ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.56 >> (平10.9.30裁決、裁決事例集No.56 369頁)

(平10.9.30裁決、裁決事例集No.56 369頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人G(以下「G」という。)及びH(以下「H」といい、Gと併せて「請求人ら」という。)は、平成6年8月25日に死亡したJ(以下「被相続人」という。)の共同相続人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、他の共同相続人K(以下「K」という。)ほか2名と共同して、相続税の申告書に次表の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに原処分庁に提出した(以下、この申告を「本件申告」といい、この申告書を「本件申告書」という。)。
 その後、請求人らは、平成8年2月19日に次表の「更正の請求」欄記載のとおり、更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
 原処分庁は、これに対し、平成8年12月18日付で次表の「第一次更正処分」欄記載のとおり、更正処分(以下「第一次更正処分」という。)をし、次いで、平成8年1月8日付で同表の「第二次更正処分等」欄記載のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
 その後、原処分庁は、上記平成8年1月8日付の各処分に係る通知書の日付に誤りがあったとして、平成9年1月17日付でこれらを取り消す更正処分及び加算税の変更決定処分をした後、改めて同月20日付で次表の「第三次更正処分等」欄記載のとおり、更正処分(以下「第三次更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、第三次更正処分と併せて「第三次更正処分等」という。)をした。

 請求人らは、第一次更正処分及び第三次更正処分等を不服として、平成9年2月12日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月7日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人らは、異議決定を経た後の第三次更正処分等に不服があるとして、平成9年7月29日に審査請求をした。
 なお、請求人らは、Gを総代として選任し、その旨を平成9年7月29日に届け出た。

トップに戻る

2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 第三次更正処分について
(イ)請求人らは、本件相続に係る相続財産のうち次表に掲げる土地(以下、同表の上欄の土地から順に「本件第一土地」、「本件第二土地」、「本件第三土地」及び「本件第四土地」といい、これらを併せて「本件各土地」という。)の価額について、別表1―1の「申告」欄記載のとおり評価して本件申告をしたところ、原処分庁は、同表の「第三次更正処分」欄記載のとおり評価して、第三次更正処分をした。

(単位 平方メートル)
 所在地地目地積
R市S町13番山林2,604
R市S町877番1山林9,166
R市S町877番10雑種地204
R市T町11番山林12,067

(ロ)しかしながら、本件第一土地、本件第二土地及び本件第四土地は、別表1―1のとおり、その一部が高圧線下にあることから、これらの高圧線下の土地(以下「本件高圧線下土地」という。)の価額については、次の理由により、本件申告で評価したとおり、50パーセント減額すべきである。
A 請求人が本件申告書の作成を依頼したN税理士(以下「N税理士」という。)は、本件高圧線下土地の価額について、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか。ただし、平成7年6月27日付課評2―6による改正前のもの。以下「評価基本通達」という。)の定めに従って50パーセント減額していることから、原処分庁も評価基本通達の定めに従って同様に減額すべきである。
B 原処分庁は、地目が山林である本件第一土地、本件第二土地及び本件第四土地をいずれも将来宅地化されることを想定した価額で評価しているが、山林については租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のものをいい、以下「措置法」という。)第70条の6《農地等についての相続税の納税猶予等》の規定のような相続税の納税を猶予して租税負担を軽減する制度がない以上、本件高圧線下土地の価額については、同土地が高圧線下であることにかんがみて50パーセント減額すべきである。
(ハ)また、原処分庁は、Kが相続したR市S町877番8の宅地(地積417平方メートル。以下「Kの取得土地」という。)の価額について、第一次更正処分により減額しているのであるから、当該土地に隣接する本件第二土地及び本件第三土地の価額についても、同率で減額しなければ課税の公平、公正の原則に反することとなる。
(ニ)第三次更正処分のうち、次のことについては争わない。
A 請求人らは、本件申告において、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項に規定する相続税の課税価格に加算すべき贈与財産の価額がそれぞれ2,839,866円加算もれとなっていたこと。
B 上記Aに伴い、相続税法第19条第1項に規定する贈与税額控除額は、それぞれ386,700円であること。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、第三次更正処分はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
 また、仮に第三次更正処分が適法であるとしても、N税理士が本件高圧線下土地の価額を50パーセント減額したのは、評価基本通達の定めに従ったものであり、故意に相続税を過少にする意図ではないから、申告額が過少であったことについて正当な理由があり、過少申告加算税の賦課決定処分は違法である。

