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(平13.7.9裁決、裁決事例集No.62 1頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、修正申告書の無効及び重加算税の賦課決定処分の適否を争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、産業廃棄物の収集・運搬・処理業を営む同族会社であるが、平成5年4月1日から平成6年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件法人税賦課決定処分」という。)及び本件事業年度の法人特別税に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件法人特別税賦課決定処分」という。)並びに平成5年4月1日から平成6年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税賦課決定処分」といい、「本件法人税賦課決定処分」及び「本件法人特別税賦課決定処分」と併せて「本件各賦課決定処分」という。)に対する審査請求(平成12年6月16日請求)に至る経緯は、別表に記載のとおりである。
 なお、別表の「修正申告」欄の各修正申告書(以下「本件各修正申告書」という。)は、原処分庁の調査(以下「本件調査」という。)に基づき提出されたものである。
 おって、請求人は、平成13年1月30日に商号をE株式会社から株式会社Fに変更した。
 さらに、請求人は、平成13年2月15日に本店をP市Q町一丁目572番地から肩書地へ移動した。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、事業の目的を「焼却炉の販売」と登記している。
ロ G、H及びJの請求人の代表取締役への就任状況等は、次表のとおりである。

ハ 本件調査には、G及びJが立ち会っている。
ニ 原処分庁は、平成11年10月19日にK税務署において、請求人に対し本件調査の結果を示して本件工事に係る売上げ及び売上原価が計上漏れとなっていることを指摘するとともに修正申告のしょうようを行っており、その際、H、G及びJが立ち会っている。
ホ 本件各修正申告書の代表者欄にはHの署名押印が、経理責任者欄にはJの署名が、それぞれある。
 なお、本件事業年度に係る法人税の修正申告書の課税標準等には、確定申告書の課税標準等に計上していないL型産業廃棄物焼却炉製作据付工事(以下「本件工事」という。)に係る売上げ90,000,000円及び売上原価58,600,000円が計上されている。
 また、本件課税期間に係る消費税の修正申告書の課税標準等には、確定申告書の課税標準等に計上していない本件工事に係る売上げが課税売上高として計上されている。
ヘ 本件工事の発注者であるM株式会社(以下「M社」という。)は、平成4年8月21日に、請負者を請求人とする本件工事の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結しており、本件請負契約に係る契約書には、要旨次のとおり記載されている。
(イ)M社(甲)はE株式会社N支店(乙)に対し本件工事を依頼することを約し、乙はこれを請け負った。
(ロ)受渡場所 本件工事の引渡しは、甲の指定する甲の工場にて引渡完了するものとする。

(ハ)R市S町11−70
  M社 代表取締役 U
 R市W町二丁目28番17号
  E株式会社N支店 支配人 a

ト 平成4年11月2日に、本件工事を株式会社b(以下「b社」という。)に一括外注するとの請負契約(以下「本件外注契約」という。)が発注者を請求人としてb社との間で締結されており、本件外注契約に係る契約書には、要旨次のとおり記載されている。
(イ)E株式会社(甲)はb社(乙)に対し本件工事を依頼することを約し、乙はこれを請け負った。
(ロ)受渡場所 本件工事の引渡しは、甲の指定する甲の工場にて引渡完了するものとする。

