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(平11.6.28裁決、裁決事例集No.57 443頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、平成6年1月11日に死亡したK(以下「被相続人」という。)が賃借していた土地に係る借地権の相続税の評価額について、相当の地代を支払っていたとして零円と評価すべきか否かが争われた事案である。

(2)審査請求に至る経緯

 審査請求に至る経緯は別表1のとおりである。
 なお、審査請求人L及びM(以下、それぞれ「L」及び「M」といい、両名を併せて「請求人ら」という。)は、Lを総代として選任し、その旨を平成9年8月12日に届け出た。
 また、原処分庁は、審査請求がされた後において、Lに対し別表2のとおりの再更正処分及び加算税の変更決定処分を行い、原処分の一部を取り消した。

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2 主張

(1)請求人らの主張

 被相続人が、有限会社W(以下「W社」という。)から賃借していた別表3の番号1の土地(以下「本件土地」という。)の借地権(以下「本件借地権」という。)の相続税評価額は、次のとおり零円となる。
イ 被相続人は本件土地をW社から賃借する一方、W社に対して別表4の番号1ないし5の建物(以下「本件倉庫等」という。)を賃貸していたのであるから、被相続人が支払うべき地代と受け取るべき家賃との間には相関関係がある。
 そして、被相続人とW社とは互いに低い賃料を定めていることから、昭和60年6月5日付直資2―58、直評9「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達(以下「相当地代通達」という。)に定める相当の地代を支払っているか否かを判定するに当たっては、次のニの経済的な実質賃借料を基準とすべきである。
 なお、互いに低い賃料を定めたことについて契約書等は作成していないが、一般的には暗黙の契約も存するのであるから、書面が作成されていないことをもって、互いに低い賃料を定める旨の合意の存在を否定することはできない。
ロ 被相続人が受け取っていた本件倉庫等の家賃の年額は2,400,000円であるところ、この金額は、次のことから不相当に低廉であることは明らかである。
(イ)本件倉庫等の賃貸に係る収支を計算すると571,088円の損失となる。さらに、当該損失の額に、本件倉庫等の敷地の運用の利回り相当額(利回りを5パーセントとして計算した額)を加算すると、本件倉庫等の賃貸に係る収支計算は6,355,947円の損失となる。
(ロ)住宅金融公庫が定める限度額家賃計算書に基づき本件倉庫等の家賃を算定すると年額7,226,137円となる。
(ハ)本件倉庫等に類似する賃貸借実例によると、その平均額は7,347,376円であり、最低の額でも5,383,673円である。
ハ そこで、本件倉庫等の一般的な賃貸借取引としての賃貸料の額を上記ロの(ハ)の最低の額の年額5,383,673円として算定すると、実際に被相続人が受領した家賃の年額2,400,000円との差額は2,983,673円となる。
ニ 本件土地に係る経済的な実質賃借料は、被相続人が支払っていた地代の年額900,000円に、被相続人がW社に対して供与していた上記ハの差額2,983,673円を加算した金額3,883,673円となり、この金額は、本件土地に係る相当地代通達に定める相当の地代の額を上回ることとなる。
ホ したがって、本件借地権は、相当地代通達に定める相当の地代を支払っている場合の借地権に該当することとなり、相当地代通達の定めに基づき評価すると相続税評価額は零円となる。
ヘ よって、原処分は違法であるから、その全部の取消しを求める。

