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(平10.5.29裁決、裁決事例集No.55 370頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、××県△△郡及び□□郡に跨がる○○山(標高◆◆◆メートル)のQ高原スキー場及びS高原スキー場においてリフト事業を営むほか、S高原スキー場に「ロッヂS」の名称でロッヂ(以下「本件ロッヂ」という。)を設けて、飲食店業、物品販売業及び旅館業(以下「ロッヂ内事業」という。)を営む法人であるが、平成5年6月1日から平成6年5月31日まで、平成6年6月1日から平成7年5月31日まで及び平成7年6月1日から平成8年5月31日までの各事業年度(以下、順次「平成6年5月期」、「平成7年5月期」及び「平成8年5月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成9年4月30日付で、本件各事業年度の法人税について、別表2の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成9年6月17日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件各更正処分について
 請求人は、別表3に掲げる各減価償却資産(以下「本件各資産」という。)について、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第45条の2《中小企業者の機械等の特別償却》第1項の規定に基づき特別償却限度額を計算した上、措置法第52条の3《準備金方式による特別償却》第1項の規定を適用し、準備金方式による特別償却を行っていたところ、原処分庁は、本件各資産は、ロッヂ内事業の用に供されたものではないから、特別償却は認められないとして本件各更正処分を行った。
 しかしながら、本件各資産は、主たる事業であるリフト事業だけでなく、次のとおり、ロッヂ内事業の用にも供していることから、特別償却は認められるべきである。
(イ)リフトについて
 本件ロッヂの敷地と一体となっているロッヂ内事業に使用されている約750坪の土地(以下「ロッヂの地域」という。)は、標高約1,000メートルの地点に位置し、スキーシーズン中には2.5メートルから8メートルの積雪地帯にあり、また、杉林に挟まれた約30メートルの進入通路によりゲレンデとつながっているが、それ以外の周囲はがけ地となっていることから、ゲレンデとは完全に区分されている。
 したがって、スキー客が本件ロッヂに来場するには、リフトに搭乗しない限り困難であり、リフト事業が独立した事業であったとしても、リフトの操業なくしてはロッヂ内事業は成り立たず、結果として、リフトはロッヂ内事業にも使用していると認められることから、別表3に記載の北壁トリプルリフト及びQ中央クワッドリフト(以下「本件リフト」という。)は、ロッヂ内事業の用に供されているといえる。
 また、ロッヂ内事業に必要な資材及び宿泊客の荷物等の運搬手段としてリフトを使用していることからも、リフトはロッヂ内事業の用に供されている。
(ロ)ショベルローダー、クローラーショベル、油圧ショベル及び草刈機(以下「ショベルローダー等」という。)について
 原処分庁は、本来、スキー場とロッヂの周辺が区分されるものでなく一体のものであり、ロッヂ内事業は、いずれも本件ロッヂ内部で営まれるものであるから、本件ロッヂの周辺の除雪、整地及び草刈り作業等をしたとしても、このことをもって、ショベルローダー等がロッヂ内事業の用に供されているとはいえない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、ロッヂの地域はゲレンデとは完全に区分されており、また、本件ロッヂにはテイクアウトスタイルのハンバーガーショップがあり、ロッヂの地域にテーブルや椅子を設置し、利用者に場所を提供していることから、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等が必要であり、ショベルローダー等はこれらの作業に使用されているとともに、スキーシーズン中は本件ロッヂの屋根からの落雪、落氷及び周辺の除雪作業にも使用され、スキーシーズン終了後は、翌シーズンのロッヂ内事業に向けて、本件ロッヂの維持管理やロッヂの地域の整地及び草刈り作業にも使用されている。
 したがって、ショベルローダー等はロッヂ内事業の用に供されている。
(ハ)クローラーキャリアについて
 原処分庁は、クローラーキャリアは物の運搬等に使用されており、車両及び運搬具に該当し、措置法第45条の2第1項に規定する特別償却の対象となる機械及び装置(以下「特別償却の対象となる機械等」という。)に該当しない旨主張する。
 しかしながら、クローラーキャリアは、特別償却の対象となる機械等であり、上記(ロ)のショベルローダー等と同様、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されていることから、ロッヂ内事業の用にも供されている。
(ニ)雪上車について
