ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.49 >> (平7.2.3裁決、裁決事例集No.49 145頁)

(平7.2.3裁決、裁決事例集No.49 145頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)本件審査請求に至った経緯について

イ 審査請求人(以下「請求人」という。)は、建築設計、不動産販売業等を営む者であるが、昭和63年分、平成元年分及び平成2年分(以下「各年分」という。)の青色の所得税の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに提出し、平成2年3月7日に、同表の「更正の請求」欄に記載のとおり昭和63年分所得税の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
ロ これに対し、原処分庁は、平成4年3月12日付で更正をすべき理由がない旨の通知をするとともに、別表1の「更正等」欄に記載のとおり各年分について更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 請求人は、原処分を不服として、国税通則法(以下「通則法」という。)第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項の規定に基づき、異議申立てをしないで平成4年5月6日に本件審査請求をした。

トップに戻る

(2)本件更正処分の概要等について

イ 請求人は、株式会社D(以下「D社」といい、請求人と併せて「請求人等」という。)との間で、P市R町632番4ほかの土地及び家屋を共同して各所有者から購入し、これをG株式会社(以下「G社」という。)その他に売却することなどを内容とした約定を締結し、昭和61年7月1日付でその約定書(以下「甲約定書」という。)を作成した。
ロ D社は、G社との間で、P市S町626番ほかの土地及び家屋の売買に関する約定を締結し、昭和61年7月26日付で「不動産売買に関する基本約定書」(以下「乙約定書」という。)を作成した。
ハ 請求人等は、G社との間で、P市S町591番ほかの土地及び家屋の売買に関する約定を締結し、昭和61年8月29日付で「不動産売買に関する基本約定書」(以下「丙約定書」という。)を作成した。
ニ 請求人等は、I株式会社(以下「I社」という。)との間で、P市T町590番5ほかの土地及び家屋の売買に関する約定を締結し、昭和62年1月31日付で「約定書」(以下「丁約定書」という。)を作成した。
ホ 請求人等は、甲約定書に基づき、共同で、乙約定書に定める売買対象不動産(以下「乙約定不動産」という。)、丙約定書に定める売買対象不動産(以下「丙約定不動産」という。)及び丁約定書に定める売買対象不動産(以下「丁約定不動産」といい、これらを併せて「本件約定不動産」という。)並びにそのほかの不動産の取得及び譲渡(以下、これらの不動産の取得及び譲渡を「本件事業」という。)を行っていたが、本件事業を開始した昭和61年以降に、別表2―1及び別表2―2(以下これらを併せて「別表2」という。)に記載した土地(以下、同表の区分に従い、「物件1」ないし「物件34」という。)を、各所有者との間で売買契約を締結して取得し、一方、順次、G社ほかに譲渡する旨の売買契約を締結した。
ヘ 請求人は、原処分庁が本件事業に係る土地の譲渡の収入金額の計上時期に誤りがあるとして、昭和61年分及び昭和62年分について所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことから、これらの処分に不服があるとして、それぞれ審査請求をした。これに対し、当審判所は、昭和61年分については平成×年×月×日付(×裁(所)平×第××号裁決書)で、昭和62年分については平成△年△月△日付(△裁(所)平△第△△号裁決書)でそれぞれ裁決し、各裁決書の謄本を請求人に送達したが、上記各裁決において別表2の「既裁決の認定」欄に年分を記載した物件を、当該年分に収入金額を計上すべきと判断した。
ト 請求人は、本件事業に係る土地の譲渡の収入金額の計上時期については、なお昭和61年分及び昭和62年分と同様の考え方で各年分の確定申告書を提出したところ、原処分庁は、別表2の「既裁決の認定」欄に年分が記載されていない物件(当審判所裁決済みの物件を除く物件)の譲渡に係る収入金額の計上時期に誤りのあるものがあるとして本件更正処分をした。

