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(平11.7.1裁決、裁決事例集No.58 324頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)に対して行った第二次納税義務の告知処分に至る手続に不当、違法があったか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、平成8年5月31日に解散した同族会社である株式会社G(以下「滞納会社」という。)の次表の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)を徴収するため、請求人に対し、国税徴収法第38条《事業を語り受けた特殊関係者の第二次納税義務》の規定に基づいて、平成9年12月5日付の納付通知書により、請求人が滞納会社から譲り受けた財産を限度とする第二次納税義務の告知処分(以下「本件告知処分」という。)をした。

ロ 請求人は、この処分を不服として、平成9年12月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成10年3月25日付で棄却の異議決定をした。
ハ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成10年4月23日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 滞納会社は、請求人の本店所在地と同じP市R町二丁目11番21号を本店の所在地として平成元年3月29日に設立したこと。
ロ 滞納会社は、平成7年12月21日に開催した臨時株主総会において、P市S町4番地3において経営していたアイスホッケーリンクHアイススケート(以下「Hアイススケート」という。)の土地建物について、請求人に654,423,820円で譲渡することを決議し、同日に譲渡したこと。
 当該譲渡代金は、請求人へのHアイススケートに係る未払工事代金及び請求人からの借入金と全額相殺したこと。
ハ 滞納会社は、平成7年6月1日から平成8年5月31日までの課税期間の消費税について、確定申告書に課税標準額を562,128,000円及び納付すべき税額を15,339,400円と記載して、法定申告期限までに申告したこと。
ニ 請求人の代表取締役であるJ(以下「J」という。)は、滞納会社が設立された平成元年3月29日から平成5年12月12日までの間は滞納会社の取締役に、平成5年12月13日から平成8年5月31日までの間は滞納会社の代表取締役に就任していたこと。
ホ Jは、Hアイススケートの土地建物の譲渡時において、請求人の発行済株式数961,000株のうち575,000株を、また、滞納会社の発行済株式数280株のうち160株をそれぞれ所有しており、請求人及び滞納会社はともに法人税法第2条《定義》第10号に規定する同族会社であること。
ヘ 商業登記簿によれば、滞納会社は、平成8年7月30日に、同年5月31日の株主総会の決議により解散したこと及びK(以下「K」という。)を清算人としていること。
 なお、Kは、請求人の関与税理士でもあること。
ト 商業登記簿によれば、請求人は、平成8年4月16日に、次に掲げる事業目的を追加していること。
(イ)アイスホッケーリンクの経営
(ロ)アイスホッケークラブ及びアイスホッケースクールの経営
(ハ)アスレチックスクラブの経営
(ニ)スポーツ施設及び宿泊施設の経営
(ホ)スポーツ用品の開発及び販売
(ヘ)食堂・売店の経営
チ 請求人は、滞納会社から譲り受けたHアイススケートに係る土地建物で、同一名称を用いてアイスホッケーリンク等の経営を行っていること。

