ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.64 >> (平14.10.2裁決、裁決事例集No.64 287頁)

(平14.10.2裁決、裁決事例集No.64 287頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、機械工具の販売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、その所有するゴルフ会員権(名義書換停止中)を代表者に譲渡したとして、請求人の平成8年7月21日から平成9年7月20日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の固定資産売却損に計上した金額について、本件事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できるか否かが争われた事案である。

トップに戻る

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、本件事業年度の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、請求人に対する法人税調査に基づき、平成12年6月30日付で別表1の「更正処分等」欄記載のとおり更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として平成12年8月2日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成12年10月31日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成12年11月28日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成元年11月29日、K株式会社(以下「K社」という。)が経営するLカントリー倶楽部(以下「本件倶楽部」という。)に対し、入会登録金5,000,000円及び入会保証金(以下「本件預託金」という。)20,000,000円の合計額25,000,000円を支払って入会し、預託金会員制の法人正会員権(以下「本件会員権」という。)を取得したこと。
ロ 請求人は、平成8年9月20日、取締役会において請求人の代表取締役であるMに本件会員権を1,500,000円(消費税相当額43,689円を含む。)で譲渡することを決定したとして、同人から平成8年12月25日に1,000,000円を、また、平成9年7月15日に500,000円の支払を受けたこと。
 なお、当該譲渡時において本件会員権の名義書換手続は停止されていたこと。
ハ 請求人は、本件事業年度の法人税の確定申告において、本件会員権の譲渡に係る固定資産売却損として、本件会員権の帳簿価額25,000,000円から本件会員権の譲渡価額1,456,311円(譲渡代金1,500,000円から消費税相当額43,689円を控除した額)を差し引いた金額23,543,689円を損金に計上したこと。
ニ これに対し、原処分庁は、本件更正処分において上記ハの23,543,689円を本件事業年度の損金の額に算入することはできないとして、その他争いのない項目と併せて別表2の「更正処分」欄記載のとおり原処分をしたこと。
ホ なお、請求人は、K社が平成11年2月22日に策定した本件倶楽部ゴルフ会員権分割要綱(以下「本件分割要綱」という。)に基づき、平成11年9月28日に本件預託金に係る額面金額20,000,000円の入会保証金預託証書と引き換えに新会員権(以下「本件新会員権」という。)に係る額面金額4,000,000円の入会保証金預託証書5口の交付を受け、K社に対し請求人名で受領書を発行したこと。

トップに戻る

2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次の理由のとおり適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)原処分庁が調査したところ、次の事実が認められる。
A 本件倶楽部の規約(以下「倶楽部規約」という。)第10条によれば、本件会員権の譲渡は原則として禁止されており、例外として、「会社(K社)及び理事会の承認を得ること」を条件に本件会員権の譲渡を認めているところ、請求人はこの承認を得ていないこと。
B K社経営企画室顧問のNは、原処分庁の職員に対し、「市場で会員権が流通することを防止するために譲渡を禁止しているが、会員による名義書換の申出があれば理事会を開き、相当の理由があれば承認することとしている。しかし、請求人は本件会員権を譲渡した旨の申出を行っていない。」旨申述していること。
C 平成8年9月20日午後4時、請求人の本店会議室において開催された取締役会の議事録によれば、Mから請求人の財務諸表の正常化並びに代表取締役の責任として本件会員権を1,500,000円で買い取りたい旨の申出があり、全員異議なく原案どおり決定されたとの記載があること。
D Mは、本件会員権の売買について「売買契約書の作成はない。」旨申述していること。
E 本件会員権の保証金預託証書には、本証発行の日から満10か年経過後に本証名義人から請求があった場合は、本証及び会員証と引き換えに20,000,000円が戻される旨記載されていることからすれば、請求人の主張する本件会員権の価値が零円になるとはいえず、火急に本件会員権を売却しなければならない理由は認められないこと。
F 上記Cのとおり、平成8年9月20日に本件会員権をMに譲渡する旨の取締役会の決議がされているにもかかわらず、同年10月17日にはゴルフ会員権取扱業者から請求人あてにファックス通信がされており、本件会員権を他の者に譲渡しようとしていたことを窺わせる事実があることからしても、請求人の主張には信ぴょう性がないこと。
G 請求人は、本件会員権の分割に当たり、預託金証書分割申込書の作成時である平成11年9月に会員名義書換等の手続が可能であったにもかかわらず、これを行わず、請求人を所有者及び記名人として分割していること。
(ロ)上記(イ)の各事実から、本件事業年度において本件会員権の譲渡があったとは認められず、本件会員権の譲渡により生じたとされる固定資産売却損は本件事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入することができないこととなるから、本件更正処分は適法である。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分は適法であり、かつ、更正処分により納付すべき税額の基礎となった事実が更正処分前の税額の基礎とされなかったことについて、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った本件賦課決定処分は適法である。

