ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.55 >> (平10.6.23裁決、裁決事例集No.55 479頁)
(平10.6.23裁決、裁決事例集No.55 479頁)
《裁決書(抄)》
1 事実
審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成6年7月24日に死亡したF(以下「被相続人」といい、Fの相続開始に係る相続を「本件相続」という。)の共同相続人の一人であるが、本件相続に係る相続税について、相続税の申告書に別紙1の各表の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告(以下「本件申告」という。)した。
次いで、請求人は、原処分庁所属の職員の調査を受け、平成8年12月25日に別紙1の各表の「修正申告等」欄のとおりとする相続税の修正申告(以下「本件修正申告」という。)をした。
原処分庁は、これに対し、平成9年3月26日付で別紙1の(表2)の「修正申告等」欄のとおりの過少申告加算税の賦課決定処分をするとともに、同日付で別紙1の各表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
請求人は、本件更正処分等を不服として、平成9年5月23日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月25日付で棄却の異議決定をした。
請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成9年9月19日に審査請求をした。
なお、原処分庁は、平成9年10月14日付で別紙1の各表の「再更正処分等」欄のとおりの再更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分をした。
さらに、原処分庁は、平成9年12月11日付で別紙1の各表の「再々更正処分等」欄のとおりの再々更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分をした。
2 主張
(1)請求人の主張
原処分は、次の理由により不当、違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分
(イ)本件土地について
請求人が被相続人から相続により取得した財産のうち、R市S町11―4、11―5、11―6、11―7及び11―9の合計面積2,241.84平方メートルの土地(以下「本件土地」という。)は、被相続人が株式会社J(以下「J社」という。)に対し、貸し付けていたもので、J社では、本件土地をガソリンスタンドに係る建物の敷地、ぱちんこ店(以下「パチンコ店」という。)及びボウリング場に係る建物の敷地として、それぞれ利用しているものである。
請求人は、本件相続に係る本件土地の評価に当たって、J社が所有する建物の敷地ごとに、ガソリンスタンドに係る部分並びにパチンコ店及びボウリング場に係る部分との二つに区分し、それぞれを1画地の貸宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。以下同じ。)として、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56号、以下「評価通達」という。)の定めにより、次表の「本件申告」欄のとおり評価し、本件申告をした。
その後、請求人は、本件土地について、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の事業の用に供されている状況ごとに三つに区分し、それぞれを1画地の貸宅地として、上表の「本件修正申告」欄のとおり本件土地の価額を評価し、本件修正申告をしたところ、原処分庁は、本件土地の全部がJ社に貸し付けられているものであるから、その全部が1画地の貸宅地であるとして、上表の「本件更正処分」欄のとおり評価し、本件更正処分をした。
しかしながら、次に述べるとおり、本件更正処分における本件土地の評価は、評価単位に誤りがあり、不当、違法なものである。
A 本件土地は、借地法第1条《借地権の定義》に規定されている賃借権により、現実に、賃借人であるJ社の所有するガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として、最有効使用されているものであるから、建物の事業の用に供されている状況ごとに区分し、それぞれを1画地として評価をすべきである。
また、土地は、用途転換、併合等の多用性をもつもので、相続税の課税標準の計算に当たっては、相続の開始日の現況により評価すべきであるにもかかわらず、原処分庁は、将来、本件土地が一体となる可能性を前提としたところで、本件土地の全部を一画地として評価したのであれば、その評価方法は、非現実的な評価であり、現況に応じた評価を規定している相続税法及び評価通達に反する非合理的かつ非合法的なものとなる。
B さらに、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る事業には、次に述べるとおり、法律による規制等があることから、これらの事情を考慮して、事業の用に供されている建物の敷地ごとに評価をすべきである。
(A)ガソリンスタンドの敷地について
J社がガソリンスタンドとして利用している384.03平方メートルの土地(以下「ガソリンスタンドの敷地」という。)は、消防法第10条《危険物の貯蔵等の取締り》第4項及び同法施行令第17条第1項第13号の規定による基準によれば、ガソリンスタンドを営む者は、「自動車等の出入りをする側を除き、高さ2メートル以上の耐火構造の塀を設け、延焼のおそれがある時は、防火上の安全な高さの塀としなければならない。」と耐火塀の設置義務が課せられているところ、パチンコ店の敷地及びボウリング場の敷地とは高さ7.4メートルの耐火塀で仕切られ、かつ、幅54センチメートルの空き地で遮断されていることから、物理的にも機能的にも他の土地と一体とはならないものである。
(B)パチンコ店の敷地について