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2 主張

(1)請求人の主張

イ 本件告知処分について
 原処分は、次の理由により不当、違法であるから、その全部の取り消しを求める。
(イ)滞納処分の手続について
A 国税徴収法第38条の適用に当たっては、まず滞納者に対し本来の納税義務の履行を促す等一連の滞納処分の手続を行った上で、それでもなお滞納者の納税義務の履行に支障があるなど真にやむを得ない場合にのみ発動すべきである。
 このことは、滞納会社に対する納付催告書「未納国税の納付について」において、納付も相談もないときは法律に定められた手続をとる旨の説示が記載されていることからも明らかである。
B J及びKは、平成9年12月4日に請求人の事務所に来社した原処分庁の特別国税徴収官L(以下「徴収担当職員」という。)との納付折衝において、本件滞納国税の納付について、同月5日、6日に納付計画を立てて同月8日に出署するので納付相談に応じてほしい旨を要請したところ、徴収担当職員はこれを拒否しなかったことから、この要請は了解されたものと理解していた。
 ところが、平成9年12月5日に徴収担当職員からKに対し、本日納付通知書を送付する旨の連絡があり、この問答無用ともいえる連絡に驚いたKは、徴収担当職員に対し、滞納会社が原処分庁と納付相談中であることから納付通知書の発送をしないよう要請したが、原処分庁は平成9年12月5日付の納付通知書を送付してきた。
 以上のとおり、本件告知処分は、滞納会社に対する滞納処分の手続が十分に行われていたとはいえず、法律的な瑕疵がある。
(ロ)信義誠実の原則について
 上記(イ)のBのとおり、J及びKは、本件滞納国税の納付について、納付計画を立てて出署するので納付相談に応じてほしい旨を要請し、徴収担当職員はこれを了解していたにもかかわらず、原処分庁がこの了解事項を一方的に破棄し、本件告知処分を行ったことは信義誠実の原則に反する。
ロ 異議決定の手続について
 請求人は、本件告知処分を不服として異議申立てをしたが、異議審理庁は、一度も調査を行わずに棄却の異議決定をした。
 このような異議決定には瑕疵がある。

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(2)原処分庁の主張

イ 本件告知処分について
 本件告知処分に至る本件滞納国税に係る滞納処分は、次のとおり適正に執行しており、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
(イ)滞納処分の手続について
A 滞納処分とは、国が国税収入を確保するため国税徴収法に基づいて自ら行う強制執行手続であり、その執行に当たり滞納者等の同意を必要とする旨を定めた法令上の規定はなく、また、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務は、滞納者がその特殊関係者に事業を譲渡し、その譲受人の事業形態が滞納者と同一性を有する場合において、滞納者に対して滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときに成立するとされている。
B 滞納会社は、所有する財産を請求人に譲渡して無財産となり平成8年5月31日に解散しているが、原処分庁は、本件滞納国税について平成8年8月29日に督促状を発した以後、Kに対し納付折衝を行ってきた。
 さらに、滞納会社の財産譲渡の経緯、譲渡物件の確認等の調査を行い、滞納会社に対して滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められたことから、国税徴収法第38条の規定に基づいて本件告知処分を行ったものである。
 なお、請求人は、滞納会社が原処分庁と納付相談中である場合は第二次納税義務を課すべきではない旨主張するが、請求人が国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の成立要件を具備している場合は、滞納会社が納付相談中であったか否かに関係なく当然に第二次納税義務を負うこととなる。
C また、本件告知処分を行うに当たっては、滞納会社及び請求人に対し事前に説明を必要とする法令上の規定はないが、徴収担当職員は、今後の事務処理を円滑に行うため、平成9年12月4日に請求人の事務所に臨場し、J及びKに対して本件告知処分に係る説明を行っている。
 その際、J及びKから徴収担当戦員に対し、本件滞納国税の納付について平成9年12月6日に前後策を協議するので時間がほしい旨の申出があったが、徴収担当職員はこの申出を容認していない。
D 徴収担当職員は、平成9年12月5日に、Kに対し、本日納付通知書を送付する旨を連絡した際に、同人から、同月6日にJと前後策を協議するので同通知書の発送は同月8日にしてほしい旨の申出があったことから、同通知書を同月8日に送付したものである。
 以上のとおり、本件告知処分は、国税徴収法第38条の規定に基づき適法に行っている。
(ロ)信義誠実の原則について
 請求人は、原処分庁が本件告知処分を行ったことは信義誠実の原則に反する旨主張するが、上記(イ)のCのとおり、徴収担当職員は、平成9年12月4日におけるJ及びKからの申出を容認しておらず、信義誠実の原則に反する行為は行っていない。
ロ 異議決定の手続について
 請求人から、国税通則法第84条《決定の手続等》第1項に規定する意見陳述の申立てがされておらず、また、請求人の異議申立ての理由には、請求人に対する調査を必要とする事項が認められなかったものであり、異議決定の手続に違法はない。

