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(平11.9.16裁決、裁決事例集No.58 276頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、不動産賃貸業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が支払った賃貸用建物の建設の請負代金及び当該建設等に係るコンサルタント業務の委託料のうち、当該賃貸用建物が竣工し引渡しを受ける前に支払った請負代金等を消費税の課税仕入れとする時期が、支出時か(請求人)、又は当該賃貸用建物が竣工し引渡しを受けた時か(原処分庁)、仮に課税仕入れとする時期が当該賃貸用建物が竣工し引渡しを受けた時であるとした場合、請求人が過少な申告をしたことについて正当な理由があるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 過少申告加算税の賦課決定処分について
(イ)請求人は、平成8年8月1日から平成9年7月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、別表1の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 次いで、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)による調査を受け、平成10年4月6日に別表1の「修正申告」欄のとおりとする修正申告(以下「本件修正申告」といい、本件修正申告に係る申告書を「本件修正申告書」という。)をした。
 なお、本件修正申告書による修正事項は、次のとおりであった。
A 建設仮勘定から雑費勘定に振替処理した4,666,667円及び当該金額に係る消費税等相当額233,333円の合計金額4,900,000円については、その支出を確認できる証拠書類がないため、課税仕入れに係る支払対価の額から除いた。
B 別表3に記載の賃貸用建物(以下「本件建物」という。)の建設の請負代金及びコンサルタント業務の委託料のうち、別表4に記載の金額(税抜金額)の税込金額相当額を、課税仕入れに係る支払対価の額から除いた。
C 本件確定申告書においては、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項を適用して課税仕入れに係る消費税額の計算をしているが、課税売上割合が95%に満たないことから同条第2項を適用した。
(ロ)原処分庁は、平成10年4月28日付で、〔1〕上記(イ)のAの部分については、仮装の事実があるとして、当該金額を基に算出される納付すべき税額を基礎として重加算税を、〔2〕上記(イ)のB及びCの部分については、当該金額を基に算出される納付すべき税額を基礎として過少申告加算税を、それぞれ賦課決定する処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成10年6月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月24日付で、重加算税の賦課決定処分について、過少申告加算税相当額を超える部分を取り消す異議決定をした。
(ハ)請求人は、異議決定を経た後の賦課決定処分のうち、上記(イ)のBの部分に係る納付すべき税額を基礎として賦課された過少申告加算税(以下「本件賦課決定処分」という。)の取消しを求め、平成10年10月12日に審査請求をした。
ロ 更正をすべき理由がない旨の通知処分について
(イ)請求人は、平成10年9月29日に本件課税期間の消費税等の納付すべき税額等を別表2の「更正の請求」欄のとおりとすべきとの更正の請求をした。
 これに対し、原処分庁は、同年12月25日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
 請求人は、この処分を不服として、別表2のとおり平成11年1月13日に異議申立てをした。
(ロ)異議審理庁は、本件通知処分に対する異議申立てについて、国税通則法(以下「通則法」という。)第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、平成11年2月1日付で請求人に同意を求めたところ、請求人は同月4日に同意したため、当該異議申立てが審査請求とみなされたので、本件賦課決定処分に対する審査請求と併合審理する。

