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(平13.7.9裁決、裁決事例集No.62 199頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、土木建築業等を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、生コンの仕入先と仕入割戻金の算定基準について協議中に、当該仕入先が一方的に持参した現金が仕入割戻金に該当するか否か及び当該現金が仕入割戻金に該当するとした場合に預り金であるとして益金の額に算入しなかったことが重加算税の賦課要件に該当するか否かを争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯等

 審査請求(平成13年1月24日請求)に至る経緯等は、別表1のとおりである。
 なお、請求人は、平成9年2月1日から平成10年1月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分について異議申立てをしたところ、異議審理庁は、これらの処分に対する異議申立てについて、国税通則法第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め平成13年2月2日付で請求人に同意を求めたところ、請求人が平成13年2月13日に同意したので、同日、審査請求がされたものとみなされた。

(3)基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成12年8月まで、合資会社F(以下「F社」という。)から生コンを仕入れており、当該仕入れに係る単価調整のための割戻しとして、すべての仕入先を対象とする仕入割戻金(以下「通常リベート」という。)及び大口取引先等の特定の仕入先を対象とする仕入割戻金(以下「特別リベート」という。)を受け取り、雑収入として経理処理していた。
ロ 請求人は、F社が平成9年12月27日に持参した現金6,000,0000円(以下「本件金員」という。)を受け取り、当該現金を原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の担当職員(以下「調査担当職員」という。)が確認するまで、請求人の事務所内の金庫に保管していた。
ハ 請求人は、消費税について税抜き経理の方法を採用している。