トップに戻る

2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由による違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)土地の譲渡等に係る事業所得について
 本件において、以下、土地の譲渡等に係る事業所得とは、租税特別措置法(平成2年法律第62号による改正前のもの。)第28条の5《超短期所有土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例》第1項の規定に該当する土地の譲渡に係る所得をいう。
A 収入金額の計上時期について
 請求人が本件各年分に収入金額を計上すべき物件は、次のとおり、昭和63年分が物件1ないし5、16、17、25、28及び29、平成元年分が物件12、22、26及び32ないし34、平成2年分が物件6ないし1丸113、18、30及び31である(以下これらの物件を「本件物件」という。別表2の「請求人主張」欄参照。なお、請求人は、本件審査請求においては、物件14、15、19ないし2丸123及び24の収入金額の計上時期を争うものではない。)。
(A)本件約定不動産の譲渡に係る収入金額の計上時期は、乙約定不動産、丙約定不動産及び丁約定不動産ごとに、それぞれそのすべてについてG社若しくはI社への譲渡が完了した日の属する年分とするべきであるが、実際には、取得が計画どおりに進まず、その結果として、本件約定不動産のすべてを譲渡することができなかった。
 ところで、乙約定書の第8条は、D社が乙約定不動産を取得しなかったときには乙約定の解除について、双方協議し善処する旨定めており、丙約定書の第7条は、丙約定不動産についてG社の要請があった場合は、請求人等は譲渡済不動産の全部の買戻しに応じなければならない義務(以下「買戻義務」という。)があることを定めている。また、丁約定書の第8条は、請求人等が、丁約定不動産のうち、P市T町595‐2ほか1筆の土地及び家屋を昭和62年5月31日までに取得できなかった場合は双方協議の上、I社の要請があった場合は、請求人等は譲渡済不動産である物件12の買戻義務があることを定めている。
 以上によれば、個々の物件の譲渡は、本件約定不動産のすべての譲渡を達成するための過程に過ぎず、本件約定不動産の譲渡に係る収入金額の計上時期は、G社等から約定の解除や譲渡済不動産の買戻しの要請がなくなったときである。そして、これらの解除事由がなくなったのは、乙約定不動産が昭和63年中、丙約定不動産が平成2年中、丁約定不動産が平成元年中である。
 したがって、別表2に記載された乙約定不動産に該当する物件1ないし5の譲渡に係る収入金額は昭和63年分、丙約定不動産に該当する物件6ないし1丸130及び31の譲渡に係る収入金額は平成2年分、丁約定不動産に該当する物件12、32及び33の譲渡に係る収入金額は、平成元年分に計上すべきである。
(B)物件13は、丙約定不動産に該当する物件10の土地の旧所有者に代替地として譲渡したものであるから、その譲渡に係る収入金額は、平成2年分に計上すべきである。
(C)物件18は、請求人が建物を建築することを条件に相手方に譲渡した土地であり、当該建物は、平成2年中に完成していることから、その譲渡に係る収入金額は平成2年分に計上すべきである。
B所得金額について
 上記Aから、各年分の土地の譲渡等に係る事業所得の金額は、次のとおりとなる。
 なお、本件事業に係る各売買契約には、土地のみでなく家屋が含まれている契約もあるが、各売買契約の金額は土地のみの価額であり、家屋の経済的価値はないものとして各売買契約を締結したものである。
(A)収入金額について
a 原処分庁は、物件27の取引を土地の売買であるとして土地の譲渡等に係る事業所得(以下「分離課税の事業所得」という。)の収入金額に計上しているが、請求人は、この物件の仲介を行い仲介手数料を受け取ったものであり、売買したものではない。これは、売主であるM信用金庫には専属の不動産仲介業者がおり、その業者以外には仲介手数料を支払うわけにはいかないというM信用金庫の事情のため、形式上、請求人等が買い取って転売したものである。
 したがって、この取引に係る収益金額3,365,000円は総所得金額とされる事業所得(以下「総合課税の事業所得」という。)に算入すべきである。
b 各年分の収入金額の合計額は、別表4―1ないし4―3の「収入金額」欄に記載のとおり昭和63年分が1,812,321,000円、平成元年分が2,644,707,313円、平成2年分が12,049,940,000円である。
(B)請求人等が共同で負担すべき売上原価の額について
a 原処分庁は、請求人が昭和63年6月3日にEに支払った販売手数料15,000,000円(以下「Eの手数料」という。)を、平成元年分の物件30及び31の譲渡に係る売上原価に算入しているが、これは平成2年分の土地の譲渡に係る販売手数料として、請求人がD社とは別に単独で支払ったものであるから、分離課税の事業所得のみに係る販売費及び一般管理費(以下「分離課税の事業所得のみに係る販売費等」という。)として平成2年分の必要経費に算入すべきである。
 したがって、当該2物件の譲渡に係る売上原価は、原処分庁が計上した額8,189,146,493円から上記の15,000,000円を差し引くほか、原処分庁が計上していない印紙代等を加算すると別表4―3に記載のとおり8,175,974,228円となる。
b 各年分の請求人等が共同で負担すべき売上原価の額は、別表4―1ないし4―3の「請求人とD社が共同で負担すべき売上原価の額」欄に記載のとおり昭和63年分が1,410,592,746円、平成元年分が2,338,379,868円、平成2年分が10,047,233,011円である。
(C)D社に対する利益分配金の額について
 D社に対する利益分配金は、各物件ごとに、前記(A)のbの各年分収入金額の合計額から(B)のbの各年分の売上原価の額の合計額を控除した金額に、甲約定書に定める物件ごとにD社の分配率を40パーセント又は50パーセント乗じた金額であり、各年分の利益分配金の合計額は、別表4―1ないし4―3の「D社に対する利益分配金の額」欄に記載のとおり昭和63年分が194,296,551円、平成元年分が153,163,724円、平成2年分が908,172,723円である。
(D)販売費及び一般管理費の額について
a 租税公課について
 原処分庁は、請求人が租税公課として昭和63年分に計上していた5,696,442円のうち、1,343,187円は利子所得に係る源泉徴収税額であり必要経費には算入できないとしてこれを減算し、昭和63年分の租税公課は4,353,255円であるとしているが、この額には、物件18の売上原価に加算した固定資産税等の金額を重複して計上している額が含まれていること及び原処分庁が利子所得に係る源泉徴収税額として必要経費から減算した額に誤りがあることなどにより、1,196,105円が過大に計上されており、租税公課として必要経費に算入すべき金額は、3,157,150円が正当額である。
b 販売手数料について
