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(平15.3.25裁決、裁決事例集No.65 118頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、貸金業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)の事業所得の金額の計算につき、所得税法第51条《資産損失の必要経費算入》第2項に規定する貸倒損失があったか否か、及び修正申告書の作成等の対価として支払った手数料が、所得税法第37条《必要経費》第1項に規定する必要経費に該当するか否かを主な争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成3年分、平成4年分、平成5年分、平成6年分及び平成7年分(以下、これらを併せて「各年分」という。)の所得税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ その後、請求人は、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の所得税について、平成7年5月31日に別表1の「修正申告」欄のとおり、修正申告書を提出した。
ハ H税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づいて、平成11年3月11日付で平成3年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分をし、同日付で各年分の所得税について、別表1の「更正処分」欄のとおり、各更正処分をするとともに、同表の「賦課決定処分」欄のとおり、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
ニ 請求人は、上記ハの各更正処分及び各賦課決定処分を不服として、平成11年5月10日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月3日付で、平成5年分の過少申告加算税の賦課決定処分の一部取消し及び平成6年分の過少申告加算税の賦課決定処分の全部取消し、その他の処分については棄却の異議決定をし、その決定書謄本を請求人に対し同年8月11日に送達した。
ホ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成11年9月8日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める
イ 更正処分について
(イ)貸倒損失
A 債権譲渡損失
(A)請求人が、貸付債権を譲渡したことは、次のことから明らかであるから、債権を譲渡したことにより生じた損失の金額は、譲渡した日の属する年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
a 請求人は、請求人が所有する貸付債権について、F株式会社(以下「F社」という。)との間で債権総額の3%で譲渡する旨の債権譲渡契約証書(以下「本件譲渡契約書」という。)を取り交わし、譲渡した。
b 請求人は、債権譲渡後、個々の債務者に対し、請求人とF社との連名により、債権譲渡通知書及び債権譲受通知書を同時に発送している。
c 請求人は、債権譲渡契約締結時に、各個別債権に係る債権証書(借入申込書)、取引履歴管理記録表、登録カード及び住民票等のそれぞれの原本をF社に交付している。
d 請求人及びF社は、それぞれの従業員に対して、債権譲渡の事実について周知を図っているため、それぞれの従業員は、貸付債権の譲渡があったことを十分認識している。
e F社の代表取締役Jは、債権を譲り受けたことについて証明しており、また、各債務者は、債権者が請求人からF社に変更していることについて十分認識している。
(B)原処分庁は、請求人がF社から受け取ったのは回収代金の40%相当額であり、債権総額の3%相当額の譲渡代金を受け取った事実はないとしているが、これは、F社が譲渡代金を一括で支払うことができないことから、債権総額の3%相当額の支払を受けるまでは回収代金の40%相当額の支払を受けることを合意したものであり、請求人が債権総額の3%で譲渡したのは事実である。
B 元金放棄等損失
 貸付債権について、自己破産等により別表2−1及び別表2−2並びに別表3−1ないし別表3−5のとおり貸倒損失が生じていることから、これらの損失の金額は各年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
(ロ)支払手数料
 原処分庁は、平成7年分の支払手数料として45,325,043円を必要経費として容認しているが、正当金額は49,411,040円であり、その差額4,085,997円はF社に対する平成7年3月分の支払手数料であるから必要経費に算入すべきである。
(ハ)決算事務手数料
 請求人は、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の修正申告書を作成するに当たり、平成7年に決算事務手数料として知人のL(以下「L」という。)に190,000,000円、Lから紹介されたK(以下「K」という。)に376,500,000円支払った。これらの金額は、事業活動に直接関連する必要経費であり、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
 なお、Kに対する支払は節税に係る成功報酬であり、Lに対する支払はKを請求人に紹介してもらった紹介料である。
 また、原処分庁は、平成7年分の必要経費に算入した支払手数料71,959,954円のうち、63,000,000円を根拠もなく否認しているが、当該金額は、上記決算事務手数料のうちKに支払った金額の一部を決算書に計上したものであるから、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
(ニ)事業税
 各年分の事業税61,951,800円は、平成7年9月30日をもって個人事業を廃止していることから、所得税法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》の規定により必要経費に算入すべきである。
ロ 重加算税の賦課決定処分について
上記イの(イ)のAのとおり、債権譲渡による貸倒損失の処理において、仮装、隠ぺいの事実はなく、真実の事業所得の金額の隠ぺいを目的としたものではないから、重加算税の賦課決定処分は違法である。