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2 主張

(1)請求人の主張

イ 法人税の更正処分について
 法人税の更正処分は、次のとおり違法であるから、その全部の取り消しを求める。
(イ)原処分庁が雑収入であると認定した本件金員は、請求人とF社との間で、特別リベートの算定基準について話合い中に、F社が一方的に持参し、金額に差異があることから受取を拒否したにもかかわらず置き去ったものであって、安全のため金庫に保管していただけである。
 なお、請求人は、平成6年5月1日以降の特別リベートの算定基準について、生コン1立方メートル当たりの単価を700円にするようF社に要求し続けており、この要求額は、平成6年5月から平成9年4月までの期間分を合計すると15,477,735円となる。
 また、特別リベートの金額について、原処分が行われた後の平成12年9月18日付の念書(案)で、F社から本件金員に2,358,000円を加えた金額で承諾するよう請求人の関与税理士に調停を申し入れてきたことからも、金額は確定していない。
 したがって、本件金員は、特別リベートの金額が確定していないことから、仕入割戻金として益金に算入する義務はない。
(ロ)F社は、平成6年5月から平成8年4月までの間に6,330,195円の売上割戻金を未払費用として経理処理しているにもかかわらず請求人に通知せず、また、請求人が平成7年1月31日、同8年1月31日、同9年1月31日の各決算期末に、電話で各事業年度の特別リベートの額はいくらであったのかを確認したが返答もなかった。
 商行為については、商法第525条及び民法第555条に明示されているとおり、当事者の意思表示による履行約束が取引の成立となるが、F社が請求人に何の連絡もなく売上割戻金6,330,195円を未払費用として計上したのは、法人税法第22条《各事業年度の所得金額の計算》第3項第2号、法人税基本通達2−2−12《債務の確定の判定》及び消費税法第28条《課税標準》に反する行為である。
ロ 法人税の重加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、平成9年2月1日から平成10年1月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の更正処分は違法であるから、これに伴う重加算税の賦課決定処分も取り消されるべきである。
 なお、仮に本件事業年度の法人税の更正処分が違法ではないとしても、請求人には本件金員が特別リベートであるとの認識はなく、安全のため金庫に保管していただけであるから、隠ぺい又は仮装した事実はなく、重加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである。
ハ 消費税等の更正処分について
 本件事業年度の法人税の更正処分は、前記イのとおり違法であり取り消されるべきであるから、それに伴ってされた本件課税期間の消費税等の各更正処分も取り消されるべきである。
ニ 消費税等の重加算税の賦課決定処分について
 本件課税期間の消費税等の各更正処分は、上記ハのとおり取り消されるべきであるから、これに伴う重加算税の賦課決定処分も取り消されるべきである。
 なお、仮に本件課税期間の消費税等の各更正処分が違法ではないとしても、請求人には本件金員が特別リベートであるとの認識はなく、安全のため金庫に保管していただけであるから、隠ぺい又は仮装した事実はなく、消費税等の重加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税の更正処分について
(イ)本件金員の性格
A 請求人は、平成9年2月1日から平成12年1月31日までの本件調査対象期間中に通常リベートと特別リベートを合わせて37回、合計24,904,520円を受領しているが、そのほとんどを現金又は振込によって受領し、その都度雑収入として経理する方法を採っており、仕入割戻金の決済は現金等によっていたものと認められる。
 そうすると、本件金員も請求人が現金で受領し、事務所内にある金庫に保管していることが平成12年9月12日に確認されていることから、仕入割戻しに係る取引が成立しているものと認められる。
 したがって、本件金員は、雑収入として本件事業年度の益金の額に算入すべきである。
B なお、特別リベートの金額について話合いが行われている途中との請求人の主張は、調査担当職員がF社に対し、請求人との取引内容の調査を行った後に主張した事項であるが、仮に協議中であったとしても本件金員の性質が仕入割戻金であることに変わりはなく、請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、F社が請求人に連絡することなく本件金員を未払費用として計上したのは、法人税法等に違反する旨主張するが、これらの規定は仕入割戻しに係る支払者の債務の確定を規定しているものであり、請求人が受領している現金についての計上時期を規定しているものではないので、請求人の主張には理由がない。
(ロ)所得金額
A 所得金額に加算される金額
(A)雑収入
 所得金額に加算される雑収入の金額は、特別リベート6,000,000円(税込)から仮受消費税相当額285,715円(特別リベート6,000,000円に105分の5を乗じて算定した金額)を控除して算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり5,714,285円となる。
(B)雑益
 所得金額に加算される雑益の金額は、上記(A)の仮受消費税相当額285,715円から納付すべき消費税額等285,600円を控除して算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄のとおり115円となる。
(C)所得金額に加算される金額の合計額
 所得金額に加算される金額の合計額は、前記(A)の雑収入に上記(B)の雑益を加算して算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり5,714,400円となる。
B 所得金額から減算される金額
 所得金額から減算される金額は、寄附金の損金不算入額の減少額で、その金額は別表3により算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり71,494円となる。
C 所得金額
 所得金額は、請求人が提出した本件事業年度の法人税の確定申告書(以下「本件法人税申告書」という。)に記載されている所得金額○○○○○円に前記Aの(C)の所得金額に加算される金額の合計額を加算し、上記Bの所得金額から減算される金額を控除して算定すると、別表2の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり○○○○○円となる。
  そうすると、本件事業年度の所得金額は更正処分の金額と同額となるから、更正処分は適法である。
ロ 重加算税の賦課決定処分について
 請求人は、本件金員を雑収入に計上せず、除外することにより所得を過少に算定したところで、本件法人税申告書を提出していると認められる。
 このような請求人の行為は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「その国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するので、同項の規定に基づき重加算税を賦課決定したことは適法である。
ハ 消費税等の更正処分について
 本件課税期間に係る消費税等について、前記イの(ロ)のAの(A)の事実に基づき納付すべき税額を算定すると、次のとおりとなる。
(イ)消費税
A 課税標準額
 課税標準額は、請求人が提出した消費税等の確定申告書(以下「本件消費税等申告書」という。)に記載された金額と同額で、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成9年2月1日から同年3月31日までが414,242,000円、同年4月1日から平成10年1月31日までが336,614,000円の合計額750,856,000円である。
B 課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、本件消費税等申告書に記載された金額と同額であり、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成9年2月1日から同年3月31日までが12,427,260円、同年4月1日から平成10年1月31日までが13,464,560円の合計額25,891,820円である。
C 控除対象仕入税額
 課税仕入れに係る消費税額(以下「控除対象仕入税額」という。)は、本件消費税等申告書に記載された平成9年2月1日から同年3月31日までの2,124,084円に、同年4月1日から平成10年1月31日までの8,922,429円から本件金員6,000,000円(税込み)に105分の4を乗じた金額228,571円を控除した金額8,693,858円を加算して算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり10,817,942円となる。
D 納付すべき消費税額
 納付すべき消費税額は、前記Bの課税標準額に対する消費税額から上記Cの控除対象仕入税額を控除して算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり15,073,800円となる。
(ロ)地方消費税
A 課税標準となる消費税額
 課税標準となる消費税額は、平成9年4月1日から平成10年1月31日までの課税標準に対する消費税額13,464,560円から上記(イ)のCで算出した当該期間の控除対象仕入税額8,693,858円を控除して算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり4,770,700円となる。
B 納付譲渡割額
 納付譲渡割額は、上記Aの課税標準となる消費税額に25%を乗じて算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり1,192,600円となる。
(ハ)納付すべき合計税額
 納付すべき合計税額は、前記(イ)のDの納付すべき消費税額に上記(ロ)のBの納付譲渡割額を加算して算定すると、別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり16,266,400円となる。
 そうすると、納付すべき合計税額は更正処分の金額と同額であることから、本件消費税等の各更正処分は適法である。
ニ 消費税等の重加算税の賦課決定処分について
 消費税等の更正処分の基礎となった前記イの(イ)のAの事実によれば、請求人は特別リベートを除外することにより控除対象仕入税額を過大に算定したところで、本件消費税等申告書を提出していると認められる。
 このような請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「その国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は、仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するので、同項の規定に基づき消費税等の重加算税を賦課決定したことは適法である。

