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(平13.12.21裁決、裁決事例集No.62 293頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)がパナマ共和国(以下「パナマ国」という。)に設立したG CO.,S.A.(以下「G社」という。)の欠損金を、請求人の所得金額の計算上合算して申告することの適否を主な争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯等

 審査請求(平成11年3月16日請求)に至る経緯等は、別表1及び2のとおりである。

(3)基礎事実

 次の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、昭和58年6月にパナマ国においてパナマ船籍取得のためにG社を設立し、以来、同社の損益を合算経理により請求人に帰属させて申告してきた。
ロ 請求人とG社の決算月は同じであり、平成6年8月1日から平成7年7月31日までの事業年度(以下「平成7年7月期」という。)、平成7年8月1日から平成8年7月31日までの事業年度(以下「平成8年7月期」という。)及び平成8年8月1日から平成9年7月31日までの事業年度(以下「平成9年7月期」といい、これら3事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)のG社の決算はいずれも欠損(赤字)であった。
ハ G社は、次のパナマ国の法律に基づき合法的に設立されている。
(イ)根拠法規
 1927年パナマ株式会社法(以下「パナマ会社法」という。)
(ロ)設立手続
 会社は、2名以上の発起人が規定の様式による定款を作成することにより成立し、その設立手続は同定款を公証人に提出して登記することにより終了する。
(ハ)定款記載事項
 〔1〕発起人全員の住所及び氏名、〔2〕会社名、〔3〕会社設立の目的、〔4〕授権資本金、株数、株式の種類、額面・無額面の別、記名・無記名の別、〔5〕各発起人が取得合意の株式数、〔6〕会社の登記上住所、〔7〕会社の存続期間、〔8〕役員(最低3人)の氏名・住所及び(9)その他発起人が同意した法律上の重要事項
(ニ)株式・株券
A 株式に種類がある場合、定款上その種類及び種類ごとの権利、制限、議決権等を明記する。
B 定款上株式の譲渡に制限を課することは可能であるが、全面的に譲渡を禁ずることはできない。
C 株式は、金銭にとどまらず役務あるいはその他の資産を対価として発行できる。
D 株式は記名式、無記名式いずれでも可。
記名式…………全額払込み、一部払込み又は払込みなくしても可。
無記名式………全額払込みのみ可。
ニ 請求人は、G社の商業登記簿謄本の写しを保管しており、同社名義の船舶の運航、管理等はすべて請求人が行っている。

