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(平13.10.10裁決、裁決事例集No.62 267頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、コンビニエンスストアを営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が、〔1〕福利厚生費に計上した役員ほか1名の旅行費用が請求人の費用に当たるか、〔2〕修繕費に計上し、代表者に対する賞与に当たるとされた墓石修理費用のうちに店舗用駐車場の修繕費が含まれているか及び〔3〕事業継続の必要から支出先等を明らかにできないとした費用を損金の額に算入すべきか否かを主たる争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

 請求人は、平成9年3月1日から平成10年2月28日までの事業年度(以下「平成10年2月期」という。)及び平成10年3月1日から平成11年2月28日までの事業年度(以下「平成11年2月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、それぞれ青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載し、また、平成9年3月1日から平成10年2月28日までの課税期間(以下「平成10年2月課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、これらをいずれも法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 これに対し、原処分庁は、平成12年4月26日付で、本件各事業年度の法人税について、別表1の「原処分」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をし、また、平成10年2月課税期間の消費税等について、別表2の「原処分」欄のとおりの更正処分をした。
 請求人は、これらの処分を不服として、平成12年6月26日に異議申立てをしたところ、3月を経過しても異議決定がされなかったため、異議決定を経ないで同年12月6日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人の代表取締役はJであり、その妻Kは請求人の取締役である。
 また、いずれの者も請求人から定期の給与を受けている。
ロ 請求人は、平成9年7月15日付で、Kほか1名が参加した「○○○そうや4日間らくらくAIR C」なる旅行(以下「本件旅行」という。)の費用192,000円(以下「本件旅行費用」という。)を福利厚生費に、また、本件旅行費用に係る消費税等の額9,600円を仮払消費税にそれぞれ経理している。
ハ 請求人は、有限会社L(以下「L社」という。)発行の平成9年12月19日付領収証に基づき、これに記載された金額220,000円のうち、L社施工の工事費用209,524円(以下「本件工事費用」という。)を修繕費に、また、本件工事費用に係る消費税等の額10,476円を仮払消費税にそれぞれ経理している。
ニ 請求人は、株式会社M(以下「M社」という。)に対し支払う費用を「SE費用」として経理しているところ、平成11年2月期の確定申告に係るSE費用の額29,281,437円のうちの1,000,000円(以下「本件SE費用」という。)について、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)を担当した職員(以下「調査担当職員」という。)に対し、その領収証その他の証拠資料を提示せず、その支払先も明らかにしなかった。

