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(平7.2.20裁決、裁決事例集No.49 624頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 F税務署長は、平成元年3月8日付で審査請求人(以下「請求人」という。)の所有する別表記載の不動産について差押処分をした。
 原処分庁は、平成3年6月24日付で国税通則法第43条第3項《国税の徴収の所轄庁》の規定によりF税務署長から引継ぎを受け、請求人の滞納国税を徴収するため、同差押物件に対して行われた競売事件(E地方裁判所・平成4年(ケ)第〇〇〇号事件をいう。以下同じ。)において、E地方裁判所が強制執行の続行決定をしたことから、平成5年2月23日付で同裁判所に対し交付要求(以下「本件交付要求」という。)をした。
 請求人は、これを不服として、平成5年3月8日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月7日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成5年10月6日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分庁は、F税務署長がした昭和63年2月29日付の昭和61年分所得税の更正処分並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件課税処分」という。)が違法な課税処分であるにもかかわらず、本件課税処分により確定した納付すべき税額を含む滞納国税を徴収するために本件交付要求をした。
 しかしながら、本件交付要求は、違法な課税処分に基づき発生した滞納国税等を徴収するために行われた違法な処分であるから、その全部の取消しを求める。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法である。
イ 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律(以下「滞調法」という。)第12条《強制競売開始の通知》第1項の規定によれば、強制競売の開始決定は、滞納処分による差押えがされている不動産に対してもすることができるとされ、同条第2項の規定によれば、その開始決定があった時は、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならないとされている。
 また、同法第13条《強制競売の手続の制限》の規定によれば、強制競売の開始決定をした不動産については、その売却のための手続は、滞納処分による差押えが解除された後でなければすることができないとされているが、強制執行続行の決定がされたときはこの限りではないとされている。
 さらに、同法第17条《売却代金の残余の交付等の規定の準用》で準用する同法第9条《強制執行続行の決定》の規定による強制執行続行の決定があった場合には、同法第10条第1項の規定により、滞納処分による差押えは、強制執行による差押え後にされたものとみなされ、同条第3項の規定により、徴収職員等は、滞納処分による差押えに係る国税等を徴収するには、執行裁判所にその交付を求めなければならないとされている。
ロ 本件の場合、原処分庁は、平成元年3月8日付で本件不動産を差押えていたが、その後、平成5年2月15日付で本件競売事件について続行決定があったことから、本件滞納国税を徴収するために本件交付要求を行ったものである。
ハ 以上のとおり、本件交付要求は、滞調法の規定に基づき適法に行われている。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件交付要求が違法であるか否かにあるので、以下審理する。
(1)請求人は、本件課税処分を違法であると主張し、当該処分を前提としてなされた原処分も違法で取り消すべきであると主張するので審理したところ、次のとおりである。
 本件課税処分は、国税の納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させることを目的とする賦課処分であるのに対して、原処分は、その具体化し確定した納税義務の履行を実現するため強制執行及び滞納処分等の強制換価手続をする執行機関に対して、その換価された代金から滞納税額に相当する金員の配当を要求する滞納処分である。
 ところで、賦課処分と滞納処分とは、それぞれその目的を異にする独立の行政処分である。
 そうすると、交付要求は、課税処分の有効なることを前提としてなされるべきであるから、課税処分が無効であるか、又は違法を理由として取り消された場合には、当該処分を前提とした交付要求の違法を招来するが、課税処分に存する違法が単に取り消し得るべき瑕疵に過ぎないときには、それが取り消されない限り課税処分は依然として有効であるから、当該処分の違法性を理由として交付要求の取消しを求めることはできない。
 そこで、これを本件についてみると、当審判所が調査したところによれば、本件課税処分が取り消されたという事実はなく、また、本件課税処分を無効ならしめるような重大かつ明白な瑕疵があると認めるに足る証拠もないから、本件課税処分に係る違法を理由として原処分の取消しを求めることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(2)当審判所が原処分関係資料を調査したところによれば、国税徴収法及び滞調法に照らし、本件交付要求の手続に瑕疵はなく、本件交付要求は適法であることが認められる。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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別表

一棟の建物の表示

(所在)  P市R町四丁目9番地1
(建物の番号)  Aマンション

専有部分の建物の表示

(家屋番号)  R町四丁目9番1の23
(建物の番号)  307
(種類)  居宅
(構造)  鉄骨鉄筋コンクリート造1階建
(床面積)  3階部分51.82平方メートル

敷地権の表示

(所在及び地番) P市R町四丁目9番1
(地目)  宅地
(地積)  3670.63平方メートル
(敷地権の種類) 所有権
(敷地権の割合) 1万分の48

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