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(平15.2.13裁決、裁決事例集No.65 414頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、日用雑貨の輸出入販売業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が、〔1〕損金の額に算入した代表者の長男の海外渡航費が代表者に対する役員賞与に該当するか否か、〔2〕外国法人に支払ったロイヤリティーに対し源泉徴収を要するか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成9年10月1日から平成10年9月30日まで、平成10年10月1日から平成11年9月30日まで及び平成11年10月1日から平成12年9月30日までの各事業年度(以下、順次「平成10年9月期」、「平成11年9月期」及び「平成12年9月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成13年6月27日付で、別表1の「更正処分等」欄記載のとおり、平成10年9月期について法人税の更正処分を、平成11年9月期及び平成12年9月期について法人税の各更正処分(以下、平成10年9月期の法人税の更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をするとともに、給与所得の源泉徴収に係る所得税について、平成10年7月から同年12月まで、平成11年1月から同年6月まで及び平成12年1月から同年6月までの各期間分に係る別表2の「納税告知処分」欄のとおりの各納税告知処分(以下「本件給与各告知処分」という。)並びに別紙の(1)及び(2)に記載の各期間分に係る別表2の「賦課決定処分」欄のとおりの不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件給与各賦課決定処分」という。)をした。
 また、原処分庁は、平成13年6月27日付で、非居住者所得についての源泉徴収に係る所得税(以下、給与所得の源泉徴収に係る所得税と併せて「源泉所得税」という。)について、平成8年7月分から平成13年5月分までの各月分の別表2の「納税告知処分」欄のとおりの各納税告知処分(以下「本件非居住者各告知処分」という。)並びに別紙の(3)から(26)までに記載の各月分に係る別表2の「賦課決定処分」欄のとおりの不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件非居住者各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成13年8月24日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年11月19日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成13年12月14日に審査請求した。

(3)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 海外渡航費について
(イ)請求人の代表取締役であるG及びHが、別表4のとおり、K(以下「K社」という。)へ海外出張(以下「本件各出張」という。)する際、同人らの長男であるJを同伴し(以下、本件各出張に係るJの同伴を「本件各同伴」という。)、請求人は、Jに係る海外渡航費(以下「本件各渡航費」という。)を旅費交通費として、同表の「旅費交通費」欄のとおりの額を本件各事業年度の損金の額に算入している。
(ロ)本件各出張を行ったG及びHが作成した海外出張精算書には、K社との面談内容又は出張目的として、要旨別表4の「出張目的」欄のとおり記載されている。
(ハ)Jは、平成2年10月25日生まれであり、本件各出張当時、7歳から9歳の小学生である。また、同人は、平成10年分から同12年分において、いずれもGの扶養親族になっており、本件各事業年度において請求人の役員又は使用人ではない。
(ニ)Gは、本件各事業年度において、請求人から毎月定額の報酬を受け取っている。
ロ K社に対して支払ったロイヤリティーについて
(イ)請求人は、平成7年4月8日に、P国に所在するK社と「ROYALTY AGREEMENT」(以下、当該契約により作成された書面を「ロイヤリティー契約書」という。)を締結しており、これに基づきK社に対し、別表3の「送金年月日」及び「送金額」欄のとおりのロイヤリティー(以下「本件ロイヤリティー」という。)をK社のP国の銀行口座に送金している。
(ロ)P国と日本国との間には、所得に対する租税に関する国際的な二重課税を回避するための条約(以下「租税条約」という。)は、締結されていない。
(ハ)平成9年4月、原処分庁所属の調査担当職員(以下、平成9年4月の原処分庁所属の調査担当職員を「前回調査担当職員」という。)は、請求人に対する法人税、消費税及び源泉所得税に係る調査(以下、平成9年4月の調査を「前回調査」という。)を実施している。
(ニ)平成13年2月、原処分庁所属の調査担当職員(以下、平成13年2月の原処分庁所属の調査担当職員を「本件調査担当職員」という。)は、請求人に対する法人税、消費税及び源泉所得税に係る調査(以下、平成13年2月の調査を「本件調査」という。)を実施している。

