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(平10.3.31裁決、裁決事例集No.55 391頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)法人税及び法人特別税

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、貨物自動車運送業を営む同族会社であるが、平成4年4月1日から平成5年3月31日まで及び平成5年4月1日から平成6年3月31日までの事業年度又は課税事業年度(以下、順次「平成5年3月期」及び「平成6年3月期」といい、これらを併せて「各事業年度」という。)の法人税及び法人特別税について、青色の確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成7年12月8日付で次表の「更正処分」欄のとおりの更正処分及び「賦課決定処分」欄のとおりの賦課決定処分をした。

(単位 円)
区分項目平成5年3月期平成6年3月期
法人税
確定申告所得金額265,846,40838,440,230
 納付すべき税額98,029,90012,891,500
更正処分所得金額290,613,22643,256,110
 納付すべき税額107,317,50014,697,500
賦課決定処分過少申告加算税の額928,000180,000
法人特別税
確定申告課税標準法人税額94,932,0009,665,000
 納付すべき税額2,373,300241,300
更正処分課税標準法人税額104,219,00011,461,000
 納付すべき税額2,605,400286,500
賦課決定処分過少申告加算税の額23,000

 請求人は、これらの処分を不服として、平成8年1月23日に審査請求をした。

(2)消費税

 請求人は、平成4年4月1日から平成5年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税について、確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した。
 原処分庁は、これに対し、平成7年12月8日付で次表の「更正処分」欄のとおりの更正処分及び「賦課決定処分」欄のとおりの賦課決定処分をした。

(単位 円)
区分項目金額
確定申告課税標準額2,296,906,000
 課税標準額に対する消費税額68,907,180
 仕入税額控除の額40,831,962
 納付すべき税額28,075,200
更正処分課税標準額2,296,906,000
 課税標準額に対する消費税額68,907,180
 仕入税額控除の額28,809,244
 納付すべき税額40,097,900
賦課決定処分過少申告加算税の額1,202,000

 請求人は、これらの処分を不服として、平成8年1月23日に異議申立てをした。
 異議審理庁は、この異議申立てについて、国税通則法第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、平成8年1月31日付で請求人に同意を求めたところ、請求人は同年2月2日に同意したので、同日審査請求がされたものとみなした。
(3)当審判所は、これらの審査請求について、国税通則法第104条《併合審理等》第1項の規定により併合審理する。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 法人税
(イ)更正処分について
 請求人は、平成4年3月31日にG株式会社(以下「G社」という。)から、P市H町80番3ほか8筆の8,462.17平方メートル(契約書上の面積)の土地(以下「本件土地」という。)を611,132,000円で取得するとともにT株式会社(以下「T社」という。)に本件土地の造成工事(以下「本件造成工事」という。)を依頼して、その代金412,780,000円を支払った。
 そこで、本件土地の取得が、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第62条の2《新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例》に規定する特例(以下「本件特例」という。)の対象となり、各事業年度の負債の利子の額のうち、当該事業年度中に負債利子損金不算入期間(新規取得土地を取得した日から4年を経過する日(4年を経過する日前に建物等の敷地に供した場合などの日が到来する場合はその日)までの期間。以下「損金不算入期間」という。)がある場合は、同条第3項第3号に規定する新規取得土地等の基準取得価額(以下「基準取得価額」という。)に係る損金不算入期間の負債の利子の額を計算して、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しないとされるところ、請求人は、G社へ支払った本件土地の買受代金611,132,000円及び農地転用費用61,000円を合計した611,193,000円を基準取得価額として、各事業年度の新規取得土地等に係る負債の利子の額のうち、所得金額の計算上損金の額に算入しない金額(以下「損金不算入負債利子額」という。)を平成5年3月期は36,671,580円、平成6年3月期は12,223,860円と算出して申告した。
 これに対し、原処分庁は、本件造成工事は実質的にG社が施工していることなどから、本件土地と本件造成工事は一体として取引されたものであり、請求人は造成済みの土地を取得したものであると認定し、本件土地の買受代金としてG社に支払った611,132,000円、農地転用費用61,000円及び本件土地の造成費用としてT社へ支払った412,780,000円を合計した1,023,973,000円が本件土地の基準取得価額であるとして、各事業年度の損金不算入負債利子額を平成5年3月期は61,438,380円、平成6年3月期は20,396,580円と算出して更正処分をした。