(4)関係法令

イ 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項本文及び同項第2号には、「各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき費用の額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額とする」旨が規定されている。
ロ 法人税法第35条《役員賞与等の損金不算入》第1項には、「内国法人がその役員に対して支給する賞与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない」旨が規定され、また、同条第4項には、「賞与とは、役員又は使用人に対する臨時的な給与のうち、他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び退職給与以外のものをいう」旨が規定されている。
ハ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項には、「事業者が、国内において課税仕入れを行った場合には、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額の合計額を控除する」旨が規定され、消費税法第2条《定義》第1項第12号には、「課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けることをいう」旨が規定されている。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 法人税の更正処分について
(イ)本件旅行費用について
 本件旅行費用に係る株式会社N発行の領収証には、〔1〕あて先「Kほか1名」、〔2〕金額「201,600円」及び〔3〕旅行名「○○○そうや4日間らくらくAIR C2名」と記載されており、また、本件調査においてJは、調査担当職員に対し、本件旅行費用は個人的費用に該当する旨申述していることから、本件旅行費用は、Kが負担すべき個人的費用であると認められるので、損金の額に算入することはできない。
(ロ)本件工事費用について
 本件工事費用に係る領収証のあて先は「J様」とされており、また、L社が保存している請求書の控えには、工事代金の内訳として「カロート代、石塔据直し代、花立加工代、戒名字堀り代」など墓石工事費用のみが記載され、さらに、本件調査においてJは、調査担当職員に対し、本件工事費用は、個人的費用に該当する旨申述していることから、本件工事費用は、その全額がJの個人的費用と認められるので、損金の額に算入することはできない。
(ハ)本件SE費用について
 本件SE費用に係る領収証等はなく、また、本件調査においてJは、調査担当職員に対し、本件SE費用は通常のSE費用とは別に現金で支払ったもので領収証も一切ない旨申述し、その支払先を明らかにしなかった。
 また、平成12年6月26日にされた異議申立てに係る調査(以下「本件異議調査」という。)において、Jは、本件異議調査を担当した職員(以下「異議調査担当職員」という。)に対し、本件SE費用は近くにM社の新店舗ができるのを阻止するために工作資金として支払ったもので領収証の保管はあると主張するのみで、請求人から請求書や領収証等の提示がなく、その支払先も明らかにされなかった。
 そうすると、本件SE費用は、その支払の事実を確認することができないので、損金の額に算入することはできない。
(ニ)課税所得金額
 以上により、本件各事業年度の課税所得金額を計算すると、いずれも別表3のとおりとなるから、更正処分はいずれも適法である。
 なお、同表各欄の詳細は、次のとおりである。
A 平成10年2月期
(A)「申告所得金額〔1〕」欄は、請求人の確定申告額と同額である。
(B)「福利厚生費の損金不算入額〔2〕」欄は、本件旅行費用の額192,000円である。
(C)「修繕費の損金不算入額〔3〕」欄は、本件工事費用の額209,524円と平成9年11月1日付で有限会社Pに支払われた金額のうち修繕費に経理されていた金額20,639円(税抜金額)との合計金額である。
(D)「雑収入の計上漏れ額〔4〕」欄は、雑収入として所得金額に加算すべき消費税等の端数処理金額であり、上記(B)及び(C)の金額に係る消費税等の合計金額21,107円と平成10年2月課税期間の消費税等の更正処分により納付すべき消費税等の額21,100円との差額である。
(E)「加算計〔6〕」欄は、上記(B)ないし(D)の合計金額である。
(F)「差引金額〔8〕」欄は、上記(E)の金額である。
(G)「課税所得金額〔9〕」欄は、上記(A)及び(F)の合計金額である。
B 平成11年2月期
(A)「申告所得金額〔1〕」欄は、請求人の確定申告額と同額である。
(B)「SE費用の損金不算入額〔5〕」欄は、上記(ハ)で述べたとおりである。
(C)「加算計〔6〕」欄は、上記(B)の金額である。
(D)「事業税の損金算入額〔7〕」欄は、平成10年2月期の法人税の更正処分に伴い、損金の額に算入される法人事業税の増加額である。
(E)「差引金額〔8〕」欄は、上記(C)から(D)を差し引いた後の金額である。
(F)「課税所得金額〔9〕」欄は、上記(A)及び(E)の合計金額である。
ロ 法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イで述べたとおり、本件各事業年度の法人税の更正処分はいずれも適法であり、また、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、同条第1項の規定に基づき行った過少申告加算税の賦課決定処分は、いずれも適法である。
ハ 消費税等の更正処分について
 上記イの(イ)及び(ロ)のとおり、本件旅行費用はK個人の費用であり、また、本件工事費用はその全額が墓石関連工事費用で、J個人の費用であると認められるから、これらの費用に係る消費税額を平成10年2月課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除することはできない。
 そうすると、平成10年2月課税期間の消費税の差引税額及び地方消費税の納付譲渡割額は、いずれも別表4のとおりとなるから、消費税等の更正処分は適法である。
 なお、同表各欄の詳細は、次のとおりである。
(イ)「課税標準額〔1〕」欄は、請求人の確定申告額と同額である。
(ロ)「課税標準額に対する消費税額〔2〕」欄は、請求人の確定申告額と同額である。
(ハ)「課税標準額に対する消費税額〔3〕」欄は、請求人の確定申告額と同額である。
(ニ)「合計〔4〕」欄は、上記(ロ)及び(ハ)の合計金額である。
(ホ)「控除対象消費税額の計算」欄について
A 「確定申告額〔5〕」欄は、請求人の確定申告額と同額である。
B 「減算する控除対象消費税額〔9〕」欄は、次の(A)ないし(C)の合計金額443,270円に105分の4を乗じて計算した金額である。
(A)本件旅行費用の消費税等込みの金額201,600円
(B)本件工事費用の消費税等込みの金額220,000円
(C)有限会社Pに対する消費税等込みの金額21,670円
C 「更正処分後の控除対象消費税額〔10〕」欄は、上記AからBを差し引いた後の金額である。
(ヘ)「消費税の差引税額〔11〕」欄は、上記(ニ)から(ホ)のCを差し引いて、100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。
(ト)「地方消費税の課税標準となる消費税額〔12〕」欄は、上記(ハ)から(ホ)のCを差し引いて、100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。
(チ)「地方消費税の納付譲渡割額〔13〕」欄は、上記(ト)に100分の25を乗じ、100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。
(2)請求人の主張
 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 法人税の更正処分について
(イ)本件旅行費用について
 請求人には、いわゆる常勤パ−トから学生アルバイトまで様々な従業員が、1年間に交代で40数名働いているが、常勤パ−トは、新人パ−トや学生アルバイトを現場で指導する立場にあり、請求人の経営する店舗においては幹部職員に該当する。
 しかしながら、請求人には厚生施設がなく、また、請求人が営む事業の性格上、職員全員あるいはグル−プで旅行に出かけるというような厚生活動はできない現状から、本件旅行は、幹部職員に対する厚生活動として行ったものであり、請求人の福利厚生費に該当するので、平成10年2月期の損金の額に算入されるべきである。
 なお、更正通知書の更正の理由及び答弁書には、Jが調査担当職員に対し、本件旅行費用が個人的費用に該当する旨を申述したとの記載があるが、Jはそのような申述は一切行っていない。
(ロ)本件工事費用について
 本件工事費用には、請求人の経営する店舗の車止めの補修工事費用(以下「店舗関連費用」という。)が含まれており、店舗関連費用は、請求人の修繕費に該当するものであるから、平成10年2月期の損金の額に算入されるべきである。
(ハ)本件SE費用について
 本件SE費用は、実際にはM社に対し支払ったものではないが、請求人の事業の継続を確保する必要から第三者に対し支払ったものであるので、平成11年2月期の損金の額に算入されるべきである。
 なお、請求人は、原処分庁に対し、本件SE費用に係る領収証等を提示していないが、本件SE費用に係る支払先を説明したり、支払先から受領した領収証を調査担当職員に提示することは、事業の継続を維持して行く上で困難をもたらす結果となる。
 したがって、本件調査の際、調査担当職員に対し、支払先を明らかにした場合に相手方に対する課税が行われるか否かの説明を求め、また、支払先に対する課税を行わないことを前提に領収証を提示し、本件SE費用を交際費等として処理することも主張したが、調査担当職員からは、これらについての明確な返答が得られなかったことから、原処分庁に対し本件SE費用に係る領収証等を提示できないのは当然である。
ロ 法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。
ハ 消費税等の更正処分について
 上記イの(イ)及び(ロ)のとおり、本件旅行費用及び本件工事費用中の店舗関連費用は、いずれも請求人が負担すべき費用であり、これらに係る消費税等の額は、平成10年2月課税期間の課税標準額に対する消費税等の額から控除されるべきであるから、同課税期間の消費税等に係る更正処分は、その一部を取り消すべきである。