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2 主張

(1)請求人

原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 海外渡航費について
(イ)本件各更正処分
A 原処分庁は、本件各渡航費がGに対する給与(賞与)に該当し損金の額に算入されないとして、本件各更正処分を行った。
 しかし、G及びHが、その長男であるJを同伴して行った本件各出張の最も重大でかつ本質的な目的の一つは、請求人が日本の総代理店となっているK社の経営陣及びその家族と、G、H及びJ(以下、併せて「Gら」という。)が数日間一緒に交流し、相互理解を深めることであり、お互いが直接会うことにより初めて達成し得るものである。
 K社は、100年以上の歴史を持つ100%家族経営の同族会社であり、請求人を初めとした総代理店に対しては、家族を含めた長期的な信頼関係を築き、次世代にもわたる交流を図り、相互の信頼を高め将来にわたって安定した継続取引をしてお互いに発展するという独特の考え方を持っている。
 そして、K社は、Jを請求人の次期社長という見方をしており、次世代の事業継承者であるK社会長の孫との交流もK社にとって重要であるとの考えを持っている。
 したがって、本件各同伴は、本件各出張の出張目的を達成するために明らかに必要な同伴であり、請求人が負担した本件各渡航費は、その目的を達成するために、通常必要と認められる費用である。
 また、本件各同伴は、上記の目的を達成したいとのK社の要請に基づくものであり、請求人は、K社の日本総代理店であるため、K社からの要請に応じることは業務遂行上必要欠くべからざることである。
 さらに、K社が、Gらの海外渡航費の半分を負担したのは、同社がいかに本件各同伴が業務上必要であるかを考えている証である。
 しかるに、原処分庁は、請求人が本件各出張の目的を説明したにもかかわらず、出張精算書に記載されている出張目的だけに限定して狭義に解釈し、本件各渡航費について誤った判断をしている。
B 法人税基本通達9−7−8《同伴者の旅費》(以下「本件通達」という。)において、法人の役員の配偶者の海外渡航費が損金の額に算入されることが例示されている。すなわち、本件通達では、国際会議への出席等のために専業主婦を同伴した場合、その専業主婦が、全く業務に関係なく会議にも出席せず、レセプションや会食に法人の役員に同伴して出席するだけで、会議中は観光等に時間を費やしている場合でも、専業主婦の海外渡航費の損金算入を認めている。
 それに対し、本件各同伴は、K社の要請に基づき、同社の経営陣やその家族と直接会って交流を深めるという出張目的を果たすためのものであり、JはK社との会議にも出席している。
 したがって、本件通達の例示する専業主婦を同伴した場合と比較すれば、本件各同伴の方が明らかに業務遂行に必要であり、海外渡航の目的を達成するために必要な同伴であることは明白であるから、本件各渡航費の損金算入が認められるのは当然である。
(ロ)本件各賦課決定処分
 上記(イ)のとおり本件各更正処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
(ハ)本件給与各告知処分
 上記(イ)のとおり本件各渡航費は、Gに対する給与(賞与)に該当しないから、原処分庁がGに対する給与として行った本件給与各告知処分もその全部を取り消すべきである。
(ニ)本件給与各賦課決定処分
 上記(ハ)のとおり本件給与各告知処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件給与各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
ロ K社に対して支払った本件ロイヤリティーについて
(イ)本件非居住者各告知処分
A 前回調査担当職員の指導について
(A)原処分庁は、請求人が、本件ロイヤリティーに係る源泉所得税を源泉徴収し納付していないとして、本件非居住者各告知処分を行った。しかし、請求人が源泉徴収をしていなかったのは、次のとおり、前回調査担当職員の指導によるためである。
 前回調査において、Gが前回調査担当職員に対し、P国に本件ロイヤリティーを送金しているが、日本と租税条約を締結していない同国への送金について源泉徴収をしなくてよいか質問をしたところ(以下、この質問を「本件質問」という。)、同職員は、今はわからないので署に戻って調査して回答する旨答えた。数日後、同職員は、請求人に対し、「P国と日本とは租税条約がない。したがって、P国へのロイヤリティーの支払に関し源泉徴収の義務はない。従来どおりで結構です。」と電話で連絡した(以下、この連絡を「本件指導」という。)。この電話は、Hが受け、電話を代わったGが本件指導を聞き、その内容をH、請求人の関与税理士であるL(以下「L税理士」という。)及びK社のM会長に伝えた。本件指導については、G、H、L税理士及びM会長の全員が鮮明に記憶している。
(B)ところが、本件調査担当職員は、本件調査開始直後に、「ロイヤリティーの支払をしていますね。P国へのロイヤリティーの支払は20%の源泉徴収をしなければならない。」と指摘した。
 これに対し請求人は、本件調査担当職員に対し、前回調査担当職員から本件指導を受けており、源泉徴収義務の有無は調査官の裁量によるものか質したところ、本件調査担当職員は、「裁量ではなく、前回調査担当職員がロイヤリティーの源泉徴収に関して詳しくないから、間違った回答をしたのだろう。」という発言をした。
(C)その後、平成13年3月28日及び同年5月28日に、本件調査担当職員及び本件調査担当職員の上司が来社し請求人と面談したが、3回の面談時に、一度たりとも、前回調査担当職員が本件質問や本件指導を行っていないという主張はなかった。