 雪上車は、前記(ロ)のショベルローダー等及び上記(ハ)のクローラーキャリアと同様、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されており、また、ロッヂ内事業に必要な資材及び宿泊客の荷物等の運搬にも使用されていることから、ロッヂ内事業の用に供されているといえる。
ロ 過少申告加算税の各賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い過少申告加算税の各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
 本件各資産は、次のとおり、措置法第45条の2第1項の特別償却の規定を適用することはできない。
(イ)リフトについて
 リフト事業は、総務庁編集による日本標準産業分類により、大分類運輸・通信業、中分類鉄道業、小分類鉄道業、細分類索道業に分類されることは明らかであり、措置法第45条の2第1項に規定する特別償却の対象となる事業(以下「特別償却の対象となる事業」という。)には該当しない。
 また、請求人は、スキー客が本件ロッヂに来場するにはリフトに搭乗しない限り困難であることから、リフトをロッヂ内事業の用にも供している旨主張するが、ロッヂ内事業はスキー客に対する便益提供のため営まれるものであり、しかも、スキー客の全部が本件ロッヂを利用するとは限らないことから、リフトの利用と本件ロッヂの利用との間には何ら因果関係がなく、本件リフトがロッヂ内事業の用に供されたものとは認められない。
(ロ)ショベルローダー等について
 ショベルローダー等は、請求人がスキー場において索道事業を営む権益の代償として、スキー場の維持管理及びスキー客等の安全を確保するために除雪、整地及び草刈り作業等に使用される機械と認められるが、本来、スキー場とロッヂの周辺が区分されるものでなく一体のものであり、また、ロッヂ内事業は、本件ロッヂ内部で営まれるものであるから、請求人が本件ロッヂの周辺の除雪、整地及び草刈り作業等にショベルローダー等を使用したとしても、このことをもってショベルローダー等をロッヂ内事業の用に供しているとはいえない。
(ハ)クローラーキャリアについて
 クローラーキャリアは、雪や土砂等の運搬に使用されるものであるから、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)別表第一の車両及び運搬具として経理されるべきものであり、特別償却の対象となる機械等に該当しない。
(ニ)雪上車について
 雪上車は、ロッヂ内事業に必要な資材及び宿泊客の荷物等の運搬に使用されるものであるから、上記(ハ)のクローラーキャリアと同様、車両及び運搬具として経理されるべきものであり、特別償却の対象となる機械等に該当しない。
ロ 過少申告加算税の各賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、特別償却の適否にあるので、以下審理する。

(1)本件各更正処分について

イ 特別償却の適否について
(イ)リフト
A 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(A)○○山の南側斜面にQ高原が、北側斜面にS高原がひろがっており、請求人は、Q高原スキー場にリフト11基、S高原スキー場にリフト12基及び本件ロッヂを設置して、毎年12月中旬頃から翌年4月上旬頃までのスキーシーズン中、リフト事業及びロッヂ内事業を営んでいる。
 また、山頂付近は30度以上の急傾斜となっているが、Q高原、S高原間の移動は山頂を経由するか、山腹の林道を利用するほかはない。
(B)ロッヂ内事業は特別償却の対象となる事業に該当するが、リフト事業は特別償却の対象となる事業に該当しない。
(C)請求人は、リフトに搭乗する者に対して、リフト券を販売し利用料金を徴している。
(D)本件ロッヂの設置されているロッヂの地域は、S高原スキー場の標高約1,000メートルの地点にあり、ゲレンデとは約30メートルの連絡通路でつながっているが、その他の周辺はがけ地となっている。
 また、本件リフトは○○山頂からS中央ゲレンデにかけて設置されているが、本件リフトと本件ロッジは距離が離れており、本件ロッジにはアルペンペアリフトがより近接している。
B 請求人の総務部長F(以下「F部長」という。)は、当審判所に対し、次のとおり答述した。
(A)本件ロッヂの利用者に対するリフト券の無償交付及び割引は行っていない。
(B)ただし、本件ロッヂの宿泊客から要望があれば、下山専用のリフト券を無料で交付している。
 なお、本件ロッヂの宿泊客が下山するに際して利用するリフトは、本件ロッヂに一番近いアルペンペアリフト及びそれに続くアルペン登行リフトであり、本件リフトは利用していない。
(C)本件リフトは、ロッヂ内事業に必要な資材及び宿泊客の荷物等の運搬には使用していない。
C ところで、措置法第45条の2第1項では、中小企業者等で青色申告書を提出する法人が特別償却の対象となる機械等を取得し、これを当該法人が営む特別償却の対象となる「事業の用に供した」場合には、その供した日を含む事業年度の当該機械等の償却限度額は、普通償却限度額と特別償却限度額の合計額とする旨規定されており、ここでいう「事業の用に供した」とは、特別償却の対象となる事業を遂行するための方法や手段として使用しているものと解されている。