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(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、本件建物1棟の建課について平成9年3月14日付でK株式会社(以下「K社」という。)との間で工事請負契約を締結し、その後、平成10年1月22日付で工事請負変更契約(以下、当該変更契約後の工事請負契約を「本件工事請負契約」という。)を締結した。
 本件工事請負契約に係る契約書には、要旨次のとおりの定めがある。
(イ)工期は、着手を平成9年3月14日、完成を平成10年3月31日とする。
(ロ)引渡しの時期は、平成10年3月31日とする。
(ハ)請負代金額は、602,070,000円(うち工事価格573,400,000円、当該価格に係る消費税等の額28,670,000円)とする。
(ニ)請負代金の支払時期及び支払金額は、契約時182,700,000円、上棟時182,700,000円、竣工引渡時182,700,000円及び竣工引渡しの翌月53,970,000円とする。
ロ 請求人は、本件工事請負契約に基づき、本件課税期間中に契約時支払分として182,700,000円を支払い、そのうち別表4の〔2〕に記載の金額174,000,000円を建設仮勘定に計上した。
ハ 請求人は、平成8年9月30日付でL株式会社(以下「L社」という。)との間で要旨次のとおりのコンサルタント業務委託契約(以下「本件コンサルタント契約」という。)を締結した。
(イ)本件コンサルタント契約に係る業務(以下「本件コンサルタント業務」という。)の委託料は、20,000,000円とする。
 ただし、消費税は別途支払う。
(ロ)本件コンサルタント業務の委託料の支払時期等は、契約締結時6,700,000円、着工時6,700,000円及び竣工時6,600,000円とする。
(ハ)本件コンサルタント契約の有効期間は、本件建物の竣工日までとする。
ニ 請求人は、本件コンサルタント契約に基づき、本件課税期間中に契約締結時分及び着工時分として、それぞれ6,901,000円を支払い、そのうち別表4の〔1〕及び〔3〕に記載の金額の合計額13,400,000円を建設仮勘定に計上した(以下、当該計上した金額と上記ロの建設仮勘定に計上した金額との合計額に、当該合計額に係る消費税等相当額を加えた金額を「本件課税仕入れ額」という。)。
ホ 請求人は、本件課税仕入れ額を本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に加えて消費税の控除税額の計算をした上で、そのことを記載した「仕入控除税額に関する明細書」を添付して本件確定申告書を提出した。
へ 原処分庁は、本件確定申告書に記載された還付税額を平成9年10月21日に全額還付した。

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2 主張

(1)請求人

イ 本件通知処分について
 本件課税仕入れ額は、次の理由から本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額であり、本件修正申告は更正されるべきであるから、本件通知処分の取消しを求める。
 なお、更正の請求のうち、本件課税仕入れ額以外の部分については争わない。
(イ)事業者が建設工事等のために支出した課税仕入れについて建設仮勘定として経理した場合における、その支出した金額を消費税の課税仕入れとする時期については、消費税法基本通達11―3―6《建設仮勘定》(以下「本件通達」という。)で、その課税仕入れを行った課税期間において消費税法第30条の規定が適用されることを明らかにしており、本件通達の「課税仕入れ等をした日」とは、建設仮勘定に計上した日と解すべきであるから、請求人が建設仮勘定で経理した金額については、同条の規定の適用が認められるべきである。
(ロ)さらに、請求人は、調査担当職員から、本件課税仕入れ額を課税仕入れに係る支払対価の額とする時期は、取引先が本件課税仕入れ額相当額を売上げに計上している時期を含む請求人の課税期間である旨の説明を受けており、別表4の〔1〕及び〔3〕に記載の取引先であるL社は、同表の各計上月に売上げに計上し消費税等を納税しているから、請求人の課税仕入れを認めないのは二重課税である。
ロ 本件賦課決定処分について
 請求人は、次の理由から本件賦課決定処分の取消しを求める。
(イ)上記イのとおり、本件修正申告のうち本件課税仕入れ額に関する部分は、本件課税期間の課税仕入れとして認められるべきところ誤って修正申告をしたものである。
 なお、請求人は、誤りを認めて本件修正申告書を提出したものではなく、調査担当職員から、本件課税仕入れ額を課税仕入れに係る支払対価の額とする時期について本件課税期間としても、あるいは翌課税期間としても同じだから協力してほしいとの強い要請を受け、単に消費税等の還付の時期が異なるだけで加算税は賦課決定されないものと思い、調査担当職員に協力して提出したものである。
(ロ)また、本件確定申告書には、本件課税仕入れ額を課税仕入れに係る支払対価の額とすることにより消費税等の多額の還付税額が発生することを記載した「仕入控除税額に関する明細書」を添付しており、仮に、上記イの(イ)の請求人の本件通達の解釈が誤りであるならば本件確定申告書も誤りであることは明らかであるから、その誤りを知りながら還付した原処分庁に責任がある。