 しかしながら、原処分庁の認定には次のとおり事実の誤認がある。
A 本件土地の売買と本件造成工事は別個の取引である。請求人は、J県R市にあった旧営業所の立ち退きを迫られていたことから土地の新規取得を急いでいたこともあり、資金繰り上概念的に事業用として使用するに至るまでに要する造成費用を含めた土地取得の総額を押さえた上、造成前の本件土地を国土利用計画法(以下「国土法」という。)に基づいてG社から取得したものである。
B 請求人は、本件造成工事をG社の紹介でT社に依頼したが、造成工事がT社から他の造成工事業者を経て最終的にG社に請け負われたことは知らない。
C 請求人は、本件土地の売買契約締結時における登記簿上の面積8,462.17平方メートルと造成後の実測面積8,427.89平方メートルが異なることから、減少した面積(以下「減少面積」という。)34.28平方メートル(10.36坪)について、G社から坪当たり単価400,000円で計算した4,144,000円の精算金の返還を受けているが、原処分庁は、この坪当たり単価400,000円が、G社に支払った土地代金にT社に支払った造成工事代金を合計した1,023,912,000円を本件土地の坪数(2,559.80坪)で除した399,996円にほぼ等しいことから、このことを、請求人が造成済の土地を取得したと認定する理由としているが、減少面積についての精算金の単価の決定は、平成5年3月31日付の覚書に記載の水路売買価格(国土法)で行うとのG社の申立てに対して、請求人が時価に添った価格で行うべきであると申し立てたことから、最終的に双方の中間的な単価で決定したものであり、G社に造成工事費用を含めた金額により責任をとってもらったものではない。
 以上のとおり、請求人は造成前の本件土地をG社から取得したものであり、本件土地の取得とは別に本件造成工事をT社に依頼したものであるから、T社に支払った本件造成工事の代金は、本件特例の基準取得価額には含まれない。
 なお、本件特例の損金不算入期間は、本件土地を取得した平成4年3月31日(国税通則法第10条《期間計算及び期限の特例》第1項第1号の規定により初日不算入となるため、起算日は同年4月1日となる。)から本件土地上に営業所を建築し営業を始めた平成5年8月11日までとなり、また、各事業年度の負債の利子の額は平成5年3月期が105,859,344円、平成6年3月期が90,683,762円である。
 したがって、更正処分は違法となり、その全部を取り消すべきである。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、各事業年度の更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い各事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ロ 法人特別税
(イ)更正処分について
 上記イの(イ)のとおり、各事業年度の法人税の更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、各事業年度の法人特別税の更正処分も違法となり、その全部を取り消すべきである。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、平成5年3月期の更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、平成5年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ハ 消費税
(イ)更正処分について
 原処分庁は、請求人がT社に支払った本件造成工事の代金412,780,000円は本件土地の取得価額に含まれるから消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの。)第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項の消費税額の控除(以下「仕入税額控除」という。)の規定は適用されないと主張するが、上記イの(イ)のA及びBのとおり、請求人はG社から造成前の本件土地を取得し、T社に本件造成工事を依頼したものであるから、T社に支払った本件造成工事の代金412,780,000円は課税資産の譲渡等に当たる支払として仕入税額控除の規定が適用されるべきである。
 したがって、更正処分は違法となり、その全部を取り消すべきである。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、本件課税期間の更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税
(イ)更正処分について
A 本件土地の基準取得価額
 請求人は、平成4年3月31日にG社から本件土地を取得し、T社に本件造成工事を依頼したものであるから、本件特例の適用上、本件造成工事の代金は基準取得価額に含まれない旨主張するが、原処分庁が本件土地の売買及び本件造成工事の内容等を検討したところ次の事実が認められる。
(A)本件土地に係る平成4年3月19日付不動産売買契約書(以下「本件売買契約書」という。)には、次の条項がある。
a 売買代金の授受
 買主である請求人は、売買代金611,132,000円を契約締結と同時に売主のG社に支払う。
b 売買物件の表示
 P市H町80番3雑種地365.00平方メートルほか8筆で、総面積は8,462.17平方メートル(2,559.80坪)である。
c 特約事項
 本件土地の開発許認可業務は売主の責任と負担により行い、開発行為完了時の本件土地面積に増減が生じた場合は、実測地積により精算をする。
(B)T社の請求人に対する平成4年3月付の本件造成工事に係る発注請書には、次の条項がある。