(ハ)X市Y町189−2
  E株式会社 代表取締役 G
 R市Z町105番地9
  b社 代表取締役 c

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
 原処分のその他の部分については争わない。
イ 本件各修正申告書について
 本件各修正申告書は、原処分庁の度重なるしょうようによって、下記ロのとおり、本件工事が個人的取引であると認識しつつも、請求人の無知によって誤って提出したものであるから無効である。
ロ 本件各賦課決定処分等について
(イ)本件工事
A aは請求人のN支店の名称を用いて本件請負契約に係る契約書を作成しているが、契約金額を本社に報告せず、また、売上金も本社に入金していない実態を考えれば、契約の当事者はaであって請求人ではない。
B 本件請負契約及び本件外注契約の契約者が請求人となっていたとしても、その契約はaと本件請負契約を行った当時の請求人の代表取締役であるGが共謀して個人的利益を得るために請求人名義を利用したに過ぎず、実態は請求人名義を妄用した個人的取引である。
(ロ)本件各賦課決定処分
 上記(イ)のとおり、本件工事は個人的取引であり、また、このことをG自身が認識していたからこそ、その実態に応じて申告額に含めなかったものである。
 そうすると、請求人が隠ぺい、仮装行為を行って税額を免れたとはいえないから、本件各賦課決定処分は違法であり、その一部を取り消すべきである。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各修正申告書について
 本件各修正申告書は、本件調査時の代表取締役H、取締役会長G及び経理課長Jの3名が、原処分庁から下記ロに係る調査内容の説明を受け、その内容を十分認識した上で請求人自ら任意に提出したものであり、請求人の無知により誤って提出した無効な修正申告書である旨の請求人の主張には理由がない。
ロ 本件各賦課決定処分について
(イ)請求人は、本件請負契約及び本件外注契約を締結しそれぞれ契約書を作成している。
 本件請負契約の請負者名は「E株式会社N支店支配人a」であるが、Gは、異議審理庁の担当者(以下「異議担当者」という。)に対し「N支店は請求人の支店として設置したものでa個人のものではない。
 また、本件請負契約も請求人として行ったものである。」旨申述している。
(ロ)本件請負契約に係る焼却炉の火入れ式は、平成5年5月28日にGが出席して行われ、同日にM社に本件工事の引渡しがなされている。
(ハ)本件請負契約は工事の途中に解約されているが、M社からの工事代金90,000,000円は本件事業年度の売上げに計上すべき金額であり、b社への外注代金58,600,000円は本件事業年度の売上原価に計上すべき金額である。
 また、請求人は、上記の売上げ及び売上原価として計上すべき金額について、平成5年3月31日にM社からの工事代金の一部18,600,000円を前受金、及びb社への外注代金の一部として同額を前払金として経理し、総勘定元帳に計上していた。
 しかし、その後、この前受金及び前払金を売上げ及び売上原価に振り替える経理をせず、平成7年3月31日にこれらを相殺する経理を行っている。
 以上のとおり、請求人は、本件工事に係る取引の隠ぺいを図ったことにほかならず、本件事業年度の法人税の確定申告書及び法人特別税申告書については、その利益を除外して所得金額及び課税標準法人税額を過少にし、また、本件課税期間の消費税の確定申告書については、課税売上高を除外して課税標準額を過少にしていたものである。
 このことは、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したことに基づき納税申告書を提出したとき」に該当するから本件各賦課決定処分は適法である。
 なお、本件請負契約及び本件外注契約は、請求人の行った一連の取引であり、本件請負契約の当事者は請求人であってaではないから、aとGの個人的取引であるとする請求人の主張には理由がない。

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3 判断

 本件は、本件各修正申告書の無効及び本件各賦課決定処分の適否にあるので、以下審理する。

(1)認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人が、M社を被告として提訴した約束手形金請求事件に係るd地方裁判所e支部(以下「本件裁判所」という。)の平成8年10月25日付判決(平成6年(○)第○○号をいい、以下「本件判決」という。)によれば、訴訟を提起した当時の請求人の代表者であるGは、本件工事は請求人が請負ったとして争っているところ、本件裁判所は、本件工事の既成部分については、請求人の請負代金請求権が認められるとしている。
ロ 請求人が保存している会計伝票によれば、本件工事に係る経理処理は次のとおりである。
(イ)平成5年1月27日にM社から受領した本件工事の前受金18,600,000円を当座預金に入金する際、Gからの仮受金としている。
(ロ)平成4年11月2日にb社に対して約束手形で支払った本件外注契約に係る第1回目の支払額18,600,000円を、平成5年1月31日に仕入れとしている。
(ハ)平成5年3月31日に上記(イ)の仮受金をM社からの前受金に、また、上記(ロ)の仕入れをb社に対する前払金にそれぞれ振り替えている。
(ニ)平成7年3月31日に上記(ハ)の前受金と前払金を相殺している。
ハ 原処分庁の調査経過記録には、要旨次の記述がある。
(イ)本件請負契約は工事の途中に解約されているが、本件工事は本件事業年度中においてM社に引き渡し、工事代金90,000,000円を受領するとともに、b社に対し外注代金58,600,000円を支払っていたにもかかわらず、これらのことを会計帳簿に記載していない事実(以下「本件事実」という。)が判明した。
(ロ)修正申告のしょうように当たって、原処分庁は、請求人の代表者等にK税務署に来ることを求め、これに応じて平成11年10月19日に来署したH、G及びJに対し、本件調査の結果を示して請求人の会計帳簿に本件工事に係る売上げ及び売上原価が計上されていないことを指摘し、本件事業年度に係る法人税及び法人特別税並びに本件課税期間に係る消費税について修正申告をしょうようした。
 その際、重加算税の賦課に関しては、平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度の法人税の確定申告書に添付された決算書上で、前受金及び前払金という勘定科目を使用して、経理処理上は売上げ及び売上原価に係るものであるという意思表示をしておきながら、本件工事が完成し引き渡した本件事業年度の売上げ及び売上原価に計上せず、その後、特別の事情が無いにもかかわらず反対仕訳を行ったことは、隠ぺい、仮装に該当すると判断される旨説明した。
 これに対し、Gは「そのとおりです。」旨発言した。
 また、Hは「当時のことは分からないのでG会長が了解するなら仕方ありません。」旨発言した。
(ハ)aは、平成12年4月5日に異議担当者に対し、本件請負契約及び本件外注契約は、請求人の行為として自分が契約した旨申述した。
 また、Gは、平成12年4月6日に異議担当者に対し、本件工事の話はaが持ってきたものだが、請求人として請け負ったものである旨申述した。
ニ Gは、本件工事の完成時に焼却炉の建設者の代表者として、平成5年5月28日に開催された火入れ式に出席し、機械の操作、廃棄物の焼却効率を良くするための秘訣など技術面の指導を行っている。

