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(平10.12.25裁決、裁決事例集No.56 92頁)

《裁決書(抄)》

1 審査請求人(以下「請求人」という。)は、原処分庁に提出した異議申立ては、国税通則法第77条《不服申立期間》第1項に定める不服申立期間を経過しているが、次の事情があり、当該事情は同条第4項のただし書で定める正当な理由に該当する旨主張する。
(1)平成6年10月14日付でされた平成5年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)の取消しを求めて、審査請求人が加入しているN市土地造成組合名でT地裁に提訴したが、当該組合には訴えの資格がないとのことで敗訴になった。しかし、請求人は本件賦課決定処分には不服があるので、請求人自身が不服申立てをすることになったという経緯があること。
(2)本件課税処分の通知が請求人に届いたときに、原処分庁から、当該組合代表者である組合長のSに対して、異議申立てができる旨の電話等の連絡がなかったため、請求人は異議申立てを早期に提出することができなかったこと。また、請求人は、原処分庁に対して、平成10年4月13日以前にも私製の様式で異議申立てや嘆願書等の提出を行ったが、その時点でも、異議申立てについての指導及び回答がなかった。
2 ところで、当審判所の調査によれば、原処分庁は、本件賦課決定処分に係る通知書を平成6年10月14日に通常の取扱いによる郵便によって請求人の住所に宛てて発送していることが認められるところ、当該通知書は、当時の郵便事情等を勘案すると、同月16日に請求人に送達されたものと推定され、この推定を覆す事実は認められない。また、異議申立書に押印された収受印の日付によれば、請求人が原処分に対する異議申立てをしたのは平成10年4月13日であることが認められ、同日以前に、請求人が主張するような私製の様式による異議申立て等がなされた事実は認められない。
3 そこで、国税通則法第77条に定める不服申立期間についてみると、まず、同条第1項において、異議申立ては、原則として処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2月以内にしなければならないとする旨の不服申立期間を定め、その例外として、同条第3項において、異議申立人が当該不服申立期間に異議申立てをすることができなかったことについて、「天災その他やむを得ない理由」があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して7日以内にすることができることを定めている。
 一方、国税通則法第77条第4項において、処分のあった日の翌日から起算して1年を経過した場合には、正当な理由のない限り異議申立てをすることができない旨を定めている。
4 上記2の事実を踏まえ、本件における不服申立期間を検討すると、本件においては、請求人が平成6年10月16日に本件課税処分に係る通知を受けていることが認められ、当該処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2月を経過する日(平成6年12月16日)が、処分のあった日の翌日から起算して1年を経過する日(平成7年10月16日)以前に到来していることからすると、国税通則法第77条第4項の規定が適用される余地はなく、本件賦課決定処分に対する異議申立てが適法なものと認められる不服申立期間は、「天災その他やむを得ない理由」がない限り、同条第1項の定めにより、当該処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2月を経過する日である平成6年12月16日までとなる。
 なお、本件について、国税通則法第77条第3項に規定する「天災その他やむを得ない理由」があるか否かを検討すると、ここでいう「天災その他やむを得ない理由」とは、不服申立人が不服申立てをしようとしても、その責に帰することができない事由により不服申立てをすることが不可能であると客観的に認められるような事情が存する場合をいうものと解されているところ、請求人の主張する訴訟を行っていたとの事情や原処分庁が組合長のSに対して、異議申立てができる旨の電話等の連絡をしなかったという事情で、法定不服申立期間内に異議申立てをしなかったことは、請求人にとって異議申立てをすることが不可能であると客観的に認められる事情には該当せず、また、当審判所の調査によっても、請求人の主張する上記の「天災その他やむを得ない理由」に該当するような事実は認められない。
5 したがって、本件における異議申立ては、法定の不服申立期間を経過した後になされた不適法なものであり、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第3項の規定により、適法になされていない異議申立てに係る審査請求も不適法なものである。

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