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(2)原処分庁

 原処分は、次のとおり取り消されるべき理由がないから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)貸倒損失
A 債権譲渡損失
 請求人は、貸付債権を譲渡したことは明らかであるから、譲渡に伴い生じた損失の金額は、譲渡日の属する年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張するが、次のことから、平成4年分、平成5年分及び平成6年分において、債権譲渡の事実は認められないことから、所得税法第51条第2項に規定する貸倒れの事実は認められず、事業所得の金額の計算上必要経費として算入することはできない。なお、貸倒れが発生したのは、下記(E)のとおり平成7年12月以降に回収した債権に係る分を免除した平成7年である。
(A)請求人とF社との間で取り交わした本件譲渡契約書によると、譲渡する貸付債権の残額の3%相当額を譲渡金額としているが、請求人がF社から3%相当額の譲渡代金を受け取った事実は認められない。
(B)請求人は、原処分に係る調査において、本件譲渡契約書を作成したのは、出資法の関係からF社の申出により形式的に作成した旨答述している。
(C)請求人は、貸付債権について、F社へ取立てを委任し、F社が平成4年11月から平成7年11月までに回収した債権の元利合計額の40%相当額を毎月請求人の指定口座に振り込ませ、残りの60%相当額を取立手数料としてF社が受け取っている事実が認められる。
(D)貸付債権の一部について、平成7年11月まで回収した事実が認められる。
(E)請求人は、F社が平成7年12月以降に回収した債権に係る分の振込みを免除している事実が認められる。
B 元金放棄等損失
 請求人は、自己破産等を理由とする貸倒損失を事業所得の金額の計算上必要経費として認めるべきである旨主張するが、原処分に係る調査及び異議申立てに係る調査において、請求人は当該貸倒損失について何ら主張せず、原処分に係る調査及び異議申立てに係る調査資料等に照らしても、当該貸倒れに関する事実関係等の確認はできない。
(ロ)支払手数料
 請求人が主張する平成7年3月分のF社への支払手数料4,085,997円については、必要経費の控除もれであることが判明したことから、請求人の主張を認める。
 しかし、請求人は、F社が回収した平成7年3月分の利息3,265,911円も総収入金額に算入していないことから、総収入金額に算入すべきである。
(ハ)決算事務手数料
 請求人は、修正申告書を作成するに当たり、決算事務手数料としてKに376,500,000円及びLに190,000,000円支払ったことから、これらの金員は事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである旨主張する。確かに、請求人はKに対して修正申告書の作成を依頼し、その依頼に当たって、当時の顧問税理士M(以下「M税理士」という。)の作成した修正申告により納付すべき税額と実際に提出する修正申告により納付すべき税額との差額が生じた場合には、その差額の20%相当額をKに、10%相当額をLに支払う旨の約束をしている事実は認められる。しかし、その報酬は、必要経費としての概念から逸脱しているのは明白で、また、修正申告に係る決算手数料としては余りにも過大であり、税金が安くなることへの成功報酬、すなわち脱税幇助に係る報酬と認められ、所得税法第37条に規定する必要経費に該当しないことは明らかである。
 また、請求人は、Kに支払った金額の一部を根拠もなく否認している旨主張するが、原処分庁は、請求人が平成7年分の必要経費として計上された支払手数料63,000,000円について、何ら事実関係を明らかにせず、資料の提出もなかったことから、架空の手数料であると認定したものである。
(ニ)事業税
 請求人の主張する事業税は、事業遂行上生じた租税公課としての必要経費に該当するが、請求人が事業を廃止した後に発生したものであると認められることから、所得税法第63条に規定する費用又は損失に該当することとなる。
 しかし、当該事業税は、原処分後に生じた必要経費であり、原処分時において必要経費に算入することはできない。
ロ 重加算税の賦課決定処分について
 請求人は、債権を譲渡していないにもかかわらず、本件譲渡契約書を作成し、貸倒金と仮装し、これに基づいて納税申告書を提出している。この行為は国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項に規定する仮装、隠ぺいに該当する。

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3 判断

 本件は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入される貸倒損失があったか否か、及び修正申告書の作成等の対価として支払った手数料が、必要経費に該当するか否かなどについて争いがあるので、審理したところ、以下のとおりである。

