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(平13.11.29裁決、裁決事例集No.62 16頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、10月決算法人である審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の年始の営業開始日である平成12年1月5日(水曜日)に提出した消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告書について、期限後申告書に該当するとしてなされた無申告加算税の賦課決定処分の適否を争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成10年11月1日から平成11年10月31日までの課税期間に係る消費税等(以下「本件消費税等」という。)について、法定申告期限内の平成11年12月28日にその税額である160,331,000円を納付し、これに係る確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)を平成12年1月5日(水曜日)にA税務署長に提出した。
ロ A税務署長は、これに対し、平成12年4月26日付で国税通則法(以下「通則法」という。)第66条《無申告加算税》第3項及び地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》の規定に基づき、無申告加算税の額を8,016,500円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、本件賦課決定処分を不服として、平成12年6月27日に異議申立てをしたところ、異議決定がなされないまま3か月が経過したため、平成12年11月29日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、次の理由により違法又は不当なものであるので、その取消しを求める。
イ 通則法第10条《期間の計算及び期限の特例》第2項に規定する一般の休日について、最高裁判所昭和33年6月2日判決(民集12巻9号1281頁)は、一般の休日とは法令が規定している休日のみをいうのではなく、一般国民が慣行上休日としているものも含むとし、年始の1月2日及び3日はこれに含まれる旨判示している。
 ところで、請求人をはじめとする出版業界では、年始の1月4日までを休日とし、1月5日を営業開始日とするのが慣行化しているから、年始の1月2日から4日までを一般の休日とするのが、上記の最高裁判決に照らしても、一般の慣行に沿う解釈であるといえる。
 したがって、請求人が年始の営業開始日である1月5日に本件確定申告書を提出している以上は、これを期限内申告書として取り扱うべきである。
ロ 申告納税方式における確定申告書の提出は、納税額を確定し、納付するための一環をなしている納税手続にすぎないものであり、納期及び納税額等を記載している納付書は、納税額を確定させるという点で確定申告書と全く同じ効果をもっているものといえる。
 請求人は、本件消費税等の法定申告期限内である平成11年12月28日に所定の納付書(以下「本件納付書」という。)を用いて本件消費税等の全額を納付し、請求人の年始の営業開始日である平成12年1月5日に本件確定申告書を提出しているのであり、仮に本件確定申告書の提出が一日遅れていたとしても、法定申告期限内に本件消費税等の額を記載した本件納付書とともに、本件消費税等の全額を納付しているのであるから、本件消費税等の納税義務は既に消滅している。
 そうすると、本件賦課決定処分は、本件納付書の提出により本件消費税等の納税義務が消滅しているにもかかわらず賦課された不合理なものであり、違法又は不当なものというべきである。
 また、無申告加算税の賦課決定処分は、通則法第66条第1項の規定のとおり、その前提として期限後申告書の提出又は通則法第25条《決定》に規定する決定処分がなければならないところ、本件納付書の提出により、本件確定申告書の提出と同様な効果をもたらすことになるから、本件賦課決定処分は、その前提要件である期限後申告書の提出等を欠くものと認められるのであり、やはり違法又は不当なものというべきである。
ハ 通則法第66条第1項によれば、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合には、無申告加算税を賦課することができないとされている。この場合の正当な理由とは、納税者の責に帰せられない事情、すなわち、納税者が法定申告期限内に申告書を提出しなかったことに真にやむを得ない理由があり、納税者に無申告加算税を賦課することが不当若しくは酷になる場合をいうと解されている。
 請求人は、本件確定申告書に係る本件消費税等の全額を法定申告期限内に本件納付書により納付しているだけでなく、請求人の年始の営業開始日であり、また、本件消費税等の法定申告期限の翌日に当たる平成12年1月5日に本件確定申告書を提出していること、すなわち、請求人の年末年始の年休制度(12月29日から翌年の1月4日まで)は、一般に慣行化している年末年始の年休制度の枠を異常にはみ出しているというほどのものではなく、しかも、その年始の営業開始日に本件確定申告書を提出していることからすると、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるというべきである。