トップに戻る

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)原処分庁が調査したところによれば、次の事実が認められる。
A 被相続人は、W電力株式会社(以下「W電力」という。)との間で、(a)昭和45年2月27日付で本件第一土地のうち259平方メートル及び本件第四土地のうち432平方メートルにW電力が送電線路を架設する旨及び(b)昭和45年8月12日付で本件第二土地のうち4,087.77平方メートル(平成4年2月18日付覚書による変更後の地積。以下同じ。)にW電力が送電線路を架設保持する旨の各契約を締結していること。
B 本件各土地の価額については、それぞれ、本件申告による金額は別表1―1の「申告」欄、本件更正の請求による金額は同表の「更正の請求」欄及び第三次更正処分による金額は同表の「第三次更正処分」欄記載のとおりであること。
(ロ)ところで、相続税法第22条《評価の原則》は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。そして、この時価とは、課税時期におけるそれぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち客観的な交換価値をいうものと解されている。
 しかし、相続税の課税対象となる財産の客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定するものではないことから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価基本通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることが避けがたく、また、課税実務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、予め定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方法が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものと解されている。
 そして、具体的には、市街地付近にある山林(以下「中間山林」という。)の価額は、その山林の固定資産税評価額に、地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することとされている。
(ハ)本件高圧線下土地の評価は、次のとおりである。
A 評価基本通達51《貸し付けられている山林の評価》の(4)は、特別高圧架空電線の架設のため地下又は空間について上下の範囲を定めて設定された地役権で建造物の設置を制限するもの(以下「区分地上権に準ずる地役権」という。)の目的となっている承役地である山林の価額は、その山林の自用地としての価額から区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって評価する旨、また、同通達53―3《区分地上権に準ずる地役権の評価》は、山林に係る区分地上権に準ずる地役権の価額は、その承役地である山林の自用地としての価額を基とし、その地役権の設定契約の内容に応じた立体利用阻害率(公共用地の取得に伴う損失補償基準細則(昭和38年3月7日用地対策連絡協議会理事会決定)第12に定める土地の立体利用阻害率をいう。)を基とした割合(以下「区分地上権に準ずる地役権の割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する旨それぞれ定めている。
B 市街化調整区域とは、都市計画区域のうち都市計画法第7条《市街化区域及び市街化調整区域》第3項において、市街化を抑制すべき区域とする旨規定されており、原則として用途地域を定めることができず、建築物の新築等については大幅に制限されている。
C 本件高圧線下土地については、上記(イ)のAのとおり、いずれも被相続人とW電力との間で送電線路架設等に関する契約が締結されている事実は認められるものの、いずれも市街化調整区域内に所在することから、自用地部分の山林と同様の山林として利用することについての立体利用阻害は認められないこと、また、上記Aのとおり、区分地上権に準ずる地役権が建造物の設置を制限するものであるところ、同Bのとおり、市街化調整区域においては、もともと原則として建築物の新築等が大幅に制限されているものであることからして、本件高圧線下土地の評価に当たり、その自用地としての価額から控除すべき区分地上権に準ずる地役権の価額は皆無に等しいものと認められる。
 したがって、本件高圧線下土地は、その山林の自用地としての価額によって評価することとなる。
(ニ)請求人らは、上記(1)のイの(ロ)のAのとおり主張するが、本件高圧線下土地の評価に当たり、区分地上権に準ずる地役権の価額を控除しないことは、上記(ハ)のCで述べたとおりである。
 また、請求人らは、上記(1)のイの(ロ)のBのとおり主張するが、評価基本通達に定める市街化調整区域内にある山林の価額は、上記(ハ)のBのとおり、市街化調整区域がもともと建築物の新築等について制限があることから、そのことを加味して評定されていること、また、市街地付近にある山林は宅地化含みの価額で売買されるものであり、上記(ロ)のとおり、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基に評価しているものであること等からすると、請求人らの主張には理由がない。
(ホ)さらに、請求人らは、上記(1)イの(ハ)のとおり主張するが、Kの取得土地の価額を減額したのは、同土地が高圧線下にあることを理由としたものではないことから、請求人らの主張には理由がない。
(ヘ)そうすると、本件各土地の価額は、評価基本通達の定めに従い算定すると、別表1―1の「第三次更正処分」欄記載の価額と同額となる。
(ト)請求人らの本件相続に係る納付すべき税額は、別表2のとおり、第三次更正処分の金額と同額となる。
 なお、別表2の各欄の金額については、次のとおりである。
A 「(1)」欄は、本件各土地の価額の合計額の2分の1に相当する金額に、Gについては47,786,137円(本件各土地以外の財産の価額で、いずれも本件申告書に記載された金額であり、以下Hについて同じ。)を、Hについては59,245円をそれぞれ加算した金額である。
B 「(2)」欄は、本件申告書に記載された金額と同額である。
C 「(3)」欄及び「(8)」欄は、平成3年中に請求人らが被相続人から贈与により取得した財産の価額及び当該贈与に係る税額であり、いずれも請求人らの平成3年分贈与税の申告書に記載された金額と同額である。
D 「(5)」欄は、被相続人から相続により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額である。
E 「(6)」欄は、相続税法第16条《相続税の総額》の規定に従い算定した金額である。
F 「(7)」欄及び「(9)」欄は、Gが本件申告において措置法第70条の6の規定を適用していることから、同条第2項及び第3項の規定に従い算定した金額である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 過少申告加算税の賦課決定処分は、上記イのとおり、更正処分が適法であり、かつ、申告額が過少であったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があったとは認められないので、適法である。