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(2)原処分庁の主張

 相続財産である本件借地権の価額は、次のとおり、11,248,475円となり、また、別表3の番号2の土地(以下「本件隣接地」という。)の価額、W社の出資(以下「本件出資」という。)の価額及び相続税の課税価格は次のとおりとなる。
イ 本件借地権について
(イ)相当の地代の額
 相当地代通達の定めに基づき算定される相当の地代の額は、次のとおり2,267,843円となる。
A 本件借地権設定時の相当の地代の額
〔1〕平成元年分の本件土地の自用地価額 20,984,550円
〔2〕自用地価額に乗ずる割合 0.08
〔3〕相当の地代の額(〔1〕×〔2〕) 1,678,764円
 なお、本件借地権の設定は平成元年であることから、平成3年12月18日付課資2―51、課評2―7による改正前の相当地代通達により、相当の地代の額を算定した。
B 相続開始日現在の相当の地代の額
〔1〕平成4年分の本件土地の自用地価額 41,175,090円
〔2〕平成5年分の本件土地の自用地価額 37,431,900円
〔3〕平成6年分の本件土地の自用地価額 34,785,200円
〔4〕相当の地代の額を計算する際の本件土地の自用地としての価額((〔1〕+〔2〕+〔3〕)÷3) 37,797,396円
〔5〕自用地価額に乗ずる割合 0.06
〔6〕相当の地代の額(〔4〕×〔5〕) 2,267,843円
(ロ)貸借関係
A 被相続人は、平成元年10月、W社から本件土地を借り受けて、別表3の番号3の建物(以下「本件共同住宅」という。)を建築し、W社との間で地代を月額75,000円(年額900,000円)と定めた。
 なお、この金額は相続開始日現在も同額である。
 他方、被相続人はW社に対し本件倉庫等を賃貸し、W社との間で家賃を平成元年1月からは月額200,000円(年額2,400,000円)と定めた。この金額は、本件土地の賃貸借が開始された平成元年10月においても変動はなく、その後、相続開始日現在も同額である。
B これら各賃貸借関係を検討すると、〔1〕本件倉庫等の家賃が月額200,000円と定められた平成元年1月において本件共同住宅は建築されていなかったこと、〔2〕本件土地の賃貸借が開始された平成元年10月以後においても本件倉庫等の家賃の金額に変動はないこと、及び〔3〕本件土地の地代の額の算定に当たり、本件倉庫等の家賃との相関関係が存する旨を示す特段のものは認められないことから、各賃貸借は、被相続人及びW社が相互の資産の貸付けについて、互いに低い賃料を約定したものであるということはできない。
C さらに、本件倉庫等の賃貸に係る年間の収支計算について検討するに、本件倉庫等の家賃収入に対応する費用を、被相続人の平成5年分の所得税の確定申告書に添付し提出された収支内訳書(不動産所得用)を基にして算定すると1,498,806円となり、本件倉庫等の家賃収入2,400,000円からこの費用の額を差し引くと901,194円の利益となるから、本件倉庫等の家賃2,400,000円が低廉なものということもできない。
D 以上のことから、本件借地権に係る地代の額は、被相続人が本件土地の地代として実際に支払っていた月額75,000円(年額900,000円)とするのが相当である。
(ハ)本件借地権の価額
A 上記(ロ)のとおり本件借地権に係る地代の額は、被相続人が支払っていた年額900,000円であり、この金額は、借地権設定時の相当の地代の額1,678,764円及び相続開始日現在の相当の地代の額2,267,843円のいずれにも満たず、また、本件土地の賃貸借については、相当地代通達5《「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の借地権の価額》に定める土地の無償返還に関する届出書(以下「無償返還届出書」という。)が提出されていないから、本件借地権は、相当の地代を支払っている場合の借地権に該当しない。
 したがって、本件借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56、直書(資)17「財産評価基本通達」(平成6年6月27日付課評2―8、課資2―113による改正前のもの。以下「評価通達」という。)の定めに基づき評価することとなる。
