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(平7.1.30裁決、裁決事例集No.49 110頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、次表の「確定申告」欄のとおり記載した平成元年分の所得税の確定申告書を、法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成5年3月10日付で次表の「更正処分等」欄のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

(単位 円)
項目\区分確定申告更正処分等
総所得金額12,263,89512,263,895
内訳
 事業所得の金額▲1,682,134
 不動産所得の金額▲1,682,134
 給与所得の金額13,401,58713,401,587
 雑所得の金額544,442544,442
分離長期譲渡所得の金額236,500,000
納付すべき税額▲566,92356,558,000
過少申告加算税の額8,459,500

(注)1 「事業所得の金額」及び「不動産所得の金額」欄の▲印を付した金額は、損失の額を示す。
  2 「納付すべき税額」欄の▲印を付した金額は、源泉徴収に係る所得税の還付金の額に相当する税額を示す。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成5年4月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月8日付で異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分について、平成5年7月30日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 分離長期譲渡所得について
(イ)昭和54年7月29日に死亡した請求人の父A(以下「被相続人」という。)が所有していたP市R町一丁目4番22の宅地153.92平方メートル(以下「本件土地」という。)については、昭和55年3月19日付で、昭和54年7月29日相続を原因とし、権利者を請求人及び請求人の弟B(以下「B」という。)、各人の持分をそれぞれ2分の1とする所有権移転登記(以下「旧相続登記」という。)がなされていた。
(ロ)その後、旧相続登記は、平成元年4月28日付で、錯誤を原因として抹消登記されるとともに、本件土地は、同日付で昭和54年7月29日相続を原因、権利者をBとする所有権移転登記(以下「新相続登記」という。)がなされた。
 また、請求人は、本件土地をBが取得した代償として、同人から250,000,000円を受領した。
(ハ)これに対し原処分庁は、請求人がBから受領した250,000,000円は請求人が本件土地の持分2分の1をBに譲渡した収入金額であると認定し、平成元年分の分離長期譲渡所得の金額を算定して更正処分をした。
(ニ)しかしながら、請求人が受領した250,000,000円は、次のとおり遺産分割による代償金であり、共有持分を譲渡したものではないから、原処分庁が譲渡所得に係る収入金額と認定したことは誤りである。
A 請求人は、本件土地について旧相続登記がなされていることを昭和59年ころになって初めて知ったが、旧相続登記は遺産分割協議などを全くしないままに請求人の母C(以下「C」という。)が独断でしたものであり、請求人は登記手続にすらかかわっていない。
B 請求人は、本件土地を管理していたBと、本件土地の利用方法等について話合いを重ねたが協議がまとまらなかったため、昭和○○年9月11日付でP家庭裁判所に対し、C及びBを相手方とした遺産分割の調停(昭和○○年(家○)第○○○号遺産分割調停事件をいい、以下「本件調停事件」という。)を申し立てた。
C しかしながら、本件調停事件は合意に至らず、昭和▲▲年9月10日不成立となって審判に移行したが、請求人とBの間には他にも被相続人の遺産の範囲についての争いがあったので、請求人は、昭和××年10月6日付でP地方裁判所に対し、Bを被告として本件土地及び本件土地上の建物が被相続人の遺産であることの確認を求める訴え(昭和××年(×)第×××号遺産確認請求事件をいい、以下「本件訴訟」という。)を提起した。
D 本件訴訟における証拠調べの結果、Bは、本件土地が被相続人の未分割の遺産であることを否定し得なくなり、遺産分割により解決を図るようにとの裁判官の勧告をようやく受け入れるに至った。
E そして、本件調停事件は、本件土地が被相続人の未分割の遺産であることを全関係者が認めるに至ったので、審判手続は中止され、平成△年(家△)第△△号遺産分割調停事件として再度調停に付された上、平成△年2月6日に丸1本件土地を被相続人の遺産と認めること、丸2Bが本件土地を取得すること、丸3請求人は代償金250,000,000円を受け取ること、丸4旧相続登記は錯誤により抹消することなどを内容とする調停がついに成立した。
E その後、Bは、上記Eの調停内容に基づき、旧相続登記の抹消登記手続を行うとともに新相続登記手続を行い、さらに、請求人に対し遺産分割による代償金250,000,000円を支払った。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分は違法で取り消すべきであるから、これに基づく過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 分離長期譲渡所得について
(イ)原処分庁が調査したところ、次の事実が認められる。
A 遺産分割の対象となった本件土地については、旧相続登記がなされていたこと。
B 請求人は、昭和59年12月3日付でP市長あてに共有者に係る固定資産税の分割納付申請書を提出し、本件土地に係る固定資産税及び都市計画税を請求人及びBで分割納付する旨を届け出ていること。
C 請求人は、昭和○○年2月に本件土地について、Bを相手方として共有物分割の調停をP家庭裁判所に申し立てたこと。
D 請求人は、昭和○○年9月にX弁護士(以下「×弁護士」という。)を代理人とし、Cが勝手になした旧相続登記は無効として本件調停事件をP家庭裁判所に申し立てたこと。
