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(平9.10.31裁決、裁決事例集No.54 323頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、建売、土地売買を営む法人であるが、平成5年4月1日から平成6年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)に係る法人税について、青色の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
 次いで、請求人は、原処分庁所属の職員の調査を受け、本件事業年度の法人税について、次表の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を平成6年12月14日に提出し、併せて平成5年4月1日から平成6年3月31日までの課税事業年度の法人特別税について、次表の「期限後申告」欄のとおり記載して同日に申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成6年12月21日付で、次表の「賦課決定処分」欄のとおり、法人税に係る過少申告加算税及び法人特別税に係る無申告加算税の賦課決定処分をした。
 その後、請求人は、平成7年1月10日に本件事業年度の法人税について、次表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
 原処分庁は、これに対し、平成7年4月4日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

 請求人は、この処分を不服として、平成7年4月6日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。原処分のその他の部分については争わない。
イ 本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額及び累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額について
(イ)請求人は、販売用の建物の敷地とするため有限会社J(以下「J社」いう。)から平成3年3月1日にP市R町三丁目111番1の土地736.04平方メートル(以下「甲土地」という。)を売買により取得し(その後、平成5年7月5日にP市R町三丁目111番3の土地262.07平方メートル(以下「乙土地」といい、甲土地と併せて「本件各土地」という。)を取得した。)、甲土地が租税特別措置法(以下「措置法」という。)第62条の2《新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例》第3項第1号に規定する新規取得土地等に該当するものとして、本件事業年度より前の事業年度において、同条第1項の規定により計算した負債の利子の額を所得金額の計算上損金の額に算入しなかったが、以下のとおり、その合計額(累積損金不算入負債利子額)全額を損金の額に算入し、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額を零円とすべきである。
A 措置法第62条の2の規定は請求人には適用されない。
 措置法第62条の2の規定の立法趣旨は、借入れによる土地取得を通じて企業が租税負担を回避する行為を防止し、土地の仮需要により地価が高謄するのを抑制することにあるが、請求人は、新築マンションを販売する目的で本件各土地を取得したものであって、租税負担を回避するために取得したものではなく、また、地価が下落している現在では土地の仮需要により地価が高謄するおそれはない。
 マンションの敷地となる土地は、請求人の売上原価の主要部分を構成し、その取得原資は借入金であるから、請求人が支払った利子の額を支払った事業年度の損金の額に算入できないと会社経営が成り立たたず、また、措置法第62条の2の規定の適用を受ける企業と受けない企業とで租税負担が不公平となる。
B 措置法第62条の2の規定の適用があるとしても、請求人は、本件各土地を敷地として、建物(所在P市R町三丁目111番1・111番3、建物の番号Kビル、構造鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造陸屋根9階建、以下「Kビル」という。)を建築し、本件事業年度において、Kビルの区分所有建物総戸数30戸のうちの一部である別表の「物件番号」欄1ないし10の区分所有建物(以下、「物件1」・・「物件10」などと省略する。)とともに本件各土地の共有持分(敷地利用権)を譲渡しているところ、(1)建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)第22条《分離処分の禁止》第1項の規定によれば、敷地利用権は区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないとされ、不動産登記法第110条の13の規定により敷地権の登記がされたときは当該土地の登記用紙に所有権の移転の登記ができないとされており、敷地の処分は区分所有者の敷地利用権により制約されていること、(2)区分所有者は敷地利用権の割合にかかわりなく、敷地全体をいつでも自由に利用することができることからすると、請求人がKビルの区分所有建物のうち1戸でも譲渡すれば、本件事業年度において、本件各土地全体を譲渡したのと同一に扱われるべきであるから、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額を零円とし、累積損金不算入負債利子額全額を損金の額に算入すべきである。