(a)原処分庁は、請求人が販売手数料として昭和63年分に計上していた70,330,000円は、〔1〕、総合課税の事業所得のうちの建築設計業及び不動産仲介業に係る事業所得(以下、両業種に係る事業所得を「設計不動産業に係る事業所得」という。)と〔2〕、分離課税の事業所得とに共通する販売費及び一般管理費(直接販売費を除き、以下「共通販売費等」という。)に算入しているが、そのうち64,830,000円は本件事業を行うために支払ったものであるから、分離課税の事業所得のみに係る販売費等に算入すべきである。
 また、原処分庁が平成2年分の設計不動産業の事業所得に係る販売費及び一般管理費(以下「設計不動産業の販売費等」という。)とした49,909,000円のうち、33,900,000円は本件事業を行うために支払ったものであるから、分離課税の事業所得のみに係る販売費等に算入すべきである。
(b)原処分庁は、請求人が平成2年中に請求人の妻であるHに支払った支払手数料6,000,000円及び販売手数料36,000,000円の合計42,000,000円(以下「Hの手数料等」という。)は、請求人と生計を一にしているから必要経費に算入できない旨主張するが、請求人とHが別居していることは、HがF税務署に同人の所得税の確定申告書を提出していることからも明らかであり、したがって、請求人とHとは生計を一にしていない。
 なお、上記販売手数料36,000,000円は、本件事業に関連して支払ったものであるから、分離課税の事業所得のみに係る販売費等として、また、6,000,000円は、共通販売費等として必要経費に算入すべきである。
c 支払報酬について
 原処分庁は、平成元年分の支払報酬28,233,606円は共通販売費等である旨主張するが、本件事業に関連して支払ったものであるから分離課税の事業所得のみに係る販売費等として必要経費に算入すべきである。
d 雑損失について
 原処分庁は、請求人がA国の土地購入契約に係る手付金として昭和63年8月17日に契約の相手方であるBコーポレーション(以下「B社」という。)に対して支払った134,300,000円及び昭和63年10月4日に支払った268,900,000円の合計額403,200,000円(以下「本件手付金」という。)をB社に没収されたことによる損失(以下「本件手付金による損失」という。)は、請求人が平成元年2月17日にB社に対し契約の履行を求めて訴訟を提起していることから損失が確定したのは、昭和63年中ではなく訴訟が終結した平成元年であるとして、平成元年分の分離課税の事業所得のみに係る販売費等として必要経費に算入しているが、次のとおり昭和63年分の分離課税の事業所得のみに係る販売費等に算入すべきである。
(a)請求人は、本件手付金の返還を求める訴訟を提起したのではなく、請求人が、地主に対して契約代金の残額を支払期限までに支払わなかったことにより地主が他の者に販売したため、この新旧の地主に対して、請求人がこの土地を購入できるように提訴したものである。
(b)また、訴訟では、契約の相手方であるB社を被告としておらず、本件手付金による損失と訴訟の内容とは関係がないから、本件手付金に係る損失は、その損失が発生した昭和63年に計上すべきである。
e 所有株式の評価損について
 原処分庁は、平成2年分の所有株式の評価損は、必要経費に算入することはできないとしているが、請求人が所有していたJ社、K社、L社及びV社(以下、これらの4社のことを「Wグループ各社」という。)の株式の評価損269,000,000円並びに株式会社X(以下「X社」という。)の株式の評価損12,900,000円の合計281,900,000円(以下「本件株式の評価損」という。)は、いずれもこれらの会社が営業停止により無価値になったことによる損失で、事業遂行上生じたものであるため、所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》第1項の規定により、Wグループ各社の株式の評価損269,000,000円は共通販売費等、X社の株式の評価損12,900,000円は、X社が不動産売買の関連事業の会社であるところから分離課税の事業所得のみに係る販売費等として必要経費に算入すべきである。
f 貸付金の回収不能額について
 原処分庁は、平成2年分のWグループ各社に対する貸付金の回収不能額56,268,629円、X社に対する貸付金の回収不能額12,600,000円及びZに対する貸付金の回収不能額14,700,000円の合計83,568,629円(以下「本件貸付金の回収不能額」という。)は、事業の遂行上生じた貸付金であると認められないから、貸倒損失として必要経費に算入することはできないとしているが、Wグループ各社は、請求人が今後進出を予定している衛星放送情報伝達事業を行う会社であり、一方、X社は、請求人の不動産売買の関連事業を行う会社であり(Zに対する貸付金は、実質はX社に対する貸付けである。)、いずれも請求人の事業に関連して貸し付けたものであるところ、Wグループ各社並びにX社が平成2年中に営業停止状態になり、これらの会社に対する貸付金が回収不能となったことから、いずれも所得税法第51条第2項の規定により貸倒損失に該当するものであるから、Wグループ各社に対する貸付金の56,268,629円は、平成2年分の共通販売費等、X社に対する貸付金12,600,000円及びZに対する貸付金14,700,000円は分離課税の事業所得のみに係る販売費等として必要経費に算入すべきである。
g 青色事業専従者給与相当額について
 原処分庁は、請求人が平成2年分に青色事業専従者給与相当額として計上した12,500,000円は必要経費に算入することはできないとしているが、これは、昭和63年から平成3年までの間のCに対する青色事業専従者給与の限度額として原処分庁に届出をした額と実際に支払った額との差額であり、青色事業専従者給与の額は原処分庁届出額まで認められるものであるから、未払であっても共通販売費等として必要経費に算入すべきである。
h 事業廃止に伴う所得計算の特例の適用について
 請求人は、平成3年3月15日付でQ税務署に廃業届を提出し、平成3年4月1日に廃業した。
 そこで、事業を廃止した後3年間において発生が見込まれる次の費用の合計額428,987,848円(以下「本件事業廃止後の費用発生額」という。)は、事業を廃止した年の収入金額から控除し、なお控除しきれない場合は前年の収入金額から控除できるとする所得税法第63条《事業廃止に伴う所得計算の特例》の規定を適用し、収入金額のある平成2年分の共通販売費等として必要経費に算入すべきである。
(a)棚卸しとなっている土地3筆に係る支払利息として、平成2年分の未払いを含め、316,418,229円。
(b)棚卸しとなっている土地3筆に係る必要経費として、38,133,512円。
(c)減価償却費として18,237,307円。
(d)人件費として56,198,800円。
i 共通販売費等の額について
 各年分の共通販売費等の額については、別表7の「請求人主張額」欄に記載のとおり、昭和63年分が122,098,004円、平成元年分が147,844,460円、平成2年分が908,789,963円であり、そのうち分離課税の事業所得に対応する金額は、別表8―1ないし8―3の「請求人主張額」欄に記載のとおり、あん分計算(以下「共通販売費等のあん分計算」という。)をすると、昭和63年分が101,793,106円、平成元年分が122,932,668円、平成2年分が727,759,002円である。