E 請求人は、昭和××年10月に本件土地上の建物(B名義)が被相続人の遺産であることの確認を求め、本件訴訟をP地方裁判所に提起したこと。
F Cは、本件訴訟の第2回口頭弁論(昭和□□年2月9日)において、次の内容の陳述をしていること。
(A)被相続人の遺産は、本件土地及び建物であり、被相続人は本件土地を前後に分けて兄弟に住まわせようと思っていた。
(B)被相続人の死後初めは、Bが建物を立て替えて兄弟仲良く使おうと言っていたが、それから後に話がこじれ、建物はBの名義だからこれを壊してまで家を建てる権利は誰にもないようなことを言うようになった。
G 請求人は、本件訴訟の第6回口頭弁論(昭和□□年9月13日)において、次の内容の陳述をしていること。
(A)本件土地が共有になった後、土地がありながら何らメリットがないということでBに対して駐車場の確保を要請し昭和56年ころより約1年半駐車料を負担してもらっていた。その後駐車場が不要となった後は月々3万円を約1年間振込みしてもらっていた。
(B)本件調停事件において、本件土地を二人が使うということで色々な案を検討したが、最終的にはBがノーと言うので本件土地上の建物を建て直してお互いが使う話にはならないことから、売却処分して分けようということで係争中である。
H 平成△年2月6日付で、本件調停事件は、丸1当事者双方が本件土地が被相続人の遺産であることを確認する、丸2Bは本件土地を相続する、丸3Bは代償金として250,000,000円を請求人に支払う、丸4旧相続登記を錯誤により抹消することなどを内容とした調停が成立したこと。
I X弁護士は、代償金250,000,000円を、平成元年3月20日25,000,000円、平成元年4月28日225,000,000円の2回で受け取っていること。
J 平成元年4月28日付をもって旧相続登記は錯誤を原因として抹消され、同時に本件土地は被相続人からBが単独取得した新相続登記がされたこと。
K Cが原処分庁に提出した平成4年6月25日付の報告書と題する書面(以下「甲報告書」という。)には、「五、兄弟二人のものにしようと思って二人の名義に替えるべく、当時市役所の裏にあったY司法書士さんの所へ、手続きをお願いに行きました。兄弟二人の印鑑が要ると言われたので、兄弟二人の嫁にそれを言って、印鑑を預かって持って行きました。」、「右登記費用は、その後私が立て替えて、もらった領収書を嫁二人に見せて、折半して負担してもらいました。」と記載されていること。
L 請求人の妻D(以下「D」という。)が原処分庁に提出した平成4年6月25日付の報告書と題する書面(以下「乙報告書」という。)には、「四、義父Aが死亡して、年が明けたころ、義母から『土地の登記を二人のものにするのに兄弟二人の印鑑が要るから、出してくれ』と言われました。実印が要るのかと思って聞いたら、三文判でよいとのことでしたから、意外に思いました。というのは、相続の大事な登記なのに、何故三文判ですむのかということが考えられなかったからです。三文判なら持っていたので、その場でそれ以上深くも考えず、渡しました。三文判で済んだことが意外だったので、帰って、その旨=登記をするのに三文判でよいと言われ、預けたことーを夫に伝えました。」、「五、その後、暫くして、義母宅に行った折、義母より登記費用の領収証を見せられ、『兄弟二人のものにしたのだから、費用は二人で折半してもちなさい』と言われ、半額を渡しました。これも夫に伝えています。」と記載されていること。
M Bは、原処分に係る調査の際に、次のとおり申述していること。
(A)最初請求人より、内容証明郵便が届き、本件土地の持分2分の1は自分にも権利があるから土地を共同で使おうと言ってきたが、土地も狭く、そこで商売をしていたので断った。
(B)裁判所でいろいろ話し合ったが、結局私が250,000,000円を支払うこととなった。調停の内容は弁護士同士が話し合ったもので言ってみればどうでもよかった。自分としては今でも兄から250,000,000円で土地を買ったという認識でいる。
(ロ)以上の事実を総合すると、次のとおり判断される。
A 被相続人の遺産の大部分を本件土地が占めるなか、被相続人の遺志を継ぐためCの中心的な役割をもって旧相続登記手続がされただけであり、その際にはD及びBの妻にそれぞれ相続登記に必要な印鑑の預託や登記費用の負担を請求していること及びDはそれらの事実を請求人に説明していることが認められるから、Cが独断でした相続登記であるとか、請求人は登記手続にすらかかわっていないとか、その事実も知らなかったという請求人の主張は採用できない。
B また、請求人は、本件土地が旧相続登記により共有となった後土地の持分がありながら何らメリットがないことを理由に、Bに対して駐車場の確保を要請し、昭和56年ころより1年半駐車料を負担してもらい、その後駐車場が不要となった後も、約1年間月々3万円の振込みを受けていたこと、更に固定資産税等の分割納付の事実など、請求人は本件土地を未分割財産としてではなく、Cのなした旧相続登記を前提として本件土地を使用していたのだから、本件土地は既に遺産分割後の通常の共有状態であったと認められ、本件土地について旧相続登記が無効ないし錯誤によるものとは認められない。
C 通常、代償分割とは共同相続人又は包括受遺者のうち一人又は数人が相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得しその現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して債務を負担する分割の方法をいうが、上記のとおり、本件土地についてなされた旧相続登記に無効ないし錯誤の要因は認められず、本件土地の錯誤登記による所有権の抹消は、いったん有効になされた遺産分割のやり直しによる請求人の共有持分の譲渡と認めるのが相当である。
 したがって、請求人が受領した250,000,000円は代償分割によるBの債務ではなく、請求人の共有持分の引渡しの対価と認められるから、これを譲渡所得に係る収入金額と認定して行った更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分は適法であり、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて過少申告加算税を賦課決定した処分は適法である。