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3 判断

 本件金員を仕入割戻しとして本件事業年度の益金の額に算入すべきか否か及び当該金員を益金の額に算入しなかったことが重加算税の賦課要件に当たるか否かについて争いがあるので、以下審理する。

(1)認定事実

 原処分関係資料及び当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。
イ F社の代表社員G(以下「G」という。)は、当審判所に対し、本件金員を請求人に持参した経緯等について、〔1〕請求人から平成9年の年末までに特別リベートを支払うよう要望があり、年末で仕事の最終日ということもあって現金を用意したこと、〔2〕当初、本件金員を請求人の事務所に持参したが、請求人の代表社員H(以下「H」という。)が不在であったため請求人の工事現場へ持参し、Hに手渡したこと及び〔3〕Hに本件金員を手渡す際に本件金員は平成6年5月から平成9年3月までの期間の特別リベートの精算金である旨告げたところ、同人は何も言わずに受け取った旨の答述をした。
ロ 平成12年9月18日付で、F社から請求人に対し、〔1〕請求人は、本件金員が平成6年5月1日から平成9年3月31日までの期間の特別リベートであることを了承し、領収書を発行すること及び〔2〕F社は、平成5年5月1日から平成6年3月31日までの期間の請求人に対する特別リベートが2,358,000円であることを認め、その支払に応じる旨の念書(案)が差し出されている。
ハ Gは、当審判所に対し、上記ロの念書(案)について、請求人から本件金員について領収書がもらえず、また、特別リベートの単価について請求人と争いがあったことから、それらを決着させるために作成した旨の答述をした。
ニ Hは、当審判所に対し、同人が請求人の代表者になってからはF社から特別リベートを受け取ったことがないこと、請求人はF社に対して特別リベートの算定基準となる単価を生コン1立方メートル当たり700円で要求しているが了解には至っていないこと及び前記ロの念書(案)に対する回答は保留中である旨の答述をした。