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3 判断

(1)認定事実

イ 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)滞納会社の平成7年6月1日から平成8年5月31日までの事業年度の法人税の確定申告書に添付されている貸借対照表の資産の部の合計欄には、0円と記載されていること。
(ロ)Kは、平成9年12月8日に、原処分庁に出署又は連絡した事実はないこと。
(ハ)徴収担当職員は、納付通知書を平成9年12月8日に送付する手続を行っていること。
(ニ)Jは、徴収担当職員に対し、次のとおり申述していること。
A 滞納会社の経営状態が悪く、このままではHアイススケートの存続ができないと判断し、請求人にとって赤字経営で多額の負債を抱えた滞納会社を買収することは何の利益にもならないが、滞納会社の設立当時からかかわっていること及び滞納会社に対してHアイススケートの工事代金や貸付金の未収があることから、最終的に滞納会社を引き受けざるを得なかったものである。
B 冬場は仕事も減少し資金繰りが窮乏する時期になるので、本件滞納国税の納付に関しては何ともいえない。
ロ Jは、当審判所に対し、次のとおり答述している。
(イ)本件告知処分において、請求人が滞納会社の特殊関係者と認定されたこと及び第二次納税義務の限度額について滞納会社から護り受けた財産を限度とすることについては争わないこと。
(ロ)平成9年12月4日に請求人の事務所に来社した徴収担当職員に対し、滞納会社を引き受けることとなった経緯及び当社の資金繰り等の事情を説明し了解を得るとともに、第二次納税義務の重要性を認識していること及び本件滞納国税の納付について、Kと協議をしたいので時間的猶予がほしい旨を申し入れたこと。
ハ 徴収担当職員は、当審判所に対し、次のとおり答述している。
(イ)平成9年12月4日に、請求人の事務所に臨場してJ及びKに対し、滞納会社には滞納処分を行う財産もなく本件滞納国税を徴収できないこと及び請求人は国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の成立要件のいずれにも該当することから、近日中に本件告知処分を行わざるを得ない旨を説明をしたこと。
 この説明に対し、J及びKから、同月5日、6日に納付計画を立てて同月8日に出署するので納付相談に応じてほしい旨の要請はあったが、この要請を容認したことはないこと。
(ロ)平成9年12月5日に、Kに対し、本日納付通知書を送付する旨電話連絡をしたところ、同人から、同月6日にJと前後策について相談して同月8日に納付相談のため出署するので納付通知書の発送は同月8日にしてほしい旨の申出があったことから、当該通知書の発送を12月8日にしたこと。

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(2)第二次納税義務の制度について

 第二次納税義務の制度は、形式的に第三者に財産が帰属している場合であっても、実質的には滞納者にその財産が帰属していると認めても公平を失しない場合に、形式的な権利の帰属を否認することにより私法秩序を乱すことを避けつつ、その形式的に権利が帰属している者に対して、補充的に納税義務を負わせることにより徴税手続の合理化を図るために設けられた制度である。
 そして、国税徴収法第38条は、滞納者から事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務について、〔1〕滞納者がその事業をその親族その他の特殊関係者に譲渡したこと、〔2〕その事業譲渡が滞納国税の法定納期限の1年前の日後に行われたこと、〔3〕事業の譲受人が同一とみられる場所において同一又は類似の事業を営んでいること、〔4〕滞納者が、譲渡した事業に係る国税を滞納していること及び〔5〕滞納者の財産につき滞納処分を執行してもなお上記〔4〕の滞納国税に不足すると認められることのいずれの要件にも該当する場合に成立するとし、その責任の範囲は譲受財産を限度とする旨規定している。
イ 特殊関係者について
 国税徴収法第38条に規定する特殊関係者とは、同法施行令第13条《納税者の特殊関係者の範囲》第1項第7号において、滞納者が同族会社である場合にその判定の基礎となった株主を判定の基礎として同族会社に該当する他の会社とする旨規定している。
ロ 事業の譲渡について
 国税徴収法第38条に規定する事業の譲渡とは、滞納者が一個の債権契約で、一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を滞納者の親族その他の特殊関係者に譲渡することをいい、一個の債権契約によらないものであっても、社会通念上同様と認められるものはこれに該当すると解されている。
 一方、得意先、事業上の秘けつ又はのれん等を除外して、工場、店舗、機械、商品等の事業用財産だけを譲渡する場合はこの譲渡に該当しないと解されている。
 そして、事業の譲渡がされた日とは、事業譲受人が滞納者の事業の個性を維持し得る財産の引渡しを受け、従前と同一又は類似の事業活動を開始し得る法的状態に置かれたときと解されている。
ハ 徴収不足について
 国税徴収法第38条に規定する国税に不足すると認められるときとは、納付通知書を発するときの現況において、滞納者に帰属する財産で滞納処分により徴収できるものの価額が滞納国税の総額に満たないと認められることをいい、その判定は滞納処分を現実に執行した結果に基づいて行う必要はないものと解されている。