 また、特別償却の対象となる事業と対象とならない事業を営む法人が特別償却の対象となる機械等を取得し、当該機械等を「それぞれの事業に共通して使用している」場合には、当該法人が特別償却の対象となる事業を主たる事業として営んでいるか否かを問わず、その特別償却の対象となる機械等の全部を特別償却の対象となる事業の用に供したものとすることができると解されている。
D これを本件についてみると、次のとおりである。
(A)請求人は、スキー客が本件ロッヂに来場するには、リフトに搭乗しない限り困難であり、リフトの操業なくしてはロッヂ内事業は成り立たないことから、結果として、リフトはロッヂ内事業の用にも供されている旨主張する。
 なるほど、前記Aの(D)のとおり、本件ロッヂの立地条件等から判断しても、スキー客は、リフトに搭乗しない限り本件ロッヂを利用することが困難であり、リフトの操業なくしてはロッヂ内事業は成り立たない関係にあることが認められる。
 しかしながら、リフトを特別償却の対象となる事業の用に供しているというためには、前記Cのとおり、リフトをロッヂ内事業を遂行するための運搬手段として使用していなければならないところ、人の運搬手段という意味においては、前記Aの(C)及びBの(A)のとおり、リフトを利用するスキー客は、本件ロッヂを利用するか否かにかかわらずリフト利用料金を支払っているのであるから、請求人は、リフト事業を遂行するための運搬手段としてリフトを使用していると認めるのが相当であり、リフトをロッヂ内事業を遂行するための運搬手段として使用しているとは認められない。
 また、リフトの操業なくしてロッヂ内事業が成り立たないとしても、このことは、前記Aの(A)のとおり、23基のリフトを設置して営むリフト事業を営業基盤として、ロッヂ内事業が成り立っている関係を明らかにしているにすぎないものと認められ、このような関係をもって、リフトをロッヂ内事業の用に供しているとは認められない。
 さらに、本件ロッヂの宿泊客が下山するに際して、請求人が下山専用のリフト券を無償交付していたとしても、前記Bの(B)のとおり、下山者は本件リフトを利用しないことから、本件リフトがロッヂ内事業の用に供されているとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(B)次に、請求人は、ロッヂ内事業に必要な資材及び宿泊客の荷物等の運搬にリフトを使用していることから、リフトはロッヂ内事業の用に供されている旨主張する。
 しかしながら、本件リフトは、前記Bの(C)のとおり、ロッヂ内事業に必要な資材及び宿泊客の荷物等の運搬に使用されていないことから、ロッヂ内事業の用に供されているとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
(ロ)ショベルローダー等
A ロッヂの地域とロッヂ内事業との関係
 原処分庁は、ショベルローダー等を本件ロッヂ周辺の除雪作業や草刈り作業等に使用したとしても、本来、ゲレンデとロッヂの周辺が区分されるものでなく、かつ、ロッヂ内事業は、本件ロッヂ内部で営まれるものであり、ショベルローダー等はロッヂ内事業の用に供されたものではない旨主張するので、以下検討する。
(A)原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、請求人は、本件ロッヂにおいて、レストラン、ハンバーガーショップ、売店等を営んでいる事実が認められる。
(B)F部長は、当審判所に対し、本件ロッヂにはテイクアウトスタイルのハンバーガーショップがあり、本件ロッヂの中だけでなく、ロッヂの地域にもかなりのテーブル及び椅子を設置している旨答述した。
(C)以上のことから判断すると、ロッヂの地域は、前記(イ)のAの(D)のとおり、ゲレンデから約30メートルも離れた地域にあり、本件ロッヂの利用者以外にロッヂの地域に進入する者はいないと考えられることから、ロッヂの地域はゲレンデとは区分された地域であると認められ、また、前記(A)の事実及び(B)の答述から判断しても、請求人はロッヂの地域にもテーブル及び椅子を設置し、ハンバーガーショップを営んでいると認められることから、ロッヂの地域においてロッヂ内事業が営まれていたと認めるのが相当である。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
B ロッヂの地域での作業の有無
 請求人は、ショベルローダー等はロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用していることから、特別償却は認められるべきである旨主張するので、以下検討する。
(A)請求人提出資料及び当審判所の調査によれば、ショベルローダー4号及び同5号はQ高原スキー場に配備され、クローラーショベル、ショベルローダー6号、油圧ショベル及び草刈機はS高原スキー場に配備されている事実が認められる。
(B)F部長は、当審判所に対し、次のとおり答述した。
a ショベルローダー等(草刈機を除く。)は、スキーシーズン中はゲレンデやロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用され、スキーシーズン終了後は翌シーズンの営業準備のためにゲレンデやロッジの地域の整地等に使用している。