(D)しかるに、平成13年11月19日付異議決定書において、原処分庁は、前回調査担当職員が、G及びL税理士から尋ねられたり、原処分庁において検討し回答したこともない旨申し述べており、また、そうした事績も見当たらない旨主張している。
 しかし、本件調査開始直後に、請求人からの説明もなしに本件ロイヤリティーの源泉徴収について指摘したのは、原処分庁の内部文書に、本件質問及び本件指導の事実が残されており、本件調査担当職員がそれを見て本件ロイヤリティーについて発言したと考えるのが相当である。また、本件調査担当職員が、前回調査担当職員が詳しくないから間違った回答をしたと発言したのは、本件調査担当職員が、この時点において、本件指導があったこと及びその指導が事実として存在することを認識していたことは、明らかである。原処分庁が主張するように「何らかの指導又は回答をした事績も見当たらない。」のが事実なら、前回調査担当職員の指導した文書やメモを改ざん又は隠ぺいしたと推測するのが相当であり、請求人は、驚きと事実をねじ曲げる原処分庁に対し憤慨を覚えるものである。
B 源泉徴収義務について
 請求人は、原処分庁の指導によって、源泉徴収義務を果たす機会を逸したのであるから、源泉徴収をしなかった責任は原処分庁にあり、請求人に責任のないことは明白である。請求人がK社に対し本件非居住者各告知処分を受けた旨連絡したところ、K社は本件指導を覚えており、さかのぼって源泉所得税相当額を支払えという同処分には納得できないことと、本件非居住者各賦課決定処分に対し大変憤慨し、支払う意思がないと請求人に連絡してきている。K社が本件ロイヤリティーに係る源泉所得税を支払わない以上、原処分庁はK社に対しその支払を求めるべきであり、本件指導により源泉徴収義務を果たし得なかった請求人に対し、源泉所得税の納付を求めるべきではない。
(ロ)本件非居住者各賦課決定処分
 上記(イ)のとおり本件非居住者各告知処分は違法であり、その全部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件非居住者各賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 海外渡航費について
(イ)本件各更正処分
 請求人は、本件各渡航費について、旅費交通費として本件各事業年度の損金の額に算入しているが、本件各渡航費は、Jが、請求人の役員又は使用人ではなく、本件通達の例外的な取扱いとして例示するいずれの場合にも該当せず、役員がその親族を海外渡航に同伴しその旅費を負担した場合に該当するので、本件通達の原則的な取扱いにより、その役員に対する給与(賞与)となる。
 したがって、本件各渡航費は、Gに対する役員賞与に該当し、法人税法第35条《役員賞与等の損金不算入》の規定により、本件各渡航費の額を本件各事業年度の損金の額に算入することはできない。
 請求人が主張するK社からの同伴要請の有無、K社経営陣やその家族との交流、Jの会議への出席といった事情は、本件各出張当時7歳から9歳であったJは、請求人との間に雇用関係もなく法律行為をなすこともできないことから、客観的に業務遂行能力を有するか否かの判断においては、無関係な要素である。
 また、請求人が主張する本件通達に例示する専業主婦の同伴については、無条件に必要な支出であると認められるものではなく、社会通念上、その同伴が要件となっている国際会議に出席する場合等に限定してその海外渡航の目的を達成するために必要と認められるものであり、請求人の主張には理由がない。
(ロ)本件各賦課決定処分
 上記(イ)のとおり本件各更正処分はいずれも適法であり、また、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行った本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(ハ)本件給与各告知処分
 上記(イ)のとおり本件各渡航費は、請求人がGに対して支給した賞与と認められ、その賞与に係る所得税は、請求人において源泉徴収し納付する義務があるので、請求人の主張には理由がない。
(ニ)本件給与各賦課決定処分
 上記(ハ)のとおり、本件給与各告知処分はいずれも適法であり、また、源泉所得税を納付していなかったことにつき、通則法第67条《不納付加算税》第1項に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないから、本件給与各賦課決定処分はいずれも適法である。
ロ K社に対して支払った本件ロイヤリティーについて
(イ)本件非居住者各告知処分
 請求人は、別表3のとおり、K社に対し本件ロイヤリティーを送金しているが、本件ロイヤリティーは、所得税法第161条《国内源泉所得》第7号イの規定により国内源泉所得に該当するため、同法第212条《源泉徴収義務》第1項及び同法第213条《徴収税額》第1項第1号の規定により、本件ロイヤリティーの支払の際、支払額に100分の20の税率を乗じた額を所得税として徴収し国に納付しなければならない。
 請求人は、本件ロイヤリティーについて源泉徴収していなかったのは本件指導による旨主張するが、前回調査担当職員は、前回調査の際に、本件ロイヤリティーに関して、本件質問も受けていないし、本件指導もしていない旨申し述べており、また、前回調査担当職員が本件ロイヤリティーについて何らかの指導又は回答をした事績も見当たらないので、請求人の主張には理由がない。
(ロ)本件非居住者各賦課決定処分
 請求人は、上記(イ)のとおり、本件ロイヤリティーの支払について源泉所得税を納付しておらず、源泉所得税を納付していなかったことにつき、通則法第67条第1項に規定する正当な理由があると認められる場合に該当しないから、本件非居住者各賦課決定処分はいずれも適法である。