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(3)本件告知処分について

 上記1の(3)の基礎事実並びに上記(1)の事実及び答述を上記(2)に照らして判断すると、次のとおりである。
イ 第二次納税義務について
(イ)特殊関係者について
 滞納会社及び請求人は、上記1の(3)のホのとおり、ともにJを判定の基礎とした同族会社であり、請求人は、Jを判定の基礎とした滞納会社の他の会社に該当し、上記(2)のイに規定する滞納会社の特殊関係者となる。
(ロ)事業の譲渡について
 請求人は、上記1の(3)のチのとおり、Hアイススケートの名称でアイスホッケーリンク等の経営を行っていること及びJは、上記(1)のイの(ニ)のAのとおり、徴収担当職員に対し、滞納会社の経営状態が悪くこのままではHアイススケートの存続ができないと判断し、最終的に滞納会社の事業を譲り受けた旨を申述していることから、請求人がHアイススケートに係る土地建物を譲り受けたことは、不動産の売買という形態を取っているものの、Hアイススケートの事業の継続を前提としてHアイススケートというのれんを含めた有機的一体としての事業そのものの護り受けであると判断するのが相当である。
 そして、滞納会社が事業を譲渡した日は、上記1の(3)のロのとおり、Hアイススケートに係る土地建物を請求人に譲渡した平成7年12月21日と認めるのが相当であり、この譲渡した日は、本件滞納国税の法定納期限である平成8年7月31日の1年前の日後に該当することとなる。
(ハ)徴収不足について
 滞納会社は、上記1の(3)のロ及びヘのとおり、所有する土地建物を請求人に譲渡し、その譲渡代金を未払工事代金等と全額相殺し平成8年5月31日に解散していること及び上記(1)のイの(イ)のとおり、所有する資産もないことから、原処分庁が、他に滞納処分を行う財産はなく、本件滞納国税を徴収することができないと認定したことは相当と認められる。
 以上のとおり、本件滞納国税について、滞納会社に対し滞納処分を執行してもなおその徴収すべき税額に不足すると認められるところ、請求人は、滞納会社の特殊関係者であり、かつ、滞納会社の事業を滞納国税の法定納期限の1年前の日後に譲り受け、滞納会社が経営していた当時と同一の場所で同一の事業を営んでいることから、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の成立要件を具備しており、その譲り受けた財産の限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うこととなる。
ロ 滞納処分の手続について
 請求人は、滞納会社に対する滞納処分の手続が十分に行われていたとはいえないから、本件告知処分には法律的な瑕疵がある旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の告知処分は、同条に規定する第二次納税義務のいずれの要件にも該当する場合に成立するとされており、また、滞納会社が原処分庁と納付相談中である場合あるいは原処分庁の滞納会社に対する徴収手続が尽くされた後でなければ第二次納税義務を課すことができない旨を定めた法令上の規定はなく、上記イで述べたとおり、請求人は、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務を負うこととなる。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 信義誠実の原則について
(イ)ところで、信義誠実の原則は、法の普遍的な一般原則であり、税法の分野においても、課税処分等が信義誠実の原則に反するときは、その課税処分等を違法なものとして取り消すことができる場合があると解すべきであるが、租税法規は強行法であり、いわゆる合法性の原則に支配されることから、その適用については慎重性が要求され、その合法性を犠牲にしてもなおかつ納税者の信頼あるいは利益を保護しなければ正義に反するような特別な事情が存する場合に初めて信義誠実の原則の法理の適用を考えるべきである。