a 発注者である請求人は、工事金額412,780,000円を支払条件として契約時の平成4年3月31日に請負者のT社に支払う。
b 工事名はP南倉庫用地造成工事で、工事面積は8,462.17平方メートルである。
c 工事金額の見積額の明細は、造成工事費90,757,282円、開発企画費100,000,000円、設計費30,000,000円、地元及び下流水害防止等対応工事費175,500,000円、開発行為同意取付費4,500,000円及び消費税12,022,718円である。
(C)請求人、T社、G社の三者は、平成4年3月19日付の本件造成工事に係る約定書(以下「本件約定書」という。)を取り交わしており、本件約定書には、(1)工事完了引渡が遅延した場合、遅延によって発生する請求人に対する違約金について、G社はT社に代わりこれを負担し、請求人はT社に対して請求しない、(2)工事代金の支払について、請求人からT社に対する支払が履行されない場合、G社は請求人に代わり支払の責を負う、(3)施工内容、施工完了及び瑕疵担保について、G社はT社に代わりそのすべての責任を負い、請求人はT社に対して責任を追及しない旨の条項があるが、本件造成工事の施工内容、施工完了、完了時の引渡し、代金の支払及び瑕疵担保の各責任は、通常であれば、本件造成工事の発注者である請求人又は請負者であるT社が負うべきところ、上記のとおり、G社のみがその責任のすべてを負う内容となっている。
(D)G社の請求人に対する平成5年5月31日付の土地代金精算書によると、G社は請求人に対し、減少面積34.28平方メートル(10.36坪)に対して、坪当たりの単価400,000円を乗じて計算した4,144,000円を返還する旨の条項があるが、請求人はG社から造成前の本件土地を購入したのであれば、通常、請求人のG社への支払額611,132,000円を坪数で除した238,742円に基づき精算すべきところ、上記のとおり、請求人のG社への支払額611,132,000円とT社への支払額412,780,000円を合計した1,023,912,000円を坪数で除した399,996円にほぼ等しい坪当たり単価400,000円で精算されている。
(E)本件造成工事はT社からY株式会社、さらに、X株式会社S支店の造成工事業者(以下、T社を含めて「本件造成工事業者」という。)を経て最終的にG社が請け負っているが、本件造成工事業者の各担当者は、本件造成工事について、原処分庁に対しいずれも次のように申述している。
a 本件造成工事は、G社から紹介された。
b 本件造成工事の金額と内容の決定は、G社が行った。
c 本件土地の開発認可の申請手続は、G社が行った。
d 本件造成工事に係る収入は、口銭あるいは手数料収入である。
(F)上記(A)ないし(E)の事実等を総合勘案すると、本件土地の開発認可業務及び本件造成工事は、本件土地の売主であるG社の責任と負担により行われていることは明らかであり、本件土地の売買と本件造成工事は一体として取引されたものと認められる。
 したがって、請求人は造成済の本件土地を取得し、請求人がG社に支払った本件土地の買受代金611,132,000円、T社に支払った本件造成工事の代金412,780,000円及び農地転用費用61,000円を合計した1,023,973,000円が本件特例の基準取得価額になるから、本件造成工事の代金は基準取得価額に含まれないとする請求人の主張には理由がない。
 なお、本件特例の損金不算入期間は、請求人が主張するとおり本件土地を取得した日の翌日である平成4年4月1日が起算日となり、一般貨物自動車運送業の認可を受けた平成5年8月11日までとなる。
B 各事業年度の所得金額
(A)平成5年3月期
a 請求人は、上記Aのとおり、本件土地を総額1,023,912,000円で取得したと認められ、当該金額に農地転用費用61,000円を加算した1,023,973,000円が本件特例の基準取得価額となることから、損金不算入負債利子額は別表2―1の「原処分庁主張」欄の(10)欄のとおり61,438,380円となり、請求人の申告額36,671,580円との差額24,766,800円が損金の額に算入されないこととなる。
b 本件土地の造成費用としてT社に支払った412,780,000円は、上記Aのとおり土地の取得代金と認められるから、このうち仮払消費税としている12,022,718円を控除対象仕入税額から減算して消費税額を計算した結果、未払消費税額が12,022,700円増加することとなり、仮払消費税としている12,022,718円との差額18円が雑収入として益金の額に算入される。
c そうすると、平成5年3月期の所得金額は、確定申告書の所得金額265,846,408円に、上記aの24,766,800円及び上記bの18円を加算した290,613,226円となる。
(B)平成6年3月期
a 平成5年3月期末における基準取得価額1,023,973,000円から平成5年5月31日にG社が請求人に返還した減少面積に対する精算金4,144,000円を差し引いた1,019,829,000円が本件特例の基準取得価額となることから、損金不算入負債利子額は、別表2―2の(1)の「原処分庁主張」欄の(10)欄のとおり20,396,580円となり、請求人の申告額12,223,860円との差額8,172,720円が損金の額に算入されないこととなる。
b 請求人は平成5年5月31日にG社から減少面積に対する精算金4,144,000円の返還を受けたことから、本件土地の取得価額に異動が生じるため、措置法関係通達62の2(5)―3《縄伸び等により新規取得土地等の取得価額に異動が生じた場合の調整》の定めに従って計算した結果、新規取得土地等に係る負債の利子の損金算入額は248,640円となる。
c 平成5年3月期の法人税の更正処分による増加所得に係る事業税3,108,200円は、損金の額に算入される。
d そうすると、平成6年3月期の所得金額は確定申告書の所得金額38,440,230円に上記aの8,172,720円を加算し、上記bの248,640円及び上記cの3,108,200円を減算した43,256,110円となる。