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(2)原処分庁

 原処分は、次の理由によりいずれも適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件通知処分について
(イ)原処分庁の調査によれば、次の事実が認められる。
A L社に支払った別表4の〔1〕及び〔3〕に記載の金額と、当該金額に係る消費税相当額との合計額は、本件コンサルタント契約に基づくもので、本件コンサルタント契約の契約時及び本件建物の着工時の支払であり、それぞれの支払時には本件コンサルタント契約に係る役務の提供が完了していない。
B K社に支払った別表4の〔2〕に記載の金額と、当該金額に係る消費税等相当額との合計額は、本件工事請負契約に基づく契約時の支払で、その支払時には本件建物の引渡しの事実は認められない。
(ロ)ところで、課税仕入れに係る消費税額を控除できる課税期間は、資産の引渡しを受けた日又は役務の提供を受けるのが完了した日の属する課税期間であり、建物等の建設工事等に要する設計料、資材購入費等の課税仕入れの金額を建設仮勘定として経理した場合の当該設計料に係る役務の提供及び資材の購入等の課税仕入れについても、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入税額控除を行うこととなるが、建設仮勘定の中には単なる中間金の支払等もあり、建設仮勘定の中からその課税期間中の課税仕入れとして認められる部分を抽出することが困難な場合があることから、本件通達は、建設仮勘定として経理した課税仕入れについて、建物等の全部の引渡しを受けた日の属する課税期間において課税仕入れとすることを認めたものである。
(ハ)そうすると、上記(イ)のとおり、本件課税仕入れ額は、単なる中間金等であり、本件課税期間において資産の引渡しを受け又は役務の提供を受けるのが完了したということはできないため、本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額とすることは認められない。
(ニ)また、申告納税方式を採用している消費税等においては、事業者の納付すべき税額は事業者のする申告により確定することを原則とし、その申告に係る税額の計算が法令の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定するのである。
 本件の場合、原処分庁は、請求人がした確定申告により確定した税額を還付したものであるが、その後の税務調査により、その申告に係る税額の計算が法令の規定に従っていなかったことが判明したため、請求人に是正を求めたものである。
ロ 本件賦課決定処分について
 原処分庁の調査によれば、請求人が本件修正申告書を提出した理由は、請求人が本件通達の解釈を誤り本件確定申告書を提出したために、調査担当職員が修正申告書の提出をしょうようしたことによると認められる。
 そうすると、本件課税期間の控除税額が過大となったことについての請求人の主張は、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しない。

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3 判断

(1)認定事実

 当審判所が原処分関係資料等を調査したところ、次の事実が認められる。
イ 本件工事請負契約には、本件建物を部分的に引き渡す旨の特約は認められず、本件建物を部分ごとに区分して請負金額を定める条項も認められない。
ロ 本件コンサルタント契約に係る契約書によれば、本件コンサルタント業務の内容は、本件建物の企画・設計プランの補助・助言、本件建物の建築現場監理の施主代理行為から本件建物の賃貸に関する賃貸条件の設定及び予約契約書・賃貸借契約書・館内細則等の作成の補助にまで至るものであり、また、本件コンサルタント業務の委託料20,000,000円は、本件コンサルタント業務の各業務ごとに区分できるものではなく、本件コンサルタント業務全体に対する委託料であると認められる。
ハ K社が作成した本件建物の建設に係る平成10年3月19日の施主検査資料によれば、工事終了後に行われる本件建物に係るP消防署及びQ市役所などによる検査は、平成10年3月13日から同月18日までの間に実施され、その結果いくつかの指摘を受けたが、同月18日までに手直工事を終了したことが認められる。
ニ 本件建物は、本件工事請負契約に係る契約書によれば工期が平成10年3月31日までとなっていること、K社が同日付で「工事完了引渡証明書」を発行していること及び請求人が同日付で「建物受領書」をK社あて発行していることからすると、同日までにその建設工事がすべて完了し、請求人は、同日に本件建物を一括してK社から引渡しを受けたものと認められる。