(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 通則法第10条第2項に規定する一般の休日とは、日曜日、国民の祝日以外の全国的な休日をいうと解されており、年始の1月2日及び3日は一般の休日に該当するとされている。
 しかしながら、平成12年1月4日(火曜日)は、通則法第10条第2項に規定する日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日(国税通則法施行令第2条《期限の特例》第2項に規定する土曜日、12月29日、30日及び31日)のいずれにも該当しないものと認められることから、本件消費税等の法定申告期限である平成12年1月4日の翌日に提出された本件確定申告書は期限後申告書に該当する。
ロ 本件納付書は、通則法第34条《納付の手続》第1項に規定する国税を納付するための書面であって、確定申告書に記載すべき事項のすべてが記載されているものではないことから、本件消費税等の確定申告書に該当しない。
ハ 本件確定申告書は、上記イのとおり期限後申告書であるから、通則法第66条第3項等の規定に基づく本件賦課決定処分は適法である。
 なお、請求人は、本件消費税等の法定申告期限内にその全額を本件納付書で納付し、一般に慣行化しているとする請求人の年始の営業開始日である平成12年1月5日に本件確定申告書を提出していることから、本件確定申告書を法定申告期限内に提出できなかったことについて、通則法第66条第1項に規定する正当な理由がある旨主張するが、これらのことは、本件確定申告書を法定申告期限内に提出することを不可能にする真にやむを得ない理由とは認められない。

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3 判断

(1)本件賦課決定処分

イ 関係法令等
(イ)消費税法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項は、課税期間ごとに、当該課税期間の末日の翌日から2月以内に、課税資産の譲渡等に係る課税標準額、課税標準額に対する消費税額、消費税額から控除されるべき同法第32条《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項第1号に規定する仕入れに係る消費税額等の合計額を控除した残額に相当する消費税額等を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない旨規定している。
 通則法第10条第2項は、国税に関する法律に定める申告等の書類の提出等に関する期限が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもってその期限とみなす旨規定している。
 そして、国税通則法施行令第2条第2項は、この政令で定める日とは、土曜日又は12月29日、同月30日若しくは同月31日とする旨規定している。
 また、国税通則法基本通達第10条関係の4《一般の休日》は、一般の休日とは、日曜日、国民の祝日以外の全国的な休日をいうものとする旨定めており、年始の1月2日及び3日は一般の休日に含まれるが、それ以外の地域的な休日又は特定の業界だけの休日は一般の休日には含まれないと解される。
(ロ)通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第1項は、国税を納付する義務が成立する場合には、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除き、国税に関する法律の定める手続により、その国税についての納付すべき税額が確定される旨規定し、通則法第16条《国税についての納付すべき税額の確定の方式》は、国税についての納付すべき税額の確定の手続については、申告納税方式と賦課課税方式があり、このうち申告納税方式とは、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合等に限り、税務署長等の処分により確定する方式をいう旨規定している。ところで、消費税は、このうち申告納税方式の国税であり、その申告期限及び申告書の記載内容等は、上記(イ)のとおり、消費税法第45条に規定されている。
 また、通則法第34条第1項は、国税の納付の手続について、国税を納付しようとする者は、その税額に相当する金銭に納付書を添えて、これを納付しなければならない旨規定している。これは、申告納税方式による国税は、納税者による自主的な納税義務の確定及び納付を建前とするものであることから、納付についても、国税に関する法律に基づき自主納付すべきものとするとして規定したものである。