 したがって、これらの金額と同額で行った各事業年度の法人税の更正処分は適法である。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、各事業年度の更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った各事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。
ロ 法人特別税
(イ)更正処分について
 上記イのとおり、各事業年度の法人税の更正処分は適法であるから、平成5年3月期については、その基準法人税額108,219,875円から4,000,000円を控除した104,219,000円(1,000円未満の端数切捨て)を課税標準法人税額として、平成6年3月期については、その基準法人税額15,461,000円から4,000,000円を控除した11,461,000円(1,000円未満の端数切捨て)を課税標準法人税額として行った各事業年度の法人特別税の更正処分も適法である。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、平成5年3月期の法人特別税に係る更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った平成5年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。
ハ 消費税
(イ)更正処分について
A 本件課税期間の課税標準額は、請求人の申告額のとおり2,296,906,000円である。
B 本件課税期間の課税標準額に対する消費税額は、上記Aの2,296,906,000円に100分の3を乗じた68,907,180円である。
C 本件土地の造成費用としてT社に支払った412,780,000円は上記イの(イ)のとおり土地の取得価額であり仕入税額控除の対象とはならないことから、仕入税額控除の額は、請求人の申告した40,831,962円からT社に支払った412,780,000円に103分の3を乗じた12,022,718円を控除した28,809,244円である。
D 納付すべき税額は、上記Bの消費税額68,907,180円から上記Cの仕入税額控除の額28,809,244円を差し引いた40,097,900円(100円未満の端数切捨て)である。
したがって、上記と同額で行った本件課税期間の消費税の更正処分は適法である。
(ロ)過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、本件課税期間の消費税に係る更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条第4項に規定する過少申告加算税を賦課しない場合の正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件課税期間の過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

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3 判断

(1)法人税

イ 更正処分について
(イ)本件土地の基準取得価額に本件造成工事の代金として支払われた412,780,000円が含まれるか否かについて争いがあるので、以下審理する。
A 請求人提示資料及び原処分関係資料等に基づき当審判所が調査したところ、次の事実が認められる。
(A)各事業年度の負債の利子の額
 平成5年3月期の負債の利子の額は105,859,344円であり、平成6年3月期の負債の利子の額は90,683,762円である。
(B)本件土地の売買
a G社は、本件土地を含むP市36番1ほか47筆(市街化区域内の土地28,257.42平方メートル)の土地を平成3年12月24日に取得し、開発分譲を行った。
b 本件土地の売買は、上記開発分譲の第1期、第2期工事の一部であるが、売買する土地の面積が大きくその売買価格等について国土法の規定により届出が必要であったことから、請求人及びG社は平成4年2月下旬に、同法第23条《土地に関する権利の移転等の届出》第1項の規定により不動産売買等届出書をJ県知事あてに提出した。
 なお、請求人は、国土法第24条《勧告》に基づく勧告をしない旨の平成4年3月18日付の不勧告通知書を受けた。
c 請求人は、G社と平成4年3月19日に本件土地の売買契約を締結し、同月31日に買受代金611,132,000円の全額をG社へ支払った。
 なお、本件売買契約書には、次のような条項がある。
(a)売買物件は、別表1に記載の不動産である。
(b)売買代金は、611,132,000円である。
(c)所有権移転の時期は、売買代金完済時とする。
(d)特約事項として、(1)現状渡しとする、(2)本件土地の開発許認可業務は、G社の責任と負担により行う、(3)本件土地に存する現況水路は、開発行為竣工後G社が移管を受けた時、請求人と別途契約し受け渡す、(4)開発行為完了時、土地面積に増減が生じた場合は実測精算を行う。
(C)本件土地の造成工事等
a 請求人、G社及びT社の三者は、平成4年3月19日に本件造成工事に係る本件約定書を取り交わした。
 なお、本件約定書には次のような条項がある。
(a)工事完了引渡が遅延した場合の請求人に対する違約金は、G社が負担し、請求人はT社に対して請求しない。
(b)請求人からT社に工事代金の支払が履行されない場合は、G社が支払の責を負う。
(c)施工内容及び瑕疵担保については、G社がすべての責任を負い、請求人はT社に対し責任を追及しない。
b T社は、Y株式会社(以下「Y社」という。)に対し本件造成工事に係る平成4年3月19日付の発注書を発行している。