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2 主張

(1)法人税の更正処分について

 本件各事業年度の更正処分について、各争点に対する請求人及び原処分庁の主張は、以下のとおりである
イ 措置法第66条の6の規定の適用について
(イ)請求人の主張
 G社は、次の理由から租税特別措置法(以下「措置法」という。)第66条の6《内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入》に規定する請求人の特定外国子会社等に該当しないから、同条の規定は適用されない。
A G社は、昭和58年6月にパナマ会社法に基づいて設立されているが、1ドルの払込みもしておらず、また、1株の株式も発行していない。
 措置法第66条の6第1項第1号では、発行済株式等を「発行済株式の総数又は出資金額という」と規定しており、租税法の解釈に当たっては、文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推解釈をすべきでない。また、同法は日本の法律であり、「発行済株式等」の解釈については当然に我が国の商法及び関係法令に従って解釈すべきである。
B 原処分庁は、「発行済株式等」について、外国子会社の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無から判定されなければならないという独自の考え方を根拠として、「発行済株式等」とは「外国関係会社を支配し得る単位化された物的地位を指すもの」と拡張解釈している。
 このような行政庁の一方的な課税要件の拡大解釈は、納税者の法的安定性の観点から容認されないし、「支配関係は株式等の保有のみでなく、貸付金や役員派遣などの形においても存在し得ようが、これらを包括的に、かつ、正確に規定することは極めて困難であり、本税制では資本関係に基づく支配関係に限定されている」(大蔵省主税局長高橋元監修「タックスヘイブン対策税制の解説」昭和54年清文社95頁)との解説からも許されない。
 原処分庁は、請求人がG社の「商業登記簿謄本の写し」及び「船舶所有権に関する契約公正証書」を所有していることをもってG社を支配し得る法的地位を保有しているとしているが、これは原処分庁独自の見解であり容認できない。
C また、タックスヘイブン対策税制(以下「本税制」という。)の適用要件は、〔1〕本邦法人の外国子会社が特定外国子会社等に該当すること及び〔2〕当該特定外国子会社等が適用対象留保金額を有していることとされている。
 そうであるとすれば、請求人はG社の収益及び費用の全部を合算して課税対象としているのであるから、G社が特定外国子会社等に該当するとしても適用対象留保金額を有する事実は存在せず、本税制を適用する余地は全くない。
D なお、原処分庁の調査の際にG社が提出した「会社の収益の帰属等に関する申述書」の中で、請求人が100%出資した旨の記述は、顧問税理士の誤解による錯誤の記述である。
(ロ)原処分庁の主張
 G社は、措置法第66条の6に規定する特定外国子会社等に該当し、同条の適用対象となる。
A 措置法第66条の6第1項第1号に規定する「発行済株式等」の意味を、我が国の商法にそって解釈しなければならないという合理的根拠はなく、むしろその国の法制下での株式の意味にそって解釈するのが相当である。
 措置法第66条の6第1項は、内国法人の特定外国子会社等に対する支配関係を判定するための要件について、当該特定外国子会社等の発行済株式の総数又は出資金額を基準とする旨を定めている。
 また、その支配関係の有無は形式上及び名目上のものではなく、外国子会社の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならない。
 さらに、措置法第66条の6が発行済株式に限らず、出資金額までも判定の基準に加えていることにかんがみると、「発行済株式等」とは、外国関係会社を支配し得る単位化された物的地位を指すものと解される。つまり、内国法人がこうした法的地位を取得しているかどうかは、外国関係会社の設立準拠法のほか、定款や会社規則等の具体的事情を個別的に考慮し、判定すべきものと認められる。したがって、「発行済株式等」の解釈においては、パナマ国の法制下における解釈が必要と認められる。
B 請求人は、G社の「商業登記簿謄本の写し」を所有しており、かつ、平成6年第171号「船舶所有権に関する契約公正証書」により同社を100%支配していることから、同社を支配し得る法的地位を保有しているものと認められ、この法的地位が措置法第66条の6にいう「発行済株式等」に相当するものと解される。
 なお、〔1〕発起人及び株式の引受けを承諾した者ないしその地位を承継した者が、会社を支配し得る法的地位を保有しているものと解しその法的地位を「発行済株式等」とする解釈及び〔2〕「発行済株式等」が特定外国子会社等を支配し得る単位化された物的地位とする解釈は、原処分庁独自の見解ではなく、大阪高等裁判所平成5年7月22日判決(平成3年(行ウ)第510号)において支持された見解であり、拡張解釈ではない。
C また、原処分調査時に、〔1〕請求人がG社の出資者は請求人である旨の申述をしていること及び〔2〕請求人自らがその事実を裏付けるものとして提出した「会社の収益の帰属等に関する申述書」において、G社が請求人の100%の出資により設立されたことが明示されている。
 この出資の事実は、措置法第66条の6第1項に規定する発行済株式等の全部を保有しているものと認められるため、同項の特定外国子会社等に該当することは明らかである。
 そして、G社は、パナマ国がタックスヘイブンであるため、租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第39条の14《特定外国子会社等の範囲》の規定により特定外国子会社等に該当する。
ロ 措置法第66条の6と法人税法第11条との適用関係について
(イ)請求人の主張
 法人税法第11条《実質所得者課税の原則》を適用して申告していることは、以下のとおり正当である。
A 本税制の立法趣旨からして、措置法第66条の6の規定は適用されず、法人税法第11条によるべきである。
(A)原処分庁も自認しているように、措置法第66条の6は「内国における税負担の公平を図るため、タックスヘイブンを利用した租税回避行為に対する規制」として適用対象と課税要件を明文化したものである。
 請求人は、日本船籍の一般外航船舶を運航する場合、日本人船員を最低8ないし9人配乗させなければならない現状から、人件費を主とする運航費用を低減し国際競争力を維持するために、G社の名義を借りてパナマ国の便宜置籍船として船舶を運航しているものであり、租税回避もしていないしその意図もなかったことから、本税制が適用されないことは明らかである。