B 本件共同住宅は貸付けの用に供されているから、本件借地権は、評価通達28《貸家建付借地権等の評価》に定める貸家建付借地権として評価することとなり、本件借地権の価額は、次の算式のとおり11,248,475円となる。
(A)自用地としての価額
(正面路線価) (本件土地の地積)
170,000円×189.05平方メートル=32,138,500円
(B)本件借地権の価額
(自用地価額) (借地権割合) (自用地価額) (借地権割合) (借家権割合)
32,138,500円×0.5−32,138,500円×0.5×0.3=11,248,475円
ロ 本件隣接地について
 本件隣接地は、貸付けの用に供する本件共同住宅の敷地の用に供されていることから、評価通達26《貸家建付地の評価》の定めに基づき評価すると、本件隣接地の価額は、次の算式のとおり27,317,725円となる。
(イ)自用地としての価額
(正面路線価) (本件隣接地の地積)
170,000円×189.05平方メートル=32,138,500円
(ロ)本件隣接地の価額
(自用地価額) (自用地価額) (借地権割合) (借家権割合)
32,138,500円−32,138,500円×0.5×0.3=27,317,725円
ハ 本件出資について
 本件出資の価額については、次のとおりである。
(イ)W社は、出資1口当たりの配当金額及び出資1口当たりの利益金額がいずれも零円であることから、本件出資は、評価通達189《特定の評価会社の株式》に定める「開業後3年未満の会社等の株式」に該当する。
 したがって、本件出資は、評価通達189―3《土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価》の定めに基づき評価することとなる。
(ロ)W社が所有している本件土地は、被相続人に賃貸していることから、評価通達の定めに基づき評価すると、本件土地の価額は、次の算式のとおり16,069,250円となる。
(上記イの(ハ)のBの(A)の自用地価額)(上記イの(ハ)のBの(A)の自用地価額)(借地権割合)
32,138,500円−32,138,500円×0.5=16,069,250円
(ハ)そうすると、請求人らが本件土地の価額を34,785,200円として評価通達の定めに基づき評価した本件出資の1口当たりの価額252円は、本件土地の価額が16,069,250円となることから、240円となり、請求人らが取得した本件出資の総額は、次の算式のとおり9,600,000円となる。
(1口当たりの価額) (取得した口数)
240円×40,000口=9,600,000円
ニ 課税価格について
 相続税の課税価格は、次の(イ)の取得財産の価額の合計額409,153,207円から、(ロ)の債務及び葬式費用の合計額5,106,655円を控除した後の額に、(ハ)の純資産価額に加算される贈与財産の価額600,000円を加算した額404,646,000円(別表5の原処分庁主張額のとおり、財産を取得した各人ごとに、1,000円未満の端数を切り捨てた額の合計額)となる。
(イ)取得財産の価額の合計額
A 土地
 土地の価額は、請求人らの申告した土地の価額175,564,537円から、請求人らの申告した本件隣接地の価額29,567,420円を控除した後の額に、上記イの本件借地権の価額11,248,475円及び上記ロの本件隣接地の価額27,317,725円を加算した額184,563,317円となる。
B 特定同族会社の株式
 本件出資の価額は、上記ハのとおり9,600,000円となる。
C その他の財産
 その他の財産は、請求人らの申告額のとおり、214,989,890円となる。
(ロ)債務及び葬式費用の額
 債務及び葬式費用の額は、請求人らの申告額のとおり、5,106,655円となる。
(ハ)3年内の贈与加算額
 3年内の贈与加算額は、請求人らの申告額のとおり、600,000円となる。
ホ 結論
 以上の結果、請求人らの相続税の課税価格は別表5の原処分庁主張額のとおりとなり、これらの金額は、更正処分(ただし、Lについては、平成10年5月18日付の再更正処分により一部取り消された後のもの。)と同額あるいは上回ることから、原処分は適法であり、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。