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3 判断

(1)法人税の更正処分について

イ 本件旅行費用について
 請求人は、本件旅行費用が請求人の福利厚生費に当たる旨主張するので、以下審理する。
(イ)認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
A 請求人は、当審判所が本件旅行費用に係る領収証その他支出の事実を証する書類の提出を求めたにもかかわらず、これを提出しないから、本件旅行費用に係る領収証には、原処分庁が主張する内容が記載されていたと推認される。
B Jは、当審判所に対し、Kと共に本件旅行に参加した者はRである旨答述したが、請求人は、当審判所が再三関係資料の提出を求めたにもかかわらず、これを提出しないから、Rなる人物の存在は明らかでなく、仮に同人が実在するとしても、同人は請求人の従業員ではないか又は本件旅行に参加していないと推認される。
C Jは、当審判所が行った厚生活動に関する質問に対し、R以外には、以前にSという長男の同級生のパートを温泉に連れて行ったことがある旨を答述するにとどまり、請求人がパートその他の従業員を対象として、何らかの規定又は計画に従って厚生活動を行っている事実は認められない。
(ロ)ところで、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、上記1の(4)のイの規定により、損金の額に算入すべき販売費、一般管理費その他の費用の額については、当該費用が当該内国法人の費用でなければならないことは当然である。
(ハ)しかしながら、本件の場合、上記(イ)の事実のとおり、本件旅行費用に係る領収証のあて名はK個人であり、また、同行した者は請求人の従業員ではないと認められ、さらに、請求人がその従業員を対象として計画的に厚生活動を行っていた事実も認められないから、本件旅行が請求人の厚生活動として行われたとの請求人の主張は採用しがたく、本件旅行費用は、K個人の費用を請求人が負担したものと解するのが相当である。
(ニ)そうすると、Kが請求人の役員であるという身分関係に照らせば、請求人がK個人の費用を負担したことは、役員に対し臨時的な給与等を支給したものと解すべきであるから、上記1の(4)のロの規定により、この臨時的な給与等は役員賞与に該当し、所得金額の計算上損金の額に算入することはできないとするのが相当である。
ロ 本件工事費用について
 請求人は、本件工事費用中に損金の額に算入すべき店舗関連費用が含まれている旨主張するので、以下審理する。
(イ)認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
A L社の発行した本件工事費用に係る領収証には、「カロート工事」及び「戒名字掘り代」と、また、L社の保存している請求書の控えには、「コンクリート深土2尺、白御影石磨きカロートのふた石76,000円」、「石塔、墓誌、かたづけ据直し代40,000円」、「土かたづけ8,000円」、「砂セメント代5,000円」、「化粧砂利(五色石)3分12ケ20,400円」、「ステンレス花立中入レ落とし加工15,000円」、「〃ネジ加工8,500円」及び「戒名字掘り代38,000円」と記載されているが、請求人の経営する店舗に関係する工事についての記載はない。
B 請求人は、当審判所に対し、店舗関連費用に係る工事箇所、工事内容及び金額その他について具体的に明らかにせず、また、当審判所が店舗関連費用に係る帳簿書類の提出を求めたにもかかわらず、これを提出しないから、店舗関連費用に係る工事が施工されたことを証するに足る事実はないものと認められる。
C Jは、店舗関連費用の内容について、異議調査担当職員に対しては、駐車場の車止めの外柵工事と申述したことが認められるところ、当審判所に対しては、店舗に係る車止め補修工事と答述しており、その内容はあいまいであって、当審判所の調査によっても、店舗関連費用が支出された事実又はそれを推認し得る事実は認められない。
(ロ)上記(イ)の各事実に照らし判断すると、本件工事費用中には店舗関連費用は含まれていないといわざるを得ない。
 そうすると、本件工事費用は、その全額が墓石工事に関するものであり、J個人の費用と認められるところ、上記イの(ロ)及び(ニ)の理由同様、これを請求人が負担したことは、請求人が役員Jに対し臨時の給与等を支給したことにほかならず、したがって、本件工事費用の全額が役員賞与に該当することとなるから、損金の額に算入される部分はないとするのが相当である。
ハ 本件SE費用について
 請求人は、事業の継続を確保する必要上本件SE費用の支払先を明らかにできないのであるから、本件SE費用は損金の額に算入されるべきである旨主張するので、以下審理する。
(イ)ところで、上記1の(4)のイの規定により損金の額に算入すべき費用は、上記イの(ロ)のとおり、当該内国法人の費用でなければならないことは当然であり、当該費用が当該内国法人の費用であるというためには、その支払先及び使途が明らかで、かつ、当該内国法人の業務に関するものであることを要するというべきである。
(ロ)しかしながら、請求人は、当審判所に対し、本件SE費用の支払日及び支払先等について具体的に明らかにせず、当審判所が本件SE費用に係る帳簿書類等の提出を求めたにもかかわらず、これを提出しないから、当審判所の調査によってもその支払先及び使途を確認することができない。
 したがって、本件SE費用の支払先及び使途が確認できない以上、本件SE費用が請求人の費用に当たるということはできないから、本件SE費用の額を損金の額に算入することはできないとするのが相当である。
 なお、請求人は、調査担当職員が本件SE費用の支払先に対する課税を行わない旨を明確にしないから領収証等を提示できない旨主張するが、このような主張が領収証等を提示しないことの正当な理由に当たらないことは明らかである。
ニ 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、当審判所の調査によっても、他に請求人の主張を裏付けるに足る証拠は認められず、本件各事業年度の所得金額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも原処分に係る所得金額及び納付すべき税額と同額となるから、法人税の各更正処分は、いずれも適法である。

