする理由は認められない。
 以上の結果、請求人の平成4年6月期の課税土地譲渡利益金額を9,565,000円とした本件更正処分は相当であり、請求人の主張には理由がない。

(2) 加算税の賦課決定処分について

 過少申告加算税の賦課決定処分については、これを不相当とする理由は認められない。

(3) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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