c T社は、請求人に対し本件造成工事に係る平成4年3月付(日にちは記載されていない。)の発注請書を発行した。
 なお、発注請書の支払条件欄に契約時を平成4年3月31日と記載されており、同日、T社は請求人から本件造成工事の代金412,780,000円を受領の上、請求人に対して領収証を発行した。
d X株式会社S支店(以下「X社」という。)は、Y社に対し本件造成工事に係る平成4年5月28日付の造成工事請書を発行し、さらにG社に対して同年6月5日付の注文書を発行した。
e G社は、平成4年6月23日に後記(D)の本件土地に係る都市計画法第29条《開発行為の許可》に規定するJ県知事あての開発行為許可申請書をP市に提出し、開発行為終了後に平成5年1月14日付の開発行為に関する工事の検査済証の交付を受けた。
f 請求人は、造成後の本件土地上にP営業所事務所棟を新築することとし、平成5年1月16日にG社を請負者として工事請負契約を締結し、同年3月31日にその完成引渡しを受けた。そして、平成5年8月11日に○○運輸局J陸運支局から一般貨物自動車運送事業の事業計画変更について認可書の交付を受け、その建物及び土地の使用を開始した。
(D)都市計画法第29条に規定する開発行為の許可手続等に関し、同法第46条《開発登録簿》に規定する開発登録簿には、次のような記載がある。
a 開発行為の許可申請者は、G社である。
b 開発行為の許可申請年月日は、平成4年6月23日である。
c 開発許可年月日は、平成4年8月27日である。
d 工事完了に伴う検査年月日は、平成4年12月21日である。
e 検査済証の交付年月日は、平成5年1月14日である。
f 開発許可の地域の名称はP市H町36番1ほか47筆であり、面積は28,257.42平方メートルである。
g 予定建築物の用途は、倉庫である。
(E)本件土地の代金の精算
 G社は、平成5年5月31日に減少面積10.36坪について精算し、請求人はG社から坪当たり単価400,000円で計算した4,144,000円の返還を受けている。
(F)本件土地の不動産登記の状況
a G社は、平成4年3月31日受付で、同日売買を原因として請求人に対し所有権移転登記をした。
b 請求人は、平成4年3月31日受付で、順位番号1番のあ根抵当権(根抵当権者はM信用金庫、極度額618,000,000円)及び同じく順位番号1番のい根抵当権(根抵当権者はL銀行、極度額412,000,000円)を設定した。
c 請求人は、平成4年12月21日を原因日付として宅地に地目変更した。
(G)請求人の代表取締役W(以下「W」という。)は、原処分庁に対して次のとおり申述している。
a 請求人は、R市Q町2324―2に所在する土地を賃借し貨物自動車運送業を営んでいたが、平成3年3月ころ土地の賃借料の値上げを要求されその話合いがうまくいかず、地主との賃貸借契約の更新が困難となった。
 そこで、請求人は、これに代わる土地を探していたところ、G社が広大な土地開発(本件土地が含まれている。)を計画しているとの情報を得て、平成3年秋ごろから本件土地の取得に向けて検討及び交渉を開始した。
b 本件売買契約書及び本件約定書は、平成4年3月19日に、請求人の社長室でW、請求人の専務取締役K(以下「K」という。)及びG社の営業本部副部長N(以下「N」という。)ほか1名の4人が立ち会って取り交わした。
 なお、その場所にT社の関係者はおらず、本件約定書にはG社とT社が先に押印しており、これに請求人は押印した。
c 本件造成工事をT社に依頼したのは、G社からT社を紹介されたからであり、具体的な工事内容、金額、工事期間、代金の決済等は事前にG社が決めていた。
d 本件造成工事の工事代金の支払は、土地買収、開発行為において資金が必要ということでNの指示により前払したものである。
(H)Kは、当審判所に対して次のとおり答述している。
a 請求人は、平成3年ころR市の営業所を立ち退くよう迫られており、営業所用地を確保することが急務となった。
b 請求人は、本件土地の取引において、土地の試算価格と造成工事の費用を含めて坪当たり380,000円を念頭に銀行等と融資の相談を進めた。
c 請求人は、本件土地の引渡しの状況について、本件造成工事が平成4年12月ころ完了したので、G社からその引渡しを受けた。
 その際、隣地の取得者も一緒であった。
d その後、請求人は、G社に営業所用建物の建築を依頼し、その建物完成後の平成5年7月ころ営業所を移転した。
(I)本件造成工事業者の各担当者は、原処分庁に対して、それぞれ次のとおり申述している。
a T社の担当者
(a)本件造成工事は、G社から話があり、金額と内容もG社がセットした。
(b)その後、G社から指示があり、T社としては通常取引はしていないがG社の関連会社であるY社に対して本件造成工事を発注した。
b Y社の担当者
(a)T社から本件造成工事を受注したのは、G社からの紹介であり、T社とは今回の取引以外に取引をしたことはない。
(b)その後、本件造成工事をX社に発注したが、その経緯については記憶がない。
(c)Y社としては、ペーパー取引であり、本件造成工事を施工しておらず、収入は口銭である。
c X社の担当者
(a)X社は、工業団地を造ることに関して開発許可の取得等の経験が多いということから、G社から本件土地の開発行為について相談をされ、アドバイスをしていたところ、G社からこれまで取引のなかったY社を紹介され、Y社から本件造成工事を受注した。
(b)その後、本件造成工事をG社へ発注したが、当初から開発行為はG社が行うことになっており、X社としては、3パーセントの手数料を受け取ることでG社に発注した。
(c)本件土地の開発行為の申請及び本件造成工事の施工は、G社が行った。
(J)Nは、当審判所に対し次のとおり回答している。
 本件土地を開発造成後に売買することも検討していたが、その開発造成には長期間を要し資金面の問題もあったことに加え、請求人も旧営業所を立ち退くよう迫られていたことから土地の取得を急いでいた事情があり、土地の売買契約を先行した。