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(2)法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件各事業年度の更正処分はいずれも適法であり、かつ、それらの更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があったとは認められないから、同条第1項の規定に基づきされた過少申告加算税の各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(3)消費税等の更正処分について

 請求人は、本件旅行費用及び店舗関連費用はいずれも請求人が負担すべき費用であるから、これらに係る消費税等の額は、平成10年2月課税期間の課税標準額に対する消費税等の額から控除されるべきである旨主張するので、以下審理する。
イ ところで、上記1の(4)のハの規定によれば、課税標準額に対する消費税額から控除される課税仕入れに係る消費税の額は、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け等をした場合における当該資産の譲り受け等の対価の額に係る消費税の額とされており、これには給与等を対価とする役務の提供は含まれていない。
ロ これを本件についてみると、上記(1)のイ及びロのとおり、本件旅行費用及び本件工事費用は、いずれもK個人及びJ個人の費用であると認められるところ、請求人がこれらの費用を実質的に負担し、その帳簿において、それぞれ福利厚生費及び修繕費に経理していたとしても、これらの費用の負担は、いずれも請求人が「資産を譲り受けたこと」に当たらず、J及びKに対し、役員としての役務の提供の対価として給与等を支給したことにほかならないというべきであるから、上記イのとおり、消費税法上「給与等を対価とする役務の提供」が課税仕入れに該当しないと規定されている以上、本件旅行費用及び本件工事費用はいずれも請求人の課税仕入れに当たらないとするのが相当である。
 したがって、本件旅行費用及び本件工事費用に係る消費税の額を平成10年2月課税期間の課税標準額に対する消費税の額から控除することはできない。
ハ 以上のとおり、請求人の主張には理由がなく、当審判所の調査によっても、他に請求人の主張を裏付けるに足る証拠は認められず、平成10年2月課税期間の納付すべき消費税等の額を計算すると、いずれも原処分に係る納付すべき消費税等の額と同額となるから、同課税期間の消費税等の更正処分はいずれも適法である。

(4)その他

 原処分のその他の部分について請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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