(ハ)さらに、通則法第66条第1項は、期限後申告書の提出があった場合には、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合を除き、当該納税者に対し、当該申告に基づき納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨規定し、同条第3項は、当該期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないときは、同条第1項の規定にかかわらず、当該納付すべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨規定している。
 この無申告加算税は、申告納税制度を維持するためには納税者によって期限内に適正な申告が自主的にされることが不可欠であることにかんがみて、申告書の提出が期限内にされなかった場合の行政上の措置として、申告書が法定申告期限後に提出されたという客観的事実のみにより課されるものであり、また、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合とは、法定申告期限内に申告書を提出することを不可能にする真にやむを得ない理由がある場合をいうと解するのが相当である。
ロ 本件賦課決定処分の適法性
(イ)請求人は、請求人をはじめとする出版業界では、年始の1月4日までを休日としており、1月4日は一般国民が慣行上休日としている一般の休日に該当するので、平成12年1月5日に提出した本件確定申告書は期限内申告書である旨主張する。
 しかしながら、上記イの(イ)のとおり、一般の休日とは、日曜日、国民の祝日以外の全国的な休日をいい、1月2日及び3日は、この一般の休日に該当すると解されるが、1月4日については、年始の休日としている企業等が見受けられるとしても、行政機関及び金融機関等においては必ずしも休日とはされていないのであり、一般国民の慣行上の休日には当たらないと解されるので、通則法第10条第2項に規定する一般の休日には該当しないというべきである。
 したがって、本件確定申告書の法定申告期限は、上記イの(イ)のとおり、消費税法第45条第1項及び通則法第10条第2項の規定により、平成12年1月4日であるから、同月5日に提出された本件確定申告書は期限後申告書に該当する。
(ロ)請求人は、本件確定申告書に係る本件消費税等の全額を法定申告期限内に本件納付書により納付し、請求人の年始の営業開始日である平成12年1月5日に本件確定申告書を提出していることから、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由がある旨主張する。
 しかしながら、正当な理由があると認められる場合とは、上記イの(ハ)のとおり、法定申告期限内に申告書を提出することを不可能にする真にやむを得ない理由がある場合をいうと解されるから、請求人の主張するところの本件消費税等の全額を法定申告期限内に納付していることや、請求人の営業開始日が1月5日であることなどが、通則法第66条第1項に規定する正当な理由に該当しないことは明らかである。
(ハ)以上のとおり、本件確定申告書は、上記(イ)のとおり、期限後申告書であると認められるところ、上記(ロ)のとおり、その提出が期限内にされなかったことについて正当な理由がある場合には該当せず、また、原処分庁の消費税等についての調査があったことにより、決定があるべきことを予知して提出されたものではないと認められることから、通則法第66条第3項等の規定に基づく本件賦課決定処分は適法である。
ハ その他の請求人の主張
 請求人は、納期及び納税額等を記載した納付書が確定申告書と全く同じ効果をもっているのであり、本件消費税等の納付が本件納付書により法定申告期限内に行われていることから、本件賦課決定処分は、本件納付書の提出により、その前提要件である期限後申告書の提出等を欠くものと認められるのであり、違法又は不当であるとも主張する。
 ところで、納税申告書とは、申告納税方式による国税を確定させるために税務署長に提出する書面で、課税標準及び納付すべき税額等が記載されているものをいい、消費税の確定申告書の記載事項等は消費税法第45条に規定されている。
 一方、納付書は、申告納税方式による国税を自主納付する場合に、納付すべき税額に相当する金銭とともに日本銀行等の収納機関に提出する書面で、年度、税目、納付の目的及び税額等が記載されているものである。
 そうすると、本件確定申告書と本件納付書は、その記載事項及び法的効果においても明らかに異なるものといえる。
 また、申告納税方式においては、確定申告書の提出が納税義務を確定させるために重要な意義を有することから、納税者の法定申告期限内の申告書提出義務の不履行に対して、通則法第66条第1項の規定により、行政上の措置として無申告加算税が賦課されるものであり、当該申告書に係る税額が法定申告期限内に納付されたか否かにより、同項の規定の適用が左右されるものではない。
 したがって、本件納付書は確定申告書に当たらないのであり、本件納付書の提出により、期限内申告書の提出と同一の法的効果を認めることはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がないというべきであり、本件賦課決定処分を違法又は不当ということはできない。
(2)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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