J社がパチンコ店として利用している1,167.36平方メートルの土地(以下「パチンコ店の敷地」という。)は、被相続人とJ社との間で土地の利用上の制限等について文書化してないものの、パチンコ店にあっては、18歳未満の入店禁止の規制がある風俗営業であることから、他の土地と一体とはならないものである。
また、上記(A)のとおり、ガソリンスタンド側には、消防法の規定に基づく高さ7.4メートルの耐火塀があることから、パチンコ店の敷地からは直接国道〇号線を利用することができないものであり、この点からもガソリンスタンドの敷地とは一体とはならないものである。
(C)ボウリング場の敷地について
J社がボウリング場として利用している2,252.58平方メートルの土地は、被相続人が所有する690.45平方メートルの土地(以下「A土地」という。)とHが所有するR市S町11―3の一部、1,562.13平方メートルの土地(以下「B土地」といい、A土地と併せて「ボウリング場の敷地」という。)をそれぞれ賃借し、併せてボウリング場の敷地として使用しているものである。
そして、B土地は、被相続人が生前にHから賃借する際、ボウリング場の増設が契約条件であったものであるが、その後、この契約をJ社が引継ぎ、ボウリング場以外の目的には使用できないものである。
仮に、当該契約に反しパチンコ店等として利用した場合には、契約条項に違反したことになり、契約解除の羽目になりかねない。
また、裁判例においても、賃借建物に係る無断増改築が約束違反である場合には、原状回復を求めた上での解除を有効としていることもあり、上述の契約条項を遵守しようとすれば、ボウリング場の敷地は、上記(A)及び(B)の土地とは一体とはならないものである。
(ロ)本件土地の価額について
そうすると、本件土地の価額は、評価通達の定めにより評価すると、次表のとおりの金額となる。
以上のとおり、本件更正処分における本件土地の価額は、評価単位を誤っているものであり、不当、違法なものである。
(ハ)本件株式について
原処分庁は、請求人が本件相続により取得したJ社の株式(以下「本件株式」という。)の評価に当たり、本件土地及びB土地は、借地人であるJ社が、被相続人及びHからそれぞれ賃借し、これらの土地の全部を一体として利用しているものであるから、借地権(建物の所有を目的とする権利をいう。以下同じ。)の価額の算定に当たっても、その全体を1画地の宅地であると認定したところにより、当該借地権の価額を算定し、本件株式の価額を評価した。
しかしなから、本件更正処分における本件株式の評価は、次に述べるとおり、本件土地及びB土地に係る借地権の価額の算定における評価単位に誤りがあり、不当、違法なものである。
A 借地権の価額について
(A)J社は、本件土地を被相続人から、B土地をHからそれぞれ賃借し、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として利用しているものであるから、J社に係る借地権の価額の算定に当たっても、本件土地の評価方法と同様、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の事業の用に供されている状況ごとに区分し、それぞれを1画地として評価すべきである。
(B)なお、B土地に係る借地権の価額の算定においては、上記(イ)のBの(C)で述べたとおり、ボウリング場以外に利用できないものであるから、A土地以外の土地とは一体として評価すべきではない。
そうすると、借地権の価額は、評価通達の定めにより算定すると、次表のとおりの金額となる。
B 本件株式の価額について
本件株式の価額は、評価通達の定めにより、上記Aにより算定した借地権の価額を含めたところで、本件株式の1株当たりの価額を評価すると328,849円となり、この価額と請求人が本件相続により取得した株式数275(再々更正処分によれば株式数は266である。)を乗じて算定すると、次表の「本件修正申告」欄のとおりとなる。
区分 | 本件申告 | 本件修正申告 | 本件更正処分 |
---|---|---|---|
本件株式の価額 | 90,297,350 | 90,433,475 | 90,224,475 |
以上のとおり、本件更正処分における本件株式の評価は、本件土地及びB土地に係る借地権の価額の算定に当たり、その評価単位を誤っているものであり、不当、違法なものである。
(ニ)相続税の課税価格及び納付すべき税額
A 相続財産の価額
(A)土地の価額
本件土地の評価額は、上記(ロ)のとおり、その合計額が212,454,666円となり、また、本件土地以外の土地の価額は、39,841,305円(再更正処分後の金額)であることから、土地の価額の合計額は、252,295,971円となる。
(B)株式等の価額
本件株式の価額は、上記(ハ)のBの「本件修正申告」欄のとおり90,433,475円となり、また、本件株式以外の株式等の価額は、本件修正申告のとおり549,320円であるから、株式等の価額の合計額は、90,982,795円となる。
(C)上記(A)及び(B)以外の相続財産の価額
上記(A)及び(B)以外の相続財産の価額は、本件修正申告のとおり76,928,041円である。
したがって、相続財産の価額の合計額は、上記(A)、(B)及び(C)を合計した420,206,807円となる。
B 債務及び葬式費用の額並びに純資産価額に加算される贈与財産価額
債務及び葬式費用の額は、本件修正申告のとおり23,067,394円であり、また、純資産価額に加算される贈与財産価額は、本件申告のとおり23,734,770円である。
C 相続税の課税価格及び納付すべき税額
請求人の相続税の課税価格及び納付すべき税額は、上記Aの相続財産の価額から上記Bの債務及び葬式費用の額を控除し、さらに、純資産価額に加算される贈与財産価額の金額を加算した金額を基に計算すると、別紙1の各表の「請求人主張額」欄のとおりの金額となる。
以上のとおり、本件更正処分は、本件土地の評価単位を誤っているものであり、不当、違法なものであるから、その全部を取り消すべきである。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分