(1)平成3年分、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の更正処分について

イ 貸倒損失
(イ)債権譲渡損失
A 当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(A)F社は、本件譲渡契約書に係る貸付債権の元金及び利息の回収額に基づき、債務者名、入金日、入金額及び入金内訳(元金、利息)を記載した入金リストを作成し、請求人に提出している。
(B)請求人は、上記(A)の入金リストに基づき、F社が回収した金額について売上報告書を作成している。
(C)請求人は、上記(B)の売上報告書とは別に、本社及び各支店ごとに元金及び利息の入金額を記載した売上報告書を作成している。
(D)請求人の経費帳には、上記(B)の売上報告書の累計総入金額の60%相当額が、F社に対する集金手数料として、平成4年12月支払分から平成7年3月支払分まで記載されている。
B 所得税法第51条第2項は、事業所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた貸付金、その他これらに準ずる債権の貸倒れにより生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する旨規定しているところ、事業の遂行上生じた貸付金、その他これらに準ずる債権の範囲には、金融業者の貸付金及びその未収利子も含まれると解され、そして、金銭債権を譲渡したことにより生じた損失の金額については、その譲渡損失の経済的実質は貸倒損失と何ら異ならないことから、所得税基本通達(昭和45年7月1日付直審(所)30ほか国税庁長官通達)51−17《金銭債権の譲渡損失》において、所得税法第51条第2項等の規定を適用すると定められており、この取扱いは当審判所においても相当と考える。
C 請求人は、本件譲渡契約書に基づき、貸付債権を債権総額の3%で譲渡し、そして、請求人が、F社から回収代金の40%相当額を受け取ったのは、F社が譲渡代金を一括で支払うことができないことから、債権総額の3%相当額の支払を受けるまでは回収代金の40%相当額の支払を受けることで合意したからであって、請求人が債権総額の3%で譲渡したのは事実であるから、このことにより生じた損失の金額は、譲渡日の属する年分の必要経費に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、上記Aの認定事実によると、請求人は、他の各店舗同様、F社が回収した金額の売上報告書を作成し、そして、F社が回収した金額の60%相当額をF社に対する集金手数料として支払っていることから、本件譲渡契約書は形式的なもので、実質は債権の取立て委託とみるのが相当である。
 したがって、債権譲渡の事実が認められない以上、債権を譲渡したことにより損失の金額が生じたとする請求人の主張は認められない。
(ロ)元金放棄等損失
A 所得税法第51条第2項に規定する損失の金額が必要経費に算入されることが認められる場合とは、債務者について破産手続が行われ債権が切り捨てられることとなった場合などのほか、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、債権者が債権放棄などその債権を整理する意向を表明したとき、又はその債務者の資産状況、支払能力等からみてその債権の全額が回収できないことが明らかになった場合であり、この場合の貸倒れ処理は、法律上債権の消滅という事実の発生した日の属する年分又は債権の全額が回収できないことが明らかになった年分において行うべきものと解される。
B 請求人は、別表2−1及び別表2−2並びに別表3−1ないし別表3−5の貸倒損失があると主張するので、請求人から提出された証拠資料を調査したところ次のとおりである。
(A)Nほか66件に対する貸付金(別表2−1及び別表2−2の順号1ないし67)については、請求人が回収不能の理由として主張する自己破産等の確定日は同表の「内容確定日」欄のとおり、いずれも平成3年より前であることから、貸倒損失として平成3年分、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の必要経費には算入することはできない。
(B)Tほか24件に対する貸付金(別表2−2の順号68ないし92)6,305,240円については、取引履歴管理記録表、調停決定通知書等から、自己破産等によって、いずれも同表に記載した内容確定日においてその回収が不能であると認められるから、貸倒損失として平成3年分1,607,107円、平成4年分2,670,244円、平成5年分1,584,834円及び平成6年分443,055円を必要経費に算入することが相当である。
(C)Pほか191件に対する貸付金(別表3−1ないし別表3−5の順号1ないし192)については、調停申立書、調停調書、取引履歴管理記録表その他貸倒れとなった事実を認定するに足りる証拠がないため、貸倒損失として平成3年分、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の必要経費に算入することはできない。
(D)Qほか6件に対する貸付金(別表3−5の順号193ないし199)304,205円については、調停申立書、調停調書及び取引履歴管理記録表から、いずれも同表に記載した元金放棄日において回収が不能であると認められるから、貸倒損失として平成5年分7,234円及び平成6年分296,971円を必要経費に算入することが相当である。
ロ 決算事務手数料
(イ)請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所に対する請求人の答述から次の事実が認められる。
A 請求人は、昭和63年分ないし平成6年分の所得税の修正申告書をM税理士に作成させ、同申告書に押印のため税理士事務所に向かう途中で、Lに出会い、Kを紹介された。
B 請求人が、Kへ修正申告書の作成を依頼したところ、Kの指導による修正申告書の税額は、M税理士が作成した修正申告書の税額と比べると相当額少なくなっていた。
C 請求人は、Kが作成した平成4年分、平成5年分及び平成6年分の所得税の修正申告書を平成7年5月31日にR税務署に提出した。
D 請求人は、Kに対しては成功報酬として、Lに対しては紹介料として平成7年に現金、手形及び債権で合計金額566,500,000円を支払った。
(ロ)所得税法第37条第1項は、その年分の事業所得等の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額である旨規定しており、ある支出が所得税法第37条第1項の必要経費と認められるためには、当該支出が業務について生じたものとして業務との関連性が要求されるとともに、業務の遂行上通常かつ一般的に必要と認められる客観性がなくてはならないものと解される。
(ハ)これを本件についてみると、上記(イ)のとおり、K及びLに対する決算事務手数料は、既にM税理士により修正申告書が作成されていたにもかかわらず、新たに修正申告書の作成を依頼し、これに対して支払われた支出であり、この支出は、請求人の営む事業の遂行上、通常かつ一般的に必要と認められる客観性を有しているとはいえないことから、事業所得の金額の計算上必要経費には算入されない。
ハ 事業税
 請求人は、平成7年9月30日をもって個人事業を廃止していることから、各年分の更正処分に伴う事業税は必要経費に算入される旨主張するが、当審判所がS県税事務所において課税状況を確認したところ、請求人の主張する事業税は賦課されていないことが判明した。
 よって、請求人の主張には理由がない。
ニ 事業所得の金額
 以上のことから、事業所得の金額は、別表1の更正処分の事業所得の金額から貸倒損失の金額を控除し、平成3年分、平成4年分、平成5年分及び平成6年分の事業所得を算定すると、平成3年分621,327,275円、平成4年分535,426,522円、平成5年分579,168,748円及び平成6年分754,481,710円となる。
ホ 総所得金額
 以上の結果、請求人の平成3年分ないし平成6年分の総所得金額は、平成3年分614,133,000円、平成4年分535,963,707円、平成5年分575,849,720円、平成6年分753,893,254円となり、これらの金額は、更正処分に係る総所得の金額を下回ることとなるから、更正処分はその一部を取り消すべきである。