j 分離課税の事業所得に係る販売費及び一般管理費について各年分の分離課税の事業所得のみに係る販売費等は、別表9の「請求人主張額」欄に記載のとおり昭和63年分が468,030,000円、平成元年分が149,433,606円、平成2年分が125,100,000円であり、これに上記iで算定した分離課税の事業所得に対応する金額を加算すると、各年分の分離課税の事業所得に係る販売費及び一般管理費は、昭和63年分が569,823,106円、平成元年分が272,366,274円、平成2年分が852,859,002円である。
(E)青色事業専従者給与の額について
 各年分の青色事業専従者給与の額のうち分離課税の事業所得に対応する額は、別表10―1ないし10―3の「請求人主張額」欄に記載のとおり、あん分計算(以下「青色事業専従者給与のあん分計算」という。)をすると、昭和63年分が25,485,100円、平成元年分が26,964,300円、平成2年分が4,798,800円である。
(F)所得金額について
 前記(A)ないし(E)から、各年分の分離課税の事業所得の金額は、別表11―1ないし11―3の「差引金額」欄に記載のとおり昭和63年分が387,876,503円の損失、平成元年分が146,166,853円の損失、平成2年分が236,876,464円である。
(ロ)総合課税の事業所得について
A 設計不動産業に係る事業所得について
(A)収入金額について
a 受取利息について
 請求人は、平成元年分の設計不動産業の事業所得に係る雑収入として、Wグループ各社、Y及びX社に対する貸付金の受取利息13,318,629円(以下「本件受取利息」という。)のうち実際に受け取った7,050,000円を設計不動産業に係る事業所得の雑収入として計上したところ、原処分庁は、本件受取利息は設計不動産業に係る事業所得の雑収入ではないとして、請求人が計上した雑収入12,008,000円から7,050,000円を減算し、本件受取利息の収入金額13,318,629円は、雑所得である旨主張するが、本件受取利息は請求人の事業に関連する貸付けに係るものであるから、設計不動産業の事業所得に係る雑収入(以下「設計不動産業の雑収入」という。)である。
b 各年分の設計不動産業の収入金額は、昭和63年分は前記(イ)のBの(A)の3,365,000円を加算した98,240,770円であり、平成元年分は上記aの7,050,000円を加算した96,528,000円であり、平成2年分は、1,191,696,439円である。
(B)売上原価について
a 不動産仲介業に係る販売手数料について
(a)平成元年にP市U町170、同170‐2及びP市f町144‐2の物件の売買の仲介に対する報酬としてiに支払った販売手数料2,000,000円を、原処分庁は、iが請求人と生計を一にしているから必要経費に算入できない旨主張するが、iと請求人とは別の家に居住していることから、生計を一にしているとはいえず、平成元年分の設計不動産業に係る売上原価として計上すべきである。
(b)また、原処分庁は、上記物件の売買の仲介の際に請求人が負担した印紙代2,000円を売上原価として計上していない。
b 各年分の設計不動産業に係る売上原価の額は、昭和63年分が16,505,000円、平成元年分が上記aの2,002,000円を加算した28,959,525円、平成2年分が703,405,200円である。
(C)販売費及び一般管理費について
a 平成2年分のkに対する販売手数料は、8,000,000円であるにもかかわらず、原処分庁はこれを7,919,000円として81,000円を過少に計上している。
b 各年分の共通販売費等のうち、設計不動産業に対応する金額は、別表8―1ないし8―3の「請求人主張額」欄に記載のとおり共通販売費等のあん分計算をすると昭和63年分が20,304,898円、平成元年分が24,911,792円、平成2年分が181,030,961円である。
c 各年分の販売費及び一般管理費は、昭和63年分が上記bのとおり20,304,898円、平成元年分が上記bに、雑損失4,922,286円を加算すると29,834,078円、平成2年分が上記bのとおり181,030,961円となる。
(D)所得金額について
 上記(A)ないし(C)から、各年分の設計不動産業に係る事業所得の金額は、別表11―1ないし11―3の「請求人主張額(10)」欄に記載のとおり昭和63年分が61,430,872円、平成元年分が37,734,397円、平成2年分が307,260,278円である。
B 青色事業専従者給与の額について
 青色事業専従者給与の額のうち、総合課税の事業所得に対応する金額は、別表10―1ないし10―3の「請求人主張額」欄に記載のとおり青色事業専従者給与のあん分計算をすると、昭和63年分が5,514,900円、平成元年分が6,035,700円、平成2年分が1,201,200円である。
C 青色申告控除額について
 青色申告控除額は、平成2年分に100,000円計上している。
D 総合課税の事業所得の金額について
 前記Aの(D)に、各年分の洋品業に係る事業所得の金額を加算し、上記B及びCの金額を減算すると、各年分の総合課税の事業所得の金額は、昭和63年分が17,175,356円、平成元年分が33,612,350円、平成2年分が305,942,007円である。
(ハ)総所得金額及び分離課税の事業所得の金額について
 以上のとおり、各年分の総所得金額は、別表11―1ないし11―3の「請求人主張額」欄に記載のとおり昭和63年分が総合課税の事業所得の金額に雑所得の金額9,400円を加算した17,184,756円と分離課税に係る事業所得の金額である387,876,503円の損失を通算し、さらに、前年から繰り越された純損失の額25,683,690円(平成△年△月△日付△裁(所)平△第△△号の裁決書において請求人が主張した額)を控除した後の396,375,437円の損失(翌年に繰り越す純損失の額)、平成元年分が総合課税の事業所得の金額に雑所得の金額35,800円を加算した33,648,150円と分離課税に係る事業所得の金額146,166,853円の損失を通算し、さらに、前年から繰り越された純損失の額396,375,437円を控除した後の508,894,140円の損失(翌年へ繰り越す純損失の額)、平成2年分が総合課税の事業所得の金額に、前年から繰り越された純損失の額508,894,140円から平成2年分の分離課税の事業所得である236,876,464円の全額を控除し、なお控除しきれない272,017,676円を総合課税の事業所得の金額から控除すると33,924,331円である。
ロ 更正すべき理由がない旨の通知について
 上記イのとおり、請求人の昭和63年分所得税については、本件更正の請求に対する更正をすべき理由がある。
 したがって、原処分庁は、当該更正をすべき理由がない旨の通知を取り消し、総所得金額を324,918,832円の損失、還付金に相当する税額を5,970,000円とする更正をすべきである。
ハ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 前記イのとおり、本件更正処分は違法であるから、その取消しに伴い昭和63年分及び平成元年分の過少申告加算税の賦課決定処分については取り消すべきであり、平成2年分の過少申告加算税の賦課決定処分についてはその一部を取り消すべきである。