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3 判断

(1)更正処分について

 本件借地権の相続税の評価額は、相当の地代を支払っていたとして零円とすべきか否かについて争いがあるので、以下審理する。
イ 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)被相続人は、平成3年8月30日にW社の代表取締役の地位を退き、同日以降死亡に至るまでは取締役の地位にあり、Lは、同月31日にW社の代表取締役に就任し、現在もその地位にある。
(ロ)W社の資本金は3,000,000円であり、出資1口当たりの券面額は1,000円である。(ハ)被相続人は、平成元年10月にW社から本件共同住宅の所有を目的として本件土地を借り受け、W社との間において、被相続人がW社に対して支払う地代は月額75,000円(年額900,000円)と約定し、同月から地代の支払を行っている。この地代の額は相続開始日現在も同額である。
(ニ)被相続人とW社との間における上記(ハ)の約定について契約書等の作成はされておらず、本件土地の賃貸借に際して権利金及び敷金の授受もされていない。
 また、被相続人及びW社は、原処分庁に対して本件土地の賃貸借に係る無償返還届出書を提出していない。
(ホ)被相続人は、本件土地及び本件隣接地の上に本件共同住宅を建築し貸付けの用に供していた。
(ヘ)本件共同住宅及び本件隣接地は、遺産分割協議によりLが取得している。
(ト)別表4の番号1の建物は、平成元年1月に増築したものであるが、被相続人とW社は、それまで月額180,000円であった本件倉庫等の家賃を増築後は月額200,000円とした。この家賃の額は相続開始日現在も同額である。
(チ)被相続人とW社との間には、本件倉庫等の賃貸借に係る契約書等の作成はされておらず、権利金及び敷金の授受もされていない。
ロ 本件借地権、本件隣接地の価額及び本件出資の価額について、評価通達及び相当地代通達の定めに基づき評価することについては請求人ら及び原処分庁の間に争いはなく、当審判所においても、評価通達及び相当地代通達の定めに基づきこれらの財産を評価することを不相当とする事情は認められないので、以下、これらの財産の価額は、評価通達及び相当地代通達の定めに基づき評価する。
(イ)本件借地権について
A 相当の地代の額
 本件借地権の目的となっている本件土地は、本件隣接地と併せて本件共同住宅の敷地となっていることから、評価通達10《評価単位》に定める1画地の宅地として評価とすることとなり、平成4年分及び平成5年分については、平成4年8月27日付課評2―10、課資1―15「財産評価基本通達15《奥行価格補正》の定めによる奥行価格補正率等の適用について」通達に定める奥行価格補正率0.99を乗ずることが認められることから、この1画地の宅地に係る評価通達14《路線価》に定める正面路線価は、平成元年分は108,000円、平成4年分は200,000円、平成5年分は185,000円、及び平成6年分は170,000円である。
 そうすると、相当の地代の額は、別表6のとおり、本件借地権設定時(平成元年)は1,633,392円、相続開始日現在(平成6年)は2,083,898円となる。
B 本件土地の地代の額
(A)実際の支払地代の額は、本件のように相互に資産の貸付けが行われている場合にあっては各賃貸借契約が相互に関連があって一体不可分のものであり、かつ、各賃料の額の一定額が相殺関係にあることが契約上明示されているなど特段の事情がない限り、現実に授受されるべき金員そのものの額によるのが相当であると解されている。
 これを本件についてみると、〔1〕本件倉庫等の賃貸借契約は平成元年1月に約定され、本件土地の賃貸借契約は平成元年10月に約定されたことが認められ、これらの契約は、約定された時期が異なり、契約期間開始時期も異なること、〔2〕本件土地の賃貸借が開始されても、本件倉庫等の家賃の額に変動はないこと、〔3〕請求人らからは、本件土地の地代の額を算定するについて、本件倉庫等の家賃の額を考慮したとする具体的な証拠資料の提示がないことから、これらの契約は、一方が地方の条件となっていたりあるいは前提となっているとは認められず、相互に関連はないというべきであり、一体不可分のものとは認められない。
 したがって、被相続人が支払うべき地代の額と受け取るべき家賃の額との間には相関関係があり、互いに低い賃料を定める暗黙の合意が存在したとする請求人らの主張は認められない。
 そうすると、本件土地の地代の額は、実際に授受されている月額75,000円(年額900,000円)と認めるのが相当である。