上記イのとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
(2)原処分庁の主張
原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分
(イ)調査、審理したところによれば、次の事実が認められる。
A J社は、被相続人とHが締結した昭和47年3月13日付の賃貸借契約を引継ぎ、その後、Hと協定書を取り交わし、賃貸借金額を平成6年3月12日から月額300,000円(正しくは、330,000円)、また、賃貸借期間を平成8年2月28日までとしていること。
B 被相続人は、J社との間で本件土地に係る賃貸借契約書を締結していないが、昭和58年から平成6年まで月額700,000円で賃貸していること。
C J社は、平成6年7月24日現在、被相続人から賃借している本件土地をガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場の敷地として利用していること。また、Hから賃借しているB土地をボウリング場の敷地として利用していること。
(ロ)本件土地について
A ところで、相続税法第22条《評価の原則》は、相続又は遺贈により取得した財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価による旨を規定しており、その時の時価とは、相続開始時における財産の客観的な交換価格をいうが、この価格は必ずしも一義的に確定されるものではない。
したがって、課税実務上は、相続財産における評価の一般的基準が評価通達により定められ、そこで定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。
これは、相続財産の客観的な交換価格を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の方法等により異なった評価額が生じることとなるため、あらかじめ定められた評価方式により画一的に評価することが、納税者の公平、納税者の便宜という見地からみて合理的であるとの理由に基づくものである。
B 評価単位に関して評価通達によれば、宅地の価額は、1画地の宅地ごとに評価すべきであり、宅地の上に存する権利の評価についても同様である。
そして、同一人が2以上の者から隣接している土地を借りて、これを一体として利用している場合には、利用方法の区分にかかわらず、その借主の借地権の評価に当たっては、その全体を1画地として評価し、また、貸し付けられている宅地の評価においては、同一人に貸し付けられている画地ごとに評価するのが相当である。
そうすると、本件土地の評価は、本件土地の全体を1画地の宅地として評価すべきであるから、請求人の主張するような借地人であるJ社の利用状況ごとに区分して評価すべきではない。
また、請求人は、本件土地を使用する上において、賃借人が受ける消防法及び借地法の規制があるとして、一利用の宅地を分割して評価すべき旨主張するが、上述のとおり、本件土地の全体を1画地の宅地として評価すべきであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
C 本件土地の価額について
以上のとおり、本件土地は、その全体を1画地の貸宅地として評価すべきであるから、評価通達の定めにより評価すると、その価額は240,591,948円となる。
(ハ)本件株式について
A J社に係る借地権の価額について
上記(イ)のとおり、J社は、本件土地及びB土地を賃借して、その全部を利用しているものであるから、上記(ロ)のBで述べたとおり、同一人が2以上の者から隣接している土地を借りて、これを一体として利用している場合には、利用方法の区分にかかわらず、その全体を1画地として評価すべきであるから、B土地は、本件土地と一体としたところで、借地権の価額を算定すべきである。
したがって、J社に係る借地権の価額は、本件土地及びB土地の全部を1画地として評価通達の定めにより計算すると、175,216,598円となる。
B 本件株式の価額について
本件株式の価額は、評価通達により上記Aの借地権の価額を含めたところで、評価をすると、1株当たり328,089円となり、この価額に請求人が本件相続により取得した株式数275(再々更正処分等により株式数は266株)を乗じて計算すると、90,224,475円となる。
(ニ)相続税の課税価格及び納付すべき税額
A 相続財産の価額
(A)土地の価額
本件土地の価額は、上記(ロ)のCのとおり240,591,948円と認められ、また、本件土地以外の土地の価額は、39,841,305円(再更正処分後の金額)であるから、土地の価額の合計額は、280,433,253円となる。
(B)株式等の価額
本件株式の価額は、上記(ハ)のBのとおり90,224,475円と認められ、また、本件以外の株式等の価額は、本件修正申告のとおり549,320円であるから、株式等の価額の合計額は、90,773,795円となる。
(C)上記(A)及び(B)以外の相続相産の価額
上記A及びB以外の相続財産の価額は、本件修正申告のとおり76,928,041円と認められる。
したがって、相続財産の価額の合計額は、上記(A)、(B)及び(C)を合計した448,135,089円となる。
B 債務及び葬式費用の額並びに純資産価額に加算される贈与財産価額
債務及び葬式費用の額は、本件修正申告のとおり23,067,394円であり、また、純資産価額に加算される贈与財産価額は、本件申告のとおり23,734,770円である。
C 相続税の課税価格及び納付すべき税額
請求人の相続税の課税価格及び納付すべき税額は、上記Aの相続財産の価額から上記Bの債務及び葬式費用の額を控除し、さらに、純資産価額に加算される贈与財産価額を加算した金額を基に計算すると、別紙1の各表の「再々更正処分等」欄のとおりの金額となる。
以上のとおり、上記の課税価格による更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分
上記イのとおり、更正処分は適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。