(2)法人税の更正処分について

イ 本件金員の性格
 請求人は、本件金員は、F社と特別リベートの単価について話合い中に、一方的にF社の社長が持参し置き去ったものであり、当該単価が確定していないから特別リベートではない旨主張する。
(イ)ところで、仕入割戻しとは、ある一定期間に行った多額の、又は多量の仕入れに対して、仕入先からの返戻金(リベート)をいうものであって、原則的には総仕入高から控除する項目として取り扱われるが、法人が仕入割戻しを計上しなかった場合には、仕入高から控除しないで益金の額に算入することとされている(法人税基本通達2−4−6《法人が計上しなかった仕入割戻しの処理》)。
 また、その計上の時期については、法人税基本通達2−4−4《仕入割戻しの計上時期》で、〔1〕その算定基準が購入価額又は購入数量によっており、かつ、その算定基準が契約等で明示されている場合には、購入した日の属する事業年度、〔2〕〔1〕以外の場合には、その仕入割戻しの通知を受けた日の属する事業年度とする旨定められている。そして、当該通達の〔2〕の取扱いは、そもそも仕入割戻しとは仕入先が取引量又は取引条件等によって一方的に決定するものであり、支払の通知があるまでは金額が確定しないということから定められたものと認められ、当該取扱いは、当審判所においても相当と認めるところである。
(ロ)本件においては、上記(1)の認定事実からすると、請求人とF社との間で特別リベートの算定基準についての契約等がなかったことは明らかである。
 そして、平成9年12月27日にF社が本件金員をHに手渡した際、平成6年5月から平成9年3月までの期間の特別リベートの精算金である旨を告げていることから、その日にF社から請求人に対し特別リベートの支払の通知があったと認めるのが相当である。
(ハ)上記(ロ)の事実を前記(イ)に照らして判断すると、本件金員は仕入割戻金として本件金員を収受した平成9年12月27日の属する本件事業年度の益金の額に算入しなければならない。
 なお、請求人は、F社が本件金員を請求人に通知することなく未払費用として計上したのは法人税法第22条第3項第2号及び法人税基本通達2−2−12に違反する旨主張するが、これらの規定は支払側の損金の額に算入される販売費等の債務の確定の時期の判定に関するものであり、受領側の益金の額に算入すべき時期を規定しているものではないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ロ 所得金額
(イ)所得金額に加算される金額
A 雑収入
 所得金額に加算される雑収入の金額は、特別リベート6,000,000円(税込み)から、仮受消費税相当額285,715円(特別リベート6,000,000円に105分の5を乗じて算定した金額)を控除して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり5,714,285円となる。
B 雑益
 請求人は、前記1の(3)のハのとおり、消費税について税抜き経理の方法を採用していることから、特別リベート6,000,000円(税込み)に係る仮受消費税相当額と本件課税期間の消費税等の更正処分により増加した消費税額等との差額は、雑益として所得金額に加算されることになる。
 そして、その金額は、上記Aの仮受消費税相当額285,715円から更正処分により新たに納付すべきこととなった消費税額等285,600円を控除して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり115円となる。
C 所得金額に加算される金額の合計額
 所得金額に加算される金額の合計額は、前記Aの雑収入に上記Bの雑益を加算して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり5,714,400円となる。
(ロ)所得金額から減算される金額
 所得金額から減算される金額は、寄附金の損金不算入額の減少額で、その金額は別表3により算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり71,494円となる。
(ハ)所得金額
 所得金額は、本件法人税申告書に記載されている所得金額に前記(イ)のCの所得金額に加算される金額の合計額を加算し、上記(ロ)の所得金額から減算される金額を控除して算定すると、別表2の「審判所認定額」欄に記載のとおり26,389,817円となる。
 以上のとおり、本件事業年度の所得金額は更正処分の金額と同額となるから、更正処分は適法である。