トップに戻る

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 本件更正処分について
(イ)分離課税の事業所得について
A 収入金額の計上時期について
(A)土地等の不動産の譲渡に係る収入金額の計上時期は、単発的な譲渡であるか継続的な譲渡であるかを問わず、不動産を引き渡した日であり、引渡しの日の判定は、当該不動産の種類、内容等に応じ、その引渡しの日として合理的と認められる日によるものとされている。
 本件物件については、代金の決済及び所有権の移転登記が完了している年に引渡しがあったことは明らかであることから、その年を収入金額の計上時期としたものである。
(B)物件18の譲渡に係る収入金額は、請求人自らが昭和63年分の確定申告を行う際に、収入金額に計上していること、また、譲渡代金の授受及び所有権の移転登記を昭和63年中に完了していることから昭和63年分をその計上時期としたものである。
(C)以上によれば、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、物件5、10、13、18、25、27ないし29及び32は昭和63年分、物件22、26、30、31、33及び34は平成元年分に計上すべきである(なお、原処分庁は、本件物件のうち既裁決で認定済みの物件に関しては、主張していない。)。
B 所得金額について
(A)収入金額について
a 請求人は、物件27の取引は売買の仲介をしたものであるから、分離課税の事業所得の収入金額に計上すべきではなく、総合課税の事業所得のうち、設計不動産業に係る収入金額に計上すべきである旨主張するが、譲渡先であるe株式会社(以下「e社」という。)と請求人等との間で不動産売買契約書が締結されていること、原処分に係る調査の際にも請求人が当該取引の仲介をした事実を確認できる具体的資料の提示がないことから、原処分庁は、請求人が当該不動産を売買したものであると認定し、昭和63年分の分離課税の事業所得の収入金額に計上したものである。
b 収入金額の合計額は、別表5―1及び5―2の「収入金額」欄に記載のとおり昭和63年分が2,939,114,613円、平成元年分が10,762,165,000円である。
(B)請求人等が共同で負担すべき売上原価の額について
 物件30及び31の譲渡に係る売上原価の合計額は、別表5―2の「請求人とD社が共同で負担すべき売上原価の額」欄に記載のとおり8,189,146,493円である。
 なお、請求人が、当該2物件の売上原価でない旨主張するEの手数料は、D社の物件台帳に記帳されていたことから当該2物件の売上原価に計上したものである。
(C)販売費及び一般管理費の額について
a 租税公課について
 請求人は、租税公課の額について、請求人が物件18の売上原価に加算した固定資産税等の金額を重複して計上していること及び原処分庁が利子所得に係る源泉徴収税額として必要経費から減算した額に誤りがある旨主張しているが、原処分庁はこれらの事実を確認していない。
b 販売手数料について
(a)販売手数料は、具体的にどの物件に係る支払であるのか特定できないことから、共通販売費等に算入したものである。
 なお、請求人は、原処分庁が主張する平成2年分の販売手数料49,909,000円には分離課税の事業所得のみに係る販売費等が含まれている旨主張するが、原処分庁は、平成2年分には分離課税の事業所得に係る収入金額がないと認定している。
(b)Hの手数料等は、Hが、q市s町2‐3において営む企画デザイン業に係る事業所得は損失の金額を記載し、他に所得はない旨の確定申告書をF税務署に提出していること、また、別居しているとしても同人は請求人の妻であることから、請求人と生計を一にしているものと認められるので、必要経費に算入することはできない。
c 支払報酬について
 支払報酬は、当該各支払が具体的に本件事業のどの物件に係る支出であるか特定できないため共通販売費等と認定したものである。
d 雑損失について
 本件手付金による損失については、請求人は訴訟の相手方が売主であるB社ではないから本件手付金とは関係のない訴訟である旨主張しているが、原処分の調査の際に、請求人が原処分庁へ提出したA国の裁判所への提出資料の控えの中に、訴訟の相手方(被告)は売主であるB社と地主であるNコーポレーション(以下「N社」という。)とが明記されていること及びこの訴訟が平成元年に敗訴したと請求人が原処分の調査担当者に申述していることから、平成元年分の損失として403,200,000円を分離課税の事業所得のみに係る販売費等として必要経費に算入したものである。
e 本件株式の評価損について
 本件株式の評価損は、請求人の株式の保有が請求人の事業と関連性がないこと、また、所得税法第51条第1項に規定する資産損失には有価証券の評価損は含まれないことから、請求人が所有する株式が無価値になったことによる損失を必要経費に算入することはできない。
f 本件貸付金の回収不能額について
 Wグループ各社並びにX社及びZは、請求人の営む事業に係る取引先ではないこと、また、請求人の事業内容は貸金業でないことから、本件貸付金の回収不能額は、所得税法第51条第2項に規定する事業の遂行上生じた貸付金とは認められないため、必要経費に算入することができない。
g 青色事業専従者給与相当額について
 Cと請求人とは生計を一にしていると認められるから、青色事業専従者給与として実際に支払った額以外には必要経費に算入することができない。
h 事業廃止に伴う所得計算の特例の適用について
 原処分には平成3年分は含まれていないので、本件事業廃止後の費用発生に関する主張はしない。
i 共通販売費等の額について
 各年分の共通販売費等の額は、別表7の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、昭和63年分は188,124,109円、平成元年分は176,078,066円となり、そのうち分離課税の事業所得に対応する金額は、別表8―1及び8―2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり共通販売費等のあん分計算をすると昭和63年分が162,162,982円、平成元年分が167,837,613円である。
j 分離課税の事業所得に係る販売費等及び一般管理費について
 各年分の分離課税の事業所得に係る販売費等及び一般管理費は、昭和63年分が上記iの162,162,982円、平成元年分が、分離課税の事業所得のみに係る販売費等の額である、別表9の「原処分庁主張額」欄の524,400,000円に、上記iの分離課税の事業所得に対応する金額167,837,613円を加算すると692,237,613円となる。
(D)所得金額について
 そうすると、各年分の分離課税の事業所得の金額は、前記(A)ないし(C)から、別表5―1及び5―2の「所得金額」欄に記載のとおり昭和63年分が51,960,696円、平成元年分が56,702,265円の損失となる。
(ロ)総合課税の事業所得金額について
A設計不動産業にかかる事業所得について
(A)収入金額について
 本件受取利息は、貸付先が請求人の営む事業との関連性が認められないことから、請求人の総勘定元帳に記帳された13,318,629円を雑所得と認定したものである。
(B)売上原価について
a 不動産仲介業に係る販売手数料について
(a)iへ支払った手数料は、同人が請求人の実母であり、かつ、請求人と生計を一にしていることから、所得税法第56条《事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例》の規定により必要経費に算入することはできない。
(b)請求人は、上記(B)の不動産仲介の際に印紙代2,000円を負担していた旨主張するが、原処分庁はその事実を確認していない。
b 各年分の売上原価の額は、昭和63年分が16,505,000円、平成元年分が26,957,525円、平成2年分が703,405,200円である。
(C)販売費及び一般管理費について
a 請求人は、平成2年分のkに対する販売手数料は8,000,000円であるにもかかわらず、原処分庁がこれを7,919,000円として81,000円を過少に計上していた旨主張するが、原処分庁はその事実を確認していない。
b 各年分の共通販売費等のうち、設計不動産業の事業所得に対応する金額は、別表8―1及び8―2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり共通販売費等のあん分計算をすると昭和63年分が25,961,127円、平成元年分が8,240,453円となる。
c 各年分の販売費及び一般管理費は、昭和63年分が上記bのとおり25,961,127円、平成元年分が上記bの8,240,453円に、雑損失4,922,286円を加算した13,162,739円、平成2年分が169,852,486円である。
(D)所得金額について
 前記(A)ないし(C)から、各年分の設計不動産に係る事業所得の金額は、別表11―1ないし11―3の「原処分庁主張額10」欄に記載のとおり昭和63年分が52,409,643円、平成元年分が49,357,736円、平成2年分が318,438,753円である。
B 青色事業専従者給与の額について
 青色事業専従者給与の額のうち総合課税の事業所得に対応する金額は、別表10―1及び10―2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり青色事業専従者給与のあん分計算をすると昭和63年分が4,578,700円、平成元年分が1,719,300円、平成2年分が別表11―3の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり6,000,000円である。
C 青色申告控除額について
 請求人は、青色申告者であるから、租税特別措置法(平成4年法律第14号による改正前のもの)第25条の3《青色申告控除》により総合課税の事業所得の金額の計算上、各年分について青色申告控除額100,000円を控除することとなる。
D 総合課税の事業所得の金額について
 前記Aの(D)に、各年分の洋品業に係る事業所得の金額を加算し上記B及びCの金額を減算すると各年分の総合課税の事業所得の金額は、別表11―1ないし11―3の「原処分庁主張額13」欄のとおり昭和63年分が8,990,327円、平成元年分が49,452,089円、平成2年分が312,321,682円である。
(ハ)総所得金額及び分離課税の事業所得の金額について
 各年分の総所得金額は、昭和63年分が総合課税の事業所得の金額に雑所得金額9,400円を加算すると別表11―1の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり8,999,727円、平成元年分が、総合課税の事業所得の金額に雑所得の金額13,354,429円を加算すると別表11―2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり62,806,518円となるが、これに、分離課税に係る事業所得の金額56,702,265円の損失を通算すると6,104,253円、平成2年分が別表11―3の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり312,321,682円である。
ロ 更正すべき理由がない旨の通知について
 以上のとおり、請求人の昭和63年分所得税について、本件更正の請求に対する更正をすべき理由がないから、当該通知は適法である。
ハ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、各年分の本件更正処分は適法であるから各年分の過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