(ロ)なお、請求人に措置法第62条の2の規定の適用があり、本件事業年度において、本件各土地全体を譲渡したのとは同一に扱えないとした場合においても、Kビルの販売のため新聞広告をし、Kビルを販売の用に供した日である平成5年10月30日を同条第3項第2号に規定する負債利子損金不算入期間の末日であるとして、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額を計算すべきである。
ロ Kビルに係る譲渡収入の額及び譲渡原価の額について
 請求人は、本件事業年度の修正申告において、Kビルの区分所有建物のうち物件11を譲渡したとしているが、請求人が本件事業年度において譲渡したKビルの区分所有建物は、本件事業年度末である平成6年3月31日までに購入者に鍵を引き渡した物件1ないし物件10の10戸であるから、次の額を当期利益に加算又は当期利益から減算する。
(イ)物件1ないし物件10に係る譲渡収入の額
 物件1ないし物件10に係る譲渡収入の額は、別表その2の「譲渡価額」の「請求人主張額」の「合計」欄の金額のとおり、354,221,507円であり、同額を当期利益の額に加算する。
(ロ)物件1ないし物件10に係る譲渡原価の額
 物件1ないし物件10に係る譲渡原価の額は、別表その2の「譲渡原価」の「請求人主張額」の「合計」欄のとおり、336,734,682円であり、同額を当期利益の額から減算する。
(ハ)物件11に係る利益の額
 物件11に係る利益の額は、その譲渡収入の額である46,061,373円から、その譲渡原価の額である37,763,850円を差引きした額8,297,523円であり、同額を当期利益の額から減算する。
ハ 所得金額について
 したがって、本件事業年度の所得金額は、次表のとおり2,706,424円の損失となるから、この額を超える原処分を取り消すべきである。

(単位 円)
項目金額
当期利益の額27,865,600
加算
物件1ないし物件10に係る譲渡収入の額354,221,507
確定申告に加算した損金の額に算入した法人税等の額665,820
修正申告に加算した損金の額に算入した法人税等の額332,800
減算
累積損金不算入負債利子額40,759,946
物件1ないし物件10に係る譲渡原価の額336,734,682
物件11に係る利益額8,297,523
所得金額△2,706,424

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額及び累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額について
(イ)請求人は措置法第62条の2の規定の適用はない旨主張するが、本件各土地は新規取得土地等に該当するから、同条の規定の適用があることは明らかである。
(ロ)請求人は、本件事業年度において、Kビルの区分所有建物のうち1戸でも譲渡すれば、本件各土地全体が敷地利用権の対象となり、本件各土地全体を譲渡したのと同じになるから、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額を零円とし、累積損金不算入負債利子額全額を損金の額に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、敷地利用権について、区分所有法第2条《定義》第6項は、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利と規定し、同法第22条第2項は、区分所有者が数個の専有部分を所有する場合の各専有部分に係る敷地利用権の割合は、専有部分の床面積の割合とすると規定していること、また、建物の登記簿の専有部分の敷地権の表示において、敷地権の割合が表示されていることからすると、Kビルの区分所有建物総戸数30戸のうち、譲渡されていない29戸に係る専有部分の敷地利用権は、いまだ請求人にあるから、本件各土地の全部を譲渡したことと同一であるとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ)本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額及び累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額
A 本件各土地の基準取得価額
 請求人は、本件事業年度において、Kビルの区分所有建物のうち物件11を譲渡しており、これによる譲渡割合(譲渡した新規取得土地等の一部の全体に占める割合)は0.052130319であるから、本件事業年度終了の時において、残存する本件各土地の新規取得土地等の基準取得価額は、甲土地が321,959,376円、乙土地が110,330,704円である。
B 本件事業年度の負債利子額
 本件事業年度の負債利子額は16,040,950円である。
C 本件事業年度に含まれる負債利子損金不算入期間の月数