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3 判断

(1)海外渡航費について

イ 本件各更正処分
(イ)関係法令等
A 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第1項は、所得の金額は、益金の額から損金の額を控除した金額とする旨、同条第3項は、損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、販売費、一般管理費その他の費用の額等である旨、同条第4項は、損金の額に算入すべき金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定しており、法人の支出した費用が損金の額に算入されるか否かは、法人の業務遂行のために必要な費用であるか否かによるものと解される。
B 法人税法第35条第1項は、内国法人がその役員に対して支給する賞与の額は、損金の額に算入しない旨規定し、同条第4項は、この賞与とは、役員に対する臨時的な給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び退職給与以外のものをいう旨規定している。
C 本件通達は、法人の役員が法人の業務遂行上必要と認められる海外渡航に際し、その親族又はその業務に常時従事していない者を同伴した場合に、その同伴者に係る旅費を法人が負担したときは、その役員に対する給与とし、ただし、国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合など、明らかに海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、その旅行について通常必要と認められる費用の額は、この限りではない旨定めている。
(ロ)これを本件各渡航費についてみると、次のとおりである。
A 本件各出張後にG及びHが作成した海外出張精算書には、別表4の「出張目的」欄のとおり、本件各出張におけるK社との面談内容又は出張目的が記載されていることから、本件各出張の出張目的は、別表4の「出張目的」欄のとおりであると認められ、この内容から判断すると、本件各出張は、請求人の業務遂行に必要なものと認められる。
 しかしながら、本件各同伴については、本件各出張の時においてJが7歳から9歳の小学生であり、Gの扶養親族となっており、当然のことながら、請求人の役員又は使用人でもない状況及び本件各出張の出張目的から判断すれば、請求人の業務遂行のために必要なものとは認められない。
B 請求人は、本件各同伴は、本件各出張の出張目的を達成するために明らかに必要な同伴であり、原処分庁は出張目的を狭義に解釈し、出張精算書の記載事項に限定した誤った判断をしており、また、本件各同伴は、K社からの要請に基づくものであるから業務遂行に必要な費用である旨主張する。そして、請求人は、当該主張の証拠として、〔1〕K社が、Gらに会いにくるようにという要請や次世代交流を大切であると考えている文書、〔2〕同社がGらの海外渡航費の半分を負担することについての文書などを当審判所に提出している。
 しかしながら、本件各出張の出張目的は、上記Aのとおり、別表4の「出張目的」欄のとおりと認められ、上記の請求人の提出資料からは、請求人の主張する本件各出張の出張目的を達成するために本件各同伴が必要であることを確認することはできず、本件各同伴がK社の要請によるものであり、本件各出張によってGらとK社経営陣及びその家族との次世代交流が図られていたとしても、そのことが、請求人の業務遂行に関係するとは認められず、また、K社がGらの海外渡航費用の一部を負担していたことが、本件各渡航費を本件各事業年度の損金の額に算入すべき理由とも認められない。
C また、請求人は、本件通達の例示と比較し、JはK社の会議に出席するなど、本件各同伴の方が明らかに業務の遂行に必要である旨主張する。
 しかしながら、本件通達の定めは、上記(イ)のCのとおりであり、法人税の所得金額の計算上、法人の業務の遂行上必要と認められる旅費を損金の額に算入することは当然であるところ、国際会議への出席の場合など明らかに法人の業務遂行上、配偶者の同伴が必要と認められるときに法人が負担した当該同伴者の海外渡航費を、例外的に損金の額に算入できる旨を定めたものであり、当審判所においても相当な取扱いであると解される。
 ところで、本件各同伴は、上記A及びBのとおり、請求人の業務遂行のために必要なものとは認められず、また、本件通達のいずれの例示にも該当しないので、請求人の主張を採用することはできない。
D 以上のとおり、本件各渡航費は、請求人の業務遂行上必要な費用とは認められず、Jを扶養親族とするGが個人的に負担すべき費用であり、Gに対する臨時的な給与すなわち賞与とするのが相当であり、本件各渡航費を法人税法第35条第4項に規定する役員賞与であるとしてなされた本件各更正処分はいずれも適法である。
ロ 本件各賦課決定処分
 本件各更正処分は上記イのとおり適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定により過少申告加算税の賦課決定をした本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
ハ 本件給与各告知処分
 所得税法第183条《源泉徴収義務》第1項は、給与等の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、これを国に納付しなければならない旨規定しており、上記イのとおり、本件各渡航費はGに対する役員賞与と認められるから、本件給与各告知処分はいずれも適法である。
ニ 本件給与各賦課決定処分
 本件給与各告知処分は上記ハのとおり適法であり、また、請求人の場合、通則法第67条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件給与各賦課決定処分はいずれも適法である。

