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(平10.4.24裁決、裁決事例集No.55 16頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、菓子製造業を営む同族会社であるが、平成8年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに原処分庁に申告した。
 その後、請求人は、平成9年4月30日に本件事業年度の法人税について、次表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。

(単位 円)
項目 区分確定申告更正の請求
所得金額136,961,121136,961,121
課税土地譲渡利益金額267,453,0000
納付すべき税額67,233,80056,282,300

(注)課税土地譲渡利益金額は、国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》の規定により、1,000円未満の端数を切り捨てた後のものをいう。以下同じ。

 原処分庁は、これに対し、平成9年7月17日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
 請求人は、この処分を不服として、平成9年9月18日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月12日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成10年1月12日に審査請求をした。

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2 主張

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(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法・不当であるから、その全部の取消しを求める。
イ 請求人は、平成7年8月29日に、R市S町17番1ほか4筆の宅地及び雑種地併せて1,294.57平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)を株式会社M(以下「M社」という。)に譲渡する旨の売買契約(以下「本件売買契約」といい、本件売買契約に係る契約書を「本件売買契約書」という。)を締結し、平成8年1月9日に同日の売買を原因として、M社に所有権の移転登記を行い本件土地を引き渡した。
ロ 請求人は、本件事業年度の確定申告に当たり、本件土地の譲渡については、下記ニの(イ)及び(ロ)の理由によりやむを得ず租税特別措置法(以下「措置法」という。)第62条の3《土地の譲渡等がある場合の特別税率》第1項に規定する土地の譲渡等に係る重課制度(以下「土地譲渡益重課制度」という。)を適用して確定申告をした。
 その後、請求人は、租税特別措置法規則(以下「措置法規則」という。)第21条の19《土地の譲渡等がある場合の特別税率》第1項第11号に定めてある書類(以下「証明書類」という。)として、M社から(a)P県知事あての受付番号が平成9年2月25日第8―1号の優良住宅新築認定申請書の写し、(b)P県R土木建築事務所長が発行した平成9年3月19日付の認定済証の写し(以下「本件認定済証」という。)、(c)M社が発行した、本件土地は中高層耐火共同住宅の建設に供する予定であることを証明する旨記載した平成8年3月1日付の「R市S町所在宅地の利用について」と題する書面の写し及び(d)建築主事が発行した平成9年1月31日付の建築基準法第7条第3項の規定による検査済証の写し(以下、これらの書類を併せて「本件証明書類」という。)を入手したので、本件土地の譲渡は、措置法第62条の3第4項第11号に規定する譲渡(以下「優良住宅地等のための譲渡」という。)又は同条第5項に規定する確定優良住宅地等予定地のための譲渡(以下、優良住宅地等のための譲渡と併せて「優良住宅地等のための譲渡等」という。)に該当し、土地譲渡益重課制度の適用はないことから、更正の請求書(以下「本件更正の請求書」という。)に本件証明書類を添付して本件更正の請求を行った。
ハ 原処分庁は、これに対し、本件確定申告書には本件証明書類の添付がなく、請求人は確定申告において自ら適法に土地譲渡益重課制度を適用して申告しているのであるから、本件更正の請求は、国税通則法(以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》に規定する更正の請求に該当しないとして、原処分を行った。
ニ しかしながら、本件更正の請求は、次の理由により認められるべきである。
(イ)本件土地の譲渡に土地譲渡益重課制度の適用があるか否かは、本件売買契約書だけでは判定できず、本件土地に建築される建物の内容によって判定されるところ、請求人は、M社がいかなる建物を建築するかについて全く関与することができなかった。
(ロ)本件土地上の建物は、平成8年中に完成予定であったが、その完成が遅れたため、請求人は、本件確定申告書の提出期限までに本件証明書類を入手することができなかった。
そこで、M社に対し、それに代わる証明書類の交付を求めたところ、もうすぐ証明書類が取れるから、それを原処分庁に提示すれば税金の還付が受けられる旨の説明を受けたので、本件確定申告書には本件証明書類はもちろんのこと、これに代わる措置法規則第21条の19第7項に規定する書類(以下「証明書類の代替書類」といい、証明書類と併せて「証明書類等」という。)も添付せず、土地譲渡益重課制度を適用して申告を済ませたものである。
(ハ)請求人は、平成9年3月25日にM社から本件認定済証の写しの交付を受けたことにより、本件売買契約書第1条《目的》のとおり優良住宅が建築されたと確認できたので本件更正の請求を行った。
(ニ)本件土地の譲渡は、本件更正の請求書に本件証明書類を添付しているから土地譲渡益重課制度の適用除外の要件を満たしている。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 異議審理の担当者が調査したところ、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、所得金額を136,961,121円、課税土地譲渡利益金額を267,453,000円、納付すべき税額を67,233,800円と記載するとともに、本件確定申告書の別表三(二)「土地の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額の計算に関する明細書」(以下「別表三(二)」という。)に本件土地の譲渡が措置法第62条の3第2項第1号に該当する旨記載した本件確定申告書を原処分庁に提出していること。
 なお、別表三(二)に記載された課税土地譲渡利益金額の合計額及び土地譲渡税額の計算に誤りはないこと。
(ロ)請求人は、本件確定申告書に、証明書類等を添付していないこと。
ロ ところで、土地等の譲渡が、優良住宅地等のための譲渡等として、土地譲渡益重課制度の適用から除外されるためには、措置法第62条の3第4項及び措置法規則第21条の19第1項、又は措置法第62条の3第5項及び第10項において、法人税法第151条《代表者等の自署押印》第1項に規定する法人税申告書(同法第2条《定義》第39号に規定する修正申告書を除く。以下同じ。)に証明書類等を添付することにより、土地等の譲渡が優良住宅地等のための譲渡等に該当することが証明されていることが要件とされているのであり、土地等の譲渡が優良住宅地等のための譲渡等に該当すれば直ちに、土地譲渡益重課制度の適用が除外されるわけではない。
ハ また、通則法第23条第1項第1号は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときに、更正すべき旨の請求をすることができる旨規定している。
 そして、所得の計算の特例や免税等の特別措置で、一定事項の申告等を適用要件としているものについてその申告等がなかったため特別措置が受けられず、そのため、納付すべき税額がその特別措置を受けた場合に比して過大となっているような場合は、通則法第23条第1項第1号の規定に該当しないから、更正の請求という形式でその過大となっている部分の減額を請求することはできないと解されている。
ニ そうすると、本件の場合、請求人は、上記イのとおり、本件確定申告書を原処分庁に提出するに当たり、証明書類等を添付していなかったのであるから、本件土地の譲渡が優良住宅地等のための譲渡等に該当するかどうかを判断するまでもなく、当然に土地譲渡益重課制度の適用を受けることとなる。
ホ また、本件更正の請求書は、上記ロで述べた法人税申告書に該当しないから、本件更正の請求書に本件証明書類が添付されたことをもって、本件土地の譲渡が土地譲渡益重課制度の適用から除外される要件を満たしたとすることはできない。
ヘ したがって、本件更正の請求に理由がないとした原処分庁の判断に誤りはない。