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(2)平成7年分の更正処分について

 請求人は、平成7年分の更正処分についても、一部の取消しを求めているが、当該更正処分は、当該年分の確定申告の納付すべき税額を増加させる更正処分でないことから、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえない。
 したがって、請求人は、平成7年分の更正処分の取消しを求める利益はなく、審査請求は請求の利益を欠く不適法なものである。

(3)重加算税の賦課決定処分について

 重加算税の賦課決定処分において、その計算の基礎とされた税額のうち債権譲渡損失の額に対応する税額に係る部分について争いがあるので審理する。
イ 通則法第68条第1項の規定は、同法65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときは、当該納税者に対し、過少申告加算税に代えて重加算税を課する旨規定している。
 そして、ここでいう事実を隠ぺいするとは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠匿しあるいは故意に脱漏することをいい、事実を仮装するとは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、それが事実であるかのように装う等故意に事実をわい曲することをいうものと解される。
ロ これを本件についてみると、請求人は、債権譲渡が行われていないにもかかわらず、債権譲渡が行われたかのように本件譲渡契約書を作成し、あたかも債権譲渡損失が生じたかのごとく仮装し、それに見合う金額を必要経費に算入し、これに基づいて納税申告書を提出したものと認められる。この行為は、通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。
 したがって、原処分庁が同条同項の規定に基づいて行った重加算税の賦課決定処分は適法である。
 しかしながら、平成3年分、平成4年分、平成5年分及び平成6年分については、上記(1)のホのとおり、更正処分の一部が取り消されることに伴い、重加算税の基礎となる税額は、平成3年分が277,190,000円、平成4年分が201,940,000円、平成5年分が68,740,000円及び平成6年分が67,830,000円となる。
 したがって、重加算税の額は、通則法第68条第1項の規定により、平成3年分が97,016,500円、平成4年分が70,679,000円、平成5年分が24,059,000円及び平成6年分が23,740,500円となり、いずれも重加算税の賦課決定処分に係る金額を下回るので、いずれもその一部を取り消すべきである。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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