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(2)K社に対して支払った本件ロイヤリティーについて

イ 本件非居住者各告知処分
(イ)認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人とK社の間で作成したロイヤリティー契約書には、請求人が製造する製品及びロイヤリティーについて、要旨次のとおり記載されている。
(A)K社は、請求人が日本においてK社製造の標準製品以外の製品を製造するために、その製造に必要な濃縮化学原料のすべてを有償で供給し、これらK社製品2種の調合指示書を提供する。
(B)請求人は、K社の標準製品以外の製品を製造する場合、上記の化学原料を使用し、K社が提供した調合指示書に従って製造する。
(C)請求人が、最終製品にK社の商標・K社の名称を付して製造し、これを小売業者又は卸業者に販売することに対し、その純販売価格(販売価格から日本における消費税相当額を控除した金額。以下同じ。)の○%の金額をロイヤリティーとしてK社に支払うものとする。
(D)K社の商標・K社の名称を付さずに製造された最終製品に対しても、請求人は、その小売業者又は卸業者に販売する純販売価格の○%の金額をロイヤリティーとしてK社に支払うものとする。
(E)請求人は、顧客から本契約製品の代金の支払を受けた日より30日以内に、K社のP国の銀行口座に、そのロイヤリティーを電信為替で送金するものとする。
B 前回調査における本件ロイヤリティーに係る調査書類として次のものが認められるが、本件質問及び本件指導が行われた記録は認められない。
(A)1996年7月10日付、同年8月28日付、同年9月20日付、同年10月23日付、同年11月25日付及び同年12月17日付の原料T及び本件ロイヤリティーの支払に係る外国向送金確認書
(B)上記1996年9月20日付外国向送金確認書に係る本件ロイヤリティーの計算明細
(C)請求人が作成した「ミニシリーズカタログ」に記された、「H7.12頃より卸値の○%をK社へロイヤリティー(入金になったもの)」という書き込み
C 前回調査担当職員の答述
 前回調査担当職員は、当審判所に対し、平成14年6月13日、要旨次のとおり答述している。
(A)Gから、租税条約のないP国に対する本件ロイヤリティーについて源泉徴収が必要か否か聞かれた記憶はないし、請求人に対し、本件ロイヤリティーについて源泉徴収義務はないという連絡をした記憶も全くない。租税条約やロイヤリティーの源泉徴収という話を聞いたのなら、何か記憶があるはずだ。
(B)上記Bの(B)の外国向送金確認書及び本件ロイヤリティーの計算明細を請求人に提出を求めたのは、請求人の行った支払の事実及び仕入原価が相当であるか否かを確認するためである。
D 本件調査担当職員の答述
 本件調査担当職員は、当審判所に対し、平成14年6月14日、要旨次のとおり答述している。
(A)請求人が本件ロイヤリティーを支払っていることについては、上記Bの(C)の書き込みを見て知った。
(B)本件調査で請求人を訪れた際、Gから請求人の事業概況の説明を受けたときに、Gの方から本件ロイヤリティーの説明があり、源泉徴収の有無を質問したところ、「租税条約がないから、源泉徴収はしていない」旨の回答があった。
(C)本件指導に関する記録は見たことがない。
(ロ)関係法令
 所得税法第161条第7号イは、国内において業務を行う者から受ける工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(以下「工業所有権等」という。)の使用料又はその譲渡による対価で、当該業務に係るものは国内源泉所得に該当する旨規定している。そして、同法第212条第1項は、外国法人に対し国内において同法第161条第7号に掲げる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに納付しなければならない旨規定し、同法第213条第1項第1号は、その徴収すべき所得税の額は、その支払額に100分の20の税率を乗じて計算した金額とする旨規定している。