3 判断
本件審査請求の争点は、本件土地の評価単位にあるので、以下審理する。
(1)次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ J社は、本件相続の開始日現在、本件土地及びB土地を被相続人及びHからそれぞれ賃借し、これらの土地は、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として利用していること。
また、その面積は、本件土地が2,241.84平方メートル、B土地が1,562.19平方メートル(再々更正処分によれば、909.38平方メートル。)であり、その合計面積は3,804.03平方メートル(再々更正処分によれば、3,151.22平方メートル。)であること。
ロ 本件土地は、地続きであり、分割されることなく、その全部を相続人である請求人(持分100分の21)及びG(持分100分の79)の2名により相続されていること。
ハ 本件土地及びB土地の上に存する建物の平面図並びに本件土地及びB土地に係る平成6年分の路線価等の状況は、別紙2のとおりであること。
ニ 平成6年分財産評価基準書によれば、本件土地及びB土地に係る場所の借地権割合は、30パーセントであること。
ホ 請求人は、本件土地の評価に当たって、J社の所有する建物の敷地ごとに、ガソリンスタンドに係る部分並びにパチンコ店及びボウリング場とに係る部分の二つに区分し、それぞれを1画地の貸宅地として評価し、本件申告をしていること。
その後、請求人は、本件修正申告において、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る事業の用に供されている状況ごとに三つに区分して、それぞれを1画地の貸宅地として評価していること。
ヘ J社の本件相続の開始日の直前の事業年度は、平成5年1月1日から同年12月31日であること。
ト J社は、本件相続の開始日の直前の事業年度末における総資産価額(帳簿価額)が、797,642,266円、また、1年間の取引金額が3,236,623,912円であり、評価通達178《取引相場のない株式の評価上の区分》に定める評価しようとするその株式の発行会社の規模区分は、中会社に該当すること。
チ 請求人は、本件土地及びB土地に係る借地権の価額の算定に当たって、J社の所有する建物の敷地ごとに、ガソリンスタンドに係る部分並びにパチンコ店及びボウリング場に係る部分の二つに区分し、本件株式の1株当たりの価額を評価通達179《取引相場のない株式の評価の原則》の(2)の定めにより、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式により328,354円(類似業種比準価額方式により評価した価額の818,200円と純資産価額方式により評価した価額の328,354円のいずれか低い金額をいい、以下同じ。)と評価し、本件申告をしていること。
その後、請求人は、本件修正申告において、本件土地及びB土地に係る借地権の算定に当たって、ガソリンスタンド、パチンコ店、ボウリング場に係る建物の事業の用に供されている状況ごとに三つに区分して、それぞれ1画地として借地権の価額を算定し、本件株式の1株当たりの価額を328,849円と評価していること。
リ 本件土地以外の土地の価額は、39,841,305円(再更正処分後の金額)であること。
ヌ 本件株式以外の株式等の価額は、本件修正申告のとおり549,320円であること。
ル 土地及び株式等以外の相続財産の価額は、本件修正申告のとおり76,928,041円であること。
ヲ 債務及び葬式費用の額は、本件修正申告のとおり23,067,394円であり、また、純資産価額に加算される贈与財産価額は、本件申告のとおり23,734,770円であること。
(2)原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ J社の平成6年1月1日から同年12月31日までの事業年度における法人税の申告書によれば、同社が本件土地の全部を被相続人から賃借し、その賃借料は同年1月から12月までの間、月額700,000円であること。
ロ 本件土地の上に存する建物は、いずれもJ社の所有であること。
なお、ガソリンスタンドは、平成5年11月にJ社が新築したものであり、当該ガソリンスタンドを建築するに当たって、J社と被相続人との間で権利金等の授受はないこと。
ハ 本件土地の上に存する建物の登記簿謄本には、次の旨記載されている。
(イ)ガソリンスタンドに係る建物は、所在:R市S町11―9、種類:給油所、鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建、床面積:1階81.60及び2階91.00平方メートルであること。
(ロ)パチンコ店及びボウリング場に係る建物は、所在:R市S町11―3、同11―4、同11―5、同11―6、同11―7、種類:遊技場、鉄骨造陸屋根亜鉛メッキ鋼板葺平家建、床面積:1,772.84平方メートルであること。
ニ 被相続人等とHとの間で取り交わしたB土地に係る土地の賃貸借契約書等には、次の事実が認められる。
(イ)被相続人は、Hとの間で、賃貸人Hを甲、賃借人Fを乙として、R市S町11―3の宅地の一部である約1,000平方メートル(約300坪)をボウリング場の増設を目的として、昭和47年3月13日に契約期間を3年とする賃貸借契約を締結していること。
(ロ)J社は、上記(イ)の賃貸借契約を引継ぎ、Hと協定書を取り交わし、平成6年3月1日付協定書によれば、賃貸借金額を平成6年3月1日から月額330,000円、また、賃貸借期間を平成8年2月28日までとしていること。
ホ 本件土地及びB土地には、次の事実が認められる。
(イ)被相続人は、株式会社Kボウリング(昭和48年11月1日に商号変更によりJ社となる。)を昭和43年2月14日に設立し、同社では、ガソリンスタンド及びボウリング場(14レーン)の営業を開始していること。
(ロ)J社は、昭和47年に、本件土地の一部とB土地を併せたところに、ボウリング場(18レーン)を増築していること。