(B)また、措置法第66条の6と法人税法第11条との関係については、「法人税法第11条と本税制とはそれぞれ独立した規定として存在することが意図されているといえる。したがって、これら両者はその本来の目的に応じてそれぞれの規定が適用されることになる」(大蔵省主税局長高橋元監修「タックスヘイブン対策税制の解説」)と解説されているとおり、措置法第66条の6は「その所得の計算」については法人税法の特別法として適用されるが、「その所得の帰属」に関しては実質所得者課税の原則が適用されることとなる。
B G社の名義を借りている船舶は、Hほか3隻であるが、G社との間においては、当該船舶の真実の所有権及び収益、費用が請求人に帰属することを船舶ごとに書面で明確にしている。
 このことから、請求人は単に所有外航船舶の名義をG社から借りているのみで、依然としてその外航船舶の所有者及び運航主体者は請求人であるから、法人税法第11条により昭和58年6月以降継続して所有外航船舶の運航収益、費用を請求人に帰属するものとして合算経理してきたものである。
 仮にG社が措置法第66条の6第1項の特定外国子会社等に該当したとしても、「船舶所有権等に関する契約公正証書」等により船舶の所有権が請求人に帰属することは明らかである。
 そうすると、G社に収益、費用は発生せず、本件各事業年度の決算に基づく所得金額がなく未処分所得の金額はないことから、本税制の適用要件である特定外国子会社等が適用対象留保金額を有する事実は存在せず、本税制を適用する余地は全くないとすべきである。
C 本件のように、いわゆる便宜置籍船を利用する場合には、ペーパーカンパニーといわれる実態のない子会社をタックスヘイブンに設立し、その子会社に名義上だけ船舶を所有させ、その収益を子会社のものと表示するのが通例であり、この場合には、船舶の建造依頼や建造資金の手当て、傭船契約、船員雇用、船舶修理などのマンニング業務、傭船料収入の管理、借入金の返済などの財務業務のほか、船舶の売却契約の全部を親会社が直接行うものが多く、その船舶の実質的所有者は親会社であると理解されていた。
 したがって、課税当局も、子会社は単に便宜置籍船の名義上の所有者にすぎず、その収益は親会社が享受していると認められるものについては法人税法第11条により、親会社に収益が帰属するものであるとして課税してきたことは、次に述べるとおり制度創設当時の国税庁の見解からみても明らかである。
 すなわち、本税制の創設に当たり、国税庁は昭和53年改正前に合算課税していた特定外国子会社等の各事業年度の損益については、原則として措置法第66条の6の規定を適用すべきである(昭和53年10月31日付直法2−24例規「昭和53年度法人税関係法令の改正等に伴う法人税法の取扱いについて」通達)としながら、「その合算課税をしていたすべてについて直ちに措置法第66条の6の規定を適用することは、既往の法人税法第11条の課税の実態からいって極めて不合理な場合も生じないわけではないと考えられるので、通達では、原則として措置法第66条の6の規定を適用するものとするとの表現がとられており、例外については、個別ケースとして検討されることになろう」としている(昭和53年12月14日「国税速報」第3143号7頁「昭和53年度法人税関係法令の改正等に伴う法人税の取扱いについて」国税庁法人税課課長補佐坂元左)。
 この通達にいう例外的取扱いについては、必ずしも明らかにされてはいないものの、タックスヘイブンに実態のない子会社を設立し、その利益を親会社に配当しないで留保することにより法人税課税の回避ないしは延期を図ることを防止するという立法趣旨からみて、既に実質所得者課税の原則により当該子会社の所得の全部を親会社に合算している場合には、その合算したところによる申告を認めることを意味するものと理解すべきである。
 したがって、結果的には、この制度の創設前後、質的な変更はないのであるから、タックスヘイブンに所在する子会社の存在は形式的であってその実態はないと認識し、子会社の所得の全部を親会社に合算して課税している法人については、その申告を是認すべきである。
(ロ)原処分庁の主張
A 措置法第66条の6は、国内における税負担の公平を図るため軽課税国にぺーパーカンパニー等を設立してその事業を実質的に支配するなど、タックスヘイブンを利用した租税回避に対して、実質所得者課税の原則を定めた法人税法第11条の適用では制約や限界があることから、その規制として適用対象と課税要件を明文化したものである。
 そして、措置法第66条の6においては、同法の定める適用除外の要件に合致しない限り、租税回避の意図がないことを理由としてその適用が除外される旨の規定はないことから、G社が有効に設立されている限り、同社は、上記イの(ロ)のCで述べたとおり、特定外国子会社等に該当し、措置法第66条の6の規定の適用を受けることになる。
B 法人税法第11条は、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属すると認められる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する」と規定しており、この規定は、所得の帰属者について明らかにしたものであって、租税法が所得の帰属の面においても形式基準(表見課税)をとることなく実質主義をとることを宣言した、いわゆる確認規定であると解されている。
 ところで、我が国の法人税法は、無制限納税義務が課される内国法人であるか否かを区分する基準として、本店所在地主義を採用している。
 すなわち、国内に本店又は主たる事務所を有する法人を内国法人とするもので、その法人が稼得した全世界所得に対して法人税を課することとするものである。しかし、タックスヘイブンの法律に基づき法人を設立し、本店をタックスヘイブンに設置した場合、本店所在地主義では、その法人は第一義的には我が国の納税義務を有しない法人として取り扱われることとなる。そこで、確認規定としての法人税法第11条の適用には制約があり限界があることから、法人税法の特例法として措置法第66条の6が規定されたものである。
 本税制は、内国法人によって発行済株式等の50%を超える株式等を直接及び間接に保有されている外国関係会社で、軽課税国に本店等があるという一定の外形基準に該当する法人(特定外国子会社等)の課税対象留保金額を内国法人の所得に合算するという課税要件を法定化したものである。
 したがって、本税制は、本法である法人税法に優先することとなり、措置法第66条の6に規定する要件に該当する特定外国子会社等に対する課税は同法によることとなる。
 しかし、これには重要な適用除外があり、外国子会社が独立企業としての実態を備え、その地で健全な事業活動を行っている法人にまで規制するものではない。