 なお、草刈機は、スキーシーズン終了後にロッヂの地域等の草刈りに使用されている。
b Q高原スキー場に配備されたショベルローダー等は、S高原スキー場にある格納庫に移動させて整備を行い、試運転を兼ねてロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されているが、その整備記録は残っていない。
(C)ところで、特別償却の制度は、特別償却の対象となる機械等を取得し、当該機械等を特別償却の対象となる事業の用に供した場合には、その用に供した日を含む事業年度において特別償却が認められるものである。
(D)これを本件についてみると、ロッヂの地域は、前記Aのとおり、ロッヂ内事業が営まれていた地域と認められることから、前記(A)の事実及び(B)のaの答述から判断すると、S高原スキー場に配備されたクローラーショベル、ショベルローダー6号、油圧ショベル及び草刈機は、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されていると認めるのが相当である。
 しかしながら、Q高原スキー場に配備されたショベルローダー4号及び同5号については、上記(C)のとおり、事業の用に供した日を含む事業年度にロッヂの地域の除雪・圧雪作業等に使用していれば、特別償却は認められるが、前記(B)のbのとおり、当該機械等を事業の用に供した日を含む事業年度においてS高原スキー場にある格納庫に移動させて整備したとする証拠資料もないことから、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されたとは認められず、ロッヂ内事業の用に供されたとはいえない。
(ハ)クローラーキャリア
 請求人は、クローラーキャリアは特別償却の対象となる機械等である旨主張するので、以下検討する。
A 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(A)クローラーキャリアは、雪上又は軟弱地等での雪や土砂等の運搬を主目的とするものである。
(B)クローラーキャリアは、キャタピラーを架装したものであり、車体はダンプ式の貨物自動車で排気量が5.393リットルである。
B ところで、車両及び運搬具とは、自走能力の有無を問わず、人や物の運搬を主目的とするものであるのに対して、自走式作業用機械設備とは、作業現場において掘削、積込み、てん圧等の作業を行う機械で、自らの動力により移動することができるものをいい、特別償却の対象となるのは機械及び装置に限定されている。
C これを本件についてみると、クローラーキャリアは、前記Aの(A)のとおり、雪上又は軟弱地等での雪や土砂等の運搬を主目的とするものであることから、車両及び運搬具に該当し、特別償却の対象となる機械等には該当しない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 なお、前記Aの(B)のとおり、クローラーキャリアは、キャタピラーを架装したものであり、車体はダンプ式の貨物自動車で排気量が5.393リットルであることから、耐用年数省令別表第一に掲げる「車両及び運搬具」の「前掲のもの以外のもの」の「自動車」の「その他のもの」の「貨物自動車(ダンプ式のもの)」に該当し、耐用年数は4年であるから、本件各事業年度の普通償却限度額は、別表4のとおり、平成6年5月期が1,478,250円、平成7年5月期が2,309,026円、平成8年5月期が1,297,673円となる。
 また、特別償却が認められなかった額877,500円を満たすまでの金額については、償却限度超過額の当期認容額として損金の額に算入する。
(ニ)雪上車
 原処分庁は、雪上車はロッヂ内事業に必要な資材等の運搬に使用されることから、車両及び運搬具に該当し、特別償却の対象となる機械等に該当しない旨主張するので、以下検討する。
A 請求人提出資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(A)当該雪上車は通常圧雪車と称されているもので、積雪地域における圧雪・除雪作業等を主目的とするものである。
(B)S高原スキー場に配備された雪上車12号車及び同13号車の作業日報によれば、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に雪上車12号車及び同13号車は使用されている。
B F部長は、当審判所に対し、Q高原スキー場に配備された雪上車1号車は、S高原スキー場にある格納庫に移動させて整備を行い、試運転を兼ねてゲレンデ及びロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用しているが、その整備記録は残っていない旨答述した。
C ところで、雪上車が車両及び運搬具に該当するか、自走式作業用機械設備に該当するかの判断は、前記(ハ)のBのとおりであり、雪上車の本来の目的は、前記Aの(A)のとおり、積雪地域における圧雪・除雪作業等であり、人や物の運搬にも使用しているからといって、車両及び運搬具に該当するものではなく、自走式作業用機械に該当するから、特別償却の対象となる機械等に該当する。
 したがって、雪上車が車両及び運搬具に該当する旨の原処分庁の主張は採用できない。