トップに戻る

3 判断

(1)本件更正処分について

イ 分離課税の事業所得について
(イ)収入金額の計上時期について
 本件物件の譲渡に係る収入金額の計上時期について争いがあるので、以下検討する。
A 請求人及び原処分庁提出資料並びに当審判所の調査した結果によれば、次の事実が認められる。
(A)まず、本件物件のうち、物件1ないし4、6ないし9、11、12、16及び17については、既になされた裁決において昭和61年分又は昭和62年分と認定されている物件であり、これを変更する理由が認められないこと。
(B)残りの本件物件に係る請求人等と譲受人との間の売買契約日付、契約名義人、売買契約金額、譲渡代金の受領状況及び所有権の移転登記等の状況は、別表3―1及び3―2(以下これらを併せて「別表3」という。)に記載のとおりであること。
B ところで、棚卸資産である土地の譲渡に係る収入金額を計上すべき時期は、当該土地の引渡しがあった日であり、その引渡しの日がいつであるかは、売買代金の受領状況や移転登記時期等の諸事情を総合勘案して判断するのが相当である。
 これを上記Aの認定事実に基づき本件についてみると、物件5、10、13、18、25、27ないし29及び32についてはいずれも昭和63年中に引渡しがあったものと認められ、物件22、26、30、31、33及び34については、平成元年中にそれぞれ引渡しがあったものと認められる。
 なお、請求人は、物件13は、丙約定不動産に該当する物件10の代替地であることを理由に平成2年分である旨主張するが、上記のとおり物件10の引渡し自体が昭和63年分と認められるから、請求人の主張は採用できない。
 また、請求人は、物件18に関し、建物建築を条件としたことを理由に平成2年分である旨主張するところ、確かに請求人提出資料によれば請求人は、株式会社jとの間で、昭和63年10月11日に同土地上に建物を建築し、本件土地とともに一括して買主に売り渡す旨の契約を締結していることが認められる。
 しかし、同契約の第6条によれば、土地の所有権移転及び明渡し時期は、当該契約締結時(土地残代金、建物代金の一部の支払時期)と規定され、この土地残代金は別表3のとおり昭和63年10月11日に支払われ、移転登記も同日になされているから、建物引渡しの時期等を考慮するまでもなく、昭和63年中に引渡しがされたと認めるのが相当である。
C 以上によれば、物件5、10、13、18、25、27ないし29及び32の譲渡に係る収入金額の計上時期は昭和63年分となり、物件22、26、30、3丸133及び34の計上時期は、平成元年分となる。
 そうすると、平成2年分に計上すべき物件の譲渡に係る収入金額はないことになる。
(ロ)所得金額について
 本件物件には、土地のほか家屋も含まれているものもあるが、家屋の経済的価値はなく、各売買契約の金額が土地のみの価額であることについては当事者間に争いはなく、当審判所に提出された資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。
A 収入金額について
(A)物件27については、請求人等が、M信用金庫から昭和63年1月18日付の売買契約書のとおり購入し、e社へ同日付の売買契約書のとおり譲渡したものであること、D社の物件台帳に、譲渡代金、取得費用等の売買代金が取引金額の総額で経理処理されていること等から、仲介料のみの取引ではなかったことが認められ、土地の売買であるとするのが相当である。
(B)本件物件の各譲渡価額については、当事者間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 そうすると、収入金額の合計額は、別表6―1及び別表6―2の「収入金額」欄に記載のとおり昭和63年分が2,939,114,613円、平成元年分が10,762,165,000円となる。
B 請求人等が共同で負担すべき売上原価の額について
(A)物件30及び31の売上原価の額について争いがあるので、以下検討する。
a 請求人は、昭和63年6月3日付でEに支払った手数料15,000,000円は請求人が単独で支払ったものでありD社とは関係のないものである旨主張するが、当審判所が調査した結果によれば、次の事実が認められる。
(a)D社の物件台帳には、当該2物件の原価として記載されていること。
(b)請求人の土地売買明細ノートには、当該2物件の収支項目の箇所に、○○紹介料として記載され○○とは物件30の土地購入資金の借入れに利用した金融機関を意味すると認められること。
(c)請求人の総勘定元帳には、仮受金勘定の項目に、Eの手数料を現金で支出したことが記載されているところ、当該仮受金勘定は、D社からの前受金と請求人の本件事業に係る支出金との収支が記帳されており、本件事業についてのD社との精算状況を記録したものであると認められること。
 以上のような請求人とD社の経理処理の状況に照らせば、この支払は本件事業に係るものであると認められるから、Eへ支払った手数料は、当該2物件の売上原価に算入するのが相当である。
b 当該2物件の売上原価については、上記aのほかにも次表のとおり争いがあるが、当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によれば、次のとおりとするのが相当である。
(a)登記費用の原処分庁主張額24,527,700円には、200円の印紙代が計上漏れとなっていること。
(b)町内会費20,000円は、D社の物件台帳に記載されており売上原価に算入するのが相当であること。ただし、原処分庁は1,800円を過少に計上していることが認められること。
(c)契約書印紙代は、売買契約書及び領収書の記載金額からみて請求人の計上額が適正であり、原処分庁が、660,000円過少に計上していることが認められること。
(d)保証小切手作成費用、銀行振込手数料及びその他雑費については、D社の物件台帳ほか請求人の帳簿に記載されていることから、原処分庁の過少計上であると認められること。