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3 判断

 請求人がBから受領した250,000,000円が遺産分割の代償金であるか、請求人の共有持分の譲渡による対価であるかに争いがあるので、以下審理する。

(1)分離長期譲渡所得について

イ 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所が調査したところによってもその事実が認められる。
(イ)本件土地については、旧相続登記が行われていたこと。
(ロ)請求人は、昭和○○年9月11日にP家庭裁判所に対し、本件調停事件を申し立てたこと。
(ハ)平成△年2月6日期日P家庭裁判所の調停調書(以下「本件調停調書」という。)によれば、本件土地に係る調停条項は、次の内容であること。
A 当事者双方は、本件土地が被相続人の遺産であることを確認する。
B 本件土地は、Bが取得する。
C Bは、本件土地を取得した代償として、請求人に対し250,000,000円を支払う。
D Cは、遺産を何ら取得しないものとする。
E 請求人及びBは、本件土地に係る旧相続登記を、錯誤を登記原因として被相続人のために抹消登記手続をすることとし、この登記費用はBの負担とする。
(ニ)旧相続登記は、本件調停調書に基づき、平成元年4月28日付で錯誤を原因として抹消登記されるとともに、同日付で新相続登記がなされたこと。
(ホ)Bは、本件調停調書に基づき、本件土地を取得した代償として250,000,000円をX弁護士を通じて請求人に支払ったこと。
ロ 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、請求人が原処分庁に提出した平成4年6月25日付の報告書と題する書面(以下「丙報告書」という。)に「一、亡父A死去後、亡父の遺産について、相続人で相続をどうするかという話し合いは一度もしていません。……」と記載していること。
(ロ)Bは、平成4年4月8日に原処分の調査担当者に対し、相続人3人が集まって分割協議をしたことはなかったと申述していること。
(ハ)Cは、甲報告書に「五、兄弟二人のものにしようと思って、二人の名義に替えるべく、当時市役所の裏にあったY司法書士さんの所へ、手続きをお願いに行きました。兄弟二人の印鑑が要ると言われたので、兄弟二人の嫁にそれを言って、印鑑を預かって持って行きました。Yさんは私に、『あなたの権利はどうするかの』と聞かれたので、『私は放棄します』と言いました。Yさんは、兄弟一緒なら共有登記にしておけばよいと言って、別に何の難しいこともなく、簡単にすみました。……」と記載していること。
(ニ)Dは、乙報告書に「四、義父Aが死亡して、年が明けたころ、義母から『土地の登記を二人のものにするのに兄弟二人の印鑑が要るから、出してくれ』と言われました。実印が要るのかと思って聞いたら、三文判でよいとのことでしたから、意外に思いました。というのは、相続の大事な登記なのに、何故三文判ですむのかということが考えられなかったからです。三文判なら持っていたので、その場で、それ以上深くも考えず、渡しました。……」と記載していること。
ハ ところで、遺産の分割協議については、共同相続人全員の合意を必要とし、厳密には、全員が会合し意見を交換することを必要とするが、一人の作った原案を持ち回って全員の承諾を得る方法や書面による同意を得てすることも有効であるとされている。
 また、分割協議には別段の方式は要求されないから、口頭による協議も無効ではないが、一般には、分割によって生ずる権利の変動に対抗要件を備えさせる必要から、遺産の分割協議が成立すると、それを証するため、遺産分割協議書を作成し共同相続人全員が押印してこれを確認する。そして、この遺産分割協議書は、遺産分割についての合意の成立したことを証明することとなり、遺産のうちに不動産があれば、この書類は登記原因を証明する書面としての効用を示し、この書類によって遺産分割協議の内容による所有権移転登記ができることになる。