(ハ)J社は、昭和49年に、上記(イ)のボウリング場(14レーン)をパチンコ店及びレストランに変更していること。
(ニ)J社は、昭和62年に、上記(ハ)のパチンコ店及びレストラン部分の一部を取壊し、その部分を現在のパチンコ店に改築していること。
ヘ J社に係る商業登記簿謄本には、次の旨記載されている。
(イ)設立:昭和43年2月14日登記、1株の金額:10,000円、資本の総額:10,000,000円、目的:(1)石油製品及び石油化学製品の販売、(2)液化石油ガス及びガス器具、容器類の販売、(3)住宅設備機器及び厨房機器類の販売、(4)ボウリング場の経営、(5)遊技場の経営、(6)レストランの経営、(7)損害保険代理業、(8)上記各号に付帯する一切の業務であること。
(ロ)本件相続の開始日における代表者は、請求人及び被相続人であるFであること。
ト J社は、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場を主たる業務とする法人税法第2条《定義》第10号に規定する同族会社であること。
チ J社の本件相続の開始日現在における総発行済株式数は、1,000株であり、被相続人の所有株式数は275株(再々更正処分によれば、株式数が266株である。)であり、請求人とその同族関係グループの所有持株割合は、100パーセントであること。
(3)本件更正処分
イ 本件土地について
(イ)請求人は、本件土地は、借地法第1条に規定されている賃借権により使用されているものであり、現実に、賃借人であるJ社の所有するガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として、最有効使用されているものであるから、本件土地の評価に当たっては、当該建物の利用状況ごとに区分し、それぞれを評価単位(1画地)として評価すべきである。
また、土地は用途転換、併合等の多用性をもつもので、相続税の課税標準の計算に当たっては、相続の開始日の現況により評価すべきであるにもかかわらず、原処分庁は、将来、本件土地が一体となる可能性を前提としたところで、本件土地の全部を1画地として評価したのであれば、その評価方法は、非現実的な評価であり、現況に応じた評価を規定している相続税法及び評価通達に反する非合理的かつ非合法的なものである旨主張するので、以下検討する。
A ところで、相続税法第22条の規定によれば、相続等により取得した財産の価額は、特定の財産を除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、この場合の時価とは、相続時の相続財産のそれぞれの現況に応じて、一般に不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額と解されている。
しかし、現実として、相続財産の種類、その状態等は多種多様であり、各財産の時価を把握するのは極めて困難なことであり、また、納税者間により評価が区々異なることは、課税の公平の観点から問題が多いこと、そして、課税庁の事務処理の迅速性からも、課税庁は、評価通達を定め、各種財産の時価に関する原則と具体的な計算方法を明らかにするとともに、土地の路線価等を定め、広くこれらを公開することによって、納税者の申告等の便に供しているところである。
そして、課税庁がこのような画一的な評価方法を定める理由は、多種多様な条件にある相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法によれば、その評価方式の異同、評価の基礎となった資料等の選択の仕方により同種の財産に異なった評価額が生ずるばかりではなく、課税庁の事務負担の増加による課税事務の迅速性が阻害され、むしろ、予め、基準として示された評価方式による画一的な処理が課税の公平、納税者の便宜等の面からも合理的であるとする趣旨によるものであるとされ、また、評価通達の定めは、個々に行われる鑑定評価とは異なり、評価すべき土地の価格形成要因の大数的な基準により、客観的な時価の近似値を求めようとするものであり、課税手続上、課税の公平あるいは画一的な処理を図るため定められた時価として、合理性を有しているものと解すべきものである。
B 次に、評価通達1《評価の原則》の定めによれば、相続財産の評価に当たっては、課税時期におけるそれぞれの財産の現況に応じ、その財産の価額に及ぼすすべての事情を考慮して評価する旨定められているが、時価主義の評価の原則から当然のことである。
土地等は、所有者が一般に自由に使用収益、処分ができる状態として評価されるところ、土地等の価格形成要因のうち、都市計画法及び建築基準法等各種の公的規制などの行政的要因等の一般的要因は、一般市場の取引価額の上において実現され、これらは、路線価等の算定の基礎となる価額に織り込まれるべきであり、そして、これらの規制等は、実際に路線価等の価格の上で考慮されているものとされており、また、個別的な要因のうち、その土地の位置、地積、形状、接面街路の状況及び利用状況等あらかじめ類型的に想定できるものは、評価通達において各種の画地調整率等により示されているところである。
また、土地の時価が不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、客観的交換価値を指す以上、少なくても所有者等の主観的要因あるいは所有者の意思、行為等によって変更することができるような客観性のない事情は、斟酌すべきではないと解されている。
C さらに、評価通達10《評価の単位》では、宅地の価額は、1画地の宅地ごとに評価することとし、宅地の上に存する権利の価額についても、同様とする旨定められ、また、1画地の宅地とは、利用の単位となっている1区画の宅地をいうものとされているところ、必ずしも1筆(土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録された1筆をいう。以下同じ。)の宅地からなるものとは限らず、2筆以上からなる場合もあり、また、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用される場合もある旨定められている。