(K)G社の常務取締役V(以下「V」という。)は原処分庁に対して次のとおり申し立てている。
a 本件土地と本件土地に隣接する他の開発分譲した土地の売買については、請求人ないし他の2社とそれぞれ行い、いずれも造成後のものを引き渡すことで売主、買主とも事前に了解していた。
 なお、請求人に対する単価は坪当たり400,000円であるが、契約は文書を作成せず、口頭(信用)で了解を得ていた。
b 開発面積が大きいことから、(1)国土庁に対し土地売買の届出を提出する際、勧告を受けると勧告価額で取引せざるを得なく、また、勧告自体が造成完了後にずれることになり、その間相当時間を要すること、(2)土地買収の過程でユーザー側(利用者)とも交渉を進行させていたことから、資金繰り、開発コスト、危険防止等の面から早期に売買契約を締結したいと考えていたところ、国土庁には素地取引ということで届出を行い不勧告通知を得ることができた。
B 措置法第62条の2第1項は、本件特例の対象となる事業年度の負債の利子の額のうち、損金の額に算入しない基準取得価額に係る負債の利子の額について規定している。
 そして、基準取得価額は、措置法第62条の2第3項及び法人税法基本通達の固定資産の取得価額の定めによれば、その新規取得土地等が販売用土地等以外のものである場合には、当該土地の購入の代価にその購入のために要した費用の額を加算した金額となる。
C 上記A及びBの事実等に照らし、本件造成工事の代金として支払われた412,780,000円が基準取得価額に含まれるか否かを検討する。
 請求人は、本件土地を国土法に基づいて早期に取得することが目的であり、G社と造成前の土地を購入する契約をするとともに造成工事をT社に依頼したものであり、最終的にその造成工事をG社が請け負ったことは知らなかったものであるから、本件造成工事の代金は本件特例の基準取得価額に含まれない旨主張する。
(A)G社は、上記Aの(B)のaのとおり平成3年12月に本件土地を取得し、都市計画法に基づく本件土地の開発・造成及び分譲を計画していたところ、上記Aの(J)のNの回答及び(K)のVの申立てによれば、開発分譲の総面積が約28,000平方メートルと大きく土地の買収、開発行為に多額の資金を必要とし、また、土地買収の過程でユーザー側とも交渉を行っていたことから、開発コスト、危険防止の面から早期に売買契約を締結したい希望をもっていた。そして、請求人としても、上記Aの(G)のWの申述及び上記Aの(H)のKの答述によれば、平成3年ころ営業所用地の確保が急務となり、営業所建物の建築を可能とする土地を探していたことから、平成4年3月19日にG社と本件売買契約書を締結するに至ったものと認められる。
 また、上記のWの申述によれば、本件売買契約締結時に本件造成工事におけるすべての責任をG社が負う旨の本件約定書も取り交わしており、さらに、上記Aの(C)のb及びcによれば、T社は、平成4年3月19日にY社に対して本件造成工事の発注書を発行し、請求人に対して、支払条件欄に契約時を同月31日と記載した本件造成工事の発注請書を発行していることから、本件造成工事の内容は、本件売買契約書を取り交わした時点で既に具体化していたものと認められる。
 そうすると、請求人とG社は、本件土地の売買契約時には、単に土地の所有権の移転を合意するだけでなく、開発・造成に関して実質的にG社が行うことも合意していたものと認められる。
(B)上記Aの(I)のとおり、本件造成工事業者の各担当者の申述において、本件造成工事がG社によって行われたとしていること及び上記Aの(C)のd及びeのとおり、本件造成工事を最終的にG社が受注し、都市計画法による開発許可及び検査済証の交付がG社に対してされていることから、本件造成工事は、G社によって行われたことが明らかである。
(C)請求人は、上記Aの(B)のc、上記Aの(C)のa及びcのとおり、平成4年3月19日に本件売買契約書及び本件約定書を取り交わし、同月31日に本件土地の代金及び本件造成工事の代金を支払っているが、これは上記Aの(G)のdによるとG社の指示により行われたものであると認められる。
 なお、本件造成工事の代金については、通常であれば、造成工事を行う前に支払う慣行はないところ、本件土地に上記Aの(F)のbの根抵当権を設定することでL銀行から借入れができたことから支払われたものと認められる。
(D)請求人は、上記Aの(E)の本件土地の減少面積に対する精算において、G社は本件造成工事を含めたところで責任を取ったものではなく、G社が主張した水路売買価額と請求人が主張した正当な価額との中間的単価で決定したと主張するが、本件売買契約書の土地代金611,132,000円に本件造成工事の代金として支払われた412,780,000円を加算した金額1,023,912,000円を基礎として算出される単価399,996円にほぼ一致する坪当たり単価400,000円をもって精算されている。
 すなわち、上記Aの(B)のcのとおり、本件売買契約書において実測面積により土地代金の精算をする旨は記載されているものの、精算単価については記載はないが、本件造成工事が終了した後の平成5年5月31日に精算が行われており、その時点では、既に請求人は本件造成工事の代金を支払っているので、減少面積に対する精算金の決定において坪当たりの単価が400,000円でされたことは、造成工事後の土地の評価に添った合理的なものであると解され、結果的にはG社が責任を取った内容で清算されたものと認められる。
(E)上記(A)ないし(D)のことから総合して判断すると、請求人とG社は、早期に開発行為を進める必要があり、本件土地の取引において、外形上では国土法による規制を回避するための方策として土地の売買と造成工事とを別々にしたものであり、その実態は本件土地と本件造成工事を一体のものとして取引したと認められることから、請求人は、本件土地を本件売買契約書に記載の売買代金611,132,000円と本件造成工事の代金として支払われた412,780,000円を合計した1,023,912,000円で購入したものと認めるのが相当である。