(2)本件通知処分について

 建設仮勘定として経理した工事請負代金等に係る消費税等の課税仕入れの時期について争いがあるので、以下審理する。
イ 法令の規定と解釈について
(イ)消費税法第30条第1項は、事業者が、国内において課税仕入れを行った場合には、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定している。
 この場合において、課税仕入れを行った日がいつであるかは、課税仕入れと課税資産の譲渡等が表裏の関係にあることから、資産の譲渡等の時期に準じて判定するのが相当であると認められ、この資産の譲渡等の時期は、所得税又は法人税における収益の認識基準と同様に、原則として引渡基準によるのが相当と認められる。
 すなわち、請負契約の内容が建設工事等の物の引渡しを要するものであるときの課税仕入れを行った日は、当該建設工事等の目的物を相手方から引渡しを受けた日であり、例えば作業が結了した日、検収を完了した日、使用収益ができることとなった日等、当該建設工事等の種類及び性質、契約の内容等に応じその引渡しを受けた日として合理的であると認められる日によるのが相当である。
 また、請負契約の内容が設計、作業の指揮監督、その他の役務の提供を行うことを目的とするような物の引渡しを要しないものであるときの課税仕入れを行った日は、原則として当該請負契約で約した役務の全部の提供を受けるのが完了した日によるのが相当であり、一つの請負契約であっても、当該提供を受けるべき役務の内容が合理的に区分されたもので、その報酬もその区分された役務の内容ごとに区分され、かつ、それぞれの役務の提供を受けるのが完了する都度その報酬の金額を確定し支払うこととなっているような場合の、当該提供を受けるべき各役務の内容ごとの課税仕入れを行った日は、当該各役務の提供を受けるのが完了した日とすることが相当である。
(ロ)したがって、建物等の建設工事等の目的物の全部の完成前に支払った当該建設工事等に要する設計料、資材購入費等の課税仕入れを建設仮勘定として経理したものであっても、原則的には、当該設計料、資材購入等の課税仕入れをした日の属する課税期間の課税仕入れとすべきである。
 ところで、本件通達は、建設仮勘定として経理した課税仕入れについて消費税法第30条の規定が適用される時期の特例として、当該建設工事等に係る課税仕入れの額をその目的物である建物等の全部が完成し引渡しを受けた日の属する課税期間の課税仕入れとしているときは、これを認めるとしているが、課税仕入れをした日前であっても、建設工事等のために支出した金額を建設仮勘定として経理すれば、当該経理をした日の属する課税期間において課税仕入れとすることまでも認めるものとしているものではない。
ロ 本件通知処分の適否について
 請求人及び原処分庁の双方に争いのない事実並びに当審判所の認定事実を、上記イに照らして判断すると次のとおりである。
(イ)K社に対する建設工事請負代金について
 請求人が本件建物をK社から引渡しを受けた日は、上記(1)のイ、ハ及びニのとおり、平成10年3月31日であると判断するのが相当であり、また、それ以前に本件建物の部分的な引渡しを受けたという事実は認められないから、本件建物の建設工事請負代金について課税仕入れを行った日は、平成10年3月31日であると認めるのが相当である。
 そうすると、K社に対する別表4の〔2〕に記載の174,000,000円を課税仕入れとする課税期間は、平成10年3月31日の属する課税期間であるから、本件課税期間の課税仕入れとすることは認められない。
(ロ)L社に対する本件コンサルタント業務の委託料について
〔1〕本件コンサルタント業務の内容は、上記1の(3)のハの(ハ)及び上記(1)のロのとおり、本件建物の企画、設計段階から竣工まで及ぶものであると認められ、〔2〕本件コンサルタント業務の全部を完了したのは、上記(1)のロからニまでのとおり、本件建物に係る建築現場監理の施主代理行為の完了した平成10年3月19日から本件建物が竣工した本件コンサルタント契約の満了日の平成10年3月31日までの間であると認められ、〔3〕上記(1)のロのとおり、本件コンサルタント業務の各業務ごとに委託料が区分されておらず、かつ、各業務ごとの作業完了の確認が行われた事実も認められないから、本件コンサルタント契約に係る役務の提供を受けるのが完了した日は、早くとも平成10年3月19日であると認めるのが相当である。
 そうすると、L社に対する別表4の〔1〕及び〔3〕に記載の金額の合計額13,400,000円を課税仕入れとする課税期間は、早くとも平成10年3月19日の属する課税期間であるから、本件課税期間の課税仕入れとすることは認められない。
(ハ)なお、請求人は、本件通達にいう「課税仕入れ等をした日」とは、建設仮勘定に計上した日と解すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件通達が、課税仕入れをした日前であっても、建設工事等のために支出した金額を建設仮勘定として経理すれば、当該経理した日の属する課税期間の課税仕入れとすることを認めるものと解することができないことは、上記イの(ロ)のとおりである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ニ)また、請求人は、L社が別表4の〔1〕及び〔3〕に記載の金額を売上げに計上した日の属する請求人の課税期間において課税仕入れを認めないのは二重課税である旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(ロ)のとおりL社に対する別表4の〔1〕及び〔3〕に記載の金額は、請求人の本件課税期間の課税仕入れとすることは認められず、このことは、L社における経理処理のいかんを問うものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ホ)以上のとおり、請求人からの更正の請求に対して更正をすべき理由は認められないから、本件通知処分は適法である。