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(2)関係人等の申述等

イ Gの申述
 Gは、原処分庁に対し、取締役会長名で要旨次のとおりの申述書を提出している。
(イ)平成11年10月8日
 請求人の私に対する仮払金の使途は、M社と結んだ本件請負契約に係る設備会社等へ支払った諸経費である。M社と本件工事の引渡しの関係で紛争が起こり、売上げの計上が遅れていたが、本件判決があった時点で、本来ならば売上げを計上すべきであった。
 仮払金は、売上げの計上が遅れていたことから、今日に至るまで清算されずに残っていたものである。
 ご指摘のとおり、本件工事に係る売上げを計上して本件各修正申告書を提出するので、仮払金を経費として認めていただきたい。
 なお、本件工事の利益に係る税額に対しては、重加算税を賦課されてもやむを得ない。
(ロ)平成11年10月14日
 本件判決において、請求人の売上金は90,000,000円との認定を受けているが、事実に相違ない。遅くとも、この時点で売上げに計上すべきであった。
 また、この売上げに対する経費の支払総額は判決どおり58,600,000円である。
 なお、58,600,000円は、私に対する仮払金として経理処理した18,500,000円と、M社が振り出した手形で決済している。
ロ Jは、当審判所に対し要旨次のとおり答述している。
(イ)請求人は、本件工事に係る契約書等の関係書類を一切保存していない。これらの書類は、Gあるいはaが個人的に保存しているのではないかと思う。
(ロ)Gは、代表者当時に請求人の資金を勝手に持ち出していたこともあり、その資金がどのように使われているか分からない状況であった。
 また、Gは、請求人の産業廃棄物の収集運搬に係る許可証を利用して個人的な取引を行うなど、Gの関わったものには不透明な取引が多々あった。
 そのような状況の中にあって、本件工事が請求人に帰属すると認識することはできず、したがって、請求人の収益とすることはできない。
(ハ)上記(1)のロの各経理処理は、G及び当時の経理担当者が行った経理処理であり、そのような処理を行った理由は分からない。
(ニ)上記(1)のイの訴訟の提起は、私としては、Gが個人的に行ったものであり、請求人が提訴したものとは認識していない。
 すなわち、本件工事は請求人名義を妄用したGらの個人的取引であるから、これに係る訴訟の提起が請求人名でなされたとしても、個人的取引であることには変わりがない。
(3)上記(1)の認定事実及び上記(2)の関係人等の申述等に照らし判断すると次のとおりである。
イ 本件各修正申告書について
 請求人は、本件各修正申告書は、原処分庁の度重なるしょうようによって、本件工事が個人的取引であると認識しつつも、請求人の無知によって誤って提出したものであるから無効である旨主張する。
(イ)ところで、修正申告書が無効となるのは、修正申告をした請求人自身において錯誤が存在し、かつ、これが客観的に明白かつ重大な錯誤である場合に限られていると解されている。
(ロ)これを本件についてみると、本件工事に係る請求人の代表者であるGは、上記1の(3)のハ及びニのとおり、本件調査に立ち会うとともに、原処分庁から本件調査に基づき本件各修正申告書の提出のしょうようを受けているところ、上記(2)のイのとおり、本件事実を認め、本件各修正申告書を提出する旨の申述書を提出している。
 そして、原処分庁の修正申告のしょうようの際、H、G及びJが同席しているところ、原処分庁は、上記1の(3)のニのとおり、本件調査の結果を示して本件工事に係る売上げ及び売上原価が計上漏れとなっていることを指摘している事実が認められる。
 さらに、本件各修正申告書が提出されたのが、別表のとおり、平成11年11月30日であることからすると、本件工事の帰属はもちろんのこと、本件各修正申告書を提出するか否かについて、請求人の内部において十分検討の上提出したものと認められる。
 そうすると、本件各修正申告書は、原処分庁の度重なるしょうようによって、個人的取引と認識しつつも提出したとする請求人の主張は明らかに不自然と言わざるを得ない。
 一方、原処分庁の調査経過記録には、上記(1)のハのとおり、〔1〕本件事実が判明したこと、〔2〕H及びGが、本件工事に係る売上げ及び売上原価を除外した旨発言したこと及び〔3〕G及びaが、本件請負契約及び本件外注契約は請求人に帰属する旨原処分庁に申述したとする記述があるが、本件各修正申告書の提出に至る経緯からみて、これら記述の内容はいずれも信憑性があると認めるのが相当である。
 以上のとおり、本件各修正申告書を提出したことが明白かつ重大な錯誤であるとは認められず、請求人は、本件工事に係る売上げと売上原価を除外したことを認めて本件各修正申告書を提出したものと認めるのが相当である。
 したがって、請求人の主張は採用することができない。
ロ 本件工事について
 請求人は、本件請負契約の契約者が請求人となっていたとしても、本件工事は個人的取引である旨主張する。