 以上により、当該2物件の売上原価は、請求人主張額である8,175,974,228円に上表の差額15,020,000円を加算した額の8,190,994,228円となり、原処分庁は1,847,735円を過少に計上していたこととなる。
(B)本件物件のうち、前記物件30及び31の2物件を除く物件の売上原価には当事者間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 そうすると、売上原価の額の合計額は、別表6―1及び別表6―2の「請求人とD社が共同で負担すべき売上原価の額」欄に記載のとおり昭和63年分が2,523,683,684円、平成元年分が9,430,380,683円となる。
C D社に対する利益分配金の額について
 D社への利益分配率は、物件18は零でその他はすべて50パーセントであること及び収入金額から売上原価の額を差し引いた額にD社への利益分配率を乗じた額が分離課税の事業所得に係る必要経費の額になることについては、当事者間に争いはなく、審判所の調査の結果によっても相当と認められる。
 そうすると、必要経費に算入されるD社に対する利益分配金の額は、別表6―1及び6―2の「D社に対する利益分配金の額」欄に記載のとおり、昭和63年分が174,885,951円、平成元年分が665,892,181円となる。
D 販売費及び一般管理費の額について
(A)租税公課について
 租税公課の額について争いがあるので、以下この点について検討する。
a 当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料等を調査した結果によれば、丸1原処分庁が利子所得に係る源泉徴収税額として必要経費に算入できないとした額には昭和63年3月18日の49円を計上していないこと並びに丸2租税公課のうち1,196,056円は、物件18の売上原価として算入済みの不動産取得税958,600円、固定資産税127,456円、契約書及び領収書印紙代110,000円が重複計上されていることが認めらる。
b したがって、租税公課として必要経費に算入すべき金額は3,157,150円となる。
(B)販売手数料について
a 租税特別措置法第28条の5第1項は、超短期所有分に係る事業所得の金額については、同法施行令第19条《超短期所有土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例》第2項で定めるところにより計算した金額に対して所得税を課すると規定している。そして、同法施行令第19条第2項では、超短期所有分に係る事業所得の金額は、収入金額から以下の金額の合計額を控除した金額とする旨規定している。
(a)当該土地の譲渡等に係る土地等の原価の額として所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項の規定に準じて計算した金額。
(b)土地の譲渡を行った年中に支払うべき負債の利子の額のうち当該土地の譲渡等に係る部分の金額。
(c)上記(a)、(b)に掲げるもののほか、当該土地の譲渡等のために要した販売費及び一般管理費の額。
 請求人は販売手数料70,330,000円のうち64,830,000円が分離課税の事業所得のみに係る販売費等であり、5,550,000円は共通販売費等である旨主張する。
 しかしながら、請求人は、当該販売手数料が、本件事業に関する費用であるとしながら、当審判所に対し、当該販売手数料は本件物件個々に割り振りできない必要経費である旨答述しており、また、当該販売手数料が本件物件に係る上記aの(a)ないし(c)に該当することを裏付ける証拠もないことから、分離課税の事業所得のみに係る販売費等に算入することはできず、当該販売手数料は、その全額を昭和63年分の共通販売費等に算入するのが相当である。
b また、原処分庁が平成2年分の設計不動産業に係る販売費等としている販売手数料の49,909,000円について、請求人は、このうちの39,900,000円が分離課税の事業所得のみに係る販売費等に算入すべきである旨主張するが、当審判所は前記(イ)のCで平成2年中には分離課税の事業所得に係る収入金額がないと認定していることから、上記39,900,000円も設計不動産業に係る販売費等となる。
c Hの手数料等について検討すると、確かに請求人の妻である同女は平成元年3月に東京に転出している。
 しかし、上記手数料が本件事業に係るものであることを裏付ける証拠は認められないことのほか、同女が平成元年分までは請求人の青色専従者であったことが、前記認定のとおり本件事業が平成2年には廃止されていることを考え併せると、上記手数料等の支払がされたとしても、それは同女が妻として請求人と同居し、生計を一にしていた期間の役務に対応するものと解さざるを得ないから、所得税法第56条の規定により必要経費に算入することはできないとするのが相当である。
(C)支払報酬28,233,606円については、その支払が本件事業に係るものであることを裏付ける証拠が認められないから、共通販売費等として必要経費に算入するのが相当である。
(D)雑損失について
 本件手付金による損失の計上年分について争いがあるので、以下検討する。
 当審判所が、請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によれば、次の事実が認められる。
a 請求人は、昭和63年8月21日に、売主であるB社との間で、N社の所有するA国の土地を購入する契約を締結し、土地購入契約書を作成したこと。
b 上記土地購入契約書には「買主(請求人)に債務不履行があった場合、売主は購入手付金を返却しないことができる」旨の条項があること。
c 請求人は、土地購入契約書に記載された支払期日である昭和63年12月7日までに残金を支払わなかったため、同月9日、B社から債務不履行を理由に契約は破棄され、本件手付金を没収されたこと。
d N社は、同月11日に、当該土地をmコーポレーション(以下「m社」という。)に売却したこと。
e 請求人は、平成元年2月17日にB社、N社及びm社の3社を被告として、当該土地を再度有利な条件で取得できるように、A国の裁判所に訴訟を提起したこと。
 以上の事実から、本件手付金による損失は、請求人が契約の支払期日までに残金債務を履行しなかったため、没収されたものと認められるから、残金債務の支払期日である昭和63年12月7日ないし当該意思表示のされた同月9日に確定したものとするのが相当である。
 ところで、本件手付金による損失の金額は、前記(B)のaの(a)ないし(c)に該当しないから、共通販売費等として必要経費に算入すべきである。
(E)本件株式の評価損について
 請求人は、本件株式の評価損は、請求人の事業遂行上生じたものであるから、所得税法第51条第1項に規定する必要経費に該当する旨主張する。
 しかし、そもそも株式は有価証券であり、固定資産でない(所得税法第2条第1項第17号及び18号)ので、所得税法第51条第1項、同法施行令第140条《固定資産に準ずる資産の範囲》に定める固定資産その他これに準ずる資産に該当せず、また、当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によっても、Wグループ各社及びX社が請求人の事業に係る取引先であることを認めるに足りる証拠はなく、本件株式が請求人の事業の用に供されたとはいえないから本件株式の評価損が生じたとしても、それを必要経費に算入することはできない。
(F)本件貸付金の回収不能額について
 請求人は、本件貸付金の回収不能額を貸倒損失として必要経費に算入すべきである旨主張する。
 しかし、当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によっても、当該貸付先が、請求人の事業に係る取引先であることを認めるに足りる証拠もないことから、請求人主張の貸倒損が生じたとしても、それは、請求人の事業の遂行上生じたものとはいえない。
 したがって、当該損失を所得税法第51条第2項の規定による必要経費に算入することはできない。
(G)青色事業専従者給与相当額について
 請求人は事業専従者給与相当額については、所轄税務署に青色事業専従者給与の額として届け出た金額が全額必要経費に算入できるものであるとしてその額と実際の支払額との差額を青色事業専従者給与相当額として必要経費に算入すべきである旨主張する。
 しかし、所得税法第57条《事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例》は、必要経費に算入する青色事業専従者給与の額を「給与の支払を受けた場合」に限っているから、青色専従者給与の未払額を必要経費に算入することはできない。
(H)事業廃止に伴う所得計算の特例の適用について
 請求人は、本件事業廃止後の費用発生額を平成2年分の必要経費に算入すべきである旨主張する。
 しかし、所得税法第63条の規定に該当する事実が発生した場合は、所得税法第152条(各種所得の金額に異動が生じた場合の更正の請求の特例》の規定により、更正の請求をすることができる旨定められているのであるから、事業廃止後の費用発生額は、上記所得税法第152条による更正の請求により処理すべきと解するのが相当である。
 したがって、上記更正の請求を経ていない本件においては、これを必要経費に算入することはできない。
(I)共通販売費等の額について
 各年分の共通販売費等の額については、別表7の「審判所認定額」欄に記載のとおり昭和63年分が590,128,004円、平成元年分が176,078,066円となる。
(J)分離課税の事業所得に係る販売費及び一般管理費について
 分離課税の事業所得のみに係る販売費等については、別表9の「審判所認定額」欄に記載のとおり、昭和63年分が0円、平成元年分が当事者間に争いのない額の121,200,000円である。また、上記(I)で認定した共通販売費等を基に当事者間に争いがなく当審判所の調査によっても相当と認められる共通販売費等のあん分計算の方法によって計算をすると、分離課税に対応する共通販売費の額は、別表8―1及び8―2の「審判所認定額」欄に記載のとおり昭和63年分が508,690,339円となり、平成元年分が167,837,613円となる。
(K)青色事業専従者給与の額について