 つまり、本税制は、租税負担の公平を図るため規定されたもので、特定外国子会社の法人格を否認することなく、その社内に留保された利益を親会社である内国法人の所得に合算して課税するものである。
 なお、特定外国子会社等に発生した欠損金額については、翌期以降に繰り越され、その後発生する利益から控除されることになっている。
ハ 信義誠実の原則違反について
(イ)請求人の主張
A 請求人は、パナマ船籍の船舶を所有して以来、その運航による収入、支出を日本船籍の船舶の収入、支出と分離せず合算経理してきたし、請求人の内国子会社であるJ株式会社(以下「J社」という。)でも同様の合算経理により税務申告を行っている。この税務申告については税務行政上も今日まで問題とされることはなかった。
 実際に、原処分庁によるJ社の昭和62年11月1日から昭和63年10月31日までの事業年度分の法人税の税務調査において、上記の合算経理については何の指摘もなく是認されている。
B 原処分庁は、措置法第66条の6及び関連する措置法施行令については従来から調査指導を通じて、その周知徹底に努めてきたところであると主張するが、これは事実に反する。
 なお、原処分庁は、昭和63年1月に、税理士及び海運業者に対して『海運業における「内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入」(タックスヘイブン税制)の適用について』(以下「本件指導文書」という。)を送付し指導していると主張するが、請求人に送付した事実があるのか否かが明らかにされていない。
 さらに、原処分庁は、平成8年6月に原処分庁の調査官が直接の指導をしたとしているが、これは本件各事業年度の調査のことであり、事前の指導ではない。
C ところがこれに対して、原処分庁は、平成10年9月に従来の法令の解釈運用を変更して、突如として上記の合算課税を認めないとして、本件各事業年度の更正処分を行った。本件のような一貫性を欠くし意的な更正処分は、納税者の税務行政に対する信頼を損ねるものといわざるを得ない。
(ロ)原処分庁の主張
A 本件各事業年度の更正処分の措置法及び同法施行令の解釈及び適用については、従来よりその周知徹底に努めており、仮に請求人がその事実を知らなかったとしても、そのことを理由として適用が除外されると定めた法令の規定はない。
 また、請求人は、請求人以外の法人に係る税務申告、税務調査について主張するが本件各事業年度の更正処分は、前記イの(ロ)及び上記ロの(ロ)において述べたとおり適法に行われており、請求人の主張には理由がない。
B 本件指導文書は昭和63年1月に税理士及び海運業者に送付している。
 また、平成8年6月に、措置法第66条の6及び同法施行令の解釈及び適用について、当署調査官が請求人に対し直接の指導を行っている。
 なお、本件指導文書の送付対象は、当時特定外国子会社等を有しているすべての法人であり、請求人が当時特定外国子会社等を有していることも把握済みであり、同文書を送付している。
ニ 所得金額
(イ)請求人の主張
 本件各事業年度の更正処分は、前記イの(イ)、ロの(イ)及び上記ハの(イ)のとおり、違法、不当であるから取り消されるべきである。
(ロ)原処分庁の主張
A 損金の過大計上額
 G社は前記イの(ロ)及びロの(ロ)のとおり、措置法第66条の6の規定の適用を受けることとなり、同条の規定では特定外国子会社等に生じた損失の額は、当該特定外国子会社等の未処分所得から控除することは認められているものの、内国法人の所得金額から直接減額することは認められないので、請求人が本件各事業年度の所得金額から減額したG社の損失の額を請求人の本件各事業年度の所得金額に加算した。
 したがって、本件各事業年度の所得金額に加算される金額は別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成7年7月期が30,108,550円、平成8年7月期が77,371,637円、平成9年7月期が100,653,242円となる。
B 繰越欠損金の当期控除額の過大額
 平成8年7月期の更正処分により、平成9年7月期には前事業年度から繰り越された欠損金額がないこととなり、平成9年7月期に繰越欠損金の当期控除額としていた4,471,002円を平成9年7月期の所得金額に加算した。
C 交際費等の損金不算入額
 請求人がG社の船舶交際費として支出した金額は、前記Aのとおり請求人の損金の額から除かれることとなる。そこで、当該船舶交際費相当額を除いたところの交際費等の損金不算入額を再計算すると、交際費等の損金不算入額が減少するので、その減少額を本件各事業年度の所得金額から減算した。
 したがって、交際費等の損金不算入額の減算額は別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成7年7月期が510,471円、平成8年7月期が967,662円、平成9年7月期が925,120円となる。
D 未払消費税の認容額
 請求人が、消費税の仕入税額控除の額に含めていたG社の支払った消費税を除くことにより、新たに増加することとなった未払消費税の額を本件各事業年度の所得金額から減算した。
 したがって、未払消費税の認容額は別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成7年7月期が97,900円、平成8年7月期が35,200円、平成9年7月期が136,500円となる。
E 事業税の損金算入額
 平成7年7月期及び平成8年7月期の更正処分による増加所得に係る事業税の額を、平成8年7月期及び平成9年7月期の所得金額から減算した。
 したがって、事業税の損金算入額は別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成8年7月期が3,416,900円、平成9年7月期が7,902,600円となる。
F 本件各事業年度の所得金額
 そうすると、本件各事業年度の所得金額は別表4の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成7年7月期が○○○○○円、平成8年7月期が○○○○○円、平成9年7月期が○○○○○円となる。
ホ 課税留保金額
 平成9年7月期における請求人の法人税確定申告書に記載された留保金額に上記ニの(ロ)のAに係る金額を加算して、上記ニの(ロ)のD及びEに係る金額を減算して計算した結果、別表6の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、課税留保金額12,105,000円が発生する。
 以上のとおり、本件各事業年度の所得金額及び課税留保金額は更正処分に係る所得金額及び課税留保金額と同額になることから、これらの処分はいずれも適法である。