 以上のことから、請求人の平成5年3月期末における本件土地に係る基準取得価額は、上記Cの(E)の本件土地の購入の代価1,023,912,000円に農地転用費用61,000円を加えた1,023,973,000円となり、平成6年3月期末における本件土地に係る基準取得価額は、平成5年3月期末の基準取得価額1,023,973,000円から、上記Aの(E)の減少面積に対して返還された4,144,000円を減算した1,019,829,000円となる。
 したがって、本件造成工事の代金は基準取得価額に含まれないとする請求人の主張には理由がない。
(ロ)損金不算入期間について
 本件土地が上記(イ)のAの(F)のaのとおりG社から請求人に平成4年3月31日受付で同日売買を原因として所有権移転登記を経由していることなどから、同日に請求人が本件土地を取得したとして請求人及び原処分庁に争いはないが、当審判所においては、本件土地の取得日が同年3月31日である旨の主張を、次の点から採用することができない。
A 措置法第62条の2第3項第2号は、負債利子損金不算入期間は、その新規土地等を取得した日(初日不算入)から原則として4年を経過する日までの期間である旨規定し、同号のイにおいて、新規取得土地等が長期間にわたって使用される建物(販売用の建物を除く)の敷地の用に供された土地等である場合には、その建物が事業の用に供された日に負債利子損金不算入期間の末日が到来すると規定している。
 そして、その新規取得土地等を取得した日とは、当該土地等の引渡しを受けた日をいうものと解されている。
B 本件土地の売買は、上記(イ)のCの(E)のとおり、本件土地と本件造成工事が一体のものとして取引されている。
C 本件造成工事の代金については、通常であればその契約時に全額決済される慣行がないところ、請求人が造成工事を行う前の平成4年3月31日に本件造成工事の代金の全額を支払ったのは、上記(イ)のAの(G)のd、(J)及び(K)のbによると、G社の資金繰り等の事情から、G社の指示によるものと認められる。
D 請求人は上記(イ)のAの(G)及び(H)のとおり、営業所建物の建築を可能とする土地の取得を目的としていた一方、本件土地は都市計画法上の規定により本件造成工事が完了するまでG社の管理下にあったと認められるところ、本件造成工事は上記(イ)のAの(D)のc及びdのとおり平成4年8月27日から同年12月21日の間に行われ、上記(イ)のAの(F)のcのとおり、本件造成工事が完了した同年12月21日付で宅地に本件土地の地目変更登記がされていることから、請求人は、同日に本件土地の所有者としての現実の支配ができたものと認められる。
E Kは、上記(イ)のAの(H)のcのとおり、本件造成工事の完了した平成4年12月ころにG社から本件土地の引渡しを受けた旨答述していることから、本件土地について現実の引渡しがあったものと認められる。
F 上記AないしEのことから総合して判断すると、請求人が本件土地を取得した日は、本件造成工事が完了し本件土地の引渡しを受け、宅地に地目変更登記された平成4年12月21日とすることが相当である。
 また、損金不算入期間の末日となる日は、上記(イ)のAの(C)のfのとおり、請求人が○○運輸局J陸運支局から一般貨物自動車運送事業変更の認可を受けて営業所の使用を開始した平成5年8月11日であることは、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく当審判所の調査によってもその事実が認められる。
 したがって、本件土地は平成4年3月31日に取得したとする請求人及び原処分庁の主張は認められず、本件土地の取得日は同年12月21日となるから、損金不算入期間は同月22日に起算して平成5年8月11日までとなる。
(ハ)各事業年度の所得金額等について
A 各事業年度の損金不算入負債利子額等
(A)平成5年3月期
 請求人の平成5年3月期末における本件土地に係る基準取得価額は、上記(イ)のとおり1,023,973,000円となり、損金不算入期間は、上記(ロ)のとおり平成4年12月22日に起算して平成5年3月31日までの3か月(1月未満の端数切捨て)となる。
 そうすると、平成5年3月期の損金不算入負債利子額は、別表2―1の「審判所認定」欄の(10)欄のとおり15,359,595円となる。
(B)平成6年3月期
a 請求人の平成6年3月期末における本件土地に係る基準取得価額は、上記(イ)のとおり1,019,829,000円となり、損金不算入期間は、上記(ロ)のとおり、平成5年4月1日に起算して同年8月11日までの4か月(1月未満の端数切捨て)となる。
 そうすると、平成6年3月期の損金不算入負債利子額は、別表2―2の(1)の「審判所認定」欄の(10)欄のとおり20,396,580円となる。
b また、本件特例を適用するに当たり、法人が新規取得土地等を取得し、その取得の日を含む事業年度(以下「取得事業年度」という。)後の事業年度に、その土地の実測面積により土地代金を精算し当該法人が精算金等を受領する場合には、当該代金の確定した日を含む事業年度の直前の事業年度終了の日における累積損金不算入負債利子残額と、取得事業年度においてその確定した金額で取得したものとして計算される累積損金不算入負債利子残額との差額に相当する金額は、当該代金の確定した日を含む事業年度において当該新規取得土地等に係る累積損金不算入負債利子残額から控除し損金の額に算入できるものと解されている。
 そうすると、上記(イ)のAの(E)の本件土地の減少面積に対する精算に伴い、平成6年3月期の損金に算入できる負債利子額は、別表2―2の(2)の「確定した金額で取得したものとした計算」欄の(8)欄のとおり62,160円となる。
B 各事業年度の所得金額
(A)平成5年3月期
a 損金不算入負債利子額は、上記Aの(A)のとおり、15,359,595円となり、請求人が確定申告において計上している損金不算入負債利子額36,671,580円との差額21,311,985円は、所得金額から減算される。