(ハ)上記(イ)及び上記1の(3)のロの各事実を上記(ロ)の関係法令に照らして判断すると、次のとおりである。
 請求人は、K社から供給された原料を用い、K社から提供された調合指示書に基づき製品を製造販売し、その販売金額を基準として本件ロイヤリティーを支払っているのであり、本件ロイヤリティーは、所得税法第161条第7号イに規定する工業所有権等の使用料と認められ、K社はP国に本店を有する外国法人であるから、請求人は、その支払額に100分の20の税率を乗じた所得税を源泉徴収し、国に納付する義務がある。
 したがって、上記(ロ)の関係法令に基づいて行われた本件非居住者各告知処分は、いずれも適法である。
(ニ)請求人は、この点について、本件指導に基づき源泉徴収をしていなかったのであるから、源泉所得税の納付を請求人に求めるべきではない旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)のCのとおり、前回調査担当職員は、Gから本件質問を受けた事実も、これに対し本件指導をした事実も否定しているところ、請求人の主張は、平成9年4月の前回調査時点において、請求人の方から自主的に本件ロイヤリティーに係る源泉徴収の要否を質問したとするものであるが、本件ロイヤリティーは、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、請求人が平成7年4月8日付で作成したロイヤリティー契約書に基づき源泉徴収をすることなく送金し、約2年を経過していることに照らすと改めて請求人が質問したというのは不自然、不合理であり、また、請求人の主張は、本件質問について前回調査担当職員がその場でわからなかったので署に戻って調査した上で、本件指導をしたともいうものであるが、租税条約がない国との取引について源泉徴収義務があるか否かについては、単純明快な問題であって、わざわざ署に戻って確認した上で誤った回答をしたということは通常ありえないことなどに照らすと、当該請求人の主張は、採用することはできない。なお、請求人から本件指導があったことについての証拠は提出されておらず、当審判所の調査によってもその事実は認められず、他に本件指導の事実を認めるに足る証拠はない。
ロ 本件非居住者各賦課決定処分
 本件非居住者各告知処分は上記イのとおり適法であり、また、請求人の場合、通則法第67条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件非居住者各賦課決定処分はいずれも適法である。

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(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

別紙

(1)平成10年7月から平成10年12月まで
(2)平成12年1月から平成12年6月まで
(3)平成8年10月分
(4)平成9年2月分
(5)平成9年6月分
(6)平成10年7月分
(7)平成10年8月分
(8)平成10年10月分
(9)平成11年2月分
(10)平成11年3月分
(11)平成11年5月分
(12)平成11年7月分
(13)平成11年9月分
(14)平成11年10月分
(15)平成11年11月分
(16)平成11年12月分
(17)平成12年1月分
(18)平成12年2月分
(19)平成12年5月分
(20)平成12年7月分
(21)平成12年9月分
(22)平成12年10月分
(23)平成12年11月分
(24)平成12年12月分
(25)平成13年1月分
(26)平成13年2月分

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