トップに戻る

(2)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 請求人は、Mに対して次のとおり本件会員権を譲渡したのであるから、本件事業年度において本件会員権の譲渡に係る固定資産売却損の金額を損金の額に算入することを認めるべきである。
(イ)譲渡は代金授受及び当該物件の引渡しにより成立するものであるところ、本件会員権の譲渡は、請求人の取締役会の承認を得た上で、Mから請求人に代金が支払われ、請求人から同人に本件会員権に係る証書等が引き渡されていることから本件会員権の譲渡は、有効に成立している。
(ロ)本件会員権の譲渡には、次のとおり合理的な理由がある。
A 本件倶楽部は、巨額な債務を持つ住宅専門会社との関係が強かったことから、請求人は10年後には返還されるべき預託金が零円になる危険性を感じ、本件預託金が返還されなくなる前に売却することを考えて会員権取扱業者に当たったところ、名義書換停止期間中でも譲渡が可能であり、相場は1,500,000円との回答を得たこと。
B 当初、請求人の役員等に購入を募ったが応募がなく、また、会員権取扱業者にも当たったものの買い手がなく、そのうえバブル崩壊後のゴルフ場の経営危機に関する報道が厳しさを増していたことから、処理を急ぐ必要があると考えMが購入することとしたこと。
C Mが購入することは、請求人と利益相反取引に当たることから、平成8年9月20日に取締役会を開き、その承認を得て行ったものであること。
(ハ)次の事項は、本件会員権の譲渡の事実を否定するものではなく、逆に、そのようなことが行われるのが一般的である。
A 本件会員権は、原則、譲渡禁止であったが、現実的には名義書換停止期間中の会員権であっても市場で流通していたこと。
B 本件会員権の譲渡に係る売買契約書は作成されていないが、それを作成しないことが一般的であること。
(ニ)本件会員権を譲渡するに当たり、K社及び本件倶楽部の理事会の承認を得なかったのは、本件会員権が名義書換停止期間中であることから、売買は行われても名義書換はできないと思い、頭から当該理事会に相談するまでもないと考えていたためであり、次の事項からしても名義書換が行われていないことをもって、本件会員権の譲渡の事実を否定することはできない。
A 名義書換は、譲受人側の第三者対抗要件及び本件倶楽部への名義人としての権利行使の要件であり、通常、名義書換の停止が解除された後に行われるものであるが、請求人はこれを行わなかっただけである。
B 本件会員権の分割時に、本件新会員権の名義をMに変更することもできたが、これをしなかったことには次のとおり合理的な理由がある。
(A)本件預託金は10年後に償還されることになっていたが、更に10年間据え置くという、いわば本件倶楽部の債務不履行が起きている状況及びMにおいて分割後の本件新会員権を売却する意向をもっていたという状況から、本件新会員権の名義書換を行わずに余分な年会費を発生させないということは、損得を考えれば当然のことである。
(B)名義書換がされていない請求人名義の本件会員権の分割手続を請求人が行うのは当然のことであり、請求人はMに対する売買に基づく当然の義務として、本件分割要綱に従って同人の権利を代理で履行したにすぎない。
 なお、本件分割要綱には、名義人はすべて現在の会員とする旨の記載があった。
(ホ)ゴルフ会員権取扱業者から請求人に対して、取締役会の開催から譲渡代金の受領及び本件会員権の引渡しまでの間に、本件会員権の譲渡に関するファックス通信があったが、これは本件会員権の譲渡の効果に何ら影響を及ぼすものではない。
(ヘ)本件会員権に係る年会費は、平成9年1月以後、M個人が支払うなど、本件倶楽部に対する会費の負担や使用は譲渡前と後では区別している。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、更正処分はその一部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件賦課決定処分もその一部を取り消すべきである。