このことは、1画地の宅地とは、一般的には、その宅地又は借地権等を取得した者(権利者)が、その土地を使用収益、処分をすることができる利用単位ないし処分単位であって、その土地を自用地として使用している限り、他から制約を受けることがないので、それを1利用単位つまり1画地として評価するものと解されている。
D そして、貸宅地の評価は、評価通達25《貸宅地の評価》において、同通達11《評価方式》から22―3《大規模工場用地の路線価及び倍率》及び24―2《土地区画整理事業中の宅地》の定めにより評価したその宅地の価額から、同27《借地権の評価》の定めにより評価したその借地権の価額を控除した金額によって評価する旨、また、借地権の評価は、評価通達27により、その借地権の目的となっている自用地としての価額(その宅地に借地権等の権利が設定されていないとした場合の価額をいう。以下同じ。)に、その宅地に係る借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する旨それぞれ定められている。
また、その土地を他人に賃貸している場合には、賃貸借契約に基づく制約を受けることとなるため、その土地の使用収益、処分ができる利用単位ないし処分単位を1画地というものとされていることから、2以上に貸し付けられている場合には、その借主の異なるごとに1利用単位(1画地)とし、一方、その土地を他人から賃借している場合には、同一人が2以上の者から隣接する土地を賃借し、これを一体として利用している場合には、その全体を1画地とするものと解されている。
E これを本件についてみると、次のとおりである。
(A)宅地の評価については、1画地の宅地ごとに評価する旨定められており、そして、1画地とは、その宅地の利用の単位となっている宅地をいうものと解されているところ、本件土地は、上記(1)のイ及び(2)のイのとおり、被相続人とJ社との間で賃貸借契約の締結はされていないものの、J社は、本件相続の開始日現在において、本件土地の全部を継続して使用しており、その賃借料は月額700,000円であることが認められる。
また、本件土地は、上記(1)のイのとおり、J社の事業の用に供されていることが認められる。
そして、上記(1)のハ、(2)のロ及びハのとおり、本件土地には、J社の所有する給油所及び遊技場の2棟が存在し、本件相続の開始日現在において、外形上からも登記簿上からもガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場の事業の用に供されていることが認められ、上記(1)のロのとおり、本件土地は、地続きであり分割されることなく、その全部が請求人及びGの2名により相続されていることも認められる。
(B)そうすると、本件土地は、地続きであり、分割されることなく、その全部を請求人及びGの2名が相続し、その全体がJ社の事業に係る建物の敷地として一体として貸し付けられ、現実に、J社の所有する建物の敷地として、J社の事業の用に供されていることが明らかであることから、貸し付けられている全体が1利用単位、つまり1画地の貸宅地であると判断するのが相当である。
また、請求人は、原処分庁は、本件土地の評価に当たって、将来、本件土地が一体となる可能性を前提としたところで、本件土地の全部を1画地として評価したのであれば、その評価方法は、非現実的な評価であり、現況に応じた評価を規定している相続税法及び評価通達に反する非合理的かつ非合法的な評価であるとも主張するが、評価通達によれば、土地の評価は、上記のBのとおり、課税時期におけるそれぞれの財産の現況に応じ、その財産の価額に及ぼす全ての事情を考慮して評価する旨定められているところ、原処分庁は、本件土地の評価に当たって、上記2の(2)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、J社が本件土地の全部を使用している現況により評価していることが認められる。
そうすると、原処分庁の行った本件土地の評価は、現実に貸し付けられている現況により評価しているものと認められ、請求人の主張する、将来、本件土地が一体となる可能性を前提として評価したものとは認められないと判断するのが相当である。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)さらに、請求人は、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る事業には、それぞれ法律による規制等があることから、これらの事情を考慮して評価すべきである旨主張するので、以下検討する。
A ところで、J社が営業しているガソリンスタンド及びパチンコ店に係る事業には、次のような規制が認められる。
ガソリンスタンドに係る事業は、消防法第10条第4項及び同法施行令第17条第1項第13号によると、ガソリンスタンドを営む者は、耐火塀の設置をしなければならない旨、また、パチンコ店に係る事業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)第3条《営業の許可》第1項の規定によると、風俗営業を営もうとする者は、許可を受けなければならない旨それぞれ規定されている。
また、風営法第22条《禁止行為》第4項によると、風俗営業を営む者は、18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせることはしてはならない旨規定されている。
B これらの規定は、いずれも事業を営もうとする事業者又は営む者に対する規制であると解されるところ、ガソリンスタンド及びパチンコ店の事業を営む者は、上記(2)のヘの(イ)のとおり、いずれもJ社であることからすれば、これらの法令上の規制の対象となる者は、事業者であるJ社であると認められる。
そして、評価通達においては、請求人の主張する事業に係る法律による規制等がある場合における評価上の影響等について斟酌する旨の定めも認められない。
そうすると、請求人が主張する、耐火塀の設置及び未成年の入店禁止の規制等があったとしても、これらの規制等は、本件土地の評価をする上での評価単位には、何ら影響を及ぼすものではないと判断するのが相当である。