(A)販売用の建物の敷地の用に供された土地等に係る負債利子損金不算入期間の末日について、措置法施行令第38条の3《新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例》第18項第10号は、当該建物を販売の用に供した日とする旨規定し、そして、この販売の用に供した日について、租税特別措置法(法人税関係)通達(以下「措置法通達」という。)62の2(3)−16《販売の用に供した日の意義》は、(1)販売用の建物の取得をした日、(2)販売用の建物の建設を完了した日、(3)テレビ、新聞、チラシ等の広告媒体を通じて販売用の建物の購入者の募集を始めた日のいずれか遅い日とする旨定めているところ、請求人がKビルの区分所有建物の購入者の募集を始めた日が平成5年10月30日、Kビルの工事が竣工し、その建設を完了した日が平成6年3月20日、Kビルを取得した日が同月31日であるから、Kビルを販売の用に供した日は請求人がKビルを取得した平成6年3月31日となり、同日が負債利子損金不算入期間の末日となる。
D 本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額
 したがって、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額は、次表のとおり、14,676,272円となる。

E 累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額
(A)平成3年4月1日から平成4年3月31日まで及び平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度の甲土地に係る累積損金不算入負債利子額は40,759,946円である。
(B)新規取得土地等の一部を譲渡した場合の取扱いについて、措置法通達62の2(5)−2《新規取得土地等の一部を譲渡した場合の累積損金不算入負債利子残額の損金算入額》は、当該土地と当該譲渡した部分との面積の比に応じて区分する等合理的な方法により計算するものとし、法人の採用している方法が合理的でないと認められるとき又はその区分をしていないときは、その面積の比に応じて計算すると定めているところ、請求人は、本件事業年度において、Kビルの区分所有建物のうち物件11を譲渡しており、これによる譲渡割合(譲渡した新規取得土地等の一部の全体に占める割合)は0.052130319であるから、累積損金不算入負債利子額のうち、本件事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべき額は、2,124,828円となる。
 40,759,946円×0.052130319=2,124,828円
ロ 所得金額について
 したがって、本件事業年度の所得金額は、次表のとおり、41,415,664円となり、本件修正申告額を上回るから、本件更正をすべき理由がない旨の通知処分は適法である。

(単位 円)
項目金額
当期利益の額27,865,600
加算
本件事業年度の負債の利子の額のうちの損金不算入額14,676,272
確定申告に加算した損金の額に算入した法人税等の額665,820
修正申告に加算した損金の額に算入した法人税等の額332,800
減算
累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額2,124,828
所得金額41,415,664

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件事業年度における負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額、累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額並びにKビルに係る譲渡収入の額及び譲渡原価の額の多寡にあるので、以下審理する。
(1)本件事業年度における負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額及び累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額について
イ 措置法第62条の2の適用の可否
 請求人は、(a)措置法第62条の2の規定の立法趣旨は、借入れによる土地取得を通じて企業が租税負担を回避する行為を防止し、土地の仮需要により地価が高騰するのを抑制することにあるが、請求人は、新築マンションを販売する目的で本件各土地を取得したものであって、租税負担を回避するために取得したものではなく、また、地価が下落している現在では土地の仮需要により地価が高騰するおそれはない、(b)マンションの敷地となる土地は、請求人の売上原価の主要部分を構成し、その取得原資は借入金であるから、請求人が支払った利子の額を支払った事業年度の損金の額に算入できないと会社経営が成り立たたず、また、措置法第62条の2の規定の適用を受ける企業と受けない企業とで租税負担が不公平となるから、同法の規定の適用はなく、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額を零円とし、累積損金不算入負債利子額全額を損金の額に算入すべきである旨主張する。