トップに戻る

3 判断

(1)更正処分について

 本件会員権の譲渡の存否について争いがあるので、以下審理する。
イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)倶楽部規約には要旨次のような規定があること。
A 会員権は、K社が別に定める方式により譲渡することができる。ただし、K社は会員募集期間中に於いては譲渡を禁止することができる。
B 会員権を譲り受けようとする者は、会員2名の推薦状を添え、かつ、入会申込書その他必要な書類を提出した上、K社及び理事会の承認を得なければならない。
C 譲受人は、K社及び理事会の承認を受け、名義書換料等の料金をK社に支払うまでは、K社に対し譲受けをもって対抗することはできない。
(ロ)ゴルフ会員権取扱業者である株式会社Pは、請求人に対して、平成8年9月11日付で本件会員権の相場について、「現在、150万円の相場です。名義書換停止期間中ですが、売買は可能です。」とのファックス送信をしたこと。
(ハ)請求人は、平成8年9月20日に開催された取締役会において、本件会員権をMに対し、1,500,000円で売却する旨の決議をしていること。
(ニ)請求人は、本件事業年度の翌事業年度において、所有していた他のゴルフ会員権をゴルフ会員権取扱業者に譲渡し、発生した固定資産売却損の金額24,333,333円を所得の金額の計算上、損金の額に計上していること。
(ホ)上記1の(3)のホの会員権の分割に係る重要事項説明書には、譲渡に関する定めとして、「会員は会社及び理事会の承認を得て会員資格を譲渡することができます。(但し、名義書換停止中につき、当分の間譲渡を禁止しております)」との記載があること。
ロ 関係人は当審判所及び異議審理庁に対して要旨次のとおり答述している。
(イ)Mの当審判所に対する答述
A 本件会員権は、請求人の前代表者の意向で投機目的で購入したものであるが、その後のいわゆるバブル崩壊の影響により本件会員権の預託金の返還が危惧される状況に至ったこと、また、価格の下落した資産を処分して決算書に現実の姿を現す必要性から、相場の価格での売却を意図して、平成8年9月ころゴルフ会員権取扱業者に打診したところ、名義書換停止中でも譲渡が可能であり、適正価格は1,500,000円との回答を得た。
B 当初、請求人の社内で本件会員権の購入を募るとともに、ゴルフ会員権取扱業者にも当たったが買手がつかなかったところ、他のゴルフ場の経営危機に係る報道もあったことから売却を急ぐ必要があると考え、購入当時の取締役としての責任から自分(M)が購入することとした。
C 本件会員権の証書類は、平成8年12月25日に請求人から引渡しを受けた。
D 本件倶楽部に対する年会費は、購入後はMが支払っている。
(ロ)Mの異議審理庁に対する答述
A 本件譲渡に当たりK社及び理事会の承認を受けなかったのは、名義変更停止期間中の名義書換はできないものと思い込み、承認が得られれば名義書換及び譲渡が可能であることを知らなかったためである。
B 本件会員権の分割時に名義書換をしなかった理由は、事務手数料を要し、また、5口に分割される結果、年会費も5倍になると考えたからであり、本件会員権の分割後の本件新会員権の売買をK社に依頼していることから、売買が成立した段階で名義書換を行えばよいと理解していた。
C 本件会員権の相場についてゴルフ会員権取扱業者数社に対し、同時期に照会したところ、平成8年9月11日付で株式会社Pから、また、同年10月17日付で株式会社Qからファックス送信があったこと。
(ハ)Nの当審判所に対する答述
A 本件倶楽部のゴルフ会員権は、開場時の予定会員数が満たされていないことから、倶楽部規約第10条第2項但し書により、会員権の譲渡を禁止している。
B しかし、本件倶楽部規約をそのまま読めば名義変更はできないこととなってはいるものの、預託金の返還に応じることができない現状において会員から名義書換を求められた場合には、規約上にはないが、名義書換に応じざるを得ない。