トップに戻る

3 判断

 本件審査請求の争点は、本件各土地の価額にあるので、以下審理する。

(1)第三次更正処分について

イ 次のことについては、請求人ら及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
(イ)本件高圧線下土地については、いずれも被相続人とW電力の間で、次の内容の契約が締結されており、これらが相続開始時点まで更新されて継続されていたこと。
A 昭和45年2月27日付の「送電線路架設に関する契約書」と題する契約書(以下「送電線路架設に関する契約書」という。)により、W電力は、本件第一土地のうち259平方メートル及び本件第四土地のうち432平方メートルに送電線路を架設することができる旨の契約(以下、この契約を「送電線路架設に関する契約」という。)を締結した。
B 昭和45年8月12日付の「送電線路架設保持に関する契約書」と題する契約書(以下「送電線路架設保持に関する契約書」といい、送電線路架設に関する契約書と併せて「本件各契約書」という。)により、W電力は、本件第二土地のうち4,087.77平方メートルに送電線路を架設保持することができる旨の契約(以下、この契約を「送電線路架設保持に関する契約」といい、送電線路架設に関する契約と併せて「本件各契約」という。)を締結した。
(ロ)本件各土地は、いずれも市街化調整区域内に所在すること。
(ハ)Kの取得土地の価額は、次のとおり算定されていること。
A 本件申告においては、固定資産税評価額を33,626,880円とし、これに倍率1.1を乗じている。
B Kが平成8年2月19日にした更正の請求においては、固定資産税評価額を23,538,816円とし、これに倍率1.1を乗じている。
C 第一次更正処分においては、上記Bの更正の請求の額のとおり算定され、第三次更正処分においても第一次更正処分と同額とされている。
(ニ)本件第一土地、本件第二土地及び本件第四土地に適用される国税局長の定める倍率は611倍であり、本件第三土地に適用されるその倍率は1.1倍であること。
ロ 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件各契約書の第1条第2項は、被相続人は本件高圧線下土地に建造物を築造することができない旨、その第3条はW電力は被相続人に対し上空使用料を支払う旨それぞれ定めていること。
 また、本件各契約書には、地役権を設定する旨の定めはないこと。
(ロ)原処分庁のW電力R工務所に対する調査によれば、(a)送電線路架設に関する契約は債権契約であること及び(b)送電線路架設に関する契約書の第1条第2項は、高圧線下に建造物の築造はできない旨定めているが、この定めの内容を変更することは可能であり、その場合、電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号による改正前のもの。以下同じ。)第133条《特別高圧線架空電線と建造物との離隔距離》の規定により、本件第一土地の高圧線下については高圧線が最も下がった際の地上からの高さ13.0メートルから3.6メートル離れた地上9.4メートルの高さまで、本件第四土地の高圧線下については同じく14.5メートルから3.6メートル離れた地上10.9メートルの高さまでならばそれぞれ建造物の築造も可能であること。
(ハ)原処分庁のW電力P工務所に対する調査によれば、〔1〕送電線路架設保持に関する契約は債権契約であること及び〔2〕送電線路架設保持に関する契約書の第1条第2項は、高圧線下に建造物の築造はできない旨定めているが、この定めの内容を変更することは可能であり、その場合、電気設備に関する技術基準を定める省令第133条の規定により、本件第二土地の高圧線下については高圧線が最も下がった際の地上からの高さ17.0メートルから4.8メートル離れた地上12.2メートルの高さまでならば建造物の築造も可能であること。
(ニ)R市長から被相続人あてに、平成7年10月9日付で、「平成7年度固定資産税・都市計画税更正決議書価格決定(修正)通知書」と題する通知書が発行されており、当該通知書には、Kの取得土地につき、決定(修正)前の価格が33,626,880円、決定(修正)後の価格が23,538,816円、決定(修正)した事由として課税誤りのため更正した旨記載されていること。
(ホ)上記(ニ)の課税誤りは、Kの取得土地が無道路地であるにもかかわらず、そのことがしんゃくされていなかったためであること。
(ヘ)上記(ニ)の決定(修正)後の価格は、平成6年度から平成8年度までの間の固定資産税評価額であること。
(ト)本件第二土地及び本件第三土地は、Kの取得土地と地続きであること。
(チ)本件第二土地及び本件第三土地に係る平成6年度の固定資産税評価額は、本件申告以後においても減額されていないこと。
