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(平8.12.10裁決、裁決事例集No.52 98頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、パチンコ遊技場業を営む同族会社であるが、平成4年8月1日から平成5年7月31日まで、平成5年8月1日から平成6年7月31日まで及び平成6年8月1日から平成7年7月31日までの各事業年度(以下、順次、「平成5年7月期」、「平成6年7月期」及び「平成7年7月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成7年12月25日付で、別表の「当初更正処分等」欄のとおり、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「当初更正処分等」という。)をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成8年2月19日に審査請求をした。
 その後、原処分庁は、平成8年3月5日付で、別表の「当初更正処分等の取消し」欄のとおり、当初更正処分等のうち、平成5年7月期の更正処分並びに平成6年7月期の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。
 国税不服審判所長は、平成8年4月9日付で、上記の審査請求のうち、平成5年7月期の更正処分並びに平成6年7月期の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に係る審査請求が、その対象を欠く不適法なものであるとして、審査請求を却下した。
 原処分庁は、平成8年3月8日付で、別表の「再更正処分等」欄のとおり、平成5年7月期の更正処分、平成6年7月期の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに平成7年7月期の再更正処分(以下、これら平成5年7月期及び平成6年7月期の各更正処分及び平成7年7月期の再更正処分と平成7年7月期の当初更正処分を併せて「本件更正処分」という。)をした。
 請求人は、これらの処分のうち、平成5年7月期の更正処分並びに平成6年7月期の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を不服として、平成8年4月16日に審査請求をした。
 そこで、これらの審査請求について併合審理する。
 なお、平成7年7月期の再更正処分についてもあわせ審理する。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正の理由附記について
 法人税法第130条《青色申告書に係る更正》第2項の規定によれば、青色申告書に係る更正の場合は、更正通知書にその更正の理由を附記しなければならないこととされている。
 しかしながら、平成7年12月25日付でなされた平成7年7月期の当初更正処分等に係る更正通知書と更正の理由書は、編てつされておらず更正の理由が不明である。
 したがって、上記更正処分は、法人税法の上記規定に反した理由附記のない違法なものである。
ロ 更正処分について
(イ)請求人は、平成4年11月6日に請求人と有限会社G(以下「G社」という。)の代表取締役H(以下「H」という。)及び同社取締役J(以下「J」という。)との間で、G社の資本の総額5,000,000円及び許可営業であるパチンコ遊技場経営の権利を併せて、160,000,000円で譲り受けるとする営業譲渡契約(以下「本件契約」という。)を、口頭により締結した。
(ロ)本件契約の内容については、契約締結日に、同日付で譲渡人側から会社営業譲渡証書(以下「本件証書」という。)が請求人に差入れ交付されたことから、請求人は、本件証書に基づき、G社のパチンコ営業に係る店舗の賃貸人である株式会社K(以下「K社」という。)に対する敷金2,000,000円を控除した残額の158,000,000円を支払った。
(ハ)請求人は、平成4年11月20日にG社の資産及び負債の全部を引継ぎ、同日現在のG社の正味財産が10,308,552円であったことから、上記(ロ)の譲受金額158,000,000円のうち11,000,000円を出資金とした。
 出資金の額11,000,000円を差し引いた残額147,000,000円(以下「本件金員」という。)については、法人税法施行令第13条《減価償却資産の範囲》第8号リに規定する営業権に該当することから、請求人は、本件各事業年度において営業権に係る減価償却費7,350,000円を損金の額に算入した。
(ニ)原処分庁は、本件金員は有限会社であるG社の社員持分の対価の一部として支払われたもので、法人税法第2条《定義》第22号に規定する有価証券の取得価額の一部であり、本件各事業年度における営業権の減価償却費を損金の額に算入しないとする更正処分をした。
(ホ)しかしながら、本件金員は、G社の店舗の所在地が立地条件の良いP市駅前の繁華街に位置していることから、同市の他の地区の営業者に比べ、超過収益が得られる無形の財産的価値の見積金額であり、将来のG社の営業利益によって償却されるべき営業権の取得対価にほかならないのであって、時の経過とともに価値の下がるものである。
 したがって、本件金員は営業権の取得対価であり、原処分庁が主張するような有価証券の取得価額の一部であるとの認識はない。