 確かに、措置法第62条の2の規定の立法趣旨は、借入れによる土地取得を通じて企業が租税負担を回避する行為を防止し、土地の仮需要により地価が高騰するのを抑制することにあるが、法は、(イ)新たな資金コストが生じないと認められるもの、(ロ)取得が節税又は投機目的ではないと認められるものを限定的に列挙し、新規取得土地等から除外することとしているところ、本件各土地は、これら新規取得土地等から除外される土地等には該当せず、それ以外に請求人の主張する取得目的等の事情によって同条を適用しないとする規定も存しないから、本件各土地は新規取得土地等に該当し、請求人の主張には理由がない。
ロ 新規取得土地等を敷地とする1棟の建物のうちの一部の区分所有建物が譲渡された場合の措置法第62条の2の規定の適用
 請求人は、本件事業年度において、Kビルの区分所有建物のうち1戸でも譲渡すれば、譲り受けた者は敷地である本件各土地全体を利用できること、敷地の不動産登記がなされたときはその土地の所有権の移転登記はできないことなどから、本件各土地の一部を譲渡しても全部を譲渡したことと同じであるので、本件事業年度の負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額を零円とし、累積損金不算入負債利子額全額を損金の額に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、一部の区分所有建物の所有者が敷地全体を利用できるとしても、1棟の建物のうちの一部の区分所有建物が譲渡された場合に譲渡される敷地利用権は一部にとどまり、敷地全体ではないのであって、敷地全体が譲渡されたのとは異なるから、措置法第62条の2の規定の適用において、新規取得土地等を敷地とする1棟の建物のうちの一部の区分所有建物が譲渡されたというだけで、その敷地全体が譲渡されたのと同じに扱うことはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由はない。
ハ 本件事業年度における負債の利子の額のうちの新規取得土地等に係る損金不算入額及び累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額の計算
(イ)請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、平成3年2月5日、J社との間で、甲土地を338,000,000円で買い受ける旨の売買契約を締結し、同年3月1日に引渡しを受けた。
 甲土地の平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度末における新規取得土地等の基準取得価額は339,666,288円である。
B 請求人は、平成5年7月5日、J社との間で、乙土地を116,398,600円で買い受ける旨の売買契約を締結し、引渡しを受けた。
C 請求人は、平成5年7月8日、L株式会社との間で、Kビルの建設工事を請け負わせる旨の工事請負契約を締結した。
 Kビルは平成6年3月20日に竣工した。
 なお、L株式会社から請求人あてに、平成6年3月31日付で工事引渡書が発行されている。
D 請求人は、平成5年10月30日、Kビルの区分所有建物の購入者の募集を始めた旨の広告を新聞紙に掲載した。
E 本件事業年度の負債の利子の額は16,040,950円である。
F 平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度における甲土地の累積損金不算入負債利子額は40,759,946円である。
G 請求人の総勘定元帳によれば、確定申告に係る本件事業年度の不動産の売買による収入金額は、402,619,117円であり、同額には物件11の売買に係る収入金額が含まれている。
H 請求人の総勘定元帳によれば、本件事業年度の不動産の賃貸による収入金額は、1,908,000円であるが、本件事業年度の前事業年度の終了の時における預り敷金等の金額と本件事業年度の終了の時における預り敷金等の金額は同額である。
(ロ)本件各土地の基準取得価額
A 後記(2)のイのとおり、請求人は、本件事業年度において、Kビルの区分所有建物のうち物件1ないし物件11を譲渡しているところ、それらの敷地利用権割合は、別表その1の「敷地利用権割合」のとおりであり、その合計は715.6、Kビルの区分所有建物総戸数の敷地利用権割合の合計は1880.79であるから、譲渡割合は0.38047841598となる。
 また、物件1ないし物件10に係る譲渡収入の額の合計額は、別表その2の「譲渡価額」の「審判所認定額」欄のとおり、355,430,507円である。
B 甲土地
 甲土地の基準取得価額は、上記(イ)のAのとおり、甲土地の平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度における新規取得土地等の基準取得価額が339,666,288円であるから、本件事業年度の終了の時において、上記Aの譲渡割合を乗じた210,430,596円となる。
C 乙土地
 乙土地の基準取得価額は、乙土地が不動産の販売又は賃貸の事業を営む法人が販売又は賃貸の用に供するために取得した新規取得土地等に該当するから、上記(イ)及びAの事実に基づき、措置法第62条の2第3項第3号イの規定により次表のとおり、計算すると、零円となる。

(単位 円)
項目金額
(調整)取得価額(1)116,398,600
不動産の販売による収入金額(2)758,049,624