 かかる特別な事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも税務官庁が納税者に対して信頼の対象となる公的な見解を表示したことにより、納税者がその表示を信頼し、その信頼に基づいて何らかの行為をしたところ、後に公的見解に反する課税処分等が行われ、そのために納税者が経済的不利益を被った場合で、かつ、納税者の責めに帰すべき事由がなく、課税の公平、平等を考慮しても、なお納税者の信頼を保護すべき特別の事情がある場合に限って適用し得るものと解されている。
(ロ)これを本件についてみると、次のとおりである。
 請求人は、本件滞納国税の納付について、納付計画を立てて出署するので納付相談に応じてほしい旨の要請を徴収担当職員が了解していたにもかかわらず、原処分庁がこの了解事項を一方的に破棄し、本件告知処分を行ったことは信義誠実の原則に反する旨主張する。
 しかしながら、徴収担当職員は、上記(1)のハの(イ)のとおり、平成9年12月4日に請求人の事務所に臨場してJ及びKに対し、滞納会社から本件滞納国税を徴収できないこと及び請求人は国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の成立要件のいずれにも該当することから、近日中に本件告知処分を行わざるを得ない旨説明しているところ、この徴収担当職員の第二次納税義務についての説明は、単なる国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の成立要件等の一般的な法令内容のみだけではなく、請求人に対して同条の規定に基づく第二次納税義務を課さざるを得ない旨の説明を行ったものと認めるのが相当である。
 一方、Jは、上記(1)のイの(ニ)のBのとおり、徴収担当職員に対し、冬場は仕事も減少し資金繰りが窮乏する時期になるので、本件滞納国税の納付については何ともいえない旨の請求人の実情を説明し、また、上記(1)のロの(ロ)のとおり、徴収担当職員に対し、第二次納税義務の重要性を認識していること及び本件滞納国税の納付について、Kと協議したいので時間的猶予がほしい旨を申入れしているところ、Jの本件滞納国税の納付についての請求人の実情についての説明及び本件滞納国税の納付協議のための時間的猶予がほしい旨の申入れは、請求人が本件告知処分を受ける前に本件滞納国税に係る第二次納税義務を履行しなければならないこと、すなわち、原処分庁が本件告知処分を行うことを予知した発言であると認めるのが相当である。
 また、上述のとおり、徴収担当職員がJ及びKの納付計画を立てて出署するので納付相談に応じてほしい旨の要請を容認した事実は認められず、請求人がJ及びKの要請を徴収担当職員が拒否しなかったからこの要請を了解していた旨の主張は、請求人の一方的な理解にすぎず、他にこれを認めるに足る証拠もない。
 さらに、上記(1)のイの(ハ)のとおり、徴収担当職員が平成9年12月5日付納付通知書の発送の手続を同月8日に行っている事実は、上記(1)のハの(ロ)のとおり、同日までにKから何らかの納付計画等の提示があることを期待し、Kの出署又は連絡を同日まで待っていたものであると認めるのが相当である。
 そうすると、J及びKが信頼し、その信頼に基づいて行動したとする原処分庁が公的見解を表示した事実は認められず、本件において、租税法規の適用における納税者の平等、公平を犠牲にしても、なお請求人の信頼、利益を保護しなければ正義に反するというような特別の事情があるとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、原処分庁が行った本件告知処分は適法である。

(4)異議決定の手続について

 請求人は、異議審理庁が本件告知処分に係る異議申立てに対し、一度の調査も行わずに棄却の異議決定をしたことには瑕疵がある旨主張する。
 しかしながら、審査請求において主張し得る違法は、異議決定を経た後の原処分に限られるのであり、異議審理手続の不当又は違法を理由として原処分の取消しを求めることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(5)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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