(ヘ)請求人は、パチンコ営業の許可をG社名義のままとしたのは、新たに請求人名義で許可を取得する場合、遊技場内の景品陳列等のスペースを10パーセント確保する必要があるなどの制約があり、そのスペースを確保すればパチンコ台数が減少することになるため、営業が成り立たなくなるという事情があったからである。
 しかしながら、請求人は、G社の出資金を100パーセント保有しており、代表取締役も請求人のそれと同じであることから、G社から新たに役員等の報酬を受け、更に増額することにより請求人の役員等の報酬を減額できることから、結果として請求人に利益が還元されるものである。
 したがって、G社に係る営業権は実質的には請求人に帰属するものであり、本件金員を営業権として、本件各事業年度において減価償却費7,350,000円を損金の額に算入したことは正当である。
ハ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イ及びロのとおり、本件更正処分は違法でありその全部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正の理由附記について
 更正通知書と更正の理由書は適正に送付されており、仮に双方が編てつされていなかったとしても、更正の理由書に記載されている営業権の償却年月日が平成7年7月31日となっており、平成7年7月期の更正通知書と、当該更正通知書に係る更正の理由書の判別は可能であることから、請求人は、原処分の理由及び処分対象事業年度を具体的に知ることができる。
 したがって、理由附記に不備があり、違法である旨の請求人の主張には理由がない。
ロ 更正処分について
(イ)原処分調査によると、次の事実が認められる。
A 請求人は、請求人とH及びJとの間で、G社の全部を160,000,000円(その後158,000,000円に減額変更)で譲り受ける旨の本件契約を、平成4年11月6日に締結するとともに本件証書の差入れを受け、本件証書に基づき同日契約手付金として30,000,000円を、また、同月20日に残金128,000,000円、合わせて158,000,000円をその譲受代金として支払っていること。
B G社は、Q県公安委員会から昭和49年12月20日付で、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条《用語の意義》第1項第7号に規定する「ぱちんこ屋」の営業許可を得て現在に至っていること。
C G社は、P市R町36番地1(住居表示は12番25号)において、パチンコ店「L駅前店(平成5年11月3日に、「〇〇ホール」の名称を改称したもの。)」を営業していること。
 なお、G社の店舗は、K社から月額800,000円で賃借しており、平成4年11月20日に締結された建物賃貸借契約書によれば、その賃借期間は、平成4年11月21日から10年間で、賃借人の申出により10年間の更新ができる旨の記載があること。
D 請求人の代表取締役M(以下「M」という。)は、平成4年11月20日にG社の代表取締役に就任して現在に至っていること。
E 請求人は、平成5年7月期末において、上記Aの158,000,000円のうち11,000,000円をG社に係る出資金の額とし、本件金員を営業権の価額として経理していること。
F 請求人は、営業権に係る減価償却費7,350,000円を本件各事業年度の期末において損金の額に算入していること。
G G社の社員持分を有していたH、J、N及びTは、出資金の譲渡対価を有価証券の譲渡所得金額として、原処分庁に平成4年分の所得税の確定申告をしていること。
(ロ)ところで、法人税法第2条第22号の規定によると、有価証券とは「有価証券取引税法第2条《定義》に規定する有価証券その他これに準ずるもので政令で定めるものをいう」とされ、法人税法施行令第11条《有価証券に準ずるものの範囲》第3号において、有限会社の社員の持分も有価証券に準ずるものとして取り扱われている。
(ハ)これを本件についてみると、パチンコ営業の許可を受けてパチンコ店を営業しているのはG社であり、当該店舗の賃借人もG社であることからすると、請求人が主張する超過収益力(営業権)はG社に帰属するものであり、本件証書によって請求人に帰属するものではない。
営業許可は、名義上も実質上もG社に帰属していることは明白であり、請求人は、請求人の役員等がG社から新たに報酬を受けることにより、請求人の役員等の報酬を減額できることから、結果として請求人に利益が還元されると主張するが、このことが営業権の取得根拠となるものでもない。
 したがって、請求人は、本件証書によりG社が有する(a)パチンコ営業許可、(b)店舗賃借権及び(c)G社の企業支配権の対価等の価値を含めて、同社の持分を158,000,000円と評価しこれを譲受けたものと判断される。
(ニ)以上のとおり、請求人が本件証書により支払った158,000,000円は、G社の持分を評価して譲り受けたものであり、時の経過とともに価値が下がる下がらないにかかわらず有価証券の取得価額を構成するものである。
 そうすると、有価証券は減価償却資産に該当しないから、請求人が、本件各事業年度において損金経理した営業権の減価償却費7,350,000円を損金の額に算入しないとする本件更正処分は、いずれも適法である。
ハ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記ロのとおり、本件更正処分はいずれも適法であり、また、請求人には国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、平成7年7月期の更正処分に係る更正通知書への理由附記の不備の存否及び本件金員が法人税法施行令第13条第8号リに規定する営業権に該当するか否かにあるので、以下審理する。