内訳
確定申告に係る収入金額402,619,117
物件1ないし物件10355,430,507
不動産の賃貸による収入金額(3)1,908,000
預り敷金等の増加額(4)0
措置法第62条の2第3項第3号イ506,638,416

(1)(2)の合計額(5)
((2)+(3)+(4))×2/3
基準取得価額
(1)×((1)−(5))÷(1)
(ハ)本件事業年度の負債の利子の額
 上記(イ)のEのとおり、本件事業年度の負債の利子の額は16,040,950円である。
(二)本件事業年度に含まれる負債利子損金不算入期間の月数
 請求人は、上記(イ)のDのとおり、平成5年10月30日、Kビルの区分所有建物の購入者の募集を始めた旨の広告を新聞紙に掲載し、Kビルは平成6年3月20日に竣工した。
 なお、L株式会社から請求人あてに、平成6年3月31日付で工事引渡書が発行されているが、後記(2)のイのとおり、請求人はKビルの区分所有建物のうち物件1ないし物件11を譲渡しており、その譲渡日は別表その1の「譲渡日(審判所認定による)」欄のとおりであるから、請求人は、L株式会社から、Kビル竣工後、遅くとも上記譲渡日の一番早い日である同月25日以前に引渡しを受けたと認定するのが相当である。
 ところで、販売用の建物の敷地の用に供された土地等に係る負債利子損金不算入期間の末日について、措置法施行令第38条の3第18項第10号は、当該建物を販売の用に供した日とする旨規定し、そして、この販売の用に供した日について、措置法通達62の2(3)−16は、(a)販売用の建物の取得をした日、(b)販売用の建物の建設を完了した日、(c)テレビ、新聞、チラシ等の広告媒体を通じて販売用の建物の購入者の募集を始めた日のいずれか遅い日とする旨定めており、その取扱いは相当として是認できる。
 請求人は、この点について、Kビルの販売のため新聞広告をし、Kビルを販売の用に供した日である平成5年10月30日を負債利子損金不算入期間の末日とすべきである旨主張するが、上述のとおり、請求人の主張には理由はない。
 したがって、負債利子損金不算入期間の末日は、平成6年3月25日となり、本件事業年度に含まれる負債利子損金不算入期間の月数は11か月となる。
(ホ)本件事業年度における負債の利子の額のうち新規取得土地等に係る損金不算入額
 以上の事実から本件事業年度における負債の利子の額のうち新規取得土地等に係る損金不算入額を計算すると、次表のとおり、11,573,682円となる。

(ヘ)累積損金不算入負債利子額のうちの損金算入額
 平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度における甲土地の累積損金不算入負債利子額は、上記(イ)のFのとおり、40,759,946円であるところ、新規取得土地等の一部を譲渡した場合の取扱いについて、措置法通達62の2(5)−2は、当該土地等と当該譲渡した部分の面積の比に応じて区分する等合理的な方法により計算するものとし、法人の採用している方法が合理的でないと認められるとき又はその区分をしていないときは、その面積の比に応じて計算する旨定めており、この取扱いは相当として是認できるから、本件事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入する累積損金不算入負債利子額は、上記の累積損金不算入負債利子額に上記(ロ)のAの譲渡割合を乗じた15,508,280円となる。
 40,759,946円×0.38047841598=15,508,280円
(2)Kビルに係る譲渡収入の額及び譲渡原価の額について
イ 請求人が本件事業年度中に譲渡したKビルの区分所有建物
(イ)請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査したところによれば次の事実が認められる。
A 請求人は、Kビルの区分所有建物のうち物件1ないし物件11について、それぞれ別表その1の「購入者」欄に記載の買主との間で、同表「契約日」欄記載の日に、同表「売買金額」欄記載の金額で土地付区分所有建物の売買契約を締結した。
 なお、上記契約には、以下の定めがある。
(A)区分所有建物の所有権は、買主が請求人に売買代金の残代金を支払ったときに移転するものとし、引渡しは請求人が発行する「鍵引渡書」をもって行う。
(B)上記(A)にかかわらず、売買代金の残代金の支払に住宅金融公庫からの融資を利用する場合は、住宅金融公庫融資を利用する金額以外の残代金を請求人に支払い、住宅金融公庫からの融資について請求人が指示する手続を完了したときに、当該区分所有建物を引き渡すこととし、引渡しは請求人が発行する「鍵引渡書」をもって行う。
B 請求人は、物件1ないし物件11について、別表その1の「鍵引渡日」欄記載の日を発行日付とする「鍵引渡書」を発行している。
C 物件1ないし物件10の買主は、いずれも住宅金融公庫からの融資を利用して当該区分所有建物を購入しており、住宅金融公庫融資以外の残代金を別表その1の「残代金受領日(住宅金融公庫融資以外残金)」欄記載の日に支払っている。
D 物件11の買主であるMは、請求人名義のN信用金庫T支店の普通預金口座に、平成6年3月18日に2,000,000円、同月25日に44,910,000円を入金して、同日までに別表その1の「売買金額」欄の金額全額を支払った。