ハ 上記イの(イ)のとおり、倶楽部規約によれば、K社は本件倶楽部の会員権の譲渡を会員募集期間中は禁止することができるとされているところ、上記イの(ホ)の事実及びロの(ハ)のAのNの答述によれば、K社は、本件倶楽部の会員権の譲渡を名目上は禁止していたと認められる。
 しかしながら、上記イの(ロ)の事実及びロの(ハ)のBのNの答述によれば、現実には、本件倶楽部の会員権は会員権市場で流通しており、K社も会員から要求があれば名義書換に応じざるを得ない状況であったものと認められることから、名目上はともかく実質上は本件倶楽部の会員権の譲渡は禁止されていなかったものと認められる。
ニ ところで、ゴルフ会員権のうち預託金会員制ゴルフ会員権は、ゴルフ場施設の優先的利用権、入会に際して預託した入会保証金の返還請求権及び年会費納入義務等を内容とする契約上の地位と評価することができるところ、ゴルフ会員権を譲り受けた者がゴルフ場を利用するためには、ゴルフ場経営会社に対し、会社所定の名義変更手続を行うことが要求されるのが一般であり、上記イの(イ)のとおり、本件倶楽部においても、譲渡する際には本件倶楽部の理事会の承認が必要で、また、その資格を譲り受けようとする者は本件倶楽部の資格審査を受け、その承認を得なければならない旨定められている。
 しかしながら、ゴルフ場経営会社の承認や名義書換は、ゴルフ場経営会社に対する対抗要件にすぎないと解されるところ、一般にゴルフ会員権が、各ゴルフ場所定の名義書換手続を省略し、譲渡に必要な所定の書類を添付の上、預託金証書等の裏書き又は交付という方法により当事者間において自由に取引され、あるいは金融の担保とされている現状にある中においては、このような譲渡当事者間の取引自体についても法律上有効なものと認められ、単に名義書換が行われていないことのみをもって、譲渡の事実がないということはできないものというべきである。
ホ そこで、本件会員権の譲渡の存否について検討すると、上記イの(ハ)のとおり、平成8年9月20日の請求人の取締役会において本件会員権をMに譲渡することが決議されたこと、上記1の(3)のロのとおり、同年12月25日及び翌9年7月15日に売買代金の決済が行われたこと、上記ロの(イ)のMの答述によれば、平成8年12月25日に請求人からMに対し本件会員権に係る証書類の引渡しが行われ、その後の本件会員権に係る年会費はMが負担していると認められ、これを否定する証拠がないこと等の事実を総合すると、請求人は、上記引渡しが行われた平成8年12月25日において本件会員権を1,500,000円でMに譲渡したものと認めるのが相当である。
ヘ これに対し、原処分庁は、本件事業年度において本件譲渡があったとは認められない旨主張するが、以下述べるとおり、その主張する根拠ないし理由は、いずれも本件譲渡の事実を否定するに足りるものということはできない。
(イ)原処分庁は、本件会員権の譲渡が、K社及び理事会の承認を得た上で名義書換料を支払うことを条件に認められているにもかかわらず、請求人はこの承認を得ていない旨を主張する。
 しかしながら、本件会員権の譲渡が実質上は禁止されていなかったことについては上記ハのとおりであり、また、上記ニのとおり、ゴルフ場経営会社の承認や名義書換はゴルフ場経営会社に対する対抗要件にすぎないと解されるところ、単に名義書換が行われていないことのみをもって、譲渡の事実がないということはできない。
(ロ)原処分庁は、本件譲渡に係る契約書が作成されていない旨主張するが、上記ホのとおり、本件譲渡に係る請求人の取締役会の決議、売買代金の決済及び証書類の引渡しが行われており、これら一連の行為を仮装と認める事実はないから、本件譲渡に係る契約は成立しているものと認めるのが相当であり、契約証書の作成がないからとして契約の事実を否定することはできない。