 各年分の当事者間に争いのない青色事業専従者給与の額のうち分離課税の事業所得に対応する金額は、別表10―1及び10―2の「審判所認定額」欄に記載のとおり昭和63年分が26,421,300円となり、平成元年分が31,280,700円となる。
E 所得金額について
 前記(A)ないし(K)から、各年分の分離課税の事業所得の金額は、別表6―1及び別表6―2の「所得金額」欄に記載のとおり昭和63年分が294,566,661円の損失となり、平成元年分が345,573,868円となる。
ロ 総合課税の事業所得等について
(イ)設計不動産業に係る事業所得について
A 収入金額について
(A)物件27の収入金額について
 物件27については、前記イの(ロ)のAの(A)のとおり、設計不動産業に係る取引ではなく、分離課税の事業所得に係る取引であると認められるから、請求人が設計不動産業の収入金額に計上した3,365,000円を控除することとなる。
(B)本件受取利息について
 請求人は本件受取利息は、事業所得に係る雑収入である旨主張する。
 しかし、当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によっても、当該貸付先が請求人の営む事業に係る取引先であることや、請求人が事業遂行上貸し付けたことを裏付ける証拠は認められない。
 したがって、本件受取利息は事業所得に係る雑収入でなく、雑所得とするのが相当である。
 また、請求人の総勘定元帳に記帳された本件受取利息の額は13,318,629円であることが認められるから、請求人が平成元年分の不動産業の雑収入として計上している金額から7,050,000円を控除し、雑所得として新たに13,318,629円を加算することとなる。
(C)各年分の設計不動産業の収入金額は別表11―1ないし11―3の「審判所認定額」欄に記載のとおり、昭和63年分が、「請求人主張額」から上記(A)の3,365,000円を控除した91,741,000円、平成元年分が、「請求人主張額」から上記(B)の7,050,000円を控除した89,478,000円となり、平成2年分は、当事者間に争いのない1,191,696,439円となる。
B 売上原価について
(A)不動産仲介手数料について
a 請求人は、iへ支払った手数料を不動産仲介業の売上原価に算入すべきである旨主張する。
 当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によれば、iは、請求人の青色事業専従者であるCの妻であること及びCと同居していると認められることから、請求人とiも生計を一にしているとするのが相当である。
 したがって、iの手数料2,000,000円は、設計不動産業に係る売上原価に算入することはできない。
b また、請求人が仲介取引の際に印紙代2,000円を負担したことは、請求人の物件明細を記帳した帳簿により確認できるから、当該2,000円は不動産仲介業の売上原価に算入すべきである。
(B)各年分の売上原価の額は、別表11―1ないし11―3の「審判所認定額」欄に記載のとおり、昭和63年分が、当事者間に争いのない16,505,000円となり、平成元年分が「請求人主張額」から上記(A)の2,000,000円を控除すると26,959,525円となり、平成2年分が、当事者間に争いのない703,405,200円となる。
C 販売費及び一般管理費について
(A)平成2年分のkへの販売手数料の金額は8,000,000円である旨の請求人の主張について当審判所が請求人提出資料及び原処分関係資料を調査した結果によればkへの手数料支払額は、8,000,000円であることが認められる。
 したがって、原処分庁が過少計上した81,000円を平成2年分の設計不動産業のみに係る販売費等に算入すべきである。
(B)各年分の共通販売費等の額のうち、設計不動産業の事業所得に対応する金額は、当事者間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる共通販売費のあん分計算の方法によって計算すると、別表8―1及び8―2の「審判所認定額」欄に記載のとおり昭和63年分が81,437,665円、平成元年分が8,240,453円となる。
(C)各年分の販売費及び一般管理費は別表11―1ないし11―3の「審判所認定額」欄に記載のとおり、昭和63年分が上記(B)の81,437,665円、平成元年分が上記(B)の8,240,453円に当事者間に争いのない4,922,286円を加算した13,162,739円、平成2年分が当審判所の調査によっても同額と認められる「原処分庁主張額」の169,852,486円に前記(A)の81,000円を加算した169,933,486円となる。
D 所得金額について
 前記AないしCから、各年分の設計不動産業に係る事業所得の金額は、別表11―1ないし11―3の「審判所認定額(10)」欄に記載のとおり昭和63年分が3,066,895円の損失、平成元年分が49,355,736円、平成2年分が318,357,753円となる。
(ロ)青色事業専従者給与の額について
 各年分の青色事業専従者給与の額のうち、総合課税の事業所得に対応する金額は、当事者間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても相当と認められる青色事業専従者給与のあん分計算の方法によって計算すると、別表11―1ないし11―3の「審判所認定額」の欄に記載のとおり昭和63年分が4,578,700円、平成元年分が1,719,300円、平成2年分が6,000,000円となる。
(ハ)青色申告控除額について
 請求人は青色申告者であるから租税特別措置法第25条の3の規定により総合課税の事業所得の金額の計算上、青色申告控除額100,000円を控除することとなるので、これを各年分についてみると、昭和63年分は、事業所得金額が損失であるため控除できないが、平成元年分及び平成2年分はそれぞれ100,000円を控除することとなる。
(ニ)総合課税の事業所得の金額について
 前記(イ)のDに、当事者間に争いのない各年分の洋品業に係る事業所得の金額を加算し、上記(ロ)及び(ハ)の金額を減算すると、総合課税の事業所得の金額は、昭和63年分が46,386,211円の損失、平成元年分が49,450,089円、平成2年分が312,240,682円となる。
ハ 総所得金額及び分離課税の事業所得の金額について
 以上認定したところに従い、各年分の所得金額及び純損失の金額を計算すると次のとおりである。
(イ)昭和63年分
 当年分は、総合課税の事業所得及び分離課税の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額があるので損益通算をして純損失の金額を計算すると、雑所得の金額9,400円から総合課税の事業所得の損失の金額46,386,211円を控除した46,376,811円が、総所得金額の計算上生じた損失の部分の金額となり、分離課税の事業所得の損失の金額294,566,661円が分離課税の事業所得の金額の計算上生じた損失の部分の金額となり、この合計340,943,472円が純損失の金額となる。
 この純損失の金額は、更正処分において認定した所得の金額を下回るから、昭和63年分の更正処分は取り消すのが相当である。
 なお、翌年に繰り越す純損失の金額は、本件更正の請求において請求人が主張する損失の額324,918,832円が限度となるから、上記認定の純損失の金額340,943,472円と請求人が主張する損失の額324,918,832円との差額16,024,640円を上記認定の総所得金額の計算上生じた損失の部分の金額46,376,811円から控除した額30,352,171円及び分離課税の事業所得の金額の計算上生じた損失の部分の金額294,566,661円の合計324,918,832円が翌年へ繰り越す純損失の金額となる。
(ロ)平成元年分
 総所得金額は、総合課税の事業所得の金額49,450,089円に雑所得の金額13,354,429円を加算した62,804,518円から、前年から繰り越された純損失の金額のうち総所得金額の計算上生じた損失の部分の金額30,352,171円を控除した32,452,347円となり、分離課税の事業所得の金額は、345,573,868円から前年から繰り越された純損失の金額のうち分離課税の事業所得の金額の計算上生じた損失の部分の金額294,566,661円を控除した51,007,207円となる。
 この額は、いずれも更正処分の額を上回るから平成元年分の更正処分は相当である。
(ハ)平成2年分
 総合課税の事業所得の金額は312,240,682円であり、この額は更正処分を下回ることとなる。
 ただし、当審判所が、平成2年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定通知書の別表を検討したところ「所得金額から差し引かれる金額」欄の「所得控除額の計」欄の金額を100,000円過大に記載している誤りが認められることから、納付すべき税額は本件更正処分の額を上回ることとなる。
 したがって、平成2年分の更正処分は相当である。

トップに戻る

(2)更正をすべき理由がない旨の通知について

 前記(1)のハの(イ)のとおり、請求人の昭和63年分の純損失の金額は、340,943,472円となり、本件更正の請求において請求人が主張する額を上回ることとなるので本件更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知は取り消すべきである。

(3)過少申告加算税の賦課決定処分について

 以上のとおり、昭和63年分の更正処分はその全部を取り消すこととなるから、これに伴い過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すこととなる。
 また、平成元年分及び平成2年分については、本件更正処分は前記(1)のハの(ロ)及び(ハ)のとおり適法であり、請求人には本件確定申告の税額を計算するに当たり、原処分庁が、過少申告加算税の基礎とした税額に係る事実を本件確定申告の税額の基礎としなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、平成元年分及び平成2年分の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(4)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る