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(2)法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について

イ 請求人の主張
 本件各事業年度の更正処分は、上記(1)のイの(イ)、ロの(イ)及びハの(イ)のとおり違法、不当であるから取り消されるべきであり、過少申告加算税の各賦課決定処分も取り消されるべきである。
ロ 原処分庁の主張
 本件各事業年度の更正処分は、上記(1)のイの(ロ)、ロの(ロ)及びハの(ロ)のとおり適法であり、他に正当な理由もないから、過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

(3)消費税及び地方消費税の更正処分について

イ 請求人の主張
 法人税の本件各事業年度の更正処分は、前記(1)のイの(イ)、ロの(イ)及びハの(イ)のとおり違法、不当であり取り消されるべきであるから、それに伴ってされた消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分も取り消されるべきである。
ロ 原処分庁の主張
 法人税の本件各事業年度の更正処分が、前記(1)のイの(ロ)、ロの(ロ)及びハの(ロ)のとおり適法であり、それに伴ってされた消費税等の各更正処分も適法である。
 そうすると、納付すべき消費税等の額は別表7の「原処分庁主張額」欄に記載のとおり、平成6年8月1日から平成7年7月31日までの課税期間(以下「平成7年課税期間」という。)が6,621,400円、平成7年8月1日から平成8年7月31日までの課税期間(以下「平成8年課税期間」という。)が13,727,823円の還付、平成8年8月1日から平成9年7月31日までの課税期間(以下「平成9年課税期間」といい、これら3課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)が6,970,200円となる。
 以上のとおり、これらの金額は本件各課税期間の更正処分に係る金額と同額になることから、これらの処分はいずれも適法である。

(4)消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分について

イ 請求人の主張
 消費税等の本件各課税期間の更正処分は、上記(3)のイのとおり取り消されるべきであり、平成7年課税期間及び平成9年課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分も取り消されるべきである。
ロ 原処分庁の主張
 消費税等の本件各課税期間の更正処分は、上記(3)のロのとおり適法であり、他に正当な理由もないから、平成7年課税期間及び平成9年課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)法人税の更正処分について