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(3)重加算税の賦課決定処分について

 原処分庁は、請求人が平成9年12月27日に本件金員を受領しているにもかかわらず雑収入に計上しなかったことが、国税通則法第68条第1項に規定する仮装、隠ぺいの事実に該当する旨主張する。
イ ところで、国税通則法第68条第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税に代えて重加算税を課する旨規定している。
 そして、この規定にいう「事実を隠ぺいする」とは、納税者がその意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠匿し、あるいは脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、事実をわい曲することをいうと解されている。
ロ 本件においては、前記(1)の認定事実を上記イの法令の規定に照らして判断すると、次のとおりである。
 仕入割戻金として受領した現金を、その旨十分に認識しながら帳簿に計上することなく別途保管することは、通常の場合、重加算税の賦課要件である事実の隠ぺい又は仮装に当たると解するのが相当であるが、本件においては、前記(1)の各事実からすると、請求人とF社との間においては特別リベートの金額について協議が整っておらず、請求人は、受領した金員が自己に帰属するとの認識は有していなかったことが認められる。そこで、請求人が特別リベートの金額が未確定であるから本件金員は預り金にすぎないと判断して帳簿に計上しなかったのは、単なる誤解に基づく計上もれであり、また、金庫に現金を保管していた点は、6,000,000円という金額の大きさからも盗難等の防止のため事務所内の事業用の金庫に保管していたものであって、隠匿しようとしたものではないと認められ、当該請求人の行為には無理からぬ点があると認められる。
 したがって、請求人の当該行為は国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装には当たらないと解するのが相当である。
 また、他に請求人が本件金員を益金の額に算入しなかったことが隠ぺい又は仮装に当たると認めるに足る事実は認められない。
 そうすると、本件においては、国税通則法第68条第1項に規定する重加算税を賦課することは相当ではない。
 しかしながら、本件金員が本件事業年度の益金の額に算入されていなかったことに国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、重加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額について取り消すのが相当である。

(4)消費税等の更正処分について

 本件課税期間に係る消費税等について、前記(2)のロの(イ)の事実に基づき納付すべき税額を算定すると、次のとおりとなる。
 なお、本件における平成9年3月31日までの消費税額の計算は、平成6年法律第109号による改正前の消費税法が適用される。
イ 消費税
(イ)課税標準額
 課税標準額は、本件消費税等申告書に記載された金額と同額であり、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成9年2月1日から同年3月31日までが414,242,000円、同年4月1日から平成10年1月31日までが336,614,000円の合計額750,856,000円である。
(ロ)課税標準額に対する消費税額
 課税標準額に対する消費税額は、本件消費税等申告書に記載された金額と同額であり、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成9年2月1日から同年3月31日までが12,427,260円、同年4月1日から平成10年1月31日までが13,464,560円の合計額25,891,820円である。
(ハ)控除対象仕入税額
 仕入割戻しに係る消費税額は、消費税法第32条《仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項第1号の規定により、課税仕入れ等の税額の合計額から控除されることになる。
 そうすると、控除対象仕入税額は、本件消費税等申告書に記載された平成9年2月1日から同年3月31日までの2,124,084円に、同年4月1日から平成10年1月31日までの8,922,429円から本件金員6,000,000円(税込み)に105分の4を乗じた金額228,571円を控除した金額8,693,858円を加算して算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり10,817,942円となる。
(ニ)納付すべき消費税額
 納付すべき消費税額は、前記(ロ)の課税標準額に対する消費税額から上記(ハ)の控除対象仕入税額を控除して算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり15,073,800円となる。
ロ 地方消費税
(イ)課税標準となる消費税額
 課税標準となる消費税額は、平成9年4月1日から平成10年1月31日までの課税標準に対する消費税額13,464,560円から上記イの(ハ)で算出した当該期間の控除対象仕入税額8,693,858円を控除して算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり4,770,700円となる。
(ロ)納付譲渡割額
 納付譲渡割額は、上記(イ)の課税標準となる消費税額に25%を乗じて算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり1,192,600円となる。
ハ 納付すべき合計税額
 納付すべき合計税額は、前記イの(ニ)の納付すべき消費税額に上記ロの(ロ)の納付譲渡割額を加算して算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり16,266,400円となる。
 以上のとおり、納付すべき合計税額は更正処分の金額と同額であることから、消費税等の各更正処分は適法である。

(5)消費税等の重加算税の賦課決定処分について

 前記(3)のロで述べたとおり、請求人が本件金員を仕入割戻金として記帳せず、当該金員に係る消費税を控除対象仕入税額から控除しなかったことが国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に当たるとは認められない。しかしながら、そのことに同法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、重加算税の各賦課決定処分のうち、過少申告加算税を超える部分の金額について取り消すのが相当である。

(6)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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