b T社に支払った412,780,000円に係る仮払消費税として経理された12,022,718円と、後記(3)のイの(ハ)の消費税額の12,022,700円との差額18円は、雑収入として益金の額に算入される。
c そうすると、平成5年3月期の所得金額は、確定申告書の所得金額265,846,408円から上記aの21,311,985円を減算し、上記bの18円を加算した244,534,441円となり、この金額は、請求人の確定申告書の所得金額を下回ることとなり、平成5年3月期の更正処分は、その全部を取り消すべきである。
(B)平成6年3月期
a 損金不算入負債利子額は、上記Aの(B)のaのとおり20,396,580円となり、請求人が確定申告において計上している損金不算入負債利子額12,223,860円との差額8,172,720円は所得金額に加算される。
b 損金に算入される負債利子額は、上記Aの(B)のbのとおり62,160円となる。
c そうすると、平成6年3月期の所得金額は、確定申告書の所得金額38,440,230円に上記aの8,172,720円を加算し、上記bの62,160円を減算した46,550,790円となり、この金額は、請求人の更正処分に係る所得金額を上回ることとなるから、平成6年3月期の更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
(イ)平成5年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分
 平成5年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分については、上記イの(ハ)のBの(A)のとおり更正処分の全部の取消しに伴い、その全部を取り消すべきである。
(ロ)平成6年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分
 平成6年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分については、更正処分は上記イの(ハ)のBの(B)のとおり適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認めらないから、同条第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定をした原処分は適法である。

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(2)法人特別税

イ 更正処分について
 平成5年3月期の更正処分については、上記(1)のイの(ハ)のBの(A)のとおり法人税の平成5年3月期の更正処分の全部の取消しに伴い、その全部を取り消すべきであり、また、平成6年3月期の更正処分については、上記(1)のイの(ハ)のBの(B)のとおり法人税の平成6年3月期の更正処分は適法であり、この更正処分による所得金額に基づいてされた法人特別税の更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 平成5年3月期の過少申告加算税の賦課決定処分については、上記イのとおり更正処分の全部の取消しに伴い、その全部を取り消すべきである。

(3)消費税

イ 更正処分について
 本件課税期間の消費税の仕入税額控除の額について争いがあるので調査したところ、次のとおりである。
(イ)次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく当審判所の調査によってもその事実が認められる。
A 課税標準額は、2,296,906,000円である。
B 課税標準額に対する消費税額は、上記Aの2,296,906,000円に100分の3を乗じて算出した金額68,907,180円である。
(ロ)仕入税額控除の額
 請求人は、T社に支払った412,780,000円が造成工事の代金であるとして仕入税額控除の対象となる旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のイの(イ)のCの(E)のとおり、請求人は、本件土地を本件売買契約書に記載の売買代金611,132,000円と本件造成工事の代金412,780,000円とを合計した1,023,912,000円で取得したものと認められ、当該土地の取引は消費税法第6条《非課税》第1項の規定により消費税は非課税となることから、請求人がT社に支払った本件造成工事の代金412,780,000円は、課税仕入れに該当しないこととなる。
 したがって、仕入税額控除の額は、確定申告書における仕入税額控除の額40,831,962円から、本件土地の取得代金と認定した412,780,000円に103分の3を乗じた12,022,718円を控除した28,809,244円となる。
(ハ)納付すべき税額は、上記(イ)のBの消費税額68,907,180円から、上記(ロ)の仕入税額控除の額28,809,244円を控除した40,097,900円(100円未満の端数切捨て)となる。
 したがって、この金額と同額でされた本件課税期間の消費税の更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 過少申告加算税の賦課決定処分については、本件課税期間の消費税の更正処分は上記イのとおり適法であり、また、その更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定をした原処分は適法である。
(4)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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