ニ 原処分庁は、旧相続登記を錯誤により抹消登記し新相続登記をしたことは、いったん有効になされた遺産分割のやり直しによる請求人の共有持分の譲渡である旨主張するので、以下検討する。
(イ)本件土地については、上記イの(イ)のとおり、旧相続登記がなされていたことは事実であるが、被相続人の遺産分割については、請求人及びBは上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、分割協議をしたことはない旨を丙報告書に記載及び原処分の調査担当者に申述し、また、Cは上記ロの(ハ)のとおり、丙報告書に旧相続登記手続を司法書士に依頼したことは記載しているものの、分割協議の有無については記載しておらず、さらに、Dも上記ロの(ニ)のとおり、乙報告書にCから登記をするために三文判がいるといわれ三文判を渡したことは記載しているものの、遺産分割協議書を作成するために三文判を渡したとは記載していない。
(ロ)これに対し、原処分庁は、いったん有効になされた遺産分割のやり直しである旨主張するが、原処分庁が共同相続人全員の協議に基づいて作成された遺産分割協議書を確認したことを認める証拠はなく、また、当審判所も、P法務局に旧相続登記に係る登記申請書等の閲覧を申請したが、旧相続登記に係る登記申請書等は、既に保存年限の経過により廃棄処分されていたため、その内容を確認することができなかった。
(ハ)そうすると、丸1被相続人の遺産について分割協議をした事実が確認できないこと、丸2三文判しか渡していないとするDの乙報告書の記載事実及び丸3遺産分割協議書の存在が確認できないことから、旧相続登記は被相続人の遺産について共同相続人全員の遺産分割協議に基づいて行われたものとは認められず、本件土地は、請求人とBの間において分割前の共有の状態であったといわざるを得ない。
ホ つぎに、請求人が受領した250,000,000円について、以下検討する。
(イ)請求人は、上記イの(ホ)のとおり、本件調停調書に基づいてBから250,000,000円を受領している事実が認められる。
(ロ)ところで、遺産分割において、共同相続人が遺産を現物でもって分割する方法に代えて、共同相続人のうち一人又は数人に遺産を現物で取得させ、その代償として現物で遺産を取得した相続人が他の相続人に対する債務を負担する、いわゆる代償分割における場合のその債務は、遺産分割において共同相続人間の公平を図るため共同相続人間の取得財産の価値を調整する目的で、共同相続人による遺産分割協議書に基づき、資産を現物で相続する者が他の相続人に対して負担するもの(以下「遺産分割調整金債務」という。)である。
 すなわち、遺産分割調整金債務は、それを負担した者の相続財産を構成する消極財産(遺産債務)であり、一方、他の相続人にとっては、相続により取得する積極財産である。
(ハ)そうすると、確定判決と同一の効力を有する本件調停調書に基づき、Bが本件土地を取得し、その代償として請求人がBから250,000,000円を受領したことは、代償分割そのものであって、原処分のように請求人が本件土地の持分2分の1をBに譲渡したと認定することはできない。
 なお、民法第909条により、本件調停調書に基づく遺産分割は相続開始(昭和54年7月29日)の時にさかのぼって効力が生じたものと認められる。
ヘ したがって、請求人がBから受領した250,000,000円は遺産分割の代償金であると認められ、原処分庁がこれを請求人の共有持分の譲渡による対価であるとして行った更正処分は誤りであるから、更正処分の全部を取り消すのが相当である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 以上のとおり、更正処分はその全部を取り消すべきであるから、過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すのが相当である。

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