(1)更正の理由附記について

 請求人は、平成7年7月期の更正処分に係る更正通知書と更正の理由書は編てつされておらず、更正の理由が不明であることから理由附記の不備に当たり違法である旨主張するので、以下検討する。
イ 当初更正処分等に係る更正通知書と更正の理由書は、同封して一括送付されたものであることについては請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
ロ 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によると、次の事実が認められる。
(イ)当初更正処分等に係る更正通知書と更正の理由書には、金具あるいは糊等により、双方が編てつされた形跡がないこと。
(ロ)平成7年7月期の更正通知書に同封された更正の理由書には、次の記載があること。
A 加算欄
 平成7年7月31日当該営業権の償却費として7,350,000円を損金の額に算入しているが、法人税法施行令第13条第8号リに規定する営業権に該当せず、損金の額に算入されない旨。
B 減算欄
 前事業年度に係る所得金額増加に伴う事業税1,764,000円を損金の額に算入する旨。
C 差引所得加算額は5,586,000円である旨。
ハ ところで、法人税法第130条第2項は、青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には、更正通知書にその更正の理由を附記すべきものと規定している。
 法人税法は、青色申告制度を採用し、青色申告に係る所得計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保証しているところであるが、同法第130条第2項の規定は、青色申告書に係る更正処分を行う場合には、青色申告制度の趣旨にかんがみ、原処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正処分の理由を納税者に理解させ、不服申立ての便宜を与えるとの趣旨によるものと解されている。
 また、その理由附記の程度としては、納税者の申告のいかなる点にどのような誤りがあり、また、更正された数値がどのようにして算出されたものであるかが理解できる程度であれば足りるものと解されている。
二 これを本件についてみると、上記ロの(イ)のとおり、更正通知書と更正の理由書が編てつされた形跡は認められないものの、上記ロの(ロ)のとおり、当該更正の理由書には、請求人が、営業権の償却費7,350,000円を損金の額へ算入した時期を、平成7年7月31日と特定した記載があること、また、事業税1,764,000円の認容後の差引所得加算額が5,586,000円であるとの記載があることから、更正通知書に記載された所得金額等と更正の理由書の金額等との対比により、更正の理由書の特定は可能であったことが認められる。
 そうすると、更正通知書と更正の理由書が編てつされていなかったとしても、更正通知書に同封された当該更正の理由書が、平成7年7月期の更正通知書に係る更正の理由書であることは、一般的に、容易に確認できる状態にあったものと推認され、請求人は、原処分の理由及び処分対象事業年度を具体的に知ることができるものと判断するのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(2)更正処分について

 請求人は、本件金員は営業権に該当し、本件各事業年度において営業権の減価償却費として損金の額に算入したことは正当である旨主張するので、以下検討する。
イ 次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)G社は、昭和44年7月22日に有限会社として設立登記され、解散若しくは清算又は合併等の事実はなく現在まで継続している法人であること。
(ロ)G社は、昭和49年12月20日付でQ県公安委員会からパチンコ営業に係る許可を受けていること。
(ハ)請求人は、本件証書に基づくG社のパチンコ営業(P市R町36番地1)の譲受けに関し、新たにQ県公安委員会からパチンコ営業に係る許可を受けた事実はなく、現在もG社がパチンコ遊技場業を営みその事業に係る収益を計上し、法人税の申告書を提出していること。
ロ 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によると、次の事実が認められる。
(イ)本件契約は、請求人の役員であり実質的なオーナーであるV(以下「V」という。)とHとの間で締結され、Vが本件証書の内容を確認していること。
(ロ)G社の商業登記簿謄本によると、資本の総額は5,000,000円で、出資1口の金額は10,000円であること。また、Mは、平成4年11月20日付でG社の代表取締役に就任していること。
(ハ)G社の平成4年7月1日から平成5年6月30日まで、平成5年7月1日から平成6年6月30日まで及び平成6年7月1日から平成7年6月30日までの各事業年度の法人税の確定申告書別表二「同族会社の判定に関する明細書」によれば、出資金額5,000,000円の全部を請求人が保有していること。
 また、同申告書に添付された「地代家賃等の内訳書」によると、各事業年度とも、賃貸借契約に基づいた額が家賃としてK社に対して支払われていること。
(ニ)請求人は、本件証書に基づく譲受金額について、次のとおり会計処理を行っている。
A Hに対して、平成4年11月6日に30,000,000円を、同月20日に128,000,000円を仮払金勘定に計上していること。