また、請求人は、B土地については、被相続人がHから賃借する際の条件として、ボウリング場以外には使用しない旨の条件があることから、他の土地とは一体とはならないとも主張するが、上記(イ)のEの(B)で認定したとおり、本件土地は、その全体を1画地として判断すべきであるから、請求人の主張するように賃貸借契約における条件等があっても、本件土地に係る評価は、これにより左右されるものではないと判断するのが相当である。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、原処分庁が本件土地の評価に当たって、評価通達に基づき、本件土地の全体を1画地として評価したことは、適法である。
(ハ)本件土地の価額について
本件土地は、上記(イ)のEの(B)で述べたとおり、1画地の宅地として評価すべきであるから、評価通達25の定めにより、同15《奥行価格補正》、同16《側方路線影響加算》、同17《二方路線影響加算》、同18《三方又は四方路線影響加算》及び同20《不正形地、無道路地、間口が狭小な宅地等、がけ地等の評価》に定める補正率及び各種の影響加算率を適用して評価すると、本件土地の価額は、次のとおりの金額となる。
なお、本件土地の状況は、次のとおりである。
A 地目、地積等
地目は宅地、利用区分は貸地、地区区分は普通商業・併用住宅地区及び平成6年分財産評価基準書の付表7―1に定める地積区分表によれば、普通商業・併用住宅地区における面積が1,000平方メートル以上の場合の地積区分はCであること。
B 路線価等
別紙2のとおり、本件土地に適用すべき道路aに付された路線価は155,000円、道路bに付された路線価は145,000円及び道路cに付された路線価は96,000円であり、また、各路線の奥行価格補正率等は、次のとおりであること。
(A)道路aに係る間口が32.0メートル及び奥行距離(面積を間口距離で除して得た計算上の距離(想定整形地の奥行距離を限度とする。)をいい、以下同じ。)が51.50メートルであり、適用すべき奥行価格補正率は0.90であること。
(B)道路bに係る間口距離が51.5メートル及び奥行距離が43.53メートルであり、適用すべき奥行価格補正率は0.93であること。
(C)道路cに係る間口距離が48.0メートル及び奥行距離が46.71メートルであり、適用すべき奥行価格補正率は0.92であること。
C 不正形地補正率
(A)本件土地の面積 2,241.84平方メートル
(B)想定整形地の面積 51.5×48.00=2,472.00平方メートル
(C)蔭地割合の計算 (2,472.00−2,241.84)÷2,472.00=約0.093
評価通達の定めにより計算すると、蔭地割合は、0.093となるから、不正形地補正率は、1.0となる。
D 本件土地の価額
(A)1平方メートル当たりの評価額
([道路aの路線価]155,000円×[奥行価格補正率]0.90)+([道路bの路線価]145,000円×[奥行価格補正率]0.93×[側方路線価格影響加算率]0.08)+([道路Cの路線価]96,000円×[奥行価格補正率]0.92×[二方路線価格影響加算率]0.05)=154,704円・・・(1)
(B)本件土地の自用地としての価額
[上記(1)の金額]154,704円×[本件土地の面積]2,241.84平方メートル=346,821,615円・・・(2)
(C)底地の価額
[上記(2)の金額]346,821,615円×[借地権割合](1−0.3)=242,775,130円・・・(3)
(D)小規模宅地等に係る課税価額の計算
[上記(3)の金額]242,775,130円×[小規模宅地の地積]25.2/[本件土地の地積]2,241.84×[減額割合]80/100=[小規模宅地等について減額される額]2,183,182円・・・(4)
[上記(3)の金額]242,775,130円−[上記(4)の金額]2,183,182円=[課税価額にされる金額]240,591,948円・・・(5)
そうすると、本件土地の評価額は、上記(5)のとおり240,591,948円となり、原処分庁が設定した額と同額となる。
ロ 本件株式について
(イ)本件土地及びB土地に係る借地権について
請求人は、J社が本件土地を被相続人及びB土地をHからそれぞれ賃借し、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として使用しているもので、本件土地の評価方法と同様、ガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の事業の用に供されているごとに区分し、それぞれを1画地として借地権の価額を算定すべきであり、また、B土地は、被相続人がHから賃借する際、ボウリング場の増設が条件であったことから、ボウリング場以外には使用できないものであり、B土地に係る借地権の価額の算定に当たっては、A土地以外の土地とは一体として評価すべきでない旨主張するので、以下検討する。
A ところで、相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めがあるときを除き、その財産の取得の時における時価によると規定されていることは、上記イの(イ)のAないしDで述べたとおりであり、本件土地の評価と同様である。
B これを本件についてみると、次のとおりである。
(A)請求人は、上記(1)のチのとおり、本件土地及びB土地に係る借地権の価額の算定に当たり、J社の所有する建物の敷地ごとに二つに区分し、本件株式の1株当たりの価額を328,354円と評価して本件申告をし、その後、J社の所有する建物の事業の用に供されている状況ごとに区分し、借地権の価額を算定し、本件株式の1株当たりの価額を328,849円と評価して本件修正申告をしていることが認められる。
(B)J社は、上記(1)のイのとおり、本件土地及びB土地を賃借し、本件土地及びB土地上にガソリンスタンド、パチンコ店及びボウリング場に係る建物の敷地として、現実にJ社の事業の用に供していることが認められる。