(リ)本件申告及び第三次更正処分による本件各土地の価額は、それぞれ別表1―1の「申告」欄及び「第三次更正処分」欄記載のとおりであること。
ハ ところで、相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、この時価とは、相続による取得の時において、それぞれの財産の現状に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解される。
 しかし、相続税の課税対象となる財産は多種多様であり、(a)時価を適正に把握することは必ずしも容易ではないこと、(b)納税者間で評価が個々に異なることは課税の公平の観点からいえば好ましいことではないことから、課税庁は事務の統一性を図るため、各種財産の時価の評価に関する原則及びその具体的評価方法を明らかにし、評価基本通達を定め、さらに土地の価額については具体的に倍率を定めて、部内職員に示達するとともに、これらを公開することによって納税者の申告・納税の便に供していることが認められる。
 そして、評価基本通達48《中間山林の評価》は、中間山林の価額は、その山林の固定資産税評価額に、地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨、同通達51の(1)は、賃借権の目的となっている山林の価額は、同通達47《純山林の評価》から50《保全林等の評価》までの定めにより評価したその山林の価額(以下「自用地としての価額」という。)から同通達54《賃借権の評価》の定めにより評価したその賃借権の価額を控除した金額によって評価する旨、同通達54は、賃借権の評価は、(a)純山林に係る賃借権の価額は、その賃借権の残存期間に応じ、相続税法第23条《地上権及び永小作権の評価》の規定を準用して評価し、(b)市街地山林に係る賃借権の価額は、その山林の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌して求めた価額によって評価し、(c)中間山林に係る賃借権の価額は、賃貸借契約の内容、利用状況等に応じ、(a)は(b)の定めにより求めた価額によって評価する旨それぞれ定めている。
 また、評価基本通達51の(4)は、区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である山林の価額は、その山林の自用地としての価額から同通達53―3の定めにより評価したその区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって評価する旨、同通達53―3は、山林に係る区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である山林の自用地としての価額を基とし、同通達27―3《区分地上権に準ずる地役権の評価》の定めを準用して評価する旨、同通達27―3は、区分地上権に準ずる地役権の価額は、承役地の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の割合を乗じて計算した金額によって評価し、その割合は、承役地に係る制限の内容に従い、(a)家屋の建築が全くできない場合には、100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合のいずれか高い割合とすること、(b)家屋の構造、用途等に制限を受ける場合には100分の30とすることができる旨それぞれ定めている。
ニ 上記イ及びロの事実並びにハの規定等を基に判断すると、次のとおりである。
(イ)本件各土地を評価基本通達の定めにより評価することについては、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所において検討したところによっても、上記ハのとおり、同通達は合理的根拠を有し、本件についてこれによることが不適当であるとする特別の事情もないことから、本件各土地については、同通達の定めにより評価することが相当と認められる。
 そうすると、上記ロの(イ)ないし(ハ)のとおり、本件各契約はいずれも債権契約であり、使用料の授受があることから、本件高圧線下土地には賃借権が設定されたものと認められ、また、上記イの(イ)のとおり、これらの契約は相続開始時点まで継続されていたことが認められるから、本件高圧線下土地の価額は、上記ハに述べた評価基本通達48及び51の(1)の定めを適用して、その自用地としての価額から賃借権の価額を控除した金額によって評価するのが相当と認められるが、上記ロの(イ)のとおり、本件各契約はいずれも地役権を設定したものではないから、本件高圧線下土地の価額は、上記ハに述べた評価基本通達51の(4)の定めを適用して評価することは相当でないと認められる。