B 平成5年7月31日、上記のHに対する仮払金合計158,000,000円を取り崩して、11,000,000円を出資金勘定に、また、147,000,000円を営業権勘定に計上していること。
C 上記Bの営業権に係る減価償却費として7,350,000円を、本件各事業年度末において損金の額に算入していること。
ハ Vは、当審判所に対して、次のとおり答述している。
(イ)G社を引き継ぐことになったのは、Hから、高齢で後継者もなくパチンコ営業をやめたい旨の相談を受けたことから、平成4年11月6日に、口頭契約によりG社の営業権を譲り受けることとしたものであること。
(ロ)その際、Hは、口頭契約の内容を記載した本件証書を持参してきたが、本件証書の譲受人は請求人であるのにV個人となっていたことから、請求人の社判を自分が押印して、口頭契約の当日、本件証書を取り交わしたこと。
 なお、譲受金額は、Hの提示額であること。
二 ところで、法人税法上、営業権の定義に係る明文の規定はないが、一般的に営業権とは、当該企業を構成する特有の名声、信用、営業上の秘訣、経営組識等が当該企業の下で有機的に結合された結果、超過収益力を生ずるに至った場合に、その企業を構成する物又は権利とは別個独立の財産的価値として評価を受くべき事実関係をいうものとされ、これは企業の活動中に創出され、法人の合併、他企業の買収のように営業の全部又は一部の包括的移転の際に実現するものと解される。
 また、商法第285条の7の規定によれば、のれんは、有償取得又は合併によって取得したものに限り資産として計上することが認められ、さらに、企業会計原則第3の5《資産の貸借対照表価額》のE(25)においても、営業権は、有償で譲受け又は合併によって取得したものに限り資産として計上することとされており、法人税法施行令第13条第8号リに規定する営業権についても、商法及び企業会計原則の場合と同様に解するのが相当である。
ホ 次に、法人税法第2条第22号の規定によれば、有価証券とは、有価証券取引税法第2条に規定する有価証券、その他これに準ずるもので政令で定めるものをいうとされ、同法施行令第11条第1項第3号では、有限会社の社員の持分も同法第2条の有価証券に含まれるものとされている。
ヘ そこで、上記イないしハの事実を、上記ニ及びホに照らし判断すると次のとおりである。
(イ)G社には、上記イの(イ)及び(ハ)のとおり、パチンコ営業許可を受けて以来解散あるいは合併等の事実はなく、現在まで継続してパチンコ遊技場業を営みその事業に係る収益を計上し、法人税の確定申告書を所轄税務署に提出していること、またパチンコ営業について、請求人が、新たにQ県公安委員会から営業の許可を受けた事実もなく、パチンコ営業に係る営業許可は請求人とは別法人であるG社が現に有していることは、請求人及び原処分庁ともに争いのないところである。
 さらに、上記ロの(ハ)のとおり、店舗の賃貸借契約は、G社とK社との間において継続しており、請求人が賃借している事実も認められない。
 そうすると、請求人が、将来の期待利益である超過収益力を得るためG社の営業権を取得し、自らの事業の用に供してパチンコ遊技場業を営んでいる事実は認められない。
(ロ)また、請求人は、請求人の代表取締役であるMら役員等がG社から受ける報酬の発生、増額により請求人に係る同人ら役員等の報酬を減額でき、結果としてG社からの利益が請求人に還元されるので、G社の営業権は実質的に請求人に帰属すると主張する。
 請求人は、上記ロの(ロ)及び(ハ)のとおり、G社の出資金額の全部を保有しており、代表取締役も請求人と同じMが平成4年11月20日に就任している事実は認められる。しかしながら、仮に、出資金額の保有による利益が結果として請求人に生じたとしても、代表者が同一であることが営業権の取得の事実を立証するものでもないことは、上記ニの営業権の解釈からも明らかであり、この点、請求人の主張は採用できない。
(ハ)本件契約は、上記2の(1)のロの(ヘ)の請求人の主張からもうかがわれるように、請求人は、G社の店舗の所在地の立地条件等に超過収益力を認めながらも、請求人自ら、同所にパチンコ営業の許可を受け当該事業を主宰するためには、遊技台数の制限等の種々の制約があることからその方法を断念し、G社の出資金の譲受契約の方法によらざるを得なかったものと推察される。
 このことは、請求人がG社の出資金の全部を保有することにより、結果として、G社の許可事業を請求人の支配下に置いたことにほかならないと判断するのが相当である。
(ニ)以上のとおり、本件金員は、請求人の有価証券の取得の認識の有無にかかわらず、法人税法施行令第13条第8号リに規定する営業権の取得対価ではなく、上記ホで述べた有価証券としてのG社の社員の持分を、パチンコ営業許可及び店舗賃借権等の現在価値を総合した実勢価額で評価し、取得した対価であると判断するのが相当であり、本件金員が営業権の取得対価であるとする請求人の主張には理由がない。
 したがって、営業権に係る減価償却費の額を、本件各事業年度の損金の額に算入しないとした本件更正処分は適法である。

(3)過少申告加算税の賦課決定処分について

 過少申告加算税の賦課決定処分については、本件各事業年度の法人税の更正処分は上記のとおり相当であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定をした原処分は適法である。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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