また、上記(1)のイ及び(2)のニのとおり、ボウリング場に係る建物の敷地の一部となっているB土地は、被相続人は生前、Hとの間で、賃貸借契約を締結し、その後、J社は、この賃貸借契約を引継ぎ、Hと協定書を取り交わし、この協定書によれば、月額330,000円の賃借料の支払っており、J社は、本件土地の一部とB土地を併せたところにボウリング場に係る建物を建てていることが認められる。
そして、上記(1)のロのとおり、本件土地は、地続きであり、分割されることなく、請求人及びGの2名により相続され、また、パチンコ店及びボウリング場に係る建物は、上記(1)のハ及び(2)のハのとおり、建物に係る平面図等及び登記簿謄本によれば、本件土地の一部とB土地にまたがって建てられていることが認められることからすると、本件土地及びB土地は、J社に係る借地権が存するものと解するのが相当である。
そうすると、宅地の上に存する権利の価額については、上記イの(イ)のCのとおり、本件土地の評価と同様であるところ、本件土地及びB土地は、いずれもJ社にその全部が貸し付けられ、J社の事業に一体として供されていることが認められ、そして、その借主の借地権の価額の算定に当たっては、上記イの(イ)のDで述べたとおり、同一人が2以上の者から隣接している土地を借地してこれを一体として利用している場合には、その全体を1画地として評価するのが相当であることからすれば、借地権の価額の算定にあっても、その全部を1利用単位の宅地であると判断するのが相当である。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、原処分庁が本件株式の評価に当たって、評価通達に基づき、本件土地及びB土地の全体を1画地として評価したことは、適法である。
(ロ)本件土地及びB土地に係る借地権の価額について
本件土地及びB土地に係る借地権の価額は、上記(イ)のBの(B)で述べたとおり、その全体を1画地として評価すべきであるから、評価通達27の定めにより、同15、同16、同17、同18及び同20に定める補正率及び各種の影響加算率を適用して計算すると、次のとおりの金額となる。
なお、本件土地及びB土地の状況は、次のとおりである。
A 地目、地積等
地目は宅地、利用区分は借地、地区区分は普通商業・併用住宅地区及び上記イの(ハ)のAのとおり、地積区分はCであること。
B 路線価等
別紙2の道路aに付された路線価は、155,000円、道路bに付された路線価は145,000円及び道路cに付された路線価は96,000円であり、また、各路線の奥行価格補正率等は、次のとおりであること。
(A)道路aに係る間口が52.2メートル及び奥行距離が51.50メートルであり、適用すべき奥行価格補正率は0.90であること。
(B)道路bに係る間口が51.5メートル及び奥行距離が61.18メートルであり、適用すべき奥行価格補正率は0.86であること。
(C)道路cに係る間口が68.0メートル及び奥行距離が46.34メートルであり、適用すべき奥行価格補正率は0.92であること。
C 不正形地補正率
(A)本件土地及びB土地の面積 3,151.22平方メートル
(B)想定整形地 51.5×69.0=3,553.50平方メートル
(C)蔭地割合の計算 (3,553.00−3,151.22)÷3,553.00=約0.11
評価通達の定めにより計算すると、蔭地割合は、0.11となるから、不正形地補正率は、1.0となる。
D 本件土地及びB土地に係る借地権の価額
(A)1平方メートル当たりの評価額
([道路aの路線価]155,000円×[奥行価格補正率]0.90+([道路bの路線価]145,000×[奥行価格補正率]0.86×[側方路線価格影加算率]0.08)+([道路cの路線価]96,000円×[奥行価格補正率]0.92×[二方路線価格影響加算率]0.05)=153,892円・・・(1)
(B)本件土地及びB土地の自用地としての価額
[上記(1)の金額]153,892円×[面積]3,151.22平方メートル=484,947,548円・・・(2)
(C)借地権の価額
[上記(2)の金額]484,947,548円×[借地権割合]0.3=145,484,264円
上記のとおり、本件土地及びB土地に係る借地権の価額は、145,484,264円となる。
(ハ)本件株式の価額について
J社は、上記(2)のト及びチのとおり、同族法人であり、かつ、同社の総発行済株式数に対する請求人とその同族関係者の所有持株割合は100パーセントであり、また、上記(1)のトのとおり、評価通達178に定める中会社に該当する。
そして、上記(1)のヘのとおり、J社に係る本件相続の開始日の直前の事業年度は、平成5年1月1日から同年12月31日であることから、本件株式の1株当たりの価額は、評価通達179の(2)に定めにより評価すると、別紙3のとおり315,039円となり、本件株式の価額は、この1株当たりの価額に請求人が相続により取得した株式数266を乗じて計算すると、83,800,374円となる。
ハ 相続税の課税価格及び納付すべき税額
請求人の相続税の課税価格及び納付すべき税額は、評価通達の定めにより、上記イの(ニ)の本件土地の価額240,591,948円、上記ロの(ハ)の本件株式の価額83,800,374円及び上記(1)のリ、ヌ、ル、ヲのとおり、争いのない財産の価額117,318,716円の合計額441,711,038円から、債務の額23,067,394円を控除し、純資産価額に加算される金額23,734,770円の合計額を基に計算すると、別紙1の(表2)「審判所認定額」欄のとおり、原処分(再々更正処分)の金額と同額となる。
以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、原処分(再々更正処分)は、適法である。
(4)過少申告加算税の賦課決定処分
上記(3)のとおり、本件更正処分は適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件賦課決定処分は適法である。
(5)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。
別紙3 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書