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(3)本件賦課決定処分について

イ 法令の規定及び解釈について
 通則法第65条第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に一定の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課す旨規定し、また、同条第4項は、納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、同条第1項又は第2項に規定する納付すべき税額から、その正当な理由があると認められる事実に基づく税額として国税通則法施行令第27条《過少申告加算税等を課さない部分の税額の計算》で定めるところにより計算した金額を控除して、通則法第65条第1項又は第2項の規定を適用する旨規定し、さらに、同条第5項は、修正申告書の提出があった場合において、その提出が、更正があることを予知してされたものでないときは、同条第1項の規定は適用しない旨規定しており、これらの規定によれば、修正申告書の提出があった場合に課される過少申告加算税は、正当な理由があるとき及び更正があることを予知してされたものでないときを除き、過少申告であるという事実に対し一律に課されるものと解される。
 そして、通則法第65条第4項にいう正当な理由に当たる事由としては、税法の解釈に関して、申告当時に公表されていた公的見解がその後改変されたため、修正申告をし又は更正処分を受けるに至った場合など真にやむを得ない事由による場合などが該当するものと解され、その過少申告が納税者の税法の不知又は誤解に基づく場合にはこれに該当しないと解するのが相当である。
ロ 本件賦課決定処分の適否について
(イ)請求人は、本件修正申告の本件課税仕入れ額に関する部分は、調査担当職員から協力してほしいという強い要請を受け、また、過少申告加算税は課されないものと思い修正申告をしたものである旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査したところによれば、本件修正申告書の提出は、原処分庁の税務調査を受けた請求人が調査担当職員の修正申告のしょうように基づいてしたものであると認めるのが相当であるから、本件修正申告書の提出が更正を予知したものでないとは認められず、また、調査担当職員が請求人に対して、過少申告加算税が賦課されないということを確約したという事実も認められない。
 そうすると、仮に請求人が、本件審査請求において主張するような認識を持っていたとしても、それは誤解に基づくものであるから、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合には該当しない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)また、請求人は、本件確定申告書には本件課税仕入れ額のことを記載した明細書を添付しているのであるから、仮に本件課税仕入れ額を課税仕入れに係る支払対価の額とする時期に誤りがあるならば、その誤りを知りながら還付した原処分庁に責任がある旨主張する。
 しかしながら、本件確定申告書に添付の「仕入控除税額に関する明細書」の「還付申告となった主な理由」欄に「建設仮勘定で計上」との記載が認められるとしても、その記載をもって直ちに本件確定申告書に誤りがあることが明らかであるということはできず、また、修正申告書の提出があった場合に課される過少申告加算税は、正当な理由があるとき及び更正があることを予知してされたものでないときを除き、過少申告である場合に一律に課されるものであるから、確定申告害の提出後にされる修正申告書の提出又は更正処分が、当該確定申告書に係る還付税額を還付した後にされたものであるか否かは問わないというべきである。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ)以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、本件修正申告書の提出により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合に該当するとは認められず、また、本件修正申告書の提出が同条第5項に規定する更正があることを予知してされたものでないとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいてした本件賦課決定処分は適法である。
(4)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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