(B)なお、請求人らは、本件倉庫等の家賃の額について、〔1〕本件倉庫等の賃貸に係る収支計算、〔2〕住宅金融公庫が定める限度額家賃計算書に基づく計算、及び〔3〕本件倉庫等に類似する賃貸借実例からすると低廉であり、一般的な家賃の額は5,383,673円であることから、実際に被相続人が受領していた2,400,000円との差額2,983,673円を本件土地の地代の額に加算した上で、本件土地の地代の額は相当の地代であるかどうかを判定すべきである旨主張するが、これらの算定は相続開始後になされたものであって、本件土地の賃貸借の開始に当たりなされたものではないから、これらの算定結果をもってしても上記認定を覆すに足りないというべきである。
 そうすると、上記(A)のとおり、本件土地の地代の額の決定に際して本件倉庫等の家賃の額は考慮されておらず、これらの賃貸借契約に係る賃料の一定額が相殺関係にあるとは認められないから、本件倉庫等の家賃の額の多寡を理由とした請求人らの主張は採用できない。
C 本件借地権の価額
 本件借地権の目的である本件共同住宅は、相続開始日現在貸付けの用に供されていることから、本件借地権は貸家建付借地権として評価することとなり、本件借地権の価額は、次の算式のとおり11,248,475円となる。
(A)自用地としての価額
(正面路線価) (本件土地の地積+本件隣接地の地積) (本件土地の地積)
170,000円×378.10平方メートル×189.05平方メートル÷378.10平方メートル=32,138,500円
(本件土地の地積+本件隣接地の地積)
(B)本件借地権の価額
(自用地価額) (借地権割合) (自用地価額) (借地権割合) (借家権割合)
32,138,500円×0.5−32,138,500円×0.5×0.3=11,248,475円
(ロ)本件隣接地について
 本件隣接地は、本件土地と併せて本件共同住宅の敷地となっていることから本件土地と併せて1画地の宅地として評価し、本件共同住宅は相続開始日現在貸付けの用に供されていることから、貸家建付地として評価することとなり、本件隣接地の価額は、次の算式のとおり27,317,725円となる。
A 自用地としての価額
(正面路線価) (本件土地の地積+本件隣接地の地積) (本件隣接地の地積)
170,000円×378.10平方メートル×189.05平方メートル÷378.10平方メートル=32,138,500円
(本件土地の地積+本件隣接地の地積)
B 本件隣接地の価額
(自用地価額)(自用地価額)(借地権割合)(借家権割合)
32,138,500円−32,138,500円×0.5×0.3=27,317,725円
(ハ)本件出資について
A 本件出資は、評価通達189―3の定めに基づき評価することとなる。
B W社が所有している本件土地の額は、被相続人に賃貸されていることから、別表6の1の(4)の自用地としての価額から借地権の価額を控除した額となり、次の算式のとおり16,069,250円となる。
(自用地価額) (自用地価額) (借地権割合)
32,138,500円−32,138,500円×0.5=16,069,250円
C ところで、請求人らの相続税の申告書に添付された取引相場のない株式(出資)の評価明細書には、W社の出資1口当たりの券面額は50円、被相続人の出資口数は40,000口(額面総額2,000,000円)である旨記載されているが、同社の資本金は3,000,000円、出資1口当たりの券面額は1,000円であるから、本件出資の価額は別表7のとおり、1口当たり4,804円となる。
D 被相続人が有していた本件出資の口数は2,000口(額面総額2,000,000円)であり、請求人らはそれぞれ口数1,000口(額面総額1,000,000円)を取得したことから、請求人らの取得した本件出資の価額は、それぞれ4,804,000円(合計9,608,000円)となる。
ハ そうすると、請求人らの納付すべき税額は別表5の審判所認定額のとおりとなり、この金額はいずれも更正処分に係る金額(ただし、Lについては、平成10年5月18日付の再更正処分により一部取り消された後のもの)を上回るから、更正処分は適法である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり更正処分は適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、Lについては、平成10年5月18日付の変更決定処分により一部取り消された後のもの)は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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