 さらに、上記イの(ロ)のとおり、本件各土地は、いずれも市街化調整区域内に所在することから、上記ハの(c)のとおり、本件高圧線下土地に係る賃借権の価額は、賃貸借契約の内容、利用状況等に応じ、相続税法第23条の規定を準用して又は本件高圧線下土地の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌して評価することとなるが、上記ロの(イ)のとおり、本件各契約に係る賃借権は、W電力が本件高圧線下土地の上空を使用することを目的としたものであり、被相続人がその土地を直接使用することまで制約するものではないものと認められる。
 そうすると、一般の賃貸借すなわち土地を他人に貸し、他人がその土地を使用することにより所有者がその土地を使用できなくなるといった賃借権とは異なるから、本件各契約に係る賃借権の価額を評価するに当たり、上記のように、相続税法第23条の規定を準用すること又は本件高圧線下土地の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌することは適当ではない。
 そこで、本件各契約の内容、利用状況等から本件高圧線下土地の価額について検討すると、(a)上記のとおり、被相続人が本件高圧線下土地を山林として使用する上では制約がないこと及び(b)上記イの(ロ)のとおり、本件各土地は市街化調整区域内に所在するから、本来建物の建築自体が制約されており、仮に本件高圧線下土地に建物の建築が認められた場合は、上記ロの(ロ)及び(ハ)のとおり、高さ10.9メートル又は12.2メートルの建物が建築できるのであるから、この高さ制限は著しい制限とは認められないことから、本件高圧線下土地を評価するに当たり、高圧線下にあることの影響は皆無であるとはいえないとしても、なおこれをしんしゃくすべき特段の理由があるとは認められない。
(ロ)これに対し、請求人らは、本件高圧線下土地の価額については、同土地が高圧線下にあることから、評価基本通達の定めに従い、自用地としての価額から50パーセント相当額を控除して評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件各契約はいずれも地役権を設定したものではないから、本件高圧線下土地の価額は評価基本通達51の(4)の定めを適用して評価することは相当ではなく、かつ、本件高圧線下土地は、高圧線下にあることの影響は皆無であるとはいえないとしても、なおこれをしんしゃくすべき特段の理由があるとは認められないから、同土地の評価に当たり、自用地としての価額から50パーセント相当額を控除することは相当ではないと認められる。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ハ)また、請求人らは、山林については措置法第70条の6の規定のような相続税の納税を猶予して租税負担を軽減する制度がない以上、本件高圧線下土地の価額については、同土地が高圧線下であることにかんがみて50パーセント減額すべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人らの主張するような理由をもって、本件高圧線下土地の価額を減額する旨の法律の規定又は評価通達の定めはない。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ニ)さらに、請求人らは、原処分庁がKの取得土地の価額については第一次更正処分により減額しているのであるから、それと地続きの本件第二土地及び本件第三土地の価額についても、Kの取得土地と同率で減額しなければ課税の公平、公正の原則に反する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁がKの取得土地の価額を減額したのは、上記ロの(ニ)及び(ホ)のとおり、その土地の固有の事情により固定資産税評価額が減額されたためであり、本件第二土地及び本件第三土地については、同(ト)及び(チ)のとおり、固定資産税評価額が減額されていないのであるから、それらの土地の価額を減額することはできない。
 したがって、原処分庁が本件第二土地及び本件第三土地の価額を減額しなかったことが課税の公平、公正の原則に反するとはいえないから、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
(ホ)そうすると、上記(イ)のとおり、本件各土地の価額は、評価基本通達の定めにより評価することが相当であることから、同通達48の定めに従い、本件各土地の固定資産税評価額に、請求人ら及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所においても相当と認める上記イの(ニ)の国税局長の定める倍率をそれぞれ乗じて算定すると、別表1―2の「審判所判断」欄記載のとおりとなる。
ホ 以上の結果、請求人らの課税価格及び納付すべき税額は第三次更正処分の類と同額となるから、第三次更正処分は適法である。