D しかしながら、雪上車が特別償却の対象となる機械等であるとしても、前記(ロ)のショベルローダー等と同様、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されたものでなければ、特別償却は認められない。
 そうすると、S高原スキー場に配備された雪上車12号車及び同13号車については、前記Aの(B)のとおり、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されていることから、ロッヂ内事業の用に供されたものと認められるが、Q高原スキー場に配備された雪上車1号車は、前記Bのとおり、S高原スキー場にある格納車に移動させて整備したとする証拠資料もないことから、ロッヂの地域の圧雪・除雪作業等に使用されたとは認められず、ロッヂ内事業の用に供されたとはいえない。
(ホ)以上の検討の結果、本件各資産のうち本件リフト、クローラーキャリア並びにQ高原スキー場に配備されたショベルローダー4号、同5号及び雪上車1号車については、特別償却は認められないことから、本件各事業年度の特別償却の額は、別表3の「審判所認定額」欄のとおり、平成6年5月期が、5,114,000円、平成7年5月期が零円、平成8年5月期が5,439,500円となる。
 そうすると、平成6年5月期1,371,500円、平成7年5月期24,286,769円、平成8年5月期28,033,426円は所得の金額の計算上、損金の額に算入されない。
ロ 特別償却準備金の益金算入額について
 前記イの特別償却の認定に伴い、措置法第52条の3第4項の規定に基づき平成7年5月期及び平成8年5月期の特別償却準備金の益金算入額について算定すると、別表5の(7)の「審判所認定額」欄のとおり、平成7年5月期、平成8年5月期ともに13,693,774円となる。
 しかし、請求人は確定申告において特別償却準備金の益金算入額を別表5の(8)の「確定申告額」欄のとおり、平成7年5月期が13,889,703円、平成8年5月期が17,359,241円としていることから、その差額、平成7年5月期195,929円、平成8年5月期3,665,467円を所得の金額の計算上、益金の額から減算する。
ハ 未納事業税の額の損金算入額について
 平成6年5月期の所得金額の増加に伴い、同事業年度に係る未納事業税の額が143,400円増加することから、当該金額を平成7年5月期の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
ニ 寄附金の損金算入額について
 法人税法第37条《寄付金の損金不算入》第2項の規定に基づいて、平成8年5月期に係る寄附金の損金算入額について算定すると、前記イ及びロの認定に伴い同損金不算入額は別表6の(12)の「審判所認定額」欄のとおり4,611,123円となるところ、請求人は確定申告において寄附金の損金不算入額を別表6の(13)の「確定申告額」欄のとおり4,915,523円としているから、その差額304,400円(別表6の(14)の「審判所認定額」欄記載)を所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
ホ 繰越欠損金の損金算入額について
 平成7年5月期の欠損金の減少に伴い、平成8年5月期の繰越欠損金の当期控除額は141,090,874円であるところ、請求人は確定申告において164,760,494円としているから、その差額23,669,620円を所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
ヘ 所得金額について
 以上の結果、請求人の本件各事業年度の所得金額は、別表7のとおり、平成6年5月期が445,842,822円、平成8年5月期が268,328,910円となり、平成7年5月期は141,090,874円の欠損となる。
ト そうすると、平成6年5月期及び平成8年5月期については、いずれも更正処分の額を下回るから、当該事業年度の更正処分はいずれもその一部を取り消すべきであり、平成7年5月期については、更正処分の額を上回ることとなることから、同事業年度の更正処分は適法である。

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(2)過少申告加算税の各賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、平成6年5月期及び平成8年5月期については、更正処分の一部がそれぞれ取り消されることに伴い、過少申告加算税の計算の基礎となる税額は、平成6年5月期が420,000円、平成8年5月期が17,890,000円となり、この税額の計算の基礎となった事実については、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、平成6年5月期及び平成8年5月期の過少申告加算税の額は、平成6年5月期が42,000円、平成8年5月期が1,789,000円となり、いずれも賦課決定処分の金額に満たないから、平成6年5月期及び平成8年5月期の過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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