イ 措置法第66条の6の適用について
 請求人は、G社は措置法第66条の6に規定する請求人の特定外国子会社等に該当しないから、同条の規定は適用されない旨主張するので、以下審理する。
(イ)措置法第66条の6の基本的仕組み
 措置法第66条の6第1項及び第2項を要約すると、居住者及び内国法人によってその発行済株式等の50%を超える株式等を直接又は間接に保有されている外国法人(外国関係会社)で、措置法施行令第39条の14第1項に規定する外国関係会社(特定外国子会社等)の適用対象留保金額のうち、当該外国関係会社の発行済株式等の5%以上を直接又は間接に保有する内国法人の当該保有する株式等に対応する部分の金額(課税対象留保金額)は、その本店等所在地国にその事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他固定施設を有すること等の適用除外要件に該当する場合を除き、その内国法人の所得に合算して課税するという基本的仕組みとなっている。
(ロ)発行済株式等
 請求人は、パナマ国に本店を有する株式会社は、株式の発行行為がない以上発行済株式は成立せず、株主も不存在であると主張する。
A 確かに、請求人の主張のとおり、措置法第66条の6は、上記(イ)のとおり、外国法人が内国法人の特定外国子会社等に該当するか否かの判断基準を、発行済株式等の保有割合においており、その趣旨は、請求人の主張で引用している大蔵省主税局長高橋元監修「タックスヘイブン対策税制の解説」に記載されているとおりである。
 ところで、我が国商法に規定する会社は、商法第57条により、設立の登記をすることにより成立し、株式会社においては、同法第166条第1項第6号により「会社の設立に際して発行する株式の総数並びに額面無額面の別及び総数」は定款記載事項とされ、さらに、設立に際して発行する株式は、商法第170条及び177条により、発起設立においては発起人が、募集設立においては割当てを受けた株式申込人が遅滞なく全額を払い込まなければならないとされている。
 一方、パナマ会社法における株式会社設立手続は前記1の(3)のハの(ロ)のとおり、2名以上の発起人が定款を作成し、公証人に提出の上、登記が行われた時点で設立手続が終了することとされており、定款記載事項に各発起人が取得を合意した株式数はあるものの、株式の払込みや株式の発行行為は設立要件とはなっていない。
 しかしながら、発行済株式等については、我が国の商法にそって判断しなければならないとする合理的根拠はなく、むしろ、外国法人の設立要件に関する事項である以上、その外国法人の設立準拠法に沿って判断することが相当である。
 このことにつき、措置法第66条の6第1項は、内国法人の外国関係会社に対する支配関係を判定するための要件について、外国関係会社の発行済株式の総数又は出資金額を基準とすべきことを定めているが、この制度の趣旨から考えると、その支配関係の有無は形式上、名目上のものではなく、子会社の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならず、同条が発行済株式に限らず、出資金額までも判定の基準に加えていることにかんがみると、上述の発行済株式等とは、外国関係会社を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を指すものと解するのが相当であり、内国法人がこうした法的地位を取得しているかどうかは、外国関係会社の設立準拠法のほか、定款や会社規則等の具体的事情を個別的に考慮して判断すべきものである。
B 発行済株式等を上記Aのとおり解すると、G社が請求人の特定外国子会社等であるというためには、請求人がG社の設立に当たり発起人が取得することを合意した株式の株主たる地位ないし株主たり得る地位を承継していることが要件とされる。
 ところで、パナマ国においてG社と同様の手続で法人を設立した場合には発起人と実際の所有者との間で株式等の譲渡に関する契約書が作成されるのが通常であるところ、原処分庁関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(A)請求人は、当審判所に対してG社の設立関係書類として設立当時の商業登記簿謄本の写しを提出しているが、その中の定款に同社設立手続の代理人でもある発起人2名がそれぞれ1株ずつ同社株式を取得することを合意した旨記載されている。
(B)請求人の代表者であるK(以下「K」という。)は、〔1〕G社の設立手続は、請求人の前代表者であるL(以下「L」という。)が設立代理業者に依頼したと思われること、〔2〕同社の設立当初の役員は、L、K及びMの3名であること及び〔3〕設立時の商業登記簿謄本の写しは保管している旨、また、請求人の総務部Nは請求人と発起人との間での株式等の譲渡に関する契約証書はない旨答述している。
(C)G社の設立以降、発起人から請求人に対してG社の株主としての権利が主張された事実は認められない。
(D)パナマ会社法第68条によると、パナマ法人が資産及び権利の譲渡をする場合には、議決権を有する株式の過半数に当たる株主の同意の下に、取締役会の決議を要することとされている。
 このように、G社の設立時の役員が請求人の役員であり、請求人が同社設立時の商業登記簿謄本の写しを保管し、G社の発起人から何らの権利の主張がされることなく同社の業務運営を支障なく遂行していることからすれば、また、パナマ会社法においては株主が会社の運営に直接関与すること(例えば、重要財産の処分)があることからすれば、発起人を譲渡人とする株式等の全部の譲渡に関する契約証書は現存しないという答述は信ぴょう性に欠けるといわざるを得ず、仮に、契約証書が現存しないとしても発起人と請求人との間では発行予定の株式等の全部の譲渡に関する契約ないしこれに類する契約が黙示的にせよ締結されたものと推認される。
 そうすると、請求人は発起人から少なくとも発行予定の株式の全部を取得できる地位を譲り受けていたものと推認されることから、G社を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を有すると認めるのが相当である。
 そして、パナマ国において法人が課税される所得の範囲は、パナマ国内源泉所得に限られ、G社の国際海上運輸業務から生ずる所得は同国の国外源泉所得であり課税されないことから、同社は措置法第66条の6第1項に規定する「本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社」に該当し、同条同項が適用される関係にあることとなる。
C 請求人はG社の収益及び費用の全部を合算して課税対象としているのであるから、G社が特定外国子会社等に該当するとしても適用対象留保金額を有する事実は存在せず、本税制を適用する余地は全くないと主張する。
 しかしながら、措置法第66条の6第1項の規定は、特定外国子会社等の各事業年度の未処分利益の金額から留保したものとして所要の調整を加えた金額である適用対象留保金額のうち本邦法人の持株割合に応じた金額である課税対象留保金額を本邦法人の収益とみなして益金に算入することとし、また措置法第66条の6第2項第2号において、特定外国子会社等で生じた欠損の金額は、当該特定外国子会社等の翌事業年度以降5年間繰り越して、適用対象留保金額の計算上、控除することができる旨規定されていることからすると、特定外国子会社等に該当する場合においては、本事業年度に適用対象留保金額があるか否かにかかわらず本税制が適用されると解するのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
D なお、請求人は、「会社の収益の帰属等に関する申述書」の中で、請求人が100%出資した旨の記述は、顧問税理士の誤解による錯誤の記述である旨主張する。
 しかし、上記記述は、少なくとも請求人がG社を物的に支配する法的地位を有することを自認したことは明らかである。
ロ 措置法第66条の6と法人税法第11条との適用関係について
 請求人は、上記2の(1)のロの(イ)のとおり、法人税法第11条を適用して申告していることは正当である旨主張するので、以下審理する。
(イ)請求人は、法人税法第11条と措置法第66条の6それぞれの規定の立法趣旨をしんしゃくせずに法令の誤った適用をしている旨主張する。
 しかしながら、措置法第66条の6の規定は当初から便宜置籍船を保有するペーパーカンパニーを有する内国法人に対して適用することを予定して立法されたものである。
 すなわち、本税制は、我が国経済の国際化に伴い、一部の国又は地域において租税負担がないか又は著しく租税負担が軽減されていることを利用してこれらの国又は地域に子会社を設立し、租税負担の不当な軽減を図る事例が見受けられるために、租税負担の公平の見地からこれを防止することを目的として設けられたもので、実質所得者課税の原則を定めた法人税法第11条あるいは、法人格否認の法理などの適用では制約や限界があることから、これらによることの可能な場合も含め、その適用対象と課税要件を明文化したものであって、法定の要件が充足されている以上、ペーパーカンパニーであっても本税制の適用があり、これを実質所得者課税の原則によって直接的に内国法人の収益として取り込むことはできないと解されている。