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3 判断

 双方の主張に基づいて調査、審理したところ、次のとおり判断される。
(1)請求人は、上記2の(1)のニの理由により、原処分の取消しを求めているので、以下審理する。
イ 次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)本件売買契約書には、請求人が平成8年1月9日までに本件土地の所有権移転登記申請を行い、M社は当該登記申請完了と同時に売買代金を支払い、併せて本件土地の引渡しを行う旨記載され、また、別表三(二)には、本件土地の譲渡等の年月日は、平成8年1月9日である旨記載されていること。
(ロ)請求人は、本件確定申告書に所得金額が136,961,121円、課税土地譲渡利益金額が267,453,000円、納付すべき税額が67,233,800円である旨記載するとともに、別表三(二)に本件土地の譲渡が措置法第62条の3第2項第1号に該当する旨記載しており、また、別表三(二)に記載された課税土地譲渡利益金額の合計額及び土地譲渡税額の計算は適正であること。
(ハ)請求人は、本件確定申告書に、証明書類等を添付していないこと。
(ニ)請求人は、本件更正の請求書に、本件土地の譲渡が土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨記載していること。
ロ ところで、措置法第62条の3第4項は、土地等の譲渡が、優良住宅地等のための譲渡に該当することにつき大蔵省令で定めるところにより証明がされたときは、土地譲渡益重課制度を適用しない旨規定し、また、同項にいう「証明がされたとき」とは、措置法規則第21条の19第1項において、証明書類を法人税法第151条第1項に規定する法人税申告書に添付することにより証明がされたときとする旨規定されている。
 そして、措置法第62条の3第5項及び第10項は、土地等の譲渡をした場合において、当該土地等の譲渡が優良住宅地等のための譲渡に該当しない場合であっても、確定優良住宅地等予定地のための譲渡に該当する場合には、証明書類の代替書類を法人税申告書に添付した場合に限り、土地譲渡益重課制度の適用を除外する旨規定している。
ハ また、通則法第23条第1項第1号は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときは、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
 そうすると、通則法第23条第1項に規定する更正の請求ができる場合とは、納税申告書の提出により確定している納付すべき税額が過大であり、当該過大であることが課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算自体に誤りがあったことに基づいている場合をいうものと解されるから、一定事項の申告等を適用条件に所得金額又は税額の減免をすべきものとされているものについて、その申告等をしなかった者が、後日その特例の適用を求めるために同項に規定する更正の請求をすることはできないものと解するのが相当である。
ニ これを本件についてみると、本件土地の譲渡が、土地譲渡益重課制度の適用から除外されるためには、法人税法第151条第1項に規定する法人税申告書に証明書類等を添付して本件土地の譲渡が優良住宅地等のための譲渡等に該当することが証明されることが要件とされているところ、請求人は、本件確定申告書に証明書類等を添付していないのであるから、本件土地の譲渡について、土地譲渡益重課制度の適用の除外を求めるために通則法第23条第1項に規定する更正の請求をすることはできないものと認められる。
 また、請求人は、上記2の(1)のニの(イ)ないし(ハ)のとおり本件確定申告書に証明書類等を添付できなかった理由を主張するが、証明書類等を本件事業年度の法定申告期限までに入手できなかったため本件確定申告書に証明書類等を添付できなかったものであるとしても、請求人の主張する理由は、通則法第23条の更正の請求ができる場合に該当せず、また、本件土地の譲渡について、土地譲渡益重課制度を適用しない理由ともなり得ないものと認められる。
 なお、請求人は、本件土地の譲渡は、本件更正の請求書に本件証明書類を添付しているから、土地譲渡益重課制度の適用除外の要件を満たしている旨主張するが、上記ロのとおり、本件土地の譲渡が土地譲渡益重課制度の適用から除外されるためには、法人税法第151条第1項に規定する法人税申告書に証明書類等を添付しなければならないところ、更正の請求書は、当該法人税申告書に該当しないから、請求人が本件更正の請求書に本件証明書類を添付したことをもって、土地譲渡益重課制度の適用除外の要件を満たしているとはいえない。
 したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
ホ そうすると、本件更正の請求は、本件土地の譲渡が措置法第62条の3第4項又は第5項に規定する優良宅地等のための譲渡等に該当するか否か審理するまでもなく、不適法であるから、原処分庁が行った原処分は適法である。
(2)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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