E 本件事業年度の総勘定元帳の「売上」科目には、Mに対する売上高として、平成6年3月18日付で、2,000,000円、同月25日付で残代金の44,910,000円が、また、「仮受消費税」科目には同日付で848,627円が計上されている。
(ロ)ところで、法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第2項は、法人の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売に係る当該事業年度の収益の額である旨規定し、さらに、同条第4項は収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算する旨規定しているところ、収益の計上時期について、法人税基本通達2−1−1《棚卸資産の販売による収益の帰属の時期》は、たな卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する旨定めており、その取扱いは相当として是認できる。
(ハ)以上の事実等に基づき、請求人が本件事業年度中に譲渡したKビルの区分所有建物はいずれであるかを検討したところ、次のとおりである。
 請求人は、上記(イ)のAのとおり、Kビルの区分所有建物のうち物件1ないし物件11について、それぞれ別表のその1の「購入者」欄に記載の買主との間で、同表「契約日」欄記載の日に、同表「売買金額」欄記載の金額で土地付区分所有建物の売買契約を締結し、(a)当該区分所有建物の所有権は、買主が請求人に売買代金の残代金を支払ったときに移転するものとし、引渡しは請求人が発行する「鍵引渡書」をもって行う、(b)売買代金の残代金の支払に住宅金融公庫からの融資を利用する場合は、住宅金融公庫融資を利用する金額以外の残代金を請求人に支払い、住宅金融公庫からの融資について請求人が指示する手続を完了したときに、当該区分所有建物を引き渡すこととし、引渡しは請求人が発行する「鍵引渡書」をもって行う旨を定めているところ、物件1ないし物件10については、上記(イ)のCのとおり、その買主は、いずれも住宅金融公庫からの融資を利用して当該区分所有建物を購入し、住宅金融公庫融資以外の残代金を本件事業年度中の別表その1の「残代金受領日(住宅金融公庫融資以外残金)」欄記載の日に支払った後、上記(イ)のBによれば、いずれも本件事業年度中の別表その1の「鍵引渡日」欄記載の日に当該区分所有建物物件に係る鍵の引渡しを受けていることが認められるから、物件1ないし物件10は、本件事業年度中にその引渡しがあったものと認めるのが相当である。
 物件11については、上記(イ)のBによれば、当該区分所有建物物件に係る鍵の引渡しを受けたのは、本件事業年度中ではなく、翌事業年度であると認められるものの、上記(イ)のDのとおり、その買主であるMは、本件事業年度中の平成6年3月25日までに売買代金の全額を支払っているから、その時点において、物件11の所有権は同人に移転しており、同日には請求人はMに対して鍵の引渡しを行わなければならなかったといえるから、物件11の実質的な支配は既に同人に移転していたと認めるのが相当であって、上記(イ)のEのとおり、請求人が物件11に係る譲渡収入の額を本件事業年度の益金の額に計上していることを併せ考えると、物件11についても、本件事業年度中にその引渡しがあったと認めるのが相当である。
 請求人は、この点について、本件事業年度中に物件11を譲渡してはいない旨主張するが、上述のとおり、理由がない。
ロ 本件事業年度に計上すべきKビルに係る譲渡収入の額及び譲渡原価の額
(イ)上記イのとおり、物件1ないし物件11の引渡しは本件事業年度中にあったものと認められるから、物件1ないし物件11に係る譲渡収入の額は本件事業年度の益金の額に、これに係る譲渡原価の額は本件事業年度の損金の額に算入する。
(ロ)上記イの(イ)のAのとおり、請求人は、物件1ないし物件11について、それぞれ別表その1の「購入者」欄に記載の買主との間で、同表「契約日」欄記載の日に、同表「売買契約金額」欄記載の金額で土地付区分所有建物の売買契約を締結しており、請求人の総勘定元帳の「仮受消費税」科目の記載によれば、売買金額のうちの消費税抜き売買金額、消費税金額は、別表その1の「消費税抜き売買金額」欄、「消費税金額」欄の記載のとおりであると認められるから、物件1ないし物件11の譲渡価額は別表その2の「譲渡価額」の「審判所認定額」のとおりとなり、その合計額は、401,491,880円となる。
 また、物件1ないし物件11の譲渡原価の額は、請求人の帳簿の「Kビル壱番館」科目の記載によれば、本件各土地及びKビルの譲渡原価の額は、984,283,131円であると認められるから、同金額を基にそれぞれの別表その1の敷地利用権割合で除した別表その2の「譲渡原価」の「審判所認定額」のとおりとなり、その合計額は374,498,480円となる。
(3)所得金額について
 したがって、本件事業年度の所得金額は、次表のとおり、43,625,499円となり、本件修正申告額を上回るので、本件更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分は適法である。

(4)その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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