 しかしながら、上記イの(ロ)のとおり、請求人は、本件工事に係る売上げと売上原価を除外したことを認めて自らの責任と判断で本件各修正申告書を提出したと認められるところ、〔1〕上記1の(3)のイのとおり、請求人は焼却炉を販売できること及び〔2〕上記(1)のイのとおり、約束手形金請求事件において、請求人及びM社ともに法人間の取引との認識の下に争っていることからも本件工事は請求人に帰属すると認めるのが相当である。
 一方、請求人は、本件工事が個人的取引であるとの主張を認めるに足る証拠を提出せず、更に、当審判所の調査その他による全資料をもってもこれを認めることはできないから、請求人の主張は認めることができない。
 また、上記(2)のロのとおり、Jは、本件工事は請求人に帰属すると認識することはできない旨答述するが、〔1〕本件請負契約をした当時の代表取締役であるGは、本件工事は請求人に帰属する旨申述し、本件調査時の代表取締役であるHもそのことを容認していること、更に、〔2〕請求人は、原処分庁による修正申告のしょうようの際、H、G及びJが同席して調査内容の説明を受け、その内容を認識した上で本件各修正申告書を提出している事実が認められるから、Jの答述は採用できない。
 なお、上記(1)のニのとおり、本件工事は、平成5年5月28日に火入れ式が行われ、請求人からM社に引渡しが完了していることから、本件事業年度の売上げ及び売上原価並びに本件課税期間の課税売上高に計上したことは相当である。
ハ 本件各賦課決定処分について
 請求人は、請求人の隠ぺい、仮装行為によって税額を免れたとはいえないから、本件各賦課決定処分は違法でありその一部を取り消すべきである旨主張する。
(イ)ところで、通則法第68条第1項の規定によれば、同法第65条第1項の規定に該当する場合(同条第5項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより過少申告加算税に代えて重加算税を課することとされている。
 この場合、事実の隠ぺいとは、売上除外、証拠書類の破棄など、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠匿することをいい、事実の仮装とは、架空仕入れ、架空経費の計上若しくは他人名義の利用等、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいうものとされている。
 これを本件についてみると、次のとおりである。
(ロ)本件法人税賦課決定処分
 上記イ及びロで判断したとおり、〔1〕請求人は、上記(1)のロの(ハ)のとおり、本件工事の売上げ及び売上原価として計上すべき金額の一部を、平成5年3月31日にM社からの前受金18,600,000円及びb社に対する前払金18,600,000円として経理処理していること、〔2〕上記(1)のイのとおり、約束手形金請求事件に係る裁判において、請求人に請負代金請求権を認める旨判決されていること及び〔3〕上記(1)のニのとおり、Gは、焼却炉の建設者として平成5年5月28日に開催された火入れ式に出席して本件工事の引渡しを完了していることから判断すると、請求人は、当初から本件工事が請求人に帰属するとの認識があり、かつ、完成引渡しをしているにもかかわらず故意に売上げ及び売上原価を除外したことが認められる。
 そうすると、本件工事に係る売上げ及び売上原価を帳簿書類に一切計上しなかったことは、課税標準額を隠ぺいしたものと認めるのが相当である。
 以上の事実を総合勘案すれば、請求人の行ったこれらの一連の行為は、通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したとき」に該当すると認められる。
 よって、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づいて行った本件法人税賦課決定処分は適法である。
(ハ)本件法人特別税賦課決定処分
 上記(ロ)のとおり、請求人の行為は、法人特別税の課税標準等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい又は仮装した行為に該当すると認められる。
 よって、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づいて行った本件法人特別税賦課決定処分は適法である。
(ニ)本件消費税賦課決定処分
 上記ロで判断したとおり、請求人は、当初から本件工事が請求人に帰属するとの認識があり、かつ、完成引渡しをしているにもかかわらず、本件課税期間の課税売上高から除外した事実が認められる。
 そうすると、本件工事に係る課税売上高を帳簿書類に一切計上しなかったことは、課税標準額を隠ぺいしたものと認めるのが相当である。
 このことは、通則法第68条第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したとき」に該当すると認められる。
 よって、原処分庁が、通則法第68条第1項の規定に基づいて行った本件消費税賦課決定処分は適法である。
(4)その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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