トップに戻る

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

イ 請求人らは、N税理士が本件高圧線下土地の価額を50パーセント減額したのは、評価基本通達の定めに従ったものであり、故意に相続税を過少に申告する意図ではないから、申告額が過少であったことについて正当な理由があり、過少申告加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
ロ ところで、国税通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税は、当初から正当に申告した者とこれをしなかった者との間に生ずる不公平を是正するために、適法な申告をしなかった納税者に対し一定率の税を賦課するものである。
 したがって、過少申告加算税は、修正申告又は更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が修正又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められるものがある場合を除き、単に当初申告が過少であるという客観的事実のみによって賦課されるべき性質のものと解されている。
ハ そして、この場合の正当な理由とは、申告した税額に不足が生じたことについて、納税者が通常な状態においてその事実を知ることができなかった場合や納税者の責めに帰せられない外的事情による場合等が考えられるところ、具体的には、(a)税法の解釈に関して、申告当時に公表されていた公的見解がその後改変されたため、修正申告をし又は更正処分を受けるに至った場合、(b)災害又は盗難等に関し、申告当時に損失とすることを相当としたものが、その後予期しなかった保険金、損害賠償金等の支払を受け又は盗難品の返還を受けた等のため、修正申告をし又は更正処分を受けるに至った場合、(c)その他真にやむを得ない事由が認められる場合等が該当するものと解されている。
ニ これを本件についてみると、第三次更正処分は、上記(1)のニのとおり、本件申告の誤りを是正したものであって、当初適正であった申告につきその後の事情の変化により税額等が過少になったことによりされたものではないことは明らかである。
 また、請求人らは、自らの意思と責任において、自己の代理人である税理士に本件申告書の作成を依頼して同申告書を作成させ、これを提出したものである以上、本件申告が過少申告となったとしても、同申告は請求人らの責任においてされたものであり、かつ、過少申告となったことについて上記ハに述べたような正当な理由があるとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
ホ そうすると、上記(1)のとおり、第三次更正処分は適法であるから、原処分庁が国税通則法第65条第1項の規定に基づいてした過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る