(ハ)原処分庁は、本件会員権の保証金預託証書において証書発行日から満10か年経過後に名義人からの請求により預託金20,000,000円が戻される旨記載されていることからすれば、請求人が主張するように本件会員権の価値が零円になるとはいえず、火急に本件会員権を売却しなければならない理由は認められない旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(イ)のとおり、請求人が本件会員権の価値の下落を懸念してその売却を決意したことが認められるところ、上記ロの(ハ)のBのNの答述によれば、本件倶楽部においては預託金の返還が困難となっていた事実が認められ、また、当時、一般にゴルフ場の経営の悪化が報道されていた事情を考慮すると、このような状況下において請求人が上記のような懸念を抱いたとしても無理からぬものがあったといわざるを得ない。
(ニ)原処分庁は、本件譲渡に係る取締役会の決議がなされた後の同年10月17日にゴルフ会員権取扱業者から請求人あてにファックス通信がされており、本件会員権を他の者に譲渡しようとしていたことを窺わせる事実がある旨主張するが、上記ロの(ロ)のCのMの異議審理庁に対する答述からすると、平成8年10月17日付のファックス文書は、請求人の取締役会における本件会員権の譲渡の決定前にゴルフ会員権取扱業者に対してなされた照会に対するものと認められるから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ホ)原処分庁は、本件会員権に係る預託金証書分割申込書の作成時である平成11年9月に会員名義書換等の手続が可能であったにもかかわらず、請求人はこれを行わなかった旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(ロ)のMの答述及び関係証拠によれば、同人はやむを得ず本件会員権を譲り受けたものの、これを他に転売する意向を持ち、本件新会員権の子会員権について本件倶楽部に売却先のあっせんを依頼していたことから、買手がついた段階で名義書換を行うこととして、名義書換手数料の支払及び分割後の本件新会員権の名義書換による年会費の増加等を回避するために名義書換の申請を留保していたものと認められるところ、一般に、ゴルフクラブに支払う名義書換料が高額であるため、中間省略による名義書換が行われている取引が見受けられる現状に照らすと、上記のとおり本件会員権の分割に際し請求人からMへの名義書換が行われていないことをもって本件譲渡がなかったものとすることはできない。
ト 以上のとおり、請求人は本件事業年度において本件会員権を1,500,000円でMに譲渡したものと認められ、原処分庁の主張する事実をもってしてもその譲渡の事実を否定することはできないから、本件会員権の譲渡に係る固定資産売却損の金額は本件事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入するのが相当である。
 そうすると、本件事業年度の所得金額は別表2「審判所認定額」のとおりとなり、更正処分に係る所得金額を下回るから、更正処分は、その一部を取り消すべきである。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

イ 本件賦課決定処分については、上記のとおり本件更正処分の一部が取り消されることに伴い、過少申告加算税の基礎となる税額が20,000円となる。
ロ また、この税額の計算の基礎となった事実については、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
ハ しかしながら、通則法第65条第1項の規定により過少申告加算税を計算すると同税額は2,000円になるところ、同法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第4項の規定により、過少申告加算税の額が5,000円未満であるときはその全額を切り捨てることとなるので、本件事業年度の過少申告加算税の賦課決定処分は、その全額を取り消すべきである。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る