 つまり、法人税法第11条と措置法第66条の6とは、それぞれ独立した規定として存在することが意図されているといえ、両者の適用が競合する場合には、まず、法人税法の特別法である本税制の規定を適用することになるのである。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(ロ)また、請求人は「船舶所有権等に関する契約公正証書」により確認しているとおり、Hほか3隻の所有権は請求人にあり、G社は適用対象留保金額を有しないから措置法第66条の6の適用はなく、法人税法第11条による合算経理を認めるべきである旨の主張をするが、当該公正証書は対外的に当該4隻をG社が所有していることを前提とし、G社において国際法、行政法、国際私法上の船舶所有権の地位を保有しつつ、請求人とG社との間においては、その所有権を同社が主張できないようにするため作成されたものと推認される。
 そうすると、当該公正証書はまさにペーパーカンパニーを利用した便宜置籍船の実態を内部的に確認したものにすぎず、措置法第66条の6の適用を妨げるものとは解されない。
(ハ)なお、請求人は、本税制の創設に当たり発遣された、租税特別措置法関係通達(法人税編)66の6−19(現在廃止)から法人税法第11条による合算経理を認めるべきである旨主張するが、同通達は、本税制施行日前に合算課税していた外国関係会社の取扱いを定めたものであり、G社のように同税制施行日以後に設立した法人についてまで同様の取扱いをするというものではない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 信義誠実の原則違反について
 請求人は、本件各事業年度の更正処分に至るまでの指導、調査の経緯からみて、従来の法令の解釈運用を変更して突如としてなされた本件各事業年度の更正処分は、一貫性を欠くし意的な処分で納税者の税務行政に対する信頼を損ねるもので信義誠実の原則に反しているから取り消されるべきである旨主張するので、以下審理する。
(イ)租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義誠実の原則により、課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて適用の是非を考えるべきものである。そして、特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、〔1〕税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、〔2〕納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちにその表示に反する課税処分が行われ、〔3〕そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか、〔4〕納税者が税務官庁の表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるというべきである(最高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決昭和60年(行ツ)第125号)。
(ロ)これを本件についてみると、請求人は、既に措置法第66条の6が施行されていた昭和58年6月にG社を設立し、同社の損益について、請求人に帰属するとして合算して申告してきた。
A 請求人は、「G社設立以来、合算経理による申告をしてきたが今まで問題にされることがなく、また、請求人の内国子会社であるJ社も同様の合算申告を行っているが、同社の調査の際にも何ら指摘を受けていない」旨主張する。
 しかしながら、請求人が合算経理による申告を採用した経緯は、請求人自らが法令解釈を独自に判断した結果であって、原処分庁が公的見解を表示した事実はない。
 また、原処分庁が請求人の関係会社の調査を行った際にも何ら指摘を受けていないからといって、それをもって、本件合算経理による申告が法令に照らし適法な処理であるとの原処分庁の公的見解を表示したことにはならず、その他、当審判所の調査によっても、原処分庁が公的見解を表示したという証拠はない。
B さらに、請求人は「原処分庁は、昭和63年1月に税理士及び海運業者に対して指導をしたとしているが、請求人は当該指導を受けていない」旨主張するが、仮に原処分庁の指導がなかったとした場合には、もともと原処分庁は公的見解を表示していないのであるから信義誠実の原則が適用される余地はない。
C 本件各事業年度の更正処分は、前記イ及び上記ロのとおり、租税法規に適合する課税処分であり、請求人が採用した合算経理による申告は、請求人の独自の法令解釈によるもので、原処分庁の公的見解に基づいたものではない。
 したがって、原処分は一貫性を欠くし意的な処分であり信義誠実の原則に反し、取り消されるべきであるとの請求人の主張には理由がない。
ニ 所得金額について
(イ)G社の費用及び損失相当額
 請求人は、本件各事業年度の所得金額の計算上別表3に記載のG社の費用及び損失相当額を損金の額に計上している。
 しかしながら、前記イ及びロのとおり、G社は措置法第66条の6に規定する特定外国子会社等に該当するから、同社の費用及び損失相当額は請求人の所得金額の計算上、損金の額に算入することは認められず、その金額は別表4の「審判所認定額」の「損金の過大計上額」欄に記載のとおりである。
(ロ)繰越欠損金の当期控除額の過大額
 平成8年7月期の更正処分により、平成9年7月期には前事業年度から繰り越された欠損金額がないこととなるから、請求人が平成9年7月期に繰越欠損金の当期控除額としていた4,471,002円は、平成9年7月期の所得金額に加算することになる。
(ハ)雑益
 平成8年7月期において、請求人が平成8年課税期間の消費税の計算に含めていたG社の経費に係る仮払消費税の額35,205円と平成8年課税期間の消費税の更正処分により新たに納付することとなった消費税の額35,200円との差額5円は当該事業年度の雑益として所得金額に加算することになる。
(ニ)G社の収益相当額
 請求人は、本件各事業年度の所得金額の計算上別表3に記載のG社の収益相当額を益金の額に算入している。
 しかしながら、前記イ及びロのとおり、G社は措置法第66条の6に規定する特定外国子会社等に該当するから、同社の収益の額は請求人の所得金額の計算上益金の額に算入されず、その金額は別表4の「審判所認定額」の「益金の過大計上額」欄に記載のとおりである。
(ホ)交際費等の損金不算入額
 請求人は、G社の船舶交際費を支出交際費等の額に含めて交際費等の損金不算入額を算出し所得金額に加算しているので、同船舶交際費を支出交際費等から除いて交際費等の損金不算入額を算出すると、別表5の「審判所認定額」欄に記載のとおり、損金不算入額が減少するので同減少額は本件各事業年度の所得金額から減算される。
(ヘ)事業税の損金算入額
 事業税の損金算入額は、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成8年7月期が3,416,900円、平成9年7月期が7,902,600円となる。
(ト)未払消費税の認容額
 原処分庁は、請求人が消費税の仕入税額控除の額に含めていたG社の支払った消費税を除くことにより、新たに増加することとなった未払消費税の額を各事業年度の所得金額から減算している。
 しかしながら、当審判所が調査したところ請求人は消費税について税抜経理の方式を採用していることが認められ、G社の経費に係る消費税についても仮払消費税の勘定科目が使用されていることからすると、新たに増加することとなった未払消費税の額は、損益取引とは認められず各事業年度の所得金額から減算することはできない。
 したがって、未払消費税の認容額は本件各事業年度において発生しないことになる。
(チ)雑損失
 平成7年7月期及び平成9年7月期において、請求人が平成7年課税期間及び平成9年課税期間の消費税等の計算に含めていたG社の経費に係る仮払消費税の額97,887円、136,453円と消費税等の平成7年課税期間及び平成9年課税期間の更正処分により新たに納付することとなった消費税等の額97,900円、136,500円との差額13円、47円は当該各事業年度の雑損失として所得金額から減算することになる。
(リ)本件各事業年度の所得金額
 そうすると、本件各事業年度の所得金額は、請求人の本件各事業年度の法人税の確定申告書に記載された所得金額に前記(イ)ないし(ハ)の金額を加算し、前記(ニ)ないし上記(チ)の金額を減算して算定すると、別表4の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成7年7月期が○○○○○円、平成8年7月期が○○○○○円平成9年7月期が○○○○○円となる。
ホ 課税留保金額
 平成9年7月期における請求人の法人税確定申告書に記載された留保金額に上記ニの(イ)に係る金額を加算して、上記ニの(ニ)、(ヘ)及び(チ)に係る金額を減算して算定すると、別表6の「審判所認定額」欄に記載のとおり、課税留保金額は12,132,000円となる。
 以上のとおり、本件各事業年度の所得金額及び課税留保金額は更正処分に係る所得金額及び課税留保金額を上回るから、これらの処分はいずれも適法である。

