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(平14.12.12裁決、裁決事例集No.64 72頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、確定申告書の提出から1年も経った後に一方的になされた過少申告加算税の賦課決定処分は不当であるとして、その取消しを求めた事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成12年分の所得税について、確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限内である平成13年2月22日に申告した(以下、この申告に係る申告書を「本件確定申告書」という。)。

ロ 次いで、請求人は、原処分庁の指摘に基づき、平成12年分の所得税について、上表の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を平成14年2月6日に提出した。
ハ 原処分庁は、これに対し、平成14年2月27日付で、過少申告加算税の額を5,000円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人は、この処分を不服として平成14年3月15日に異議申立てをしたところ、3月を経過しても異議決定がされなかったため、異議決定を経ないで同年6月20日に審査請求をした。

(3)関係法令等

 国税通則法第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出があったときは、その修正申告に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定し、同条第4項は、修正申告に基づき納付すべきこととなった税額の計算の基礎となった事実のうちに、その修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として所定の方法により計算した金額を控除して、同条第1項の規定を適用する旨規定している。
 また、国税通則法第65条第5項は、同条第1項の規定は、修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない旨規定している。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 本件確定申告書の「配偶者の合計所得金額」欄には300,000円と記載されている。
ロ 本件確定申告書に記載された所得控除の合計額は、社会保険料控除の額を二重に計上した金額となっている。
ハ 請求人は、平成14年2月4日及び同月6日に、原処分庁所属の担当職員(以下「担当職員」という。)から、請求人の妻であるF(以下「請求人の妻」という。)の平成12年分の合計所得金額(所得税法第2条《定義》第1項第30号に規定する合計所得金額をいう。)が1,080,000円であるため、請求人の同年分の所得税について、同法第83条《配偶者控除》第1項及び同法第83条の2《配偶者特別控除》第1項の規定を適用することができない旨、及び、所得控除の合計額の計算に当たり、社会保険料控除の額を二重に計上している誤りがある旨の指摘を受け、当該指摘に基づき本件修正申告書を提出した。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、次の理由により不当であるから、その全部の取消しを求める。
イ 請求人は、原処分庁が、本件確定申告書の提出から1年も経った後に一方的に本件賦課決定処分をしたことには、どうしても納得がいかない。
ロ なお、本件確定申告書は、原処分庁の職員の指導に基づいて作成したものである。

(2)原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であり、請求人の主張には理由がないから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 上記1の(4)のハのとおり、請求人は、本件確定申告書に誤りのあることを担当職員から指摘されて本件修正申告書を提出しているところ、請求人の主張は、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当せず、また、請求人の場合、本件修正申告書の提出について他に正当な理由があるとも認められない。
ロ 請求人は、本件確定申告書が原処分庁の職員の指導に基づき作成されたものである旨主張する。
 しかしながら、請求人の場合、税務署の職員が確定申告書の一般的な書き方について指導した事実は伺えるものの、本件確定申告書の記載に当たって、当該職員に対し請求人の妻の合計所得金額を明らかにした上で指導を受けたとまでは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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3 判断

(1)本件賦課決定処分について

イ 国税通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税は、当初から適法に申告をした者とこれを怠った者との間に生じる不公平を是正するとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、申告秩序の維持を図るため、適法な申告をしなかった納税者に対して、同条第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」を除き、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課されるものである。
 なお、ここにいう「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、例えば、申告当時適法とみられていた申告がその後の事情の変更により、納税者の故意過失に基づかずして過少申告となった場合のように、当該申告が真にやむを得ない理由によるものであり、こうした納税者に過少申告加算税を課することが不当又は酷になる場合がこれに該当し、単に過少申告が納税者の税法の不知又は誤解に基づく場合はこれに該当しないと解される。
ロ 請求人は、本件賦課決定処分は、本件確定申告書の提出から1年も経った後に一方的になされたものであるから不当である旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、過少申告加算税は、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合を除き、単に過少申告であるという客観的事実のみによって課されるものであるところ、請求人は、上記1の(2)のイ及びロのとおり、過少申告をしたものであり、また、請求人の主張する事情は、本件修正申告書の提出により納付すべき税額の計算の基礎となった事実とは何ら関係がないから、これが同項に規定する正当な理由に該当しないことは明らかであり、さらに、請求人の場合、他に同項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 したがって、本件賦課決定処分を不当ということはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 請求人は、本件確定申告書は、原処分庁の職員の指導に基づいて作成したものであるから、本件賦課決定処分は不当である旨の主張もする。
 当審判所の調査の結果によれば、請求人は、平成13年2月22日に、G税務署の「自書コーナー」において本件確定申告書を作成したことが認められることから、その作成の際、原処分庁の職員が、請求人に対し、何らかの指導をしたものと推認されるが、上記1の(4)のイのとおり、本件確定申告書の「配偶者の合計所得金額」欄には300,000円と記載されていることから、請求人が、請求人の妻の合計所得金額が1,080,000円であることを明らかにした上で、原処分庁の職員から、配偶者控除の額及び配偶者特別控除の額について指導を受けたとは認められない。
 また、原処分庁の職員が、請求人に対し、所得控除の合計額の計算に当たり、社会保険料控除の額を二重に計上するよう指導した事実も認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ニ 本件修正申告書は、上記1の(2)のロ及び1の(4)のハのとおり、原処分庁からの指摘を受けて提出されたものであるから、更正を予知して提出されたものと認められ、国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないことは明らかである。
ホ 以上のとおりであるから、国税通則法第65条第1項の規定に基づく本件賦課決定処分は適法である。

(2)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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