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(2)法人税の過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件各事業年度の法人税の更正処分はいずれも適法であり、これにより納付すべき税額の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った本件各事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分は、いずれも適法である。

(3)消費税等の更正処分について

 請求人は、法人税の本件各事業年度の更正処分が違法、不当であり取り消されるべきであるから、それに伴ってされた消費税等の更正処分も取り消すべきである旨主張するので、以下審理する。
イ 消費税等の本件各課税期間の更正処分については、請求人がG社の損益を合算経理により請求人に帰属させて申告したことを原因として、請求人の控除対象仕入税額の中に含まれたG社の経費に係る消費税額を請求人の控除対象仕入税額とはしない処分と認められる。
ロ ところで、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が国内において課税仕入れを行った場合には、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った控除対象仕入税額を控除する旨規定している。
ハ 以上からすると、請求人とG社は別人格の法人であることから、G社の経費に係る消費税額は、請求人の控除対象仕入税額とすることはできないこととなり、本件各課税期間の控除対象仕入税額は別表7の「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成7年課税期間が3,322,415円、平成8年課税期間が24,219,843円、平成9年課税期間が2,600,784円となり、納付すべき消費税等の額は同表「審判所認定額」欄に記載のとおり、平成7年課税期間が6,621,400円、平成8年課税期間が13,727,823円の還付、平成9年課税期間が6,970,200円となる。
 そうすると、これらの金額は本件各課税期間の更正処分に係る金額と同額になることから、本件各課税期間の更正処分はいずれも適法である。

(4)消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、平成7年課税期間及び平成9年課税期間の更正処分はいずれも適法であり、また、これらの処分により納付すべき税額の